建設業界の労働環境の改善、人手不足の解消のために工務店DXは欠かせないステップです。
しかし、「DXとは何かまだ理解できていない」「具体的に何をしたら良いか」とお悩みの方もいるでしょう。
今回は建設業界、特に工務店におけるDXについて課題や注意点、おすすめツールを紹介します。
工務店DXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITの力を使ってビジネス革新を行い、人々の生活をあらゆる面でよりものへと変化させることです。
例えば、Amazonは人々の購買行動を「お店で買う」から「オンラインショップで買う」へと変化させ、巨大な市場を勝ち取りました。
農業・建設用機械を製造するクボタは、3Dモデル・ARを用いた「故障診断アプリ」を開発。故障で機械が使えない時間(=ダウンタイム)の短縮や、カスタマーサポートの業務効率化に成功しました。
このようにITの力を借りて目指すべきビジネス革新を、DXと呼びます。つまり「IT化」はあくまで手段であり、その目的として「DX」があるという位置付けとなります。
工務店に必要な理由
工務店に限らず、DX推進は全産業で求められています。
その背景には、DX推進を放置することで年間約12兆円の損失がもたらされるという「2025年の崖」が存在するためです。
加えて建設業界では、「人手不足」や「ノウハウ継承」という課題もあります。
高齢人材の割合が増えている一方で、若年人材の就職率・定着率が低く、現場は慢性的な人手不足に悩まされています。
ノウハウ継承(=人材育成)に割く企業の体力も限られており、ただでさえ少ない若手人材が成長のチャンスを逃すといった悪循環にも陥っているのです。
これらの課題を解決する、抜本的な手段としてDX推進が注目を集めています。
「2025年の崖」とは?
経済産業省がDXレポート内で提唱した言葉。厳しい市場環境で生き残るためには、DX推進が必須条件となりますが、DXを放置すると競争力の低下を招きかねません。
競争力が低下すれば、2025年から年間で約12兆円(これまでの3倍)に上る経済損失をもたらすと危惧されていることを「2025年の崖」と呼びます。
DXで工務店が目指すべきこと
工務店DXの実践により、工務店は以下3つのメリットを享受できます。
- 業務効率化
- ノウハウの継承
- 労働環境の整備
- 顧客満足度の向上
- 新規顧客の開拓
- コスト削減
業務効率化
従来の工務店では、紙・エクセルで顧客管理や営業管理、売上管理などを行うことが一般的でした。しかしこれらの管理は最新のデータを社内で共有するには、物理的なハードルも高く、非効率を招いていました。
ここにITツールを導入することで、業務効率化を一挙に進めることが可能となるでしょう。
ノウハウの継承
前述の通り、工務店にわざわざ社内研修を開催して、コツコツと人材育成をする余裕は無いでしょう。現場業務の中でノウハウを伝えていく必要があります。
ベテラン層が行った業務をITツール上で記録・蓄積することで、直接教わらなくともノウハウを学ぶことが可能です。
労働環境の整備
若年層の就職・定着を妨げる要素の一つとして、建設業界の「3Kイメージ」があります。
厚生労働省が2019年に「働き方改革」を発表してから、中小企業・大企業問わず経営課題として取り組まれるようになりました。
ITツールによる業務効率化を図ることで、長時間労働の解消、有給休暇の取得率アップなどにつなげて3Kイメージ払拭を目指すことができます。
顧客満足度の向上
工務店DXにより、顧客との関係維持が効率化し、より適切なサービスを提供できるようになります。
工務店で管理している顧客情報をシステムで一元管理し、打ち合わせ履歴等を共有すれば、顧客から問い合わせがあった際に営業担当以外でも顧客の状況に寄り添った対応ができます。
営業担当から折り返すと伝えて、顧客を待たせるタイムロスもなく、顧客への対応も向上するでしょう。
また、アフター管理などもシステムで一元管理できるため、顧客への連絡漏れ等もありません。
さらに、工務店DXで作業効率が向上し余裕を持った工期で作業ができるようになれば、成果物の品質も上がり、顧客に喜んでもらえるでしょう。
新規顧客の開拓
工務店がDXに取り組むことで、新規顧客を開拓できる可能性があります。
