時代の変化が激しい現代において、建設業も大きな影響を受けています。
建設業に従事する方やこれから就職を検討している方は「建設業で生き残れるのか心配」といった悩みもあるでしょう。
結論からいうと、建設業は常に需要がある業界であるため生き残ることは十分可能です。
当記事では、建設業における現状の課題や将来性について詳しく解説します。
必要な対策や将来性、求められる人材、資格なども紹介します。
目次
これからを考える前に知っておくべき建設業の現状
建設業の現状としては、以下のような問題が発生しています。
建設資材の高騰
建設には多くの資材を必要とするため、建設会社はなるべく安い価格で品質の良い資材確保を求めます。
しかし、ウクライナ情勢によって資材が高騰して、円安が進んだことで建設業界全体が悪影響を受けました。
国土交通省が発表した「最近の建設業を巡る状況について」によると、2022年5月時点で型枠用合板や厚板、ストレートアスファルトといった資材が約1.5倍の価格になっていると発表されました。
建設会社は資材のほかに人件費などのコストがかかるため、建設資材の高騰は経営難を引き起こす問題となるでしょう。
建設業界の倒産が増加傾向
建設業界は、年々倒産する企業が増加傾向にあります。
東京商工リサーチによると2023年の建設業における倒産件数は1.693件を超えており、2年連続で前年を上回る結果となりました。
倒産が増加するいる理由としては、コロナウイルスや物価高、人材不足などが大きな要因です。
また、建設業界の技能者の高齢化が進んでいるため、後継者不足も課題となっています。
とくに中小企業は大手に比べて規模が小さいため、経営を継続することが難しくなっています。
改正労働基準法の実施
働き方改革として2019年に改正労働基準法が決定し、2024年から実施されるようになりました。
改正労働基準法とは、長時間労働を抑制して労働者の健康を確保するための法律です。
月60時間を超える場合は時間外割増賃金率の引き上げにもなるため、時間制限や人件費の増加などが発生します。
労働者にとっては優遇される制度であったとしても、雇用する建設会社には大きな痛手となるでしょう。
建設投資額の低下
2020年に発生した新型コロナウイルスの影響から、工事の中止や延期が多くなり建設投資額が低下傾向にあります。
現場においても感染症対策や人員の確保が難しくなっているため、工事の需要が一時的に低下しました。
現在では徐々に建設の需要が高まりを見せていますが、東京オリンピックの延期なども影響して建設投資額は大きな伸びができていません。
建設業が解決すべき課題
建設業が解決すべき課題を紹介します。
1.建設業界の人材不足
建設業界の就業者数は年々減少傾向にあり、人材不足が大きな課題となっています。
これから就職先を検討する若者にはマイナスなイメージを持たれやすいため、人材の確保が難しいです。
建設業界の人材不足を解決するためには、外国人労働者の受け入れや待遇面の改善などが必要になるでしょう。
2.労働環境の負担
建設業界はほかの業界に比べて負担が大きいため、労働環境の改善が課題となります。
長時間の残業や休日出勤が増えてしまうと、労働者の負担が大きくなり離職率の増加につながってしまいます。
根本的に労働環境の負担をなくすには、業務効率化や人材確保が必要になるでしょう。
3.DX化の推進問題
建設業界の生産性や効率性を向上させるためには、DX化の推進が大きな課題となっています。
業界をとおしてFAXや紙の契約書を利用する文化が浸透しており、ITリテラシーの低い社員が多いため、DXの推進が進みません。
DX推進により業務効率化を図りたいと上層部が考えても、現場との意思疎通がうまくいかずなかなか導入が進まない企業も多いです。
また、DX導入には費用が必要なため利益率の低い中小の建設業者は予算面で厳しい面もあるでしょう。
工務店における建設DXの内容を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
4.工事費用
建設業界では建設資材の高騰からコストがかかるため、工事費用の賃上げが課題となっています。
建設業界は重層下請構造となっており、下位の下請けになるほど利益率が低くなります。
中小企業の場合、安価な報酬であっても受注が必要になることも多く、安定した利益を獲得することが難しいです。
利益が少なければ従業員の給料も低くなるため、全体のモチベーションを維持することも困難になるでしょう。
工事費用を抑えるには、日次の原価管理を徹底して工事原価を抑える必要があります。
建設業界のこれからに必要な対策
