工事で利益を残すためには、適切な原価管理が欠かせません。
しかし建設業の原価管理は、取り扱う品目や取引業者が多く複雑なため、効率的にできていないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
原価管理で上記のような悩みを抱えている方は、エクセルで原価管理をおこなうのがおすすめです
この記事では、建設業の原価管理の概要と目的、エクセルで原価管理をおこなう方法とエクセルでの原価管理のメリットとデメリットを紹介します。
費用をかけず原価管理を効率化したい方は、ぜひ最後まで読んでください。
目次
結論:エクセルでの建設業の原価管理をするには限界がある
エクセルで建設業の原価管理はできますが、機能面で限界があり、効率化を考える場合は専用の原価管理ツールを導入した方が良いでしょう。
2024年4月より労働時間の上限規制が適用され、建設業ではDXを導入した省人化など効率を求める動きが進んでいます。
エクセルは便利なツールではありますが、原価管理をエクセルで継続することは難しいでしょう。
手入力の部分を完全に削除したり、集計を自動的に実施したり、リアルタイムで共有はできないためです。
ライバル企業が基幹システムを取り入れていくにつれて、原価管理をエクセルで継続すると他者と効率面で差がついてしまいます。
情報を一元管理し、ミスなく原価管理を徹底していくうえでエクセル管理は廃止し、原価管理システムへの切り替えを始めるべきでしょう。
建設業の原価管理の概要と目的
原価管理は、別名コストマネジメントと呼ばれる通り、経費や支出を管理することが役割です。
ここでは、原価管理の概要と目的を解説します。
完工までの原価を算出しコスト改善をおこなう工程の1つ
建設業における原価管理とは、完工までの原価にかかるを算出し、コスト改善をおこなう工程の1つです。
工事を完成させるまでに、外注費や材料費など莫大な支出があります。
当然ですが、利益を出すには契約金額より原価が低くなければなりません。
原価管理を適切におこない、コストを低く抑えることとが利益率の高い工事につながります。
企業として利益を残し、かつ利益率を高めるためにも、原価管理は厳密におこなうべきです。
工事利益の算出と管理に必須
原価管理は、工事利益の算出・管理に必須の工程です。
工事を受注した際に算出した見積り金額と契約額に乖離が生じると、利益が減ってしまいます。
日々コスト管理をおこない、支出が多すぎるようなら改善案を考え対策を取り、最終的な原価が契約金額を超えないような調整は必須です。
企業の健全な運営が目的
原価管理をおこなうことは、企業の健全な運営にも役立ちます。
工事原価が高すぎれば利益が減り、従業員への還元や福利厚生の充実もできず、企業運営自体が難しくなるでしょう。
原価管理を怠って収支が合わなくなれば、企業の継続問題となります。
自社の利益を確保し、コストカットのPDCAを回すためにも建設業の原価管理業務は正しく効率よくおこなう必要があるでしょう。
原価管理の概要については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
建設業の原価管理をエクセルでおこなう方法
建設業の原価管理はエクセルでおこなえます。
ここでは、エクセルで原価管理をおこなう、具体的な方法を下記2つ解説します。
無料テンプレートの使用
建設業の原価管理は膨大なデータの原価を計算する必要があり、手作業でおこなうとミスのリスクが高いといえます。
人的ミスを減らすためには、エクセルの数式やマクロを使用するのが適切です。
しかし、数式やマクロを活用するためにはエクセルに精通している人材がいないと難しく高度な表を作れない企業もあるでしょう。
エクセルを得意とする社員がいない場合は、無料テンプレートの使用がおすすめです。
以下のようなサイトで、無料で原価管理表のテンプレートをダウンロードできます。
- AnyONE
- 悪魔のエクセルテンプレート
- みんエク!
