図面の拾い出しは、会社の売上と利益を左右する重要な業務ですが、非常に手間が掛かります。
また専門知識を必要で、簡単におこなえる業務ではありません。
そのため図面の拾い出しをおこなうのは、ベテラン社員だけになっている会社も多いのではないでしょうか。
本記事では、拾い出しの概要、拾い出しを効率化する方法、拾い出し時間を短縮するコツについて解説します。
目次
図面の拾い出しとは?
図面の拾い出しとは、積算・見積りをおこなうために図面から、自社工事に必要な材料とそれらの数量を拾うことです。
正確な積算見積りを行うには、図面から以下の項目を計測しなければなりません。
上記の自社の工事に関わる費用を全て洗い出し、全体の工事費を算出します。
図面の拾い出しの方法と計算式
図面の拾い出しの流れは以下の通りです。
- 工事種別ごとに担当者を決める
- 国土交通省の積算基準を用いて割増係数をチェックする
- 図面を読み取る
- 担当者が図面から拾い出しを実施する
費用の計算は以下の計算式で求めます。
工事費=数量×単価×金額
上記の数量を正しく求めるための作業が拾い出しです。
なお、正しい所要数量を計算するには、積算基準における標準数値を参照して、部材の数量を確認しましょう。
所要数量=設計数量×割増係数
また拾い出しは、1枚の図面だけで完結することはほとんどありません。
カーテンボックス・ブラインドボックスを例に説明します。
以下、カーテンボックス・ブラインドボックスは「CB・BB」と表記します。
- 全体平面図で、建物内でCB・BBを取り付ける箇所の目安を付けます
- 詳細平面図で、CB・BB1本ごとの長さを拾い出します
- 矩計図・断面図で、CB・BBの形状・納まりを確認します
- 最後に立面図で、CB・BBに干渉する物がないか確認します
上記の例からわかるように、CB・BBを拾い出すだけでも最低4枚の図面を確認しなければなりません。
以下のケースでは、更に確認が必要な図面は増えます。
- 建物が大きい
- 数量が多い
- ボックス以外の材料も工事範囲
図面の拾い出しの正確性は利益にも影響
拾い出しは工事原価や見積金額に大きな影響を与えます。
実際よりも多く拾い出してしまうと工事原価が高くなってしまい、工事を失注してしまう。
実際よりも少なく拾い出すと、見積り金額に反映されないため利益が少なくなったり、赤字工事になったりする可能性が高まります。
拾い出し業務は売上利益に直結する業務のため、高い専門性が求められます。
拾い出しを効率化する3つの方法
手間の掛かる拾い出し作業を効率化する方法は以下の3つです。
エクセルの利用
拾い出し用のエクセルを作成しておき、自動計算させる方法もおすすめです。
例えば、積算基準をもとにした計算式を入力したエクセルのテンプレートを作っておき、拾い出した数量を入力すれば自動的に積算を実施できます。
ただし、エクセルを利用して自動計算するためには、関数やマクロの知識が必要となります。
工務店向けのエクセルテンプレートでダウンロードも可能であるため、エクセルを扱える人員が少ない場合は活用しましょう。
積算・見積りソフトの導入
1つ目の方法は、積算・見積りソフトの導入です。
積算・見積りソフトは、デジタル・ITの力を活用して積算・見積りを効率化できるソフトいいます。
ソフトによっては連携機能があり、連携しているソフトで作図した図面なら材料・数量を自動で拾い出すことも可能です。
過去のデータをソフトに集約できるため、業界経験が浅い方でも過去の拾い出しデータを確認しながら、正確な拾い出し業務をおこなえます。
また積算・見積りソフトであれば、拾い出したデータを見積りや原価管理に流用できるため、会社全体の業務効率を上げられます。
無料アプリの活用
2つ目の方法は、無料アプリの利用です。
図面を取り込めば自動で拾い出しをしてくれます。
導入費用が無料で、気軽に拾い出しの作業を実施できます。
ただし、あくまでも無料アプリであるため機能的に専用ソフトよりは充実していません。
また、図面が複雑である場合に拾い出しが正確にできないリスクがあるため、アプリの口コミや機能をしっかりチェックしたうえで選びましょう。
積算代行業者の利用
3つ目の方法は、積算代行業者の利用です。
積算代行業者は、内製化していた積算業務を外注できるサービス。
拾い出しから積算までをおこなってくれるため、積算業務に関わっていた人員・工数を減らせる点がメリットです。
浮いた人員は、営業や施工管理などに配置転換することで、増員せずとも業績アップが見込めます。
積算代行業者は、そのプロが集まっているため指導や教育の手間が掛かりません。