建設業界のこれからに関して、以下のような対策が必要です。
従業員の負担軽減
建設業界で安定した従業員を確保するためには、負担軽減の対策が必要です。
国土交通省は、建設業界を対象にした「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の利用を推進しており、従業員を適切に処遇する制度インフラとなっています。
労働者一人ひとりのスキルや経験、就業履歴などをデータ化することで、客観的な評価ができるシステムです。
労働者に合わせて処遇が見直されるため、安心して働ける労働環境の構築につながるでしょう。
性別の壁をなくした人材採用
建設業界の人材不足を改善するためには、性別の壁をなくした人材採用が求められます。
男性だけでなく女性も積極的に採用することで、社会のイメージを変化させて人材確保につなげることが可能です。
国土交通省も「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を行なっており、女性の入職者の増加を目指しています。
女性でも建設業界で安定した働き方ができるようになれば、人材不足の課題を改善できるようになるでしょう。
外国人労働者の雇用
建設業界の人材不足を改善するためには、国内だけでなく海外の人材を雇用することも大切です。
海外は国内に比べて人口が多いため、外国人労働者を雇用することで安定した人材確保ができます。
2022年8月の閣議決定では、建設分野における特定技能制度の業務区分が「土木」、「建設」、「ライフライン・設備」の3区分に統合されたことから、外国人労働者を供給できる環境が整備されました。
AI・ITシステムの導入
建設業界の業務効率や生産性を向上させるためには、AIやITシステムを導入したDX化推進が求められます。
これまでアナログで対応した作業をデジタル化できるため、労働者の負担軽減にもつながります。
国土交通省では建設業界の「i-construction(アイ・コンストラクション)」によって、3次元データを活用した施工管理や建設機械の自動運転化などの実施を目指していています。
建設業界のDX化を目指すには、従業員全体の教育体制を見直しながら意識を統一化する必要があります。
業務効率や生産性を向上させるためにも、積極的にAI・ITシステムを導入するようにしましょう。
グローバルなインフラ展開
国内の建設市場が狭くなっている現代では、グローバルなインフラ展開を目指すことも大切です。
国土交通省は需要機会を拡大するために「インフラシステム海外展開行動計画2022」を策定しており、中小企業の海外進出を支援しています。
実際に日本のインフラ技術は海外からも高い評価を得ているため、どちらにとっても良い影響を与えられます。
大きな利益率を獲得できるチャンスにもなるため、海外にも視野を広げてみましょう。
建設業の将来性
建設業の将来性として、以下のような可能性があります。
災害対策による需要拡大
建設やインフラは定期的に災害対策が必要になるため、メンテナンスや再建のために建設業界の手を借りる必要があります。
地震や火災、津波といった災害が発生すると建設物が破損するため、修復に建設業の存在は欠かせません。
建設資材の高騰は無視できない問題ですが、建設投資額は年々増加傾向にあります。
建物は年数が経過すれば必ず老朽化するものであるため、今後も建設業は必要な業種であるといえるでしょう。
DX化による生産性向上
DX化が推進されている現代では、管理ツールやソフトウェアを建設業界に導入することで生産性を向上できます。
現場労働者がITを取り入れることは難しいですが、設計や営業などの業務はDX化すればテレワークの導入が容易となります。
在宅で業務ができるようになるため、子育てや介護で自宅を空けることができない方でも働きやすい環境を構築可能です。
また図面管理や施工管理などもスマートフォンやタブレットを活用して情報共有できるため、業務効率が向上します。
そのため建設業界では、生産性を向上するためにもDX化推進の取り組みをはじめる必要があるでしょう。
大規模な建設プロジェクトの増加
国内では、東京オリンピックの開催をきっかけに大規模な建設プロジェクトが増加傾向にあります。
代表的な事例として、大阪万博の開催から会場建設や周辺整備がはじまっています。
ほかにもリニア新幹線や高速道路などのインフラ工事も進んでいるため、今後も建設業の需要は高いです。
都市部だけでなく、全国的にも大規模な建設プロジェクトは増えているため建設需要は伸びていくでしょう。
エコ建設の需要拡大
