建設業においては、工事の受発注の際に工事注文書を使用します。
しかし「工事注文書がどういったものなのか」「どのように書くのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。
この記事では、工事注文書を扱ったことがほとんどない初心者に向けて、工事注文書の書き方や作成時の注意点などについて解説します。
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目次
工事注文書とは
注文書とは、その名の通り注文する際に使用する書類であり、取引をおこなう際に使用する契約書の1つです。
具体的には注文する商品名や数、金額、仕様、納期、支払方法などが記載されています。
工事注文書の役割
注文書の役割は、注文者が取引先に対して注文する意思を示すことです。
言い換えれば、注文書に記載されている内容は、注文の確定版であることを示す役割があります。
この注文書の内容をもとに、取引先は作業を進めていくこととなります。
そういった意味で、非常に重要なものであり、間違いがあると大きな損害を被ることになる恐れもあります。
工事注文書と注文請書との違い
注文書と混同してしまいやすいものに「注文請書」があります。
注文書が、注文者が注文の意思を示すのに対して、注文請書は注文を受けた取引先の業者が「この内容で注文を引き受けます」と注文を引き受ける旨を示すための書類です。
そのため、注文書と注文請書は異なる書類です。
基本的に、注文書と注文請書はセットとなっており、2つの書類が取り交わされることにより契約が成立することを覚えておきましょう。
工事注文書と工事請負契約書の違い
工事注文書はあくまで発注者側の意思表示のための書類です。
工事請負契約書はその名のとおり、双方が契約内容に合意したことの証明となる書類です。
つまり、工事注文書はあくまで発注者から受注者への意思表示、契約書は相互に発注と受諾に合意していることを示します。
なお、工事注文書に署名捺印やその他文言で「双方が合意していること」がわかる記載がない限りは、単体で法的効力を持ちません。
書類としての性質が違うため、混同しないように気をつけましょう。
工事請負契約書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
工事注文書の保管期間
注文書を受け取った場合、企業は自社の都合で注文書を廃棄することができません。
注文書は、法人税法では帳簿書類として扱われ、保管期間が定められています。
企業は確定申告の提出期限以降7年間は、注文書を保管しなければなりません。
なお、注文書が電子によるものだとしても、印刷して紙で保管する必要があります。
これは、税務調査が発生した際に対応できるようにするためです。
また、税務調査に備えて注文書は時系列でわかりやすく保管しておくようにしましょう。
なお、企業を所轄する税務署長の許可があれば電子の注文書でも保管可能です。
工事注文書が工事請負契約書の代わりとなる事例
工事を請け負う際は工事請負契約書の作成が義務付けられていますが、工事注文書に発行義務はありません。
あくまで工事注文書は「注文の意思表示」であり、合意には至っていない書類と考えられるためです。
先ほどは工事注文書は概ね法的効力を持たないと解説しましたが、例外があります。
しかし、国税庁の見解によると工事注文書の中でも第2号文書、つまり契約書に該当するものがあります。
第二号文書に該当する工事注文書 | ・基本契約書に基づく申し込みであることが明記されている ・見積書に基づく申し込みであると記載されている ・双方の署名と押印がある場合 |
第二号文書に該当しない工事注文書 | ・基本契約書に基づく申し込みであることが明記されているが、別途注文請書を発行すると記載されている ・見積書に基づく申し込みであると記載されているが、別途注文請書を発行すると記載されている |
基本的に「双方の合意がある(見積書など、受注側が発行した書類に対して注文の意思を表示している)」ことが明確な場合は、契約書としてみなされます。
反対に工事注文者からの意思表示に過ぎないと思われるものに関しては、単なる工事注文書として扱われ、契約書の役割は持ちません。
工事注文書の書き方
ここでは注文書の書き方として、記入必須項目と、その他の記入項目について解説します。
それぞれの記載内容をしっかりと確認していきましょう。
記入必須項目
以下の項目は、注文書の記入必須項目です。注文書を作成する場合は、忘れずに記載するようにしましょう。
実際には、上記の記入必須項目以外にも取引をスムーズに進めるために他の項目も記載します。
その他の記入項目
工事注文書の場合、記入必須項目以外では、以下のような項目を記入することが一般的です。
項目の抜け漏れは、後々のトラブルにつながる恐れがあります。
ここで紹介した項目を把握し、適切な注文書を作成しましょう。
工事注文書の訂正方法
注文書を発行する際に記入ミスがあった場合、基本的には注文書自体を再発行することとなります。
しかし、さまざまな理由から注文書の再発行ができない場合は「二重線+印鑑」で訂正します。
この時使用する印鑑は、注文書に押されているものと同じ印鑑を使用するようにしてください。
また、取引先によっては、注文書の訂正方法にルールがある場合もあります。
そのため、自社の判断で訂正するのではなく、取引先に確認したうえで、訂正するようにしましょう。
印紙の必要性
印紙に関しては、必要とならないケースと必要となるケースがあります。
必要とならないケースは、注文書を注文書としてのみ使用するとき(別途、請書を作成するとき)です。
一方で、注文書を注文請書としても使用するときは、印紙が必要になる可能性があります。
