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サステナブル社会実現のための建設副産物との向き合い方

サステナブル社会実現のための建設副産物との向き合い方

近年、建設会社にはサステナブル社会の実現を掲げている企業が多くあります。

建設会社がサステナブル社会の実現のためにまずできることは、建設副産物の有効利用です。

今回は、サステナブル社会実現のための建設副産物の扱い方について、ゼネコン各社の実際の取り組みを交えながら解説していきます。

建設副産物とは?

建設副産物とは?

建設副産物とは、建設工事に伴い副次的に得られるすべての物品のことを指します。
建設現場に持ち込んで加工した資材の残りや、現場内で発生したものなどのうち、工事中もしくは工事が終わった後にその現場では使用する見込みのないものが建設副産物です。

具体的には、工事現場外に搬出される建設発生土やコンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥、紙・金属・ガラスくずなどが含まれます。

上記のような建設副産物は、大きく分けると次の3つに分類することができます。

建設副産物の分類
  • そのままリサイクルして利用できるもの
  • 加工や処理をすることで再利用できるもの
  • 廃棄されるもの

そのままリサイクルして利用できるもの

建設副産物の3分類のうち、そのまま原材料として利用できるものは「再生資源」と呼ばれます。具体的には建設発生土のようなそのまま利用できるものと、金属くずなど簡単に加工して再利用できるものの2種類があります。

建設発生土は、一般に残土と呼ばれる建設作業時に出てくる土のことです。基礎工事など、作業工程の早い段階で多く発生し、その建設現場では使い道がない土です。

金属くずなど加工して再利用できるものは、人に買い取ってもらえるような経済上の価値のあるもので、他にも鉄、アルミ、ガラスくずなどがこれにあたります。スクラップにすることで他人に有償で売却したりできます。

加工や処理をすることで再利用できるもの

建設副産物の3分類のうち、加工や処理をすることによって、原材料として再度利用できるものもあります。例えば、アスファルト・コンクリート塊や建設発生木材、建設汚泥、さまざまな種類の素材が混じりあった建設混合廃棄物などです。

例えば、新築戸建て住宅の現場で出る建設副産物の総量 は約 236 万トンとなっています。
品目別にみると、建設発生木材(木くずなど)が 85 万トン、建設混合廃棄物が 122 万トン、紙くず28 万トンです。
建設混合廃棄物 122 万トンのうち、木くずは 66 万トン、ガラスくず及び陶磁器くずが44 万トンです。ガラスくず及び陶磁器くずはそのほとんどが廃石膏ボードとなっています。

これらの物は、リサイクル設備のある中間処理施設で再利用できる状態に処理されます。

廃棄されるもの

最後は、リサイクルすることができず、原材料として利用することが不可能なものです。

代表的なものは、灯油などの廃油やコンデンサ、トランス、蛍光灯安定器、アスベストなどの有害物質です。

サステナブル社会実現のためにできること

サステナブル社会実現のためにできること

建設現場ではさまざまな建設副産物が発生します。
そのため、どのように建設副産物に向き合っていくかは、サステナブルな社会の実現のために大事なことであるといえます。

では、サステナブル社会実現のために私たちは何ができるのでしょうか。以下で解説していきます。

サステナブル社会実現のためにできること
  • 建設副産物をなるべく出さない
  • リサイクルする
  • サステナブル建築を建てる
  • サステナブルな建設材料を使う

建設副産物をなるべく出さない

建設副産物をなるべく出さないようにすることで、有限な資源の使用を控えることが可能です。それを実現するためには、技術の開発や発展が重要です。建設現場での木くず発生量を減らすため、鉄筋コンクリート部材を工場で製作するプレキャスト化を推進したり、建設汚泥の発生量を削減する工法で施工するなど、最新の技術が日々開発されています。

また、建設に使用する資源が最小限に済むように計画立てを行ったり、建造物をなるべく長く使えるように設計を行うことなども大切なことです。

リサイクルする

国土交通省によると、建設副産物のリサイクル率は、安定期に入ってきたと考えられています。建設副産物のリサイクル率は1990年代で約60%程度から2018年度で約97%にまで達しています。今後は、リサイクルの「質」の向上が重要視されるといわれています。

