工事原価は工事を完成させるために必要な費用の総称です。
原価管理ができていないと、自社コストの把握や改善ができず、経営判断にも影響します。
本記事では、工事原価の概要と種類、工事原価管理の重要性と効率的な管理方法を解説します。
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目次
工事原価とは
工事原価とは、建設物を作る過程で必要な材料費などの費用です。
工事原価の仕訳方法は2種類あり、計上のタイミングによって呼び方が異なります。
完成工事原価
完成工事原価とは、既に完成した工事にかかった工事原価です。
完成工事高に計上する原価を”完成工事原価”と呼びます。
未成工事支出金
未成工事支出金とは、まだ完成していない工事に対しての出費です。
工事は完了までに長期間を要し、その間にも自社から下請けや資材のリース・購入先に支払いが発生します。
未完成の工事に対して売上計上できないため、一時的に未成工事支出金として計上します。
工事原価の種類
工事原価は、工事にかかる費用の総称です。
区分すると工事原価は、以下の5種類にわかれます。
それぞれの工事原価の種類について把握し、正しく工事原価を計算しましょう。
材料費
材料費とは、工事にかかる原材料や資材にかかった費用です。
工事現場では多数の資材を購入、またはリースし、その費用をまとめて材料費として計上します。
ただし、前期末で購入済みの自社在庫を使用して工事をおこなった場合、当期の材料費として計上できません。
労務費
労務費とは、現場作業員への賃金・手当です。
工事にかかる労働力に対して支払う費用で、正社員・アルバイト・パートタイムなど等しく労務費として計上します。
現場に出て作業をした場合は、すべて労務費として計上する点に注意しましょう。
例えば、会社の社長が現場に出て作業をした場合は、その作業時間分の給料は労務費です。
役員報酬と分けて計上する必要がある点に注意しましょう。
また、自社の人員不足で他社に応援を依頼した場合は、労務外注費に計上します。
労務費の概要や仕訳について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
外注費
外注費とは、自社以外の他社に工事を外注した際に支払う費用です。
自社で施主から工事を受注し、工事は他社に依頼した場合は外注費に計上します。
他社に工事を依頼した場合は外注費、自社の作業員が工事した場合は労務費にしましょう。
機械費
機械費は、工事現場で必要な工具・道具・用具にかかる費用です。
例として、工事現場に設置する仮設トイレ、休憩所など仮設建物に使用する機械も、機械費として計上します。
ただし、作業員が現場に行く際に使用した車両のガソリン代などは機械費に含まれない点に注意しましょう。
経費
経費とは、ここまで解説した工事原価の4区分に含まれない費用です。
例えば、工事に関する事務作業をしている事務員の賃金、光熱費などは経費となります。
直接現場に関わっていない費用は、経費と分類しましょう。
工事原価を正しく計算すれば経営判断に役立つ
正しく工事原価を把握できれば、自社の経営状況を正しく判断できます。
原価率を把握すれば、予算計画にも役立ちます。
正しい粗利益率の計算
工事原価が正しく把握できれば、正しい粗利率の計算ができます。
粗利率とは、売上高に対しての売上総利益率です。
粗利益が正しく計算できなければ、当期予算の達成率の計算にも影響が出て、軌道修正が難しくなります。
原価を正しく計算し、粗利益率を把握しなければなりません。
コスト管理の徹底
粗利益は、完成工事高から工事原価を差し引いた額です。
原価が高くなれば、当然利益が減ってしまいます。
国土交通省の「建設関連業の経営分析(令和2年度)」によると、建設関連業の粗利益率は25.41%です。
建設業の利益率は他業種と比べて高いとはいえず、原価を抑えて利益を確保しなければなりません。
コストの管理を日々徹底すれば、原価を抑えて利益が残るように調整しながら工事を進められるでしょう。
建設業の利益率については、以下の記事で解説しています。
覚えておきべき工事原価の計上基準
建設業者が覚えておくべき工事原価の計上基準を紹介します。
工事は長期にわたるケースもあり、完成高に応じて売上を計上することがあります。
その場合は、工事原価も完成高に応じた計算が必要になるため、計上基準を覚えておきましょう。
工事完成基準
工事完成基準とは、工事完了後に売上を計上する方式です。
建設業では一般的な会計計上基準となります。
工事完成前に発生した原価は、未成工事支出金として計上します。
工事進行基準
工事進行基準とは、工期中に分散で売上を計上する方式です。