また、契約金額が1万円以上(税抜)で、なおかつ電子契約でない時にも注文書に印紙が必要となります。
まとめると以下の通りです。間違えないように注意してください。
工事注文書の作り方
工事注文書には決まった様式はないものの、必要な記載項目を抜け漏れなく記載しなければなりません。
具体的に工事注文書を作る方法を3つ紹介します。
テンプレートや雛形の使用
最も簡単でおすすめな方法は、テンプレート・雛形の使用です。
テンプレートは工事注文書に必要な内容がすでに書き込まれており、アレンジを加えるだけで利用できて便利です。
ただし、テンプレートの内容をそのまま流用してしまうと、自社工事内容と齟齬が生まれる可能性があるため注意しましょう。
工事注文書の便利なテンプレートは、こちらで紹介しています。
エクセルやWordで自作
工事注文書をエクセルやWordで自作する方法もあります。
その場合は必須の記載項目が抜けないように注意しながら、作成しましょう。
工事注文書はエクセル・Wordどちらでも作成できるため、使い勝手の良い方を利用してください。
施工管理アプリ
最もおすすめの方法は、施工管理アプリを使用して工事注文書を使用することです。
施工管理アプリを使えば、実行予算や見積書内容を反映させた発注者情報から、工事注文書を作成できます。
工事注文書の内容が請負契約や見積りの内容と一致するため、間違いのない記載事項の入力が可能です。
アプリ上で作成した工事注文書は、印刷やPDFにて発行し、発注者へ送付できます。
自社で保有している情報を活用して工事注文書を作成できるため、あらためて見積書の内容等をみながら入力する必要はなく、効率的に工事注文書を作成可能です。
工事注文書を簡単に作成できるおすすめの施工管理アプリについては、以下の記事をご覧ください。
契約をおこなう上での注意点
ここでは、契約をおこなう際の注意点として、以下の2点について解説します。
それぞれの場合の注意点を確認して、作成時に間違えないように注意してください。
基本契約書を締結している場合
基本契約書を締結している場合、注文書・注文請書には、工事内容・請負代金額・工期およびそのほかの必要な事項を記載しましょう。
また、基本契約書には、注文書・注文請書に記載されている事項とその他の必要な事項を記載してください。
このとき、当事者による署名もしくは記名がされている必要があるため、忘れないようにしましょう。
基本契約書は、押印をおこなったうえで自社と取引先の相互に交付します。
注文書・注文請書には、注文書・注文請書の記載事項以外の事項は、基本契約書の定めによることを明記してください。
そして、注文書には注文者が、注文請書には請負者が署名押印します。
基本契約書を締結していない場合
基本契約書を締結していない場合は、注文書と注文請書それぞれに同じ内容を記した契約約款を添付する必要があります。
注文書・注文請書には、工事内容・請負代金額・工期およびそのほかの必要な事項を記載します。
なお、契約約款には注文書・注文請書に記載されていない事項、その他の必要な事項を記載してください。
また、注文書・注文請書には、注文書・注文請書の記載事項以外の事項は、基本契約書の定めによることを明記してください。
そして、注文書には注文者が署名押印を、注文請書には請負者が署名押印します。
もし、注文書・注文請書と契約約款が複数枚になる場合は割印を忘れないでください。
基本契約書を締結している場合と、基本的には似ていますが、契約約款が必要になる点が大きな違いだといえます。
工事発注書を訂正する場合
工事発注書を訂正するときは、注文書の再発行が必要です。
しかし、様々な要因から工事発注書を再発行できない場合、間違った箇所に二重線を引いて正しい内容を記載してから訂正印を押印してください。
取引先によっては訂正の記載ルールがあるため、事前に確認を取っておくようにしましょう。
工事注文書の作成におすすめの施工管理アプリ3選
こちらでは、工事注文書の作成におすすめの施工管理アプリを3つ紹介します。
1.AnyONE
AnyONEは、建設業向け業務管理システムです。
建設業に関する業務管理をまとめておこなうことができ、工事注文書の作成だけでなく工程表や契約書などの作成、進捗状況を一元管理などが可能です。
すべての工務店業務に利用できるため、大手や中堅企業から一人親方まで規模を問わず活用できます。
専任スタッフによる運用サポートもあるので、安心して導入を進められます。
2.サクミル
サクミルは、月額4000円から使える現場管理アプリです。
建設業の管理・事務・現場作業を効率化できるクラウドシステムであり、各書類を顧客や案件毎に一元管理できます。
ITシステムに馴染みがないミドル世代でも扱いやすく設計されており、シンプルな操作で管理作業をはじめられます。
料金は30アカウント月額4000円から使うことができ、初期費用は無料です。
3.施工管理+α
施工管理+αは、建築会社の業務を一元管理することを目指して開発されたアプリです。
建築会社で働くスタッフが誰でも簡単に使えるように、シンプルな設計となっています。
工程管理をはじめ、原価管理や顧客管理、図面管理、写真管理、帳簿作成など豊富な機能があります。
まとめ
今回は、工事注文書の概要から、具体的な書き方や作成時の注意点などについて解説しました。
工事注文書は工事注文請書とセットで利用される契約書です。
記入必須項目があるほか、スムーズに取引をおこなうために記入すべき項目もあります。
また契約をおこなう際は、基本契約書を締結しているのか、締結していないのかにも注意しましょう。
工事注文書の作成経験があまりない人は、今回の内容を参考に作成に取り組んでみてください。