これからの時代は、建設副産物を従来よりも付加価値の高い再生材へリサイクルすることを促進するなど、リサイクルされた材料の利用方法に注目することが重要となります。

サステナブル建築を建てる

サステナブル建築とは、設計・施工・運用の各段階を通じて、地域レベルで生態系を維持しつつ、省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出の抑制をはかり、地域の気候・伝統・文化・周辺環境と調和しつつ、生活の質を適度に維持・向上することができる建築物を指します。

サステナブル建築を推進することにより、建物のライフサイクルを通じて環境負荷を減らし、地球環境に貢献することが可能になります。

サステナブルな建設材料を使う

サステナブルな建設材料は、地球環境に配慮し、リサイクル樹脂などの再生可能な原料を使用して作られたものを指します。

ヒートアイランド現象の抑制や大気汚染への配慮、水質汚染への配慮、自然への配慮など、地球環境への考慮をして作られています。

例えば、廃棄された衣類をリサイクルしてボードや、セメントを少なくした環境配慮型コンクリートを作った企業などもあります。

建設会社による具体的な取り組み

建設会社による具体的な取り組み

ここからは、サステナブルな社会実現のために建設会社が実際に行っていることを紹介していきます。

建設会社による具体的な取り組み
  • 建設現場発生土の再利用
  • 水平リサイクルで新たな資源に
  • 梱包レスで建設副産物削減
  • プレキャスト化による建設副産物削減
  • 再生コンクリートでコンクリートを再利用

建設現場発生土の再利用

鹿島建設では、建設現場発生土の現場内・現場間での再利用を推進しているほか、国土交通省の官民有効利用試行マッチングにも参加しています。

また、一般社団法人日本建設業連合会の建設副産物部会に参加し、他社との情報共有や協働の取り組みを進めるなど、業界全体での廃棄物削減、資源の有効利用に貢献しています。

水平リサイクルで新たな資源に

鹿島建設では、メーカーリサイクル(広域認定制度)の活用を推進しています。メーカーなどが環境大臣の認定を受け、自社製品である建材などの廃棄物(製品端材など)を回収し、リサイクルまで適正処理する制度のことで、同じ製品へのリサイクルが可能になる質の高いリサイクルです。

例えば石膏ボードの場合、現場から回収され、メーカーの工場で紙と石膏粉に分離し、紙は段ボールなどに、石膏粉は再び石膏ボードの原料へとリサイクルをすることができます。このように廃棄物を元の資材に再生することを「水平リサイクル」と言います。

梱包レスで建設副産物削減

清水建設では、「4R活動」を推進しており、省資源化、副産物の減量化・再資源化に取り組んでいます。建設副産物発生量を予想し、効果的な削減計画を立案・実行するシステムも活用しています。

4Rうちの一つにリフューズ(入れない)というものがあり、余計な梱包資材を現場に入れない梱包レスに取り組んでいます。

プレキャスト化による建設副産物削減

プレキャスト工法は、コンクリートの養生を工場内で行うことが可能なため、コンクリートの養生がしづらい気候や場所での建築手法として、よく用いられます。

このプレキャスト工法を本来現場で行っていた箇所に利用することで、建築物に合わせてその都度型枠を組み立てる必要がないため、ベニヤなどの建設副産物を大幅に削減できます。

再生コンクリートでコンクリートを再利用

奥村組では、解体コンクリートを現場内で破砕し、破砕物をそのまま骨材としてセメント、水、混和剤を加えてミキサーで製造するリ・バースコンクリートを開発しました。

解体コンクリートを全量使用しているため環境に優しいだけでなく、解体コンクリートの処分費用とコンクリートの購入費用の合計よりも低コスト、重量物を長距離運搬する必要がないなど、メリットがたくさんあるのが特徴です。

まとめ

今回は、サステナブル社会実現のための建設副産物の扱い方について、ゼネコン各社の最新の取り組みを紹介しつつ解説してきました。

一つの現場で大量の廃棄物が発生する建設業界では、建設副産物をいかに出さず、出たものはどのように有効活用するか、という課題を解決していくことが重要です。

記事で紹介したように、100%リサイクルのコンクリートなども出てきているため、将来的には100%リサイクルされた部材でできた住宅やビルなども出てくるかもしれません。