たとえば、従来のように対面でしか打ち合わせができないと、遠方の顧客や自宅から出られない事情がある顧客と商談の機会を得られません。
工務店DXによりビデオ通話による商談などを取り入れれば、今まで商談の機会を作りにくかった顧客に営業活動ができます。
また、メールマーケティングやWebマーケティングなどにも積極的に取り組むことで、より工務店の認知度を高めて、集客できる可能性も上がります。
コスト削減
工務店DXは初期費用が高額ですが、長い目で見ればコスト削減になります。
DXで省人化や業務効率化が進めば、残業代などの人的コストをカットできます。
また、ウェアラブルカメラや3Dモデルを活用して職人目線で作業の現場を撮影し、研修に使用すれば若手の育成に役立ち、技術継承に役立つでしょう。
職人が育たずすぐに辞めてしまい、また新たな人材を雇用するコストを考えると、自社で人材を育てた方がコストは低いです。
さらに、契約書の電子化による印紙税の節約、印刷コストのカットなどさまざまな出費を削減できます。
工務店DX推進の課題・注意点
工務店を含めて建設業界はデジタル化が遅れる業界とされていますが、その理由はなんでしょうか。
その理由を特定しない限りは、工務店がDXを積極的に取り入れることはできません。
何が工務店や建設業界のDXを妨げているのか、3つの課題を解説します。
- DXの導入コスト
- アナログな慣習
- DXのために具体的な行動がわからない
DXの導入コスト
工務店DXが浸透しない理由は、DXの導入コストの高さです。
工務店DXのためには、業務管理システムの導入が必要ですが、システム導入のコストは決して安くはありません。
大手を中心にDXが進んでいる建設業界ですが、資金面で大手ほど潤沢でない中小工務店にとっては、システム導入自体が負担となります。
このような業界の格差を解消するために設けられている仕組みが「IT導入補助金」です。
IT導入補助金を利用すれば、一定の条件を満たすシステムの導入費用の一部を補助してもらえます。
IT導入補助金の利用により、業務管理アプリを導入したり、インボイス制度に対応したシステムや機器の購入を負担なく実施できるでしょう。
アナログな慣習
建設業界は元来アナログな業界であり、受発注をFAXで実施している工務店も多いでしょう。
また、建設業界の高齢化によりデジタル技術に対して抵抗を持つ人も多く、新しいシステムを導入する際に社員から反発が起きることも。
このような状況から、取引先とのやりとりを考えるとなかなかDXが進まない事業者も多かったのです。
しかし、工務店にとってDXは今すぐにでも取り掛かるべき急務です。
DXにより労働環境が改善し、業務効率化による省人化が実現すれば、人手の確保で悩む必要はありません。
DXのために具体的な行動がわからない
「そもそも工務店DXといわれても、何をしたら良いかわからない」という事業者も多いです。
なんとなくデジタル機器を導入することだと認識していても、具体的にどのようなツールが必要かがわかりません。
そんな方のために、当記事ではDXに役立つシステムを紹介しています。
ぜひ参考にして、工務店DXのきっかけとしてください。
工務店が実施しているDX事例5つ
工務店が実施しているDX事例を5つ紹介します。
- オンライン商談・オンライン集客
- クラウドでの写真・図面管理
- 工務店業務や情報の一元管理
- 施工管理システムの導入
- ドローンやAIの活用
オンライン商談・オンライン集客
小規模工務店が取り入れやすいDXとして、オンライン商談やオンライン集客があります。
オンライン商談とは、Zoomなどのビデオ通話ができるツールを用いて、顧客とオンラインで商談することです。
ビデオ通話で顔を見ながらの商談のため、顧客の表情等もわかりやすく、また資料の提示なども画面共有機能でできるため、実際の商談と変わらない感覚で営業が可能です。
また、オンライン集客もさまざまな工務店が実施しているDXの1つ。
自社ホームページを制作して施工事例やサービスを掲載して集客したり、XやInstagramなどのSNS活用に取り組んでいる事業者もいます。
「残念ながら手洗いはつけれません…」
— いのっち★工務店大家 (@inocchi8562) November 1, 2024
そう言われたことはありませんか?
