建設業の従事者はリーマンショックをピークとして下降し、人材の確保や育成が困難な状況です。
なぜ建設業には人が入ってこないのか?
その点を把握しなければ、人材育成や雇用確保の問題が解決できません。
この記事では建設業の人材育成推進の背景や人材育成の課題、建設DXの導入で課題を解決できる事例を紹介します。
目次
建設業の人材育成推進の背景
建設業の人材育成推進の背景には、以下のような事情があります。
厚生労働省によると、建設業従事者の人数減少・高齢化を背景として、政府は人材育成を積極的に推進しています。
人口の推移や、どのような取り組みがおこなわれているのかを具体的に解説します。
建設業従事者の高齢化と労働人口の減少
厚生労働省のデータによると、建設業の技能者の3分の1が55歳以上と高齢化が進んでいます。
高齢化の影響で、現在の従事者たちがさらに高齢になったとき、一斉に離職する危険性も。
建設業は、1998年には685万人の労働者がいましたが、2021年には492万人、今後2025年までにはさらに減少する見込みです。
元々建設業界は、人手不足の傾向がありましたが、リーマンショックをピークとして人数が減少傾向にあることが人材育成推進の背景にあります。
若者・女性の入職・定着を政府主導で実施
現在政府が主導する形で、若者・女性の入職・定着への取り組みがおこなわれています。
厚生労働省が発表した、令和2年度予算案の概要では、建設業の人材確保と育成に予算を割り振り、人手不足解消への動きを加速させています。
政府の取り組みの主導の柱は以下の3つです。
- 人材確保
- 人材育成
- 魅力ある職場づくり
【参照】建設業の人材確保・育成に向けて国土交通省・厚生労働省
建設業には、汚い・きついというイメージが強く、若者が入ってきづらい点が現状です。
そこをDXの導入で改善したうえで、労働環境を改善し、さらに入ってきた人材への育成環境を整え、ベテランの技術を継承する取り組みがおこなわれています。
また、今まで建設業は「男性の職場」というイメージがありましたが、女性も働きやすいように業界の風土や文化を変え、男女問わず働ける職場づくりを目指すものです。
建設業における人材育成の課題
建設業における人材育成の課題は以下のようなものです。
建設業へのイメージや、業界自体の文化や風土が人手不足を助長していると考えられます。
しかし、課題が明確であることは具体的に何をすればいいかも、はっきりわかるということです。
課題を知り、自社の人材育成面での問題改善の参考にしてください。
労働環境へのイメージが低い
建設業は「労働環境が悪い」というイメージが強く、就職希望者自体が減っています。
若者からすれば、汚い・きつい、さらに高所作業もあって危険な割には賃金が低い。若者から特別に人気のある就職先ではないといえます。
また、先ほど紹介した厚労省が掲げている人材育成の柱に”女性の雇用”があります。力仕事で「女性はそもそも働けないだろう」と思われていることが原因です。
熟練作業者の技術を学べる機会が少ない
従来の建設業界では、人材育成の制度が整っておらず、言葉通り「背中を見て覚える」が一般的でした。
簡単な研修などはあるものの、ベテラン大工や技術者の判断・ノウハウを学べる機会が少なかったといえます。
特に現場での判断や作業のテクニックは、経験則に基づいたものが多く、マニュアル化して共有するのが難しいためです。
現場で新人にベテランの技術を見せるという機会も、工期を考えるとなかなか取れません。
そのため作業の速さに差が出やすい、若者が技術を覚える機会もなく、その前に辞めてしまうのが問題点です。
福利厚生が不十分である
建設業は、福利厚生が未整備の会社も多く、若者から見て就職先としての魅力をあまり感じられないのも課題といえます。
休日も日曜日のみ、夕方早く帰れるが朝早すぎる、さらにはボーナスもない建設業の企業も多いです。
福利厚生面は企業の魅力にもつながるため、就職希望者を増やすなら、この点を改善しなければなりません。
DX導入で建設業の人材育成の課題解決が可能
ここまでの建設業の人材育成の課題を解決するためには、建設DXの導入が有効です。
具体的には、以下のような効果が見られます。
日本政府も建設DXを推進しているため、国をあげてDX化を推進し、作業を効率化するとともに労働環境の改善に取り組んでいます。
建設DXの導入で省人化・労働環境の改善
建設DXの導入で、省人化と労働環境の改善が可能です。
今まで人がいないと不可能と思われていた作業を電子化し、自動でおこなえます。
例えば作業ロボットの導入で高所作業の減少、夜間の現場監視をモニターで一括しておこなうことで、深夜労働が不要に。
面倒な受発注作業もシステムを導入することで、電子化されて、作業時間を圧倒的に短縮できます。
力仕事もロボットがおこなうため、女性でもできる軽作業、またはモニタリングなどシステムを使用した職に従事してもらうことも可能です。
建設業の事務作業、建設作業のデジタル化で、人員効率を良くして労働時間問題の解決を期待できます。
職人の技術をデジタルで可視化・習得
建設業の、技術承継の難しさも建設DXによって解決できます。
例えばウェアラブルカメラで職人の動きを記録、後から見返すことが可能に。
新人は動画を見て、どのような判断・作業をしているかを、職人目線で確認できます。
また、BIM/CIM(ビム・シム)というデジタルモデルを使用して作業シミュレーションをおこない、「この現場では、この作業が最も効率的である」など、熟練職人の判断をモデル自体に記録ができる仕組み。
現場では、ベテラン技術者に「今どういう判断をしたんですか?」などと聞きづらいものですが、後からモデルを見て履修できるため、学べる環境を整えるのに有効です。
ベテラン技術者の技術を覚えることで、作業技術の平均化ができ、なおかつ履修環境を整えることで、新人の育成を推進できます。
建設DXを導入して、省人化に成功すると、残業代などの人件費をカットできます。
省人化で削減したコストで福利厚生の実現
そしてカットした人件費を福利厚生面に回すことで、より魅力的な職場を作れます。
例えば、省人化により浮いたコストで、ジムやスパなどの福利厚生施設を利用できる点もアピールとなります。
また、省人化によって作業効率が良くなり、休日が週2日確保できます。
コスト削減と売上が相乗的に上がれば、賞与制度も取り入れられるはずです。
このように、DXの導入で人材育成や確保で抱えていた問題を、解決することができます。
まとめ
この記事では、建設業における人材育成推進の背景や課題点、建設DXの導入での解決事例について解説しました。
建設DX推進によって、人的コストの削減だけでなく、新たな人材確保や魅力的な職場づくりにもつながります。
政府主導で建設業の人材育成・確保は推進されており、各社も雇用の拡大や育成環境の充実、福利厚生の整備に取り組んでいます。
今後も経営を継続していく中で、人は欠かせない要素。建設DXを活用して人材育成の推進をおこない、自社を”ぜひ働きたい”職場にしましょう。
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