公共工事を請け負う際に必要となる工事台帳。
工事の進捗管理や原価・支出の管理以外に、経営事項審査や税務調査にも役立ちます。
工事台帳の目的と記載する費用、さらにはおすすめの作成方法を解説します。
目次
工事台帳とは

工事台帳とは、各工事のお金の取引を管理するために記入する台帳のことです。
工事台帳を記入することで工事の進捗状況管理や手続き、書類作成などを容易に行うことができます。
また、公共工事を請け負う際に行われる経営事項審査の際に提出する必要があるため、しっかりと内容や作成方法を理解しておきましょう。
工事台帳を作成する目的


工事台帳を作成する主な目的は下記の4つです。
工事台帳を最大限に活かし、各工事の管理を効率的に行いましょう。
工事の進捗管理
工事台帳を記入することで各工事現場の取引内容を細かく把握でき、現在工事がどこまで進んでいるのかを管理できます。
各工事現場のマネジメントを効率化できるでしょう。
原価・支出の管理
工事台帳にお金の動きをしっかり記載できていれば、どの工事にどのくらいの費用がかかったかを把握できるため、原価や支出を正確かつ容易に管理できます。
また原価・支出を把握することで利益率も同時に把握できます。
受注する際に適切な価格・作業内容を意識して見積りを作成できるでしょう。
今後の利益をあげていくためにも工事台帳は重要な役割を果たすといえます。
経営事項審査
公共工事を行う場合、発注者は名乗りを上げた企業に対して資格審査を行わなければなりません。資格審査の一部に経営事項審査があり、企業規模や経営状況などの客観事項を審査されます。
経営事項審査の際には工事台帳を提出する必要があります。工事台帳を作成していないと、公共工事を請け負うことができなくなるため要注意です。
税務調査
建築業は税務調査が入りやすい業界でもあるため、しっかりと対応できるようにしておくことも重要です。税務調査が入った際、工事台帳を保有していると便利です。
提出義務はありませんが、各工事の進捗がどうなっていてお金の動きがどうなっているかが一目でわかる工事台帳があることで調査官も判断しやすく、スムーズに調査を終えることができます。
工事台帳があれば、調査官に良い印象を与えることができるでしょう。
工事台帳に記載する費用


ここでは、工事台帳に記載する費用の種類と内容を解説します。抜け漏れがあると正しい計算ができなくなってしまうため、これから工事台帳を自分で作成して使用することを検討している方はしっかり把握しておきましょう。
材料費
材料費は、工事を行う際に仕入れが必要な材料の費用の合計です。材料の単価だけでなく、仕入れる際の取引にかかった費用のことも指します。
労務費
労務費は、工事を行うにあたって雇った作業員の給料や、人件費としてかかった費用です。
賃金だけでなく、交通費などの諸手当も含みます。
また、労務費はあくまで工事に携わった作業員に支払ったお金のことであり、工事現場で雇われている事務員などの給料や人件費は含まれません。
外注費
外注費は、自社と雇用関係にない人や企業に支払う費用です。下請け業者や一人親方などと一緒に作業を行って支払った費用に関しては、外注費にあたります。
経費
経費は、一言で表すと「そのほかの費用」で、工事にかかった費用のうち、上記の「材料費」「労務費」「外注費」に当てはまらない費用を指します。
例えば、工事現場の光熱費、工事現場で雇われている事務員の給料、重機を借りた場合にかかった費用などが該当します。
工事台帳の作成方法


これから工事台帳を作成するという方は、下記の3つの方法があります。
自社の状況に合わせて、最適な方法で工事台帳を作成・使用しましょう。
エクセルで手作り
日付・工事名・仕入先・各費用といった項目を作成し、その都度取引があった費用を記入します。
一から自社で作成することで、担当者が使いやすい工事台帳を作ることができます。エクセルに精通している担当者がいる場合や、業務内容の関係上、一般的な工事台帳では使いにくいという場合はエクセルで作成してみると良いでしょう。
ただしエクセルに精通している担当者が作成した場合、属人化しやすい側面もあります。
エクセルが苦手な方が多い場合はおすすめできません。
無料のテンプレートを用いて作成
インターネット上には無料の工事台帳テンプレートが公開されています。テンプレートをアレンジすることで、自社オリジナルの使いやすい工事台帳を作成することができます。
無料テンプレートには、企業が作成し提供しているものから個人が提供しているものまでさまざまな種類があります。
テンプレートを使用する場合は、企業が提供しているものの方が内容に安心感があります。
また、PCやOSの種類によっては使えないものもあるのため、どのPCやOSに対応しているかを把握しておくことも重要です。
ソフトを使用して作成
ソフトは導入・運営コストがかかりますが、使いやすいように工夫されており、経理担当者の負担を最も軽減できます。
工事台帳以外の機能も備わっている場合が多く、さまざまな業務の効率化をはかることができるでしょう。
また、自社の業務に合わせてカスタマイズすることで業務の効率化をより進めることも可能です。
ソフト提供企業によっては、アフターサポートが充実しています。運用に不安を感じる方は、アフターサポートをしっかり行ってくれる企業を選ぶことをおすすめします。
まITに精通している社員が多くいる場合は、アフターサポートよりも使い勝手が良さそう・自社の管理システムと相性が良さそうなソフトを選ぶなど、自社の状況を鑑みてソフトを契約する企業を選びしょう。
ソフトの導入を検討している場合は、工務店向けシステムを比較・検討している記事をご覧ください。
まとめ
今回は、工事台帳の基本的な知識と作成方法について解説しました。
工事台帳を作成するだけで、お金の動きだけでなく工事の進捗も管理できるなど、作成するメリットは多岐にわたります。
自身でエクセルにて作成することもできますが、一から作成すると時間がかかるだけでなく項目の抜け漏れも発生してしまう可能性があります。そのため、簡単に工事台帳を作成できるテンプレートやソフトを使用の使用がおすすめです。
テンプレートやソフトは、企業の工事の進め方に合っているかや、導入コストのほか、アフターサービスが充実しているかなど種類によって違いがあります。