排水を繋ぐところが無いからです
そんな時は
アラウーノS160 &
専用手洗い 10cm前出しタイプ
これしかない。給水も排水もトイレに繋がっているのでどんな状況でも設置可。
個別で排水工事をするより
-30万円の節約💰 pic.twitter.com/s9SL6223Yc
このように工務店経営者が自身でSNSを運用し、毎日の情報発信でフォロワーを集めて集客する事例もあります。
クラウドでの写真・図面管理
管理が面倒な写真や図面を、クラウドでまとめて管理する方法もおすすめです。
スマートフォンで撮影した写真を自動的にクラウドへアップするため、デジタルカメラで撮影したファイルをPCへ移す手間がありません。
また、保存した写真は自動的にファイル分けされるため、写真台帳の作成も簡単になります。
システムによる工務店業務や情報の一元管理
業務管理システムを導入し、業務を一元管理する方法もおすすめです。
工務店の多岐に渡る業務を1つのシステムで管理できれば、部門間の連携も強化されます。
見積書を営業が会社に取りに戻ったり、工程表を印刷して職人に配る手間もありません。
また、顧客情報も統合管理できるため、営業の案件把握や進捗管理にも役立ちます。
施工管理システムの導入
施工管理システムの導入により、現場管理を効率化する方法もあります。
施工管理システムとは、見積りや工事情報、図面や写真、工程表を管理するシステムです。
モバイルデバイスに対応したシステムを選べば、施工管理者が現場から図面を本社へ共有したり、工程表を修正したりできます。
ドローンやAIの活用
建設業界の大手「竹中工務店」では、ドローンやAIを活用したDXも実施されています。
竹中工務店ではドローン技術を用いた外壁タイル検査システムを開発、ドローンの撮影画像をAIで分析して外壁の剥がれなどを検知するものです。
これにより外壁検査の見落としを防止し、さらに検査時間の短縮に成功しています。
ドローンを活用すれば、高所作業の危険を回避して安全に検査ができる点もメリットです。
以上のように工務店で実施されているDXは幅広いものがあります。
自社で無理なく導入できる事例を参考に、工務店DXを進めていきましょう。
【工務店向け】DXに便利なおすすめツール
後れをとる企業が多い中、業界内のさきがけとしてDX推進を進められれば、モデルケースとして認知され、求職者など対外的に向けたブランディングにもつながるでしょう。
最後に3つのおすすめITツールを紹介します。
- AnyONE
- いえーるダンドリ
- アイピア
AnyONE
実績3,300社の導入実績を誇る、業界No.1の業務効率化ソフトです。工務店業務のほとんどを管理することができ、エクセルなどからの情報引き継ぎにも適しています。
機能豊富なだけでなく、提供会社によるサポート体制も充実しているため、ITに苦手意識のある従業員にも使いやすいでしょう。
- スマホ対応
- エクセルに似た操作性
- 顧客管理、営業管理、施工管理、見積管理、入出金管理、アフター管理までトータルカバー
- 日報・見積もりなど帳票のフォーマット作成・管理機能
- 導入後の社内オペレーションサポート
- 導入前の課題のヒアリング
など
最大350万円・導入コスト2/3補助のチャンス
いえーるダンドリ
営業管理に特化し、商談数・受注率アップを期待できるITツールです。
「住宅ローン業務」を300社以上の金融機関と提携するサービス会社が請け負うことで、そこに費やしていた時間を営業活動に割くことができます。
住宅ローン業務に大きな負担を感じている工務店に適したITツールといえます。
- スマホ対応
- スマホで顧客管理の情報共有
- メッセージ機能、予定管理機能
- 簡易ローン計算機能
- オンラインサポートでの住宅ローン業務代行
- 営業担当者向けの勉強会を実施
など
アイピア
アイピアは工務店DXを推進する工務店向けの業務管理システムです。
- スマホ対応
- 顧客管理、営業管理、原価管理、入出金管理、工程管理などの機能を広くカバー
- 帳票や日報の作成機能
- エクセルに近い操作感
- ワンクリックで帳票を出力可能
- 設備機器の登録で、点検・リコール対応
など
スマートフォンに対応しており、外出の多い営業や現場担当が速やかに情報を閲覧できます。
契約からアフター管理まで工務店における業務を統合できるため、情報の一元管理や効率化に役立ちます。
詳細はアイピアとは?機能や料金、評判・口コミを紹介をご覧ください。
まとめ
DX化は、国内全体でみれば一部の企業でしか進められていません。
しかし、DX推進の流れをチャンスと捉え、いち早くDX推進を行うことで競合との差別化を図れます。
ITツールの選択時には、社内の課題解決だけでなく顧客への価値提供という目的を外さずに進めてはどうでしょうか。
DX化を進めようと思っても「自社に最適なITツールを選べない」と悩む方もいるでしょう。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
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