工事完成基準とは異なり、計上時点で工事が完成した部分に対して、売上・原価を計上します。
長期にわたる工事では、計上が当期中におこなえません。
しかし、工事進行基準を用いれば、会計処理を分散して売上計上できるため、利益が減ることを防げます。
ただし、工事高を正しく把握して計算する必要があるため、処理は煩雑になるでしょう。
建設業では工事完成基準が使われるケースが多いです。
しかし、この場合は工事原価の管理が甘いと、完成工事高に対しての利益率が予想よりも低くなる恐れがあります。
そのため、日々徹底した原価管理をし、利益率が下がらないよう調整が必要です。
工事原価管理を効率的にする方法
工事原価の管理は、経営に直結する非常に重要な領域です。
建設業の会計処理は特殊であり、複雑な処理が業務負荷の原因となっています。
工事原価管理をより効率化したいなら、以下の3つの方法を取り入れてください。
工事原価管理方法を改善し、精度が高く効率的な処理を目指しましょう。
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工事原価管理システム
工事原価管理システムとは、クラウドなどのデータベース上で原価計算・利益率の予測などがおこなえるシステムです。
会計ソフトと連携できるものを選べば、工事原価をそのまま会計処理に流用できます。
工事原価管理ソフトを導入すれば、複雑な計算処理が自動化します。
手計算ではミスが起こり得ますが、自動計算ならミスも少なくなるでしょう。
よく使う資材などは、原価マスター登録しておけば、項目選択だけで原価入力ができます。
また、損益計算機能が搭載されているソフトなら、経営陣の経営判断にも役立つでしょう。
会計ソフトとの連携も可能なシステムを選べば、会計処理も効率化します。
また、過去の原価データを用いて、来期のシミュレーションがおこなえるなど、今後の予算管理にも役立つでしょう。
工事原価管理ソフトはメリットも多いですが、導入コストがかかります。また、操作に慣れるまでは研修が必要であったり、マニュアルの用意が必要です。
費用面が気になる方は、「IT導入補助金」の申請も検討してみてください。
工事原価管理ソフトの機能やおすすめのソフトは、以下の記事を参考にしてください。
エクセル
エクセルで工事原価管理をおこなえます。
既にエクセルを導入している工務店なら、すぐにでも工事原価管理フローの改善ができるでしょう。
工事原価をエクセルでおこなえば、コストなく原価管理フローを変えられます。
表計算ソフトのため、数式やマクロを用いて計算は自動化できるでしょう。
また、操作に慣れているため、事務員や工事原価管理担当者に負荷がかかりづらいです。
ただし、エクセルの数式やマクロを扱うには、知識が必要です。
そのため、工事原価管理表を作成・改訂できる人員が限られてしまいます。
また、項目の入力など最低限手入力が必要な項目では、ミスが起こり得るでしょう。
エクセルは社内ネットワークで快適に閲覧できますが、外部での閲覧には向いていません。
原価情報を素早く共有することができないため、情報共有にタイムラグが生じる可能性があります。
エクセルで原価管理する方法と問題点は、以下の記事も参考にしてください。
スプレッドシート
スプレッドシートは、エクセルとよく似たソフトウェアで、ブラウザ上で利用できます。
オンラインで作業することが多い工務店は、スプレッドシートで原価管理を始めると良いでしょう。
スプレッドシートは、エクセルと似た機能が使えるため、原価計算の自動化が可能です。
なおかつブラウザがあれば、オンラインで工事原価管理表を共有できます。
リモートワークを取り入れている工務店で、社外で作業したい場合に便利です。
ただし、ブラウザがなければ表の操作や閲覧が難しいでしょう。
アプリでも閲覧は可能ですが、スマートフォンでは工事原価管理表がうまく表示されないことがあります。
また、スプレッドシートはオンラインで共有する仕様です。
そのため、セキュリティ面で不安があり、誤って社内の情報を社外に共有して漏洩してしまうリスクがあるでしょう。
まとめ
工事原価は経営判断に必要な情報で、日々徹底した管理が求められます。
しかし、工事現場で必要な資材や経費は膨大で、なおかつ会計処理が複雑なため負荷を感じがちな作業です。
正しく効率的な原価管理のためには、工事原価管理システムの導入をおすすめします。
しかし自社に合う工事原価管理システムを選ぶ自信がない方もいるでしょう。
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エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。
粗利益率=粗利額(完成工事高ー工事原価)÷ 完成工事高×100