建設業界は「材料費の高騰」「右肩下がりの建設投資額」などの影響で、年々競争が厳しくなっています。
これからの建設業界で利益率を向上させ、しっかりと利益を残すためには、原価管理の徹底が必須です。
しかし「原価管理を徹底できている」と自信を持って答えられる方は、少ないでしょう。
原価管理の徹底をおこなうには、建設業に特化した原価管理システムを導入がおすすめです。
本記事では、原価管理の概要や重要性、IT導入補助金を活用できる原価管理システムについて解説します。
目次
建設業の原価管理とは
原価管理とは、家などを建てる際に掛かった原価を管理し、目標の原価と実際に掛かった原価の差を分析し改善することです。
建設業の原価管理は、工事ごとに原価を管理する「個別原価管理」をおこない、下記4つの原価費目を管理します。
原価管理を徹底する効果
原価管理を徹底すると、お金の流れを把握できるため経営判断の材料とすることが可能です。
またお金の流れの把握以外にも、原価管理の徹底にはさまざまな効果があり、ここでは下記3つの効果を紹介します。
利益の確保
原価管理を徹底すると、しっかりと利益を確保できます。
現在の競争の激しい現在の建設業界で「完工したい後でないと利益は分からない」というどんぶり勘定では、利益を残すことはできません
原価管理の基本は、契約を基にした実行予算を組み予想利益を算出することです。
実行予算と予想利益を決めると、各工事や工程の予算と想定利益を求めることができます。
実行予算と実際の発注金額に差異が生じた工程がある場合、差異の発生した工程が利益を減らす原因です。
利益を減らす原因を特定できれば、下記ような反省をおこなえます。
- なぜ実効予算よりも高い金額で発注してしまったのか
- 予算通りの金額で発注する方法はあるのか
- 実効予算に無理はなかったか
実行予算と発注額の差異の原因を分析し、改善と行動を繰り返せばどの工事でも利益を残せるようになるでしょう。
赤字工事の回避
原価管理の徹底で、赤字工事を回避することもできます。
顧客と契約を交わし、契約金額を元に実行予算を組んでいれば、利益は確保され赤字工事は発生しないはずです。
しかし、実際には「想定利益よりも実際の利益が少ない」「利益どころか赤字工事になっていることが多い」会社も多いでしょう。
赤字工事が発生する原因は、実行予算と実際の発注金額に差異があるからです。
原価管理の徹底で金額の差異をなくせば、赤字工事を回避できます。
従業員の給料UP
原価管理を徹底すると従業員の給料を上げられ、待遇を良くすることが可能です。
適切な原価管理をおこない材料費や外注費などの費用を低く抑えている会社は、従業員一人当たりの人件費が高いという下記のデータがあります。
- 1名当たりの年間限界利益=売上-材料費-外注費
- 労働分配率=人件費/限界利益
また、労働分配率の推移を見ると外部へ支払うお金を減らすと、会社に残る利益も増やすことが可能です。
原価管理の徹底は従業員の給料を上げられ、会社に利益も残せるため、従業員と会社両者にメリットがあります。
原価管理を徹底するポイント
原価管理の重要性は、理解している方も多いと思います。
しかし、原価管理を徹底できていない理由は、原価管理のポイントが分からないからでしょう。
ここでは、原価管理を徹底するためのポイントを3つ紹介します。
経営者・管理者が原価管理の重要性を理解する
1つ目のポイントは「経営者・管理者が原価管理の重要性を理解する」ことです。
経営者や管理者は実際に原価管理をおこなう会社は少なく、実際に原価管理をおこなうの、現場で働く施工管理者という場合が多いでしょう
原価管理の担当者に「原価管理を徹底しよう」と口頭で伝えるだけで、原価管理を徹底することはできません。
効果的な原価管理は、担当者だけでおこなえないからです。
原価管理の徹底は、会社一丸となって原価管理の重要性を理解するところから始まります。
原価管理を徹底するためには、経営者・管理者が原価管理の重要性を理解し、社内全体に原価管理の重要性を根気強く説明して必要があります。
最初から完璧を目指さない
2つ目にポイントは「最初から完璧を目指さない」ことです。
初めから完璧を目指してしまうと、なかなか上手くいかず挫折してしまいます。
完璧を目標とするよりも「現状を少しでも良くしよう」という雰囲気が大切です。
初めの内は、工事ごとに課題が発生するでしょう。
発生した課題を1つずつ解決ことが、原価管理の徹底につながります。
