工務店の原価管理は項目の多さや分析データが膨大で、作業効率の悪さに悩んでいる企業も多いでしょう。
しかし、原価管理の精度が低いと経営判断ができず、最終的に自社の損失につながるリスクも。
この記事では、工務店における原価管理の概要や重要性、精度の高い原価管理をおこなうコツと工務店が抱える課題と解決策を紹介します。
目次
原価管理とは
原価管理とはどんなものか、まずは概要を解説します。
建設業における原価管理は他業種と比べて非常に複雑であるため、枠組みを理解しておきましょう。
工務店における原価とは
工務店における原価とは、工事にかかる費用の合計です。現場で使用する資材費や人件費、福利厚生などすべてを合計したものを工務店における原価と呼びます。
完工まで長期に渡り、請負金額の大きい建設業では、原価管理は煩雑で計算の難しいことが特徴です。
原価管理と原価計算の違い
建設業界では、原価の合計を出して粗利額を出すことは当然のことであり、すでに原価管理していると考えている企業の方もいるかもしれません。
しかし、原価の合計を出す作業は「原価計算」にすぎず、原価管理とは言えませ。
原価管理とは、見積りを作成した際の目標利益を達成することです。
毎日原価管理をおこない、最終利益額とのズレを修正することこそ原価管理と呼びます。
また、最終的に見積り額との相違が大きい場合は、原因を分析して改善策を考えなければなりません。
工務店における原価管理は健全な経営のために重要
原価管理は、工務店や建設業の企業が健全な経営をおこなうために必須の工程です。見積りが甘く、いつも想定以上の原価がかかっていると、利益率は下がります。
予算を達成できない場合は修正作業が発生し、下方修正が多ければ企業の信頼性を落としかねません。
適切な原価管理をおこない、PDCAサイクルを回すことでコスト削減などに取り組めます。
工務店の原価管理におけるPDCAでは、正確な原価データの収集と計算が重要です。
また、粗利額や粗利率を正確に把握できれば、それだけ的確な経営判断を下せるようになるでしょう。
利益を上げる原価管理のポイントは、以下の記事を参考にしてください。
工務店で精度の高い原価管理をおこなうコツ
経営判断のためにも、原価管理の精度は大切です。しかし、工事現場の原価は項目が多く、計算が煩雑なためミスも起こりやすいことが難点。
どうすれば精度の高い原価管理ができるかを解説します。
効率と精度を両立した原価管理のコツを覚えておきましょう。
最終利益の予測
まず精度を高めるために、過去データを参考にして最終利益の予測を立てましょう。
予算に応じて現場ごとに達成すべき利益額があるはずです。
過去の現場データなどを参考に、自社で達成すべき目標を設定しましょう。
着工前に原価目標額や標準原価を設定
冒頭で決めた利益目に応じて、原価目標がいくらになるか計算しましょう。
目標利益を残すための原価の範囲を決めておけば、万が一、原価が目標を超えそうな場合の修正が容易です。
また、工事の種類ごとに標準原価を設定しておくことも重要です。
標準原価を参考に、現場ごとに計算した原価が高いのか、安いのかを判断しましょう。
利益と原価のバランスを常に意識することで、精度の高い原価管理をできます。
実行予算を元に目標額を作成
原価管理は予算管理にも大きく関連します。担当者が決定した実行予算をもとにして、企業全体の目標利益額・原価額を決定しましょう。
単一の現場で原価管理がうまくいっても、会社全体で利益が出なければ意味がありません。
万が一目標に届かなかった場合は、必ず理由を検討しなぜ原価管理がうまくいかなかったのかを把握しましょう。
単に金額を管理するのではなく、達成状況に応じてPDCAサイクルを回します。
発注時の金額の適正化
工事原価の内訳は、外注する資材費・人件費が多くを占めています。
そのため、発注金額が適正でないと利益を残せません。
過去の原価を参考にすることは重要ですが、状況は常に変わっているため過去の原価額が今も適正とは限りません。
発注額が適正でないと判断した場合は交渉する、発注先を検討するなど対応しましょう。
契約外工事料金の規定決定
請け負った契約外の工事が発生した場合は、きちんと料金を請求するようにしましょう。
クライアントからの好感度だけを考えれば、サービス(値引き)したほうが良いと思うかもしれません。
しかし実際に工事をおこなうと追加で原価がかかるため、料金を請求しなければ自社の損失となります。
契約外の工事が発生した場合はクライアントと交渉し、契約外工事の請求ができる仕組みを社内で作りましょう。
工務店が抱える原価管理業務における5つの課題
工事現場の原価管理は計算項目が多く、また長期間に渡るため管理作業の難易度は高いです。
工務店で陥りがちな原価管理の問題点は以下のようなものがあります。
まずは自社の原価管理業務がうまくいかない原因を探り、適切な対策を取りましょう。
