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【建設業】見積書の有効期限とは?設定する理由や注意点も解説

【建設業】見積書の有効期限とは?設定する理由や注意点も解説

建設業界において、見積書は工事の全体像を理解するための重要な書類です。

費用の見積りから工期の設定にいたる過程で、見積書は顧客と建設会社間の信頼を築く基盤となります。

特に、見積書に記載される「有効期限」は、期間内に重要な決定が行われるため、期限の設定には細心の注意を払わなければなりません。

本記事では、見積書の有効期限が建設工事においてどのような役割を果たし、どのように扱うべきかについて、詳しく解説します。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 見積書の有効期限の設定方法について知りたい
  • 見積書作成の際の法律の規定を理解したい
  • 見積書に含めるべき主要な項目を確認したい

【建設業】見積書の有効期限を設定する理由

【建設業】見積書の有効期限を設定する理由

はじめに、建設業において見積書に有効期限を設定する理由をお伝えします。

【建設業】見積書の有効期限を設定する理由
  • 契約締結の促進
  • 価格変動リスクへの対応

契約締結の促進

見積書に有効期限を設定すれば、顧客に対して一定の期間内での契約締結を促進できます。

提出した見積書に30日間の有効期限が設定されていた場合、顧客に対して30日以内に契約するか否かの決定を促します。

さらに顧客側は、有効期限によって複数の建設会社から見積りを取得しての比較が可能です。

有効期限を考慮に入れながら、どの会社と契約するかを判断し、建設会社間の公平な競争が促され、最適な選択ができるでしょう。

このように見積書の有効期限は、契約締結を促進し、建設工事の円滑な進行に寄与します。

価格変動リスクへの対応

見積書の有効期限の設定は、価格変動リスクへの対応策としても重要な役割を果たします。

例えば、建設会社が提出した見積書には、材料費として100万円が記載されていたとします。

しかし、有効期限が過ぎるまでに市場価格が上昇し、材料費が120万円になった場合、有効期限の設定がなければ、差額の20万円を負担しなければなりません。

有効期限の設定によって、市場価格を反映した新しい見積書を提出でき、適切な価格での契約が結べます。

このような価格変動リスクへの対応策として、見積書には通常、有効期限が設けられています。

【建設業】見積書の有効期限はどれくらい?

【建設業】見積書の有効期限はどれくらい?

建設業界で有効期限をどのように設定すべきか、さらに有効期限がない場合についても解説します。

【建設業】見積書の有効期限はどれくらい?
  • 一般的な期限の範囲
  • 個別工事ごとに設定
  • 記載なしでも違法ではない

一般的な期限の範囲

一般的に見積書の有効期限は「2週間から6ヶ月の間」での設定が多いです。

見積書の有効期限を設定する際には、工事の具体的な要件に加えて、市場の状況や資材の供給状況など、外部の要因も考慮する必要があります。

建設会社は、外部の要因を踏まえて、リスクを最小限に抑えつつ、工事が予定通りに進行するよう適切な有効期限の設定が求められます。

個別工事ごとに設定

見積書の有効期限は、個別工事ごとに異なる条件や要件がある場合、見積書の有効期限も合わせて調整しなければなりません。

例えば、都市部での高層ビル建設工事において、特殊な材料や技術が必要になるケースや、特定地域での規制による地域的な要因が発生する場合があります。

このような特殊な要件は、価格の変動の可能性があるため、長い有効期限の設定は現実的でないでしょう。

記載なしでも違法ではない

見積書に有効期限が記載されていない場合でも、直ちに違法というわけではありません。

しかし、有効期限の記載がないと、後に双方の間での誤解やトラブルの原因となるケースがあるため、注意が必要です。

例えば、市場の変動や資材費の変化などにより、見積りの条件が変わる可能性があります。

このような場合、見積りが提出された当初の条件での契約ができなくなり、両者の間で不一致が生じる場合があります。

【建設業】見積書の有効期限は撤回できない

【建設業】見積書の有効期限は撤回できない

見積書の扱いには、民法の定める規則が適用されるため、建設業界での取引にどのような影響をおよぼすのかを説明します。

【建設業】見積書の有効期限は撤回できない
  • 民法523条について
  • 有効期限内の契約義務

民法523条について

民法523条では、契約の申込みに有効期間を設けた場合、その期間内に申込みを撤回できないと定めています。

第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

民法|e-Gov法令検索

顧客に提出した見積書に60日間の有効期限を設定した場合、60日間は見積書の条件は変更できません。

この法的枠組みにより、顧客は提出された見積書通りの条件に基づき、安心して契約の意思決定を行えます。

この法律の背景には、契約の安定性を保つという意図があります。

有効期限内の契約義務

建設会社は見積書に有効期限を設定すると、契約を申し込んだとみなされます。

つまり、見積書が提出されてから有効期限が切れるまでの契約締結義務を意味します。

提出した見積書には45日間の有効期限が設定されている場合、45日間に顧客が契約すれば、見積書の条件通りに工事が行われなければなりません。

建設会社は、有効期限内に市場の変動や資材費の増加があっても、見積書の条件遵守が求められるため、リスク管理には十分留意する必要があります。

【建設業】見積書の有効期限が過ぎてしまったら?

