近年さまざまな業界で深刻化する人手不足。限られた人員で業務を円滑におこなうため、帳票電子化ツールの導入が進められています。
帳票の電子化は、管理の手間やミスの低減といった業務効率化のみならず、コスト削減にもつながります。
今回は建設業界で帳票電子化をおこなうメリット・デメリットや便利な機能を紹介します。
目次
紙帳票の課題
デジタル化が広まりつつある近年では、帳票をパソコンで作成することが一般的となっています。
しかし従来の慣習により、現在も帳票の一部を手書きで作成している企業も存在します。
ただ、紙帳票にはいくつかの課題があることを理解しておかねばなりません。
- 作成の負担
- 送付の負担
- 管理の負担
作成の負担
帳票を手書きで作成するとあらゆる場面で従業員に負担が生じかねません。
苦労して作成したとしても、誤字脱字があったり、作成する人によって精度低かったりと違いが出てきます。
多くの企業と取引する場合は、全体の管理を求められ、ミスも起こりやすくなります。
送付の負担
紙帳票の送付は、FAXあるいは郵送でおこなわなければなりません。
電子化を進めていても、クライアントの希望に合わせてメール・郵送・FAXのなかで送付方法が混ざっていると余分に手間がかかります。
管理の負担
物理的にも場所を取るため、社内スペースに保管場所を確保することが難しいです。中にはわざわざコストをかけて倉庫を借りている企業もあるほどです。
帳票をファイルにまとめることにも時間を要し、ファイルから特定の帳票を見つけるのも一苦労です。またファイルを探すことができれば、誰もが内容を見れるため、セキュリティ面でも不安があります。
帳票電子化のメリット
帳票の電子化により、以下のメリットがあります。
- 事務作業時間の短縮
- レイアウトやフォーマットの変更が容易
- ペーパーレス化でコスト削減
- いつでもどこでも帳票を確認可能
事務作業時間の短縮
電子帳票は、ファイルなど物理的なスペースを取らず、膨大な帳票をデータとして集約・保管することが可能です。
また、データ化された帳票は検索にかけることができ、発注者や物件名、日付などのさまざまな要素から帳票を抽出できるほか、自動で仕分けられます。
ワンクリックでCSVなどの形式に変換できる機能もあり、帳票データの有効活用が可能です。短時間で必要な情報にアクセスでき、より業務に集中することも可能となります。
レイアウトやフォーマットの変更が容易
電子化と同時に帳票ツールを導入すれば、専門知識が無くても思い通りのレイアウト作成が可能となります。
帳票ツールとは、プログラミングせずに画面上で帳票の開発や設計ができるサービス・ソフトウェアを指します。
帳票ツールの活用により、ワードやエクセルを使い手作業で入力する手間もなくなり、人的ミスを減らしたりデータ入力業務における人員削減を実現します。
入力する人たちが使いやすいフォーマットをあらかじめ設定しておくことで、入力のみで効率的に作成可能です。
また、基幹システムと切り離した状態で使えるため、帳票の開発やチェックをおこなわなければならない際にも、基幹システムの運用に支障をきたしません。
レイアウトやフォーマット変更をする際にも実際に利用する現場の社員が操作することで変更でき、コストも抑えられるため、リアルタイムで帳票を作成できます。
定期的なバージョンアップだけでなく、消費税率の変更などの法改正や内部監査にも臨機応変に対応し常に最新の帳票を利用可能です。
ペーパーレス化でコスト削減
ペーパーレス化により、印刷から送付までの一連の配送作業をカットできるほか、印刷代や封筒代、郵送料などのコストがすべて不要となります。
限られた人員でも大量の帳票をさばくことができ、人件費削減にも貢献します。
また、郵送の場合はクライアントに届くまでに日数がかかりますが、電子帳票であれば、メールへの添付やサーバーからのダウンロードが可能なため、すぐに送り届けることが可能です。
だれがどのようなデータを送り、どうなったかという送受信の履歴を提供しているサービスもあり、リアルタイムで配信状況を確認することも可能です。
いつでもどこでも帳票を確認可能
帳票フォーマットを一度準備すれば、フォーマットに入力をおこなうだけで自動で帳票を作成できます。
クラウド上にフォーマットを保存しておくことで、いつでもどこでもデータにアクセス可能です。
また、見積書を請求書や納品書に読み込むということもでき、汎用性も高くなります。
帳票電子化のデメリット
一方のデメリットについて以下で解説します。
- 導入コストの発生
- 紙と電子が混在する可能性
導入コストの発生
電子化のために帳票ツールを導入するには、いくつかの費用が発生します。
例えばタブレットやパソコンも欠かせません。
電子化にどのくらいの予算をかけられるか、自社内で慎重に検討する必要があります。
紙と電子が混在する可能性
電子化に踏み切れていないクライアントや電子化に否定的なクライアントは、紙でのやり取りを希望する場合もあります。
また、税務関連の一部の帳簿には手書きの書類をスキャンした電子書類は認められず、注意しなければなりません。
昨今では電子化を採用しやすい環境となっていますが、完全なペーパーレス化は難しくもあります。
紙と電子がごちゃ混ぜとなり、かえって管理の負担が増大しないよう、可能な限り不必要な紙媒体での対応を減らす工夫が必要でしょう。
建設業に活かせる電子帳票の便利な機能
特に帳票電子化が求められている建設業に活かせる機能を解説します。
- タブレットで手書き風帳票
- QRコードでファイル管理
- 業務支援システムとの連携で入力効率化
タブレットで手書き風帳票
建設現場の施工管理者が、紙の書類を多く持って巡回する負担は大きいです。
多くの建設現場でBIMなどの現場管理ツールが導入されている現在では、タブレットを現場に持っていき施工管理を行う現場監督も多いはずです。
そんな施工管理者に便利なのが、タブレットでの記入が可能な帳票管理システムです。
転記作業などの時間を削減し、業務の効率化を図ることが可能なほか、入力ミス、入力漏れなどのヒューマンエラーを減らすことが可能です。
また、ペンを使って記入することで手書きのような書き味も実現できます。
QRコードでファイル管理
QRコードを電子化したい文書に重ねてスキャンするだけで、簡単にシステムへ取り込むことができる帳票管理システムもあります。
QRコードでは、フォルダパス・ファイル名・検索タグの設定が可能です。
業務支援システムとの連携で入力効率化
業務システムやパッケージと連携することで、入力業務の効率化を図ることも可能となります。
業務システムにより全社的に入力データを管理できるようになり、属人化していた業務を分配することができます。
まとめ
今回は建設業界における帳票電子化のメリット・デメリットや便利な機能について紹介しました。
帳票電子化の実現には時間・費用が生じるため、自社に合った範囲で電子化を進めるといいでしょう。