建設業に特化した原価管理テンプレートを使用すれば、表の体裁などを整えるだけですぐに原価管理を始められます。
自作の原価管理表の使用
自社のフローに合わせて、自作の原価管理表を作成できます。
今回は比較的簡単に作れる原価管理表の作り方を紹介します。
自作したい方は、参考にしてください。
原価管理の必要項目の入力
まずはエクセルの新規作成で、新しいファイルを作成します。
自社のフローに合わせてファイル名をつけて保存しておきましょう。
そのうえで、以下の項目を入力します。
- 日付
- 工事名
- 仕入れ先
- 金額
ほかに自社で必要な情報があれば、項目を作成して入力してください。
先に項目を作り、現場で費用が発生するごとに金額を入れていきます。
すでに原価が決まっている場合は、マスターシートを別に作成しておきましょう。
合計原価の計算式・マクロを入力
項目を入力したら、合計原価の計算式やマクロを入力しましょう。
最も簡単なのがSUMという数式で、指定した範囲の数値の合計を出すことができます。
エクセルの上部にあるシグマのマークを押し、数式を選択しましょう。
「SUM」を選び、範囲を指定すれば合計額が数式を挿入したセルに反映されます。
直接打ち込む場合は、以下のように半角英数字で入力してください。
=sum(E2:E4)
セルの範囲は任意で設定しましょう。
マスターデータを用いる場合は、Vlookupという数式が便利です。
Vlookupは、別のシートにある指定したデータを呼び出せます。
例として、上記原価管理表で「合同会社××」からの仕入れ価格が一定だと仮定してマスターデータを作成します。
合同会社××を入力したら、自動で金額が表示されるようにvlookup関数を設定しましょう。
今回は会社名に対応した金額を自動で入力する必要があるため、原価管理表シートの「金額」の空白セルに、数式を入れます。
=vlookup(D2,’マスターデータ’!A:B,2)
この数式の”D2”は、取得したいデータの名称です。そのためD2セルを指定します。
次の”,’マスターデータ’!A:B”の部分は、参照するシートと範囲です。
マスターデータのシート上で、A~B列の範囲でD2セルに入力されている会社名と一致するデータを参照する指示となります。
そして最後の”2”は、A列から2行目のデータを参照しなさいという指示です。
金額のデータがC列(Aから3行目)にある場合は、指定範囲が”A:B,3”に変わります。
上記2つの数式を覚えるだけで、簡単に原価管理表を作成できるでしょう。
最初は計算するだけのSUMを、なれてきたらVlookupなどを用いるとさらに効率化できます。
エクセルで建設業の原価管理を実施するコツは運用ルール
エクセルで建設業の原価管理を実施するためには、運用ルールを明確化しましょう。
操作に慣れていない従業員がいろいろな場所へ原価管理表ファイルを作成してしまったり、ルールを破って表を壊してしまう可能性があるためです。
具体的には、以下のようなルールを定めてください。
- ファイルの名称ルール(日付_現場名 など)
- ファイルの保存場所
- 更新タイミングや方法
原価管理が人によってクオリティにばらつきが出ると、担当によって正しい数値を導き出せません。
エクセルに不慣れな社員もいるため、ファイルの名付けや保存場所はもちろん更新タイミングや更新時にどのデータを用いて、どの行・列を更新するかなどを明記したマニュアルを作成しましょう。
エクセルでの原価管理は導入ハードルが低い
エクセルでの原価管理は導入ハードルが低いのがメリットです。
ここでは、エクセルでの原価管理が便利な理由とメリットについて解説します。
システムコストのカット
エクセルで原価管理をすれば、システム導入費用・利用料がカットできます。
原価管理システムの方が、原価管理業務を効率良くおこなえますが、導入費用の高さや費用がネックです。
なるべくコストを抑えて原価管理をしたい企業にとっては、まずはエクセルで原価管理をおこなうのが良いでしょう。
現場の混乱防止
現場でエクセルが日常的に使用されている場合は、現場に混乱もきたしません。
新規システムの導入初期は操作に慣れるまで研修が必要であったり、オペレーションミスも起こりやすいです。
エクセルなど使い慣れたツールなら、混乱なく原価管理を業務ルーティンに取り入れやすいでしょう。
計算に適した数式やマクロ
エクセルは計算に優れたツールです。
自動計算できる数式や、ボタンを押せば計算・データの引用をおこなえるマクロも利用できます。
エクセルの知識がある人材がいれば、効率的に作業をおこなえる表を作れるでしょう。
エクセルでの原価管理の問題点は属人化