現在では幅広い業界でSDGsの取り組みが実施されており、建設業でもエコ建設の需要が拡大しています。
建設業では環境に配慮するために、二酸化炭素をプラスマイナスゼロの状態する取り組みが実施されています。
建設資材も太陽光パネルや珪藻土など環境に配慮したものが採用されるようになっているため、建設業が積極的に参加することで経営の助けとなるでしょう。
建設業でこれから求められる人材とは
建設業でこれから求められる人材になるために、以下のような努力が必要となりまs。
デジタルに強い新しいアイデア
デジタル化が進む現代では、最先端の知識や技術などを持った人材が求められるようになっています。
施工管理などに関わる従業員がデジタルに強ければ、新しいアイデアによって業務効率化が可能です。
AIが進化するとデータ処理や建設の提案などをコンピュータができるようになるため、建設業では新しいアイデア出しができる人材が求められるでしょう。
リーダシップに優れた存在
建設業は多くのメンバーが協力しながらプロジェクトを進めるため、リーダーシップ性に優れた存在は必要不可欠です。
責任感があって全体を引っ張っていける人材がいれば、トラブルが発生したときでも柔軟に対応できるでしょう。
建設は全体が協力することで完成するため、リーダシップ性に優れた人材が必要とされます。
周囲との協調性を持つためのコミュニケーション能力
建設業だけでなく、コミュニケーション能力を持った人材は企業から重宝されます。
コミュニケーション能力が高ければ人を選ばずにやり取りできるため、周囲と協調性を持ちながら業務を進められます。
相手の考えと自分の意見を反映できるコミュニケーション能力があれば、現場と裏方のどちらでも円滑に業務を進行可能です。
普段から積極的にコミュニケーションを取ることを意識することで、スキルを自然に鍛えられるようになるでしょう。
柔軟性・多様性への理解
建設業では古い慣習が残っている傾向にあるため、柔軟性や多様性に優れた人材が求められています。
これまでの考えをなくして新しい戦略を考えられる人材がいれば、建設の業務効率化につながります。
例えば男女の働き方について壁をなくすことで、女性が現場で働くことが可能です。
人によって対応できる業務に差を作らない環境を構築できれば、生産性を向上させられるようになるでしょう。
建設業でこれから必要になる資格3選
建設業でこれから必要になる資格として、以下の3つがあります。
1.建築士
建築士は、建物の設計や工事監理を行える資格です。
建築士の資格は一級、二級、木造の3種類に分かれており、それぞれ対応できる建設物が異なります。
建物の安全性や快適性、構造などを考慮した設計ができるため、対応できる業務範囲が増えます。
建築士は国家資格となっているため、取得していれば就職・転職にも有利です。
2.建築施工管理技士
建築施工管理技士は、建築現場の監督を行える資格です。
建築施工管理技士の資格は一級と二級の2種類があり、それぞれ対応できる建設物の規模が異なります。
建築施工管理技士の合格率は40%程度であり、比較的難易度が低い傾向にあります。
建設現場の監督業務に就きたい方は、建築施工管理技士の資格がおすすめです。
3.インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、家具をプロデュースできる資格です。
インテリアや住宅などに関する知識・技術があるため、クライアントが住みやすい空間を提案できます。
インテリアコーディネーターに受験資格はないため、ほかの資格に比べて取得しやすくなっています。
建設後のアフターフォローができることから、女性にも人気が高い資格となっています。
インテリアに興味・関心があり、コミュニケーション能力を生かしたいならインテリアコーディネーターの資格がおすすめです。
まとめ
今回は、建設業における現状の課題や将来性、必要な対策や将来性、求められる人材、資格などについて詳しく紹介しました。
空き家の増加や労働環境の負担、DX化の推進問題、工事費用などの課題を解決することで、建設業はより発展していくはずです。
東京オリンピックの開催をきっかけに国内では大規模な建設が進んでいるため、今後も建設業の需要は高まりを見せていくでしょう。
建設業で求められる人材になるためには、資格の取得を検討することも1つの手段です。
建築士や建築施工管理技士、インテリアコーディネーターなど需要の高い資格取得を目指してみてください。
建設業界の課題解決には業務効率化を進め、将来性を高めていく必要があります。
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