工事原価とは成果物を完成させるまでに現場でかかった費用をまとめたものです。
工務店などで働き始めたばかりの人、予算の管理をおこなうようになったばかりの人の中には、「工事原価」について十分に理解できてない方もいるのではないでしょうか。
適正な工事原価管理ができないと、利益率が低くなり会社に損失を与えかねません。
この記事では、工事原価の概要や工事原価率、工事原価管理方法について解説します。
目次
工事原価と工事原価率
ここでは、工事原価の概要と、工事原価を考える際に欠かせない工事原価率について解説します。
基本となるものであるため、しっかりと覚えておくようにしましょう。
工事原価とは?
工事原価とは、工事を完成させる際にかかる費用です。企業によっては「完成工事原価」と呼ぶこともあります。
工事原価は、純工事費と現場管理費の合計であり、あくまでも現場でかかる工事費のことを指しています。そのため、間接部門の経費や営業利益は含まれません。
そして、工事原価は「材料費」「労務費」「外注費」「経費」という4つの費用によって構成されています。これらの要素に関しては後述します。
工事原価が明らかになることによって、完成工事の純利益も明確になるため、企業において工事原価管理は非常に重要なものといえます。
工事原価率とは?
工事原価を扱う際には、工事原価率についても覚えておきましょう。工事原価率とは、売上に対して原価がどのくらいの割合を占めているのかを表すものです。
原価率は以下の計算式によって求められます。
例えば、原価が100万円で売上が200万円だった場合、原価率は50%という計算となります。
原価率が低いほど利益が多くなるため、見積もり作成の際には原価率を意識するようにしましょう。
建設業の利益率については、以下の記事で詳しく解説しています。
工事原価を構成する4つの費用
先ほども触れていますが、工事原価は「材料費」「労務費」「外注費」「経費」という4つの費用によって構成されています。
ここでは、これらの4つの費用について解説します。
材料費
材料費とはその名の通り、工事に使用する材料の仕入れの際に発生した費用です。工事のために資材や工具などを購入した場合は、こちらに含まれます。
材料費は、基本的に決算書の原価報告書にある材料費をそのまま記載する形で問題ありません。
ただし、この形をとる場合、原価報告書に記載されている材料費と、工事原価の材料費は同額にならない場合もあるため注意が必要です。
これは、原価報告書の材料費は当期中の工事にかかった費用を示しているものであるためです。
労務費
労務費とは、作業員に対して支払う給料や各種手当などの費用です。工事に必要な労働力を獲得するためにかかる費用と考えるとわかりやすいでしょう。
労務費は、正社員だけでなく派遣社員やアルバイトなど雇用形態の違いは関係ないため、工事に従事する人の給料や手当は全て労務費として扱うようにしてください。
ただし、現場作業に直接従事しない人、例えば、現場の代理人や現場の事務所で働く事務員に対して支払う給料や手当は労務費には含まれないため、間違えないようにしましょう。
労務費についての詳細は以下の記事でまとめています。
外注費
外注費とは、工事を他の会社に外注する際に発生する費用です。工程の一部を他の業者に外注した場合でも外注費となります。
ただし、例えば材料費を自社で負担し、工事を他社に外注した場合は、外注費として扱うのではなく、労務費の中の労務外注費として扱うようにしてください。
また、同様に人員不足によって他社に応援に来てもらった場合も労務外注費として扱うことが一般的です。
工事原価の中でも、外注費が占める割合は多いため、工事原価を適切に管理するためにも、外注費の取り扱いは重要だと言えます。
経費
経費とは、ここまで紹介した材料費、労務費、外注費のいずれにも含まれない費用です。
例えば、重機の利用に伴い発生した料金や、工事の際に発生した光熱費、従業員の給料などは経費に含まれます。
経費に関しては、本来は経費に含まれるべき費用が他の費用項目に含まれている場合が少なくありません。
例えば、駐車場の利用料金やガソリン代など、工事現場に行くために発生した費用に関しては経費として扱われます。
一方で、工事とは直接関係ない業務で駐車場の利用料金やガソリン代などが発生した場合は経費には含まれません。
【補足】一般管理費は工事原価に含まれない
経費と混同されやすい一般管理費についても補足しておきます。
一般管理費とは、会社運営に対して必要な費用のことです。
具体的には、工事に直接関わっていない事務員の給料や事務所で使った諸費用が一般管理費となります。