見積書の有効期限が切れた場合はどうなるか、建設会社と顧客が取るべき手順について解説します。

【建設業】見積書の有効期限が過ぎてしまったら?
  • 見積書の効力喪失
  • 再見積りの提出

見積書の効力喪失

民法523条第2項では、有効期限が過ぎた見積書は、効力を失うと定めています。

第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

民法|e-Gov法令検索

つまり、有効期限内に契約が締結されなかった場合、見積書に記載された内容はもはや拘束力を持ちません。

このような状況では、建設会社は新しい見積書を作成し、更新された価格や条件を顧客に提出する必要があります。

見積書の有効期限を適切に設定し、期限内での合意が、建設工事のスムーズな進行には不可欠です。

再見積りの提出

見積書の有効期限が切れた後は、再見積りを提出する必要があります。

価格が変動した際に、最新の条件に基づいて合意する必要があるからです。

最新の市場価格、使用する材料の変更、工期の延長など、工事の変更点を詳細に再見積りに反映します。

再見積りでは、両者間での十分なコミュニケーションが重要で、各費用についての明確な合意形成が望ましいです。

【建設業】見積書の有効期限を設定する際の注意点

見積書の有効期限を設定する際に、留意すべき点について説明します。

【建設業】見積書の有効期限を設定する際の注意点
  • 価格変動が起こる可能性がある
  • 提出前にチェックを行う

価格変動が起こる可能性がある

建設業界において、見積書を作成する際に特に予測が難しいのが、材料費の価格変動です。

材料費の価格は、以下のような要因に左右されます。

材料費の価格変動要因
  • 需要と供給
  • 為替レート
  • 政治的な状況
  • 自然災害

価格変動のリスク管理には、建設会社は市場の動向を常にモニタリングし、必要に応じて迅速に対応しなければなりません。

円滑に工事を進行させるためには、予期せぬコスト増に対して、建設会社と顧客の双方による見積書の合意が不可欠です。

提出前にチェックを行う

見積書の提出前のチェックは、大変重要な手順です。

提出前の段階での徹底した確認により、見積書に含まれる情報の正確性が保証され、後に発生する可能性のある誤解を防げます。

見積書提出前のチェック項目
  • 全ての項目が見積書に明確に記載されているか
  • 価格を左右する外部要因に対する影響は反映されているか
  • 有効期限を設定しているか

全ての項目が見積書に明確に記載されているか

工事の範囲、使用される材料、予定される作業、総工事費が記載されているか確認します。

例えば、コンクリートや鉄骨の使用量、各工程の労働時間、必要な機械のレンタル費用など、全ての詳細が記載されている必要があります。

価格を左右する外部要因に対する影響は反映されているか

市場の変動や季節による影響など、価格を左右する外部要因に対する影響も必須です。

例えば、夏場に外構工事を行う場合、高温による作業効率の低下や材料の保存条件など、季節特有の要因が与える影響を適切に反映させます。

有効期限を設定しているか

見積書には有効期限を設定し、期間内の価格保証や条件を顧客に明確に伝えなければなりません。

顧客側は見積りの内容を正確に理解し、意思決定を行うための十分な情報を得られます。

【建設業】見積書の記載例

建設業における見積書は、工事の詳細から費用までを詳細に記載した文書です。

一般的なオフィスビル建設工事の見積書の記載例を示します。

【建設業】見積書の記載例
  • タイトル
  • 発行日
  • 作成者
  • 宛先
  • 見積番号
  • 件名
  • 施工場所
  • 施工開始日
  • 見積金額
  • 見積明細
  • 有効期限
  • 備考

タイトル

文書のタイトル「御見積書」または「見積書」と明示します。

  • タイトル:「御見積書」

発行日

文書が作成された日付を記載して、どの時点での見積りなのか明確にします。

  • 発行日:2024年4月1日

作成者

作成者の会社名、住所、連絡先、担当者の名前を明記します。

  • 会社名:鈴木建設株式会社
  • 住所:東京都千代田区神田神保町1-1-1
  • 電話番号:03-1234-5678
  • 担当者:鈴木一郎

宛先

見積書の宛先を記載します。

  • 宛先:株式会社オフィスデザイン 御中

見積番号

見積書を一意に識別するための番号を記載します。

  • 見積番号:Q20240401-100

件名

見積書の対象となる工事や工事の名称を記載します。

  • 件名:渋谷区新オフィスビル建築工事

施工場所

工事が行われる場所を具体的に記載します。

  • 施工場所:東京都渋谷区渋谷2-2-2

施工開始日

工事の開始予定日を記載します。

  • 施工開始日:2024年5月15日

総見積金額

工事の総見積り金額を記載します。

  • 総見積金額:¥120,000,000

見積明細

工事の内訳、それぞれの項目の費用を記載します。

  • 躯体工事:¥60,000,000
  • 内装工事:¥30,000,000
  • 設備工事:¥20,000,000
  • 外構工事:¥10,000,000

有効期限

見積りが有効である期間を記載します。

  • 有効期限:2024年5月1日まで

備考

特記事項や追加情報を記載します。

  • 備考:見積りに含まれていない項目については別途協議
工事見積書とは?役割から記載項目、作成の注意点まで解説!

まとめ

建設業界における見積書の有効期限は、工事の円滑な進行と予算管理に不可欠です。

見積書に記載される有効期限は、顧客と建設会社間の契約締結を促し、市場の価格変動リスクに対応するために重要な役割を果たします。

見積書の有効期限を設定する際には、価格変動のリスクを考慮し、適切な期間の選定が重要です。

本記事を通じて、顧客との信頼関係構築とより効率的な工事管理に努めていきましょう。

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この記事の監修者

せいた

保有資格:建設業経理士1級、国際会計修士(専門職)、日商簿記2級、宅地建物取引士

大学卒業後、スーパーゼネコンに13年間勤務。
経理や財務に8年間、民間建築工事の現場管理に5年間携わる。施工実績は20件に及ぶ。