温暖化や異常気象など、世界中で環境問題が話題になっています。
その中で政府は2021年8月10日に、第6回「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を開催しました。
検討会では省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの導入拡大によって環境問題を改善させていくにはどうすればいいか、具体的な内容が話し合われています。
その中で話題に挙がったのが、将来的に太陽光発電の設置を義務化するかどうかという点です。
この記事では、太陽光発電が注目されている理由、導入時に注意するポイントについて詳しく解説します。太陽光発電を顧客に進める際の参考としてください。
目次
太陽光発電の導入を進める背景
政府は、2030年までに新築戸建住宅の6割で太陽光発電の設置を目指すと発表しました。
また、将来における太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の一つとしてあらゆる手段を検討し、その設置促進のための取組を進める方針を示しています。
つまり、太陽光発電の設置義務化はされませんが、将来的には義務化の可能性もあるということです。
国・地方自治体の具体的な取り組みのひとつとして、公共機関が建築主となる住宅・建築物は、新築における太陽光発電設置を標準化するとともに、既存ストックや公有地などで可能な限りの太陽光発電設備の設置を推進することが挙げられています。
また、ZEHなどの高い省エネ水準を導入するにあたって補助金や税制を充実させることも推進されています。
【参考】経済産業省及び環境省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」
なぜ太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの導入が強く進められているのでしょうか。
- 脱炭素社会を目指す方針が定められた
- なぜ太陽光発電が注目されているのか
脱炭素社会を目指す方針が定められた
2020年10月26日、菅総理は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と発表しました。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出せざるを得なかった分については同じ量を吸収または除去することで、温室効果ガスを差し引きゼロにするという考え方のことです。
日本がカーボンニュートラルを目指す背景には2つのポイントがあります。
それは気候変動問題における対応と、ESG投資の拡大です。
気候変動問題における対応
地球温暖化をはじめとする環境問題は世界各地で注目されています。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書によると、世界全体で 2050 年カーボンニュートラルの実現ができれば、気温上昇を2.0℃ではなく、1.5℃程度に抑えられる可能性が高まると示されています。
その結果、近年発生している 50 年や 10 年に一度と表現されるような極端な高温現象や 10 年に一度発生する規模の豪雨等の頻度を低くすることができると指摘されています。
日本においても、西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で発生した平成30年7月豪雨などの災害が起きています。
気候変動問題を最小限に抑えるためにも再生可能エネルギーの利用を推進していく必要があります。
ESG投資の拡大
ESG投資とは財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。
つまり、環境の面でいうと、産業廃棄物の削減や省エネ対策に取り組んでいる企業に対して積極的な投資が行われています。
従来の短期的な利益を目指す投資スタイルから、リーマンショックなどの不況を経て、長期的なリターンを重視するESG投資に世界中が注目しています。
その結果、環境問題に対策をしない企業は投資家から敬遠される傾向にあり、世界中の企業が省エネなどの取り組みを進めています。
なぜ太陽光発電が注目されているのか
再生可能エネルギーはさまざまな種類がありますが、その中でも太陽光発電が最も注目されています。
なぜ注目されているのか、そのポイントを3点にまとめました。
エネルギー源が枯渇しないこと
太陽光発電の最大の特徴は、エネルギー源が枯渇せず、クリーンに消費できる点です。
火力発電のように発電時に石油を利用して大気汚染物質を排出する心配がありません。
災害時に非常用電源として利用できる
日本は台風・地震などの災害が多い国土であり、停電時の備えが重要となります。
太陽光発電を導入していれば、停電が起きた際も電力をそのまま利用できます。
設置場所の融通が利きやすい
他の再生可能エネルギーとは違い、太陽光発電は設置する設備の大きさにかかわらず発電効率がほぼ一定です。
屋根や屋上、ビルの壁や地面など設置できる場所も幅広く、発電時に騒音を出す心配もないため、安心して設置することができます。
補助金制度について
太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの導入が進められていますが、補助金制度はどのようなものがあるのでしょうか。
- 太陽光発電の補助金制度
- ZEHの補助金制度
太陽光発電の補助金制度
2021年時点で、国からの太陽光発電に対する補助金制度はありません。
補助金制度が廃止された理由は大きく分けて2つあります。
1つは太陽光発電の設備の費用が大幅に低下したことです。
1990年代の太陽光発電は1kWあたり200〜300万円でしたが、2021年には1kWあたり30万円程度になっています。
2つ目の理由が、ZEHなどの省エネ性能の高い設備を導入した住宅に対する補助金制度が充実していることです。
つまり、太陽光発電だけではなく、さらに環境に配慮した住宅に対して補助金を与えるということです。
また、地方自治体によっては、太陽光発電に対する補助金制度がある地域もあります。お住まいの自治体を調べてみてください。
ZEHの補助金制度
先ほど紹介したZEHですが、具体的にどんなものか知らない方も多いのではないでしょうか。
ZEH(Net Zero Energy Houseの略称)とは、エネルギー消費量を可能な限り少なくしたうえで、「必要なエネルギー消費量=自ら生み出すエネルギー量」とすることで、住宅で消費するエネルギーをプラスマイナスゼロにできる住宅のことです。
ZEH住宅にするためには、断熱性が高い壁や屋根を使い、省エネ性能が高い電気機器を利用することでエネルギーを節約し、再生可能エネルギーを使って電力を作ることが重要です。
その電力を作るために太陽光発電が役立ちます。
政府は今後、ZEHなどの高性能な省エネ住宅に対して補助金制度を優遇していく方針です。現在も環境省や経済産業省がZEHの補助金制度を行っています。
また、地方自治体によっては補助金制度を用意している地域があります。募集条件や公募期間はそれぞれによって異なるため、注意して申し込みましょう。
太陽光発電を導入する際のポイント
ここまで太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの重要性について紹介しました。
しかし、いざ太陽光発電を設置する際にどんな設備を設置すればいいか悩むのではないでしょうか。
そこで、太陽光発電を導入する際のポイントをまとめました。
- kW単価
- 屋根の形状
- 地域の気候
kW単価
最も大切なポイントがkW単価です。
kW単価とは「発電容量と費用の割合」のことで、kW単価が低い太陽光設備のほうが、より少ない費用でより多くの発電ができる設備です。
kW単価を比べる際に注意したい点が、同じ容量で比較されたkW単価かどうかという点です。
基本的に容量が大きくなるほどkW単価は低くなりますが、実際の容量を説明せず、kW単価だけを説明して価格を安く見せるケースもあります。
容量も確認したうえでkW単価が低い製品を選びましょう。
屋根の形状
屋根にはさまざまな形状があります。一般的な太陽光パネルを設置できないケースでは、小さめの太陽光パネルを選ぶといいでしょう。また、築年数が長い建物は屋根の耐久性が懸念されるため、比較的軽量の太陽光パネルがおすすめです。
太陽光パネルはさまざまな種類のものがあるため、屋根に合ったものを選びましょう。
地域の気候
気候によってもそれぞれ最適な太陽光パネルは異なります。気温が上がりやすい地域や曇りが多い地域、積雪が多い地域などさまざま。
例えば気温が上がりやすい地域では、高温でもパフォーマンスが高い製品、曇りが多い地域では、低照度でも発電量が多い製品などを選ぶといいでしょう。
まとめ
太陽光発電が注目される背景や太陽光発電を導入する際のポイントについて解説しました。
環境問題が重要視される中、再生可能エネルギーを最大限利用することは人類全体の課題になっています。
補助金制度などを活用して、環境に寄り添った暮らしを進めていきましょう。