工事原価はあくまで、工事に必要な費用をまとめたものとなるため、一般管理費は高次元化に含まれません。
工事原価を下げて利益を出すコツ
建設工事における工事原価を下げて利益を出すコツを紹介します。
まずは要となる以下4つの項目のコストを下げることが重要です。
- 材料費
- 労務費
- 外注費
- 経費
具体的には材料の仕入れ先を見直したり、材料自体の原価が下がるように工夫すると良いでしょう。
原価を下げるため品質を下げると、成果物のクオリティが下がる可能性もあるため、品質と利益のバランスをとることが重要です。
また労務費に関しては、作業の効率化によって業務時間を短縮して削減できる可能性があります。たとえば、ウェアラブルカメラの導入で現場監督者の移動時間や着替えの時間を短縮、リアルタイムで作業員に指示を出すことでより効率的に現場を進められる可能性があります。
建設現場で活用されているウェアラブルカメラの概要やメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
同様に外注費も、建設DXによって作業員のリソースを節約できれば削減できる可能性があります。
その他工事原価を下げる方法については、以下の記事を参考にしてください。
工事原価の管理方法
工事原価の管理方法は、エクセルを使用する場合とシステムを導入する場合の2つです。それぞれの特徴を理解したうえで、工事原価管理をおこないましょう。
エクセル
工事原価の管理をエクセルでおこなっている企業は少なくないのではないでしょうか。
ほとんどの企業はすでにエクセルを利用しているため、エクセルによる工事原価管理はコストをかけずに取り組むことができます。
インターネット上には無料で入手できる工事原価管理関連のテンプレートもあります
また、マクロや関数を活用して使いやすい形に管理表をアレンジすることも可能です。
一方で、管理するエクセルファイルの数が多くなると、ミスが発生したり、なかなか必要なファイルが見つからなかったりする恐れがあります。
また、ファイルの管理方法によっては、会社のパソコンからしか閲覧できない場合もあるため、編集・閲覧をリアルタイムでおこなえない点は、使い勝手が悪いといえるでしょう。
システムの導入
エクセル以外の方法で工事原価管理を行う場合は原価管理システム(CMS)の導入、もしくは原価管理にも対応している工務店業務に特化したシステムの導入がおすすめです。
「CMS」は、正式にはCost Management System(コスト・マネジメント・システム)」といい、見積り・発注・入金管理などお金に関連する業務を管理できるシステムです。
CMSや原価管理もできる工務店業務に特化したシステムを導入することで、お金の流れを一元管理が可能となります。社内での共有や閲覧もスムーズにおこなうことができるでしょう。
建設DXは費用がかかるため、コスト面で導入をためらう工務店が多いです。
しかし、建設DXのための費用は補助金の利用が可能であり、今後建設DXが進んでいくことを考えると早めに補助金を使ってDXを進めた方が良いでしょう。
建設業の原価管理システム導入に使える補助金については、以下の記事で紹介しています。
工務店業務におすすめのシステム
原価管理もできる工務店業務に特化したシステムはいくつかありますが、おすすめのシステムは「AnyONE(エニワン)」です。
AnyONE(エニワン)では、工事原価や売上を正確に管理することができるため、より利益率を向上させることが期待できます。そのほかにも、見積予算・実行予算の作成、管理・顧客管理などにも対応していることが特徴です。
エクセルのような操作性なので、初めて扱う人でも直感的に操作することができるでしょう。
また、AnyONE(エニワン)を導入することによって、業務に関する各種情報を社内で一元管理できるようになります。「担当者によって工事原価に違いがある」、「業務が属人化してしまっている」といった心配もありません。
工事原価の管理だけでなく、業務効率化も図ることができるため、ぜひAnyONE(エニワン)の口コミを参考に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、工事原価についてその概要から、工事原価率や工事原価を構成する4つの費用などについて解説しました。
工事原価は、工事の利益を明確にするためにも欠かせないものです。そして、工事原価を扱う際には4つの費用の違いについて理解しておくことが重要です。
今回の内容を参考に、ぜひ工事原価の管理に取り組んでみてください。
原価率 = 原価 ÷ 売上高 ×100(%)