エクセルでの原価管理の問題点は属人化です。
効率的な業務を目指すにあたり、属人化は避けなければならない問題です。
そのほかエクセルで原価管理をおこなう場合の問題点について解説します。
数式やマクロを扱える人材の少なさ
エクセル自体は使えても、数式やマクロが扱える人材は少ないです。
特にVBAを使用してマクロを組む難易度は高く、習得にも時間がかかります。
VBAとは、Microsoft Officeに付属しているアプリケーションソフトの拡張機能です。
VBAを活用することで、エクセルで自動計算を行なうなど便利な機能を追加できます。
しかしVBAを使いこなすには、プログラミングの知識が必須となるため、パソコンに慣れていない方にとってハードルが高いです。
仮に数式やマクロが組める人材がいても、ほかの人の知識が追いつかなければ修正作業・ミスでに対応できません。
エクセルを扱う人が限られ、効率化を妨げるリスクがあります。
人為的ミスの発生
エクセルは複数人で共有作業できますが、ミスも起こりやすいです。
手作業での入力によるミス、入力漏れ、または数式やファイル自体を消してしまうリスクもあります。
原価管理には正しいデータが必須であるため、ミスが起こりやすいことはデメリットといえるでしょう。
リアルタイム共有の困難さ
エクセルはリアルタイムでの共有は難しいです。
社内ネットワーク上では共有作業ができますが、オンラインで外部から入力、確認はできません。
エクセルとよく似たスプレッドシートはオンライン作業・閲覧が可能ですが、スマホ端末では操作性がかなり悪いです。
リアルタイムで原価管理をしたい場合は、アプリで使用できる原価管理システムの方が向いています。
複雑な原価のマスターデータ作成の手間
原価管理表をエクセルで作成する場合、マスターデータの作成が必要です。
引用が簡単なように形式を整えたり、すべてのマスターデータの統一作業はかなり時間がかかるでしょう。
また取引先との仕入れ額の変更は即時に更新する必要があり、データ更新が遅れると正しい原価管理ができません。
以上のように、原価管理をエクセルでおこなうにはデメリットもあります。
効率的かつミスなく原価管理をしたい場合は、原価管理システムの導入がおすすめです。
デメリットを踏まえて原価管理システムを導入したい場合は、以下の記事を参考にしてください。
自動集計やグラフ化ハードルの高さ
エクセルは原価管理の専門ソフトではないため、自動集計やグラフ化などができません。
専用ソフトのように原価管理を自動で集計してグラフにし、経営層へ共有するなどの機能を作るにはかなり高度なエクセルの知識が必要なうえ、その機能には限界があります。
導入コストの低さなどはメリットとして挙げられますが、使い勝手や自動集計や共有については限界があることは否定できません。
建設業における原価管理を効率化する方法
建設業に従事している施工管理や現場監督の方で、エクセル管理に限界を感じている方も多いでしょう。
原価管理を効率化したいなら、以下2つの方法がおすすめです。
原価管理システムの導入
原価管理システムを使えば、工事原価をあらかじめ登録した資材のマスター情報などを引用し、簡単に管理できます。
集計やグラフ化機能も搭載されているツールを選んだ場合は、日次報告をいちいち手動でデータ作成する必要もありません。
原価管理システムの概要やおすすめツールについては、以下の記事をご覧ください。
基幹システムの導入
建設業向けの期間システムを導入すれば、より容易に原価管理できます。
基幹システムはあらゆる業務の統合システムのため、見積り情報から原価管理表を作成したり、過去の工事台帳から原価データを引用することも可能です。
また、原価管理した情報を経理や財務部門へ自動で共有します。
あらゆるデータを基幹システムで一元管理できるため、部署間連携もスムーズとなり、作業の手間を減らせるでしょう。
建設業向けの原価管理もできる基幹システムの概要や導入メリット、注意点をまとめた記事も参考にしてください。
まとめ
原価管理は健全な企業運営と工事の完成までのコストマネジメントにおいて、非常に重要です。
エクセルの無料テンプレートを使用して、簡単に原価管理を始められるため、まだ始めていない企業は取り組んでください。
原価管理をエクセルでおこなうことで、システム導入費用のカットや現場の混乱を避けられます。
しかしオンライン共有やミスの発生、属人化の問題も考える場合は原価管理できるシステムがおすすめです。
しかし「どのシステムを導入すべきか迷ってしまう」と考える工務店の方もいるでしょう。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。