参照する資料が多く作成が困難
原価管理のために、見積り書や契約書だけでなく、過去の資料も参照しなければなりません。
書類管理をバラバラのフォルダでおこなっていると、まず参照先を探すことが大変です。
複数の資料を見ながら原価を立てるため、作業効率が悪くなります。
原価差異分析の業務負荷
原価管理には、実績との差異額の分析が欠かせません。
目標達成しなかった原因を究明する時間もかかります。
データを集め、手作業で分析していると作業が追いつかず、迅速な修正対応ができない可能性もがあるでしょう。
経営判断にも影響してくる分野のため、担当者の負荷が大きく長時間労働になりやすいことも問題です。
原価変動のシミュレーションが困難
発注先の価格変更などにより、原価は常に変動する可能性があります。
原価変動に即座に対応し、シミュレーションをしなければなりませんが、この作業が遅いと経営判断に影響するでしょう。
原価の変更に対応する作業、そしてシミュレーション作業を手作業でおこなっている場合、担当者の負荷も大きいです。
結果的に原価変動シミュレーションの担当者に負荷がかかり、原価管理自体にミスが発生したり、遅れが生じたりします。
会計システムとの連携
会計システムは導入していても、原価管理システムを未導入の工務店も多いです。
その場合、自社のエクセルや手作業で原価管理をおこなうため、会計システムへ手作業でデータ移行・入力をしなければなりません。
分析結果の経営層への共有も遅くなり、原価管理データを活用できない問題も起こり得ます。
原価変動における変更作業の負担の大きさ
原価変動があった際は、迅速にマスターデータの変更が必要です。
常に原価変動をチェックし、マスタ自体を修正する作業は時間がかかります。
担当者の業務が増える、または監督者が兼任している場合は残業が増えるケースがあるでしょう。
建設業界において長時間労働は解決すべき課題の1つであり、原価管理の方法と共に解決しなければならない問題です。
工務店の課題は原価管理システム導入で解決可能
原価管理の効率が悪く、適切な報告を経営陣に上げられないことは大きな問題です。
どうすれば先ほど紹介したような、工務店の原価管理における課題を解決できるかを解説します。
現場原価管理に課題を感じている工務店の方は参考にしてみてください。
原価管理に必要な書類の一括管理
原価管理の参照資料は、一箇所にまとめて保管したうえで検索やソートをかけられるようにしておきましょう。
現場名や取引先名、日時で検索できるようにしておくことで、作業効率を上げられます。
クラウド型の原価管理システムを導入すれば、クラウド上にすべての資料を保管でき、検索や再利用も容易です。
管理作業が楽になり、なおかつ原価の目標作成作業も効率化するでしょう。
原価差異分析の自動化
原価と実績の差異分析は膨大な時間がかかるため、原価管理システムで自動分析するといいでしょう。
データの収集から分析・可視化まで一括してシステムに任せれば、担当者の作業を減らせます。
また経営陣に迅速にデータ共有ができるようになるため、経営判断に遅れが生じません。
原価変動シミュレーション機能
原価管理システムには原価変動シミュレーション機能が搭載されており、原価変動を入力すれば自動で最終目標への影響がわかります。
手作業でシミュレーションするより迅速なうえ、経営陣や事務方など他部署への連携も効率化するでしょう。
他システムとの連携
原価管理システムは会計ソフトとの連携ができるものが多いです。
クラウド型原価管理システムも、API機能を用いて他システムとの連携可能なものがほとんどでしょう。
データ移行の手間がなくなり、業務負荷を軽減します。
また会計システムに原価データが反映されれば、予算の達成率を経営陣が迅速に把握できるため、経営判断にも役立つでしょう。
原価マスタデータの一括変更
原価変動によるマスタ変更を手作業でおこなうと非効率です。
原価管理システムを利用すれば、マスタ変更するだけで同じ発注先を利用している現場のデータすべてが更新され、ひとつひとつ計算し直す必要がありません。
原価変動情報の共有漏れなどもなくなるため、ミスなく精度の高い原価計算ができます。
ここまで紹介したような機能を搭載した工事原価管理システムの選び方やおすすめシステムは、以下の記事で紹介しています。
まとめ
工務店の健全な経営において、原価管理は欠かせません。
しかし、工事原価は計算が複雑かつ常に変動リスクを孕んでおり、作業効率や連携が悪く悩んでいる工務店も多いでしょう。
手作業やエクセルで管理していると、迅速なデータ共有ができず経営判断が遅れるのが難点です。
この課題をすべて解決するために、原価管理システムの導入をおすすめします。
しかし、どのシステムを導入すべきか悩んでいる工務店の方もいるでしょう。
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