資料の標準化
3つ目のポイントは「資料の標準化」です。
原価管理を徹底させていくためには、課題の分析・改善と行動が欠かせません。
しかし、原価管理に必要な書類や情報が社内で統一されていないと、課題の分析・改善が難しくなります。
最初に資料の標準化をおこない、関係者全員に原価管理における重要な情報や項目を周知させることが重要です。
原価管理の方法
最適な原価管理の方法は、会社ごとに異なります。
自社にとって最適な原価管理の方法を見つけるために、一般的な原価管理の方法について理解しましょう。
ここでは、原価管理の方法に関連する下記2つについて解説します。
原価管理の流れ
原価管理を徹底していくための流れは、下記がおすすめです。
- 実行予算の作成
- 管理者による実行予算の承認
- 工事台帳の作成
- 定期的に現場状況・採算状況を報告
- 課題の改善策を話し合い
- ⑤の改善策を実行
- 予算と実績の差異の原因を分析
原価管理の基本となる実行予算は、着工前に必ず作成しましょう。
作成した実効予算は、管理者が確認し工事の懸念点や不安点を事前に把握することが重要です。
工事の原価を明らかにする工事台帳の作成も必要となります。
工事台帳は、リアルタイムで予算と発注額の差異を確認できるように少なくとも週単位で締めるようにしましょう。
定期的におこなう会議では、現場の状況や予算と発注額が理解しやすい資料を作成することが大切です。
課題に対して、話し合いをおこない改善策出し、実行しましょう。
現場完工後には実行予算と発注額の差異の原因を分析し、次現場や他現場に成功事例・失敗事例共に横展開するのがおすすめです。
原価管理のツール
原価管理を徹底するためのツールには、下記2つがあります。
最適な原価管理ツールは、会社により異なります。
2つのツールにそれぞれメリット・デメリットを把握して使用するツールを決めましょう。
原価管理システム
原価管理システムは、必要な情報を入力するだけで自動で原価計算がおこなえる、原価管理を効率的できるツールです。
原価管理システムの具体的なメリット・デメリットは下記の表を参照してください。
指定された項目を入力するだけで、原価計算がおこなわれるため、入力ミスや入力漏れなどの人的ミスが発生しません。
原価管理システムで見積り書を作成していれば、見積り書の情報を元に実行予算を組みことも可能で、業務の効率化がおこなえます。
また各現場の情報がシステムに集約されるため、低利益率・赤字工事が発生した場合の分析をおこないやすいです。
一方使用できる機能は、導入するシステムごとに異なるため、使用したい機能が備わっていない場合があります。
また初期費用や月額費用が掛かることもデメリットといえるでしょう。
ただし、IT導入補助金を活用できるシステムであれば、費用の問題は解決します。
IT導入補助金とは、業務の効率化に貢献するITツールを導入すると、国から補助金を受けられる制度です。
詳しくは、IT導入補助金について解説した記事をご確認ください。
エクセル
関数やマクロなどの知識があれば、エクセルでも原価管理はおこなえます。
エクセルは普段の業務で使用している会社も多く、使用するまでのハードルが低いです。
エクセルで原価管理をおこなうメリット・デメリットは、下記の表を参照してください。
エクセルは既に導入している会社は多く、新たな費用を負担せずに使用できることがメリットです。
また、関数やマクロの知識があれば機能や書式をカスタマイズ可能で、自社に最適な原価管理ツールを自作できます。
しかし、外部から情報確認・共有ができないことは、デメリットといえるでしょう。
また、原価管理システムと比べ情報の手入力が多くなるため、人的ミスが発生しやすいです。
一方で、エクセルに関する知識がないとエクセルで原価管理をおこなうことは難しいでしょう。
エクセルに詳しい社員が限られている場合、ツールの管理が属人的になり、担当者が退職すると、原価管理ツールとして維持・管理が難しくなるデメリットもあります。
IT導入補助金を活用できるおすすめの原価管理システム5選
原価管理の徹底をおこなうならば、原価管理システムの導入がおすすめです。
しかし「費用が高く導入に踏み切れない」方もいるでしょう。
ここでは、IT導入補助金を活用できるおすすめの原価管理システムを紹介します。
ツール名 | サービス詳細 |
---|---|