自社の積算基準を伝え、何度かやりとりを繰り返すだけで、希望通りの積算情報が送られてきます。
以下の会社は、積算代行業者の利用を検討してはいかがでしょうか。
- 積算業務をできる社員が限られている
- 教育に手間と時間を掛けられない
- 人員を増やす余裕がない
拾い出しの時間を短縮する3つのコツ
「積算・見積りソフトや積算代行業者に費用を掛けられない」と考える方もいるでしょう。
費用をかけずに拾い出しの時間を短縮したい方は、以下3つのコツを意識してください。
自社の工事内容を理解する
基本のことですが、自社の工事内容を理解しましょう。
メーカー担当者であれば、製品の種類・仕様などカタログに載っている情報の理解・把握は必須です。
なぜなら自社の工事内容を把握していなければ、正確な拾い出しはできないからです。
- 工事には、どの材料が必要なのか
- 使用する材料と一緒に使う道具はあるのか(ビス・ボルトなど)
最低限上記2つのことを把握していなければ、拾い出しはできません。
そのためまずは、拾い出しをおこなう前に工事内容の理解から始めましょう。
施工の順番を意識する
次に施工の順番を意識しましょう。
なぜなら施工の順番を意識しながら拾い出しをおこなうと、拾い漏れが少なくなるからです。
ここでもCB・BBを例に考えてみましょう。
説明は、下記画像の「サッシ取り合い・埋め込みタイプ」を前提とします。
- CB・BBを吊るために「吊りボルト」を引っ掛ける「吊り金具」が必要です
- 振れ止め防止用の「サイドアンカー」「吊りボルト」も必要です
- サッシ枠に「持ち出し材」を固定します
固定には「ビス」が必要です - 「袖板(高さ調整材)」とCB・BBを固定するビスも必要です
- アングルと袖板を固定する「特皿ビス」も必要です
必要な材料を広い出したら、全体平面図などをもとに数量を算出します。
施工手順を考えながら拾い出すと、拾い漏れ防止につながり、自社工事の理解につながります。
建築業界の知識を身につける
即効性のある方法ではありませんが、建築業界の知識を身につけましょう。
なぜなら精度の高い拾い出しをおこなうには、自社工事の前工程と後工程の知識も必要だからです。
CB・BBを例にすると、前工程はサッシの知識、後工程では天井など内装工事の知識が必要となります。
これらの知識がないと、ビスの選び方や後工程を考慮した納まりを考えられないため、拾い出しに不備が出る可能性が高いです。
そのため精度の高い拾い出しには、自社工事に限らず建設業界全体の知識が必須です。
しかしただ闇雲に勉強するのは、難しいと考える方もいるでしょう。
おすすめは建築施工管理技士の取得です。
建築施工管理技士は、建設業界全体の知識を勉強でき、自社工事以外の知識も習得できます。
- 1級:52.4%
- 2級一次検定:49%
- 2級二次検定:35.1%
【出典】建築施工管理技術検定 実施状況-一般社団法人建設業振興基金
受験者の半分以上が合格するため、しっかりと対策をして試験に臨めば合格が難しくありません。
施工管理技士について詳しく知りたい方は下記の記事をご確認ください。
図面の拾い出しに無料アプリを利用する際の注意点
図面の拾い出しに無料アプリを利用して効率化を図れますが、以下の点に注意してください。
- セキュリティ面が不安定な可能性がある
- 機能面で有料ソフトに劣る可能性がある
図面の拾い出しができるアプリやソフトは、インターネットで簡単に検索、ダウンロードできます。
しかし、迂闊に無料ソフトを使うことでセキュリティリスクを抱える可能性があります。
また、機能面で有料の専門ソフトレベルの性能は期待できない場合があるため、可能であれば有料の積算ソフトがおすすめです。
まとめ
本記事では拾い出しの概要、図面の拾い出しを効率化する方法、拾い出し時間を短縮するコツについて解説しました。
拾い出しは会社の売上・利益に関わる重要な業務です。
また専門性が必要で、簡単にできる仕事ではないため業務が属人化しやすいです。
拾い出しができないと悩んでいる方は、本記事で紹介した積算・見積りソフトの導入、積算代行業者の利用をおすすめします。
最も簡単に拾い出しを効率化するならば、積算・見積りソフトの導入がおすすめです。
しかし「どのソフトを選んだら良いかわからない」という方もいるでしょう。
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また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
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など