AnyONE | ・6年連続で支援業者に選ばれている ・見積りデータの流用が可能 ・月額支払い明細書を発行できる |
SAKSAK | ・200社以上に導入されている ・粗利低下防止を仕組み化している ・責任者が承認しないと発注書を発行できない |
アイピア | ・見積りデータを活用できる ・発注フローの管理ができる ・粗利低下の原因を追求できる |
どっと原価NEOクラウド | ・中小規模向けの原価管理システム ・実行予算は4階層まで対応している ・入力された情報を簡単にデータ化 |
e2movE | ・『e2movE 工事管理』は建設業の原価管理に特化している ・工種別に実行予算を作成できる ・工事原価に連動した書類を作成できる |
AnyONE(エニワン)
AnyONEは、すべての工務店業務に対応している業務効率化システムです。
またAnyONEを提供しているエニワン株式会社は、6年連続で支援業者に選ばれているため、IT導入補助金を利用したことがない会社も的確にサポートできます。
実行予算は見積りデータを流用して作成可能で、何度も同じ情報を入力する手間が掛かりません。
月額支払い明細書を作成できるため、実行予算・発注額・支払い額の差異を簡単に比較できます。
詳しくは、AnyONEの機能や特徴、口コミ・評判を解説している記事をご確認ください。
SAKSAK(サクサク)
SAKSAKは、200社以上に導入されているリフォーム・建設業向けの総合管理システムです。
粗利低下防止を仕組み化しているため、社内に原価管理のノウハウがなくても利益を確保できます。
責任者・管理者が承認しないと発注書を作成できない仕組みとなっているため、仕様変更や工期変更が発生しても、粗利低下・赤字工事を許しません。
詳しくは、SAKSAKの機能や特徴、口コミ・評判を解説している記事をご確認ください。
アイピア
アイピアは、工務店・リフォーム会社のための業務管理システムです。
原価管理のベースは見積り書となっており、見積り書を作成すれば原価情報作成や発注まで簡単に処理できます。
また、追加工事などの情報を簡単に原価情報へ反映できるため、リアルタイムで粗利を把握可能です。
リアルタイムで原価を把握できるため、低利益率工事・赤字工事を防止できます。
詳しくは、アイピアの機能や特徴、口コミ・評判を解説した記事をご確認ください。
どっと原価NEOクラウド
どっと原価NEOクラウドは、中小規模向けの原価管理システムです。
実行予算は、4階層まで対応しているため中小規模の現場だけでなく大規模現場にも活用できます。
また、入力された情報は簡単にデータ化できるため、利益率が悪くなった原因の分析に手間が掛かりません。
詳しくは、どっと原価NEOクラウドの機能や特徴、口コミ・評判を解説している記事をご確認ください。
e2movE(イー・ツゥー・ムーブ)
e2movEは、建設・工事業向けERPパッケージです。
e2movEの中でも『e2movE 工事管理』は建設業の原価管理に特化しています。
工種別に実行予算を作成できるため、予算に対する原価実績を簡単に把握可能です。
実行予算が工事原価と連動するため、重複した内容の入力する手間は掛かりません。
工事原価に連動した下記の書類を出力できるため、書類作成を効率化できます。
- 注文書
- 注文書(控)
- 注文請書
詳しくは、e2movEの機能や特徴、口コミ・評判を解説している記事をご確認ください。
まとめ
本記事は、建設業における原価管理の概要とおすすめの原価管理システムを導入しました。
競争が激化する建設業界で利益率を向上させ、しっかりと利益を確保していくためには、原価管理を徹底しお金の流れを把握する必要があります。
お金の流れを把握し原価管理を徹底するためには、原価管理システムを導入するのがおすすめです。
本記事を参考に自社にとって最適な原価管理システムを導入してください。
しかし「最適な原価管理システムを選ぶ自信がない」と悩む方もいるでしょう。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。
工事のために購入した鉄骨や木材などの材料・製品を費用を指します。
工事現場で働く方に支払う給料や手当を指します。
工程の一部を協力業者に発注するための費用を指します。
建設業は、他の産業と比べて外注費の割合が高いことから外注費を独立させて管理します。
上記3つの費目に当てはまらない費用を指します。