工程管理ツールとは、プロジェクトの完成までの過程を記録・管理するためのツールです。
工務店や建築業の方は、工程管理の大切さ自体は既にご存じでしょう。
- 自社の工程管理がうまくいかない。手書きでは限界を感じている
- 工程管理はエクセルでやってるし、専門のツールまで導入する必要はないんじゃないか
工程管理に問題を感じていたり、逆にツールの必要性がピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、工程管理ツールの概要や重要性、導入することで得られる効率化の効果、逆に導入時にハードルになることを解説します。
そのほか、工程管理がおこなえるツールの例、選び方も紹介します。
工程管理ツールを導入し、作業の効率化や品質維持を目指す工務店関係の方は、ご一読ください。
目次
工程管理ツールとは
工程管理とは、プロジェクトを完了するまでに必要な管理活動です。
「プロジェクト過程が予定通りに進んでいるか」「万が一遅滞・欠員が出た場合の対処」などをおこないます。
工程管理ツールとは、上記の管理活動を効率化するためのツールです。
工程管理ツールの活用で「手作業で表作成」「朝礼時に口頭で情報共有」などをおこなう手間がなくなり、ミスを減らして作業効率化に役立ちます。
工程管理を行うことで、作業クオリティの担保だけでなく、顧客後の関係性も向上します。
また、工程管理にどのような方法があるのかの事例を説明していくので、ご一読ください。
工程管理の重要性
工程管理をおこなうことは、作業の品質の維持やコスト管理だけでなく、取引先への誠実な対応を担保するものです。
- 納期の厳守
- 品質維持・向上
- コスト管理
重要性を理解した上で、工程管理に取り組むようにしましょう。
納期の厳守
工程管理のしっかりおこなえば納期を厳守できます。
工務店・建築業において、クライアントとの納期は厳守されるべきものです。
納期を守れなければ、先方の契約ごとに損失を与える可能性があり、クライアントからの信頼も失います。
最初に立てた計画を頼りにしていると、作業の遅れを見逃し、最終的に納期に間に合わないリスクもあるでしょう。
毎日のタスクとして工程管理を行い、作業員全員が進捗を把握しておけば、見落としを減らして、遅滞に速やかに対応できます。
結果的に納期よりも早い納品が可能になり、納期を厳守でき、取引先との信頼関係の構築につながるでしょう。
品質維持・向上
工程管理は、成果物の品質維持・品質向上に役立てることが可能です。
スケジュールを把握しないまま作業を進めていると、どうしても思わぬトラブルが発生します。
最初のスケジュールが大きく狂うと、納期を優先するために作業を急がなければならなくなり、ケアレスミスや作業に雑な部分が出てくるリスクがあるでしょう。
また、しっかり工程を管理していれば、作業を見直したときに次に改善すべき点や効率化できる点が見えてきます。
PDCAサイクルを回していけば、類似の現場で作業をより効率化できるでしょう。
結果的に、効率化により作業にかけられる時間が増え、品質が向上するメリットも得られます。
コスト管理
工程管理を行うことで、コストの管理も同時におこなえます。
現場の工程には、どうしても無駄な作業が生まれるものです。
しかし、工程管理により無駄を省ければ、必要のない作業にかけていた時間や経費を削減できます。
作業の無駄な部分を省くことで人員配置を見直して、本来必要な箇所・工程へ時間と人手をかけるような調整も可能です。
無駄を下げることで原価管理ができるため、生産性が上がり、企業利益の貢献にもつながります。
工程管理方法の例
工程管理の方法でよく用いられるのは、以下の4つの方式です。
ガントチャートやバーチャートを用いて「進捗を可視化して管理する方法」や、グラフ式といって「進捗率と日数を管理する方法」もあります。
ネットワーク方式とは「◯」と「→」の記号を用いて工程期間を表す表です。
矢印の下に作業名と作業日数を書き込んで管理をおこないます。
工程管理ツールを導入していない場合は、Googleスプレッドシートやエクセルで管理をしたり、所定フォーマットに手書きで工程を書き込む工務店が多いでしょう。
Googleスプレッドシートで工程管理を行う場合の、メリットとデメリットを比較してみました。
また、紙ベースで所定フォーマットに手書きしている場合は、修正作業がしづらくなります。
工程の調整を入れた場合に、表自体が見づらくなり、作業員が読み間違えるリスクもあるでしょう。
工程管理ツールを使えば、これらのデメリットを補填して、簡単に工程管理をおこなえます。
工程管理ツールの使用で業務効率・生産性アップ
工程管理ツールを使用すれば、業務効率だけでなく生産性も上がります。
また、ミスを減らすことになるなどメリットが多いです。
工程管理ツールの導入を検討している企業の方は、後ほど紹介するデメリットの部分と比較し、自社に工程管理ツールが必要か判断しましょう。
管理業務の効率化
工程管理ツールを使用すれば、工程管理業務が効率化します。
工程管理ツールには主に以下のような機能がついており、手作業で行う作業がほぼなくなるからです。
手作業で工程管理表を作成する場合は、エクセルやスプレッドシートで表を作成する手間がかかります。
また、進捗率の計算や色付けなど、数式を使用する場合は、数式の研修・習得の時間が必要です。
しかし、工程管理ツールは上記の機能をすでに兼ね備えているため、前知識がなくても簡単に工程管理表を作成できます。
休日を自動で取得して、土日祝日を省けるため手作業で日数を計算するなど、時間をかける必要がありません。
また、工程に遅れが生じた場合などのチェックが容易であり、システム上でワンクリックなどの簡単な操作で修正ができます。
クラウド型のツールを使う場合は、共有もオンラインで簡単にできるため、工程表の印刷などの手間もかかりません。
複数端末対応によるスケジュール共有の簡便化
最近リリースされている工程管理ツールは、パソコンだけでなくモバイル端末でも閲覧ができるツールも多く、現場作業員が支給されたタブレットで工程表をチェックできます。
紙ベースでの共有の場合は、印刷コストがかかる上に、工程表を事務所に戻らないと確認できないなどのデメリットがありました。
しかしモバイル端末なら荷物にならない上に、簡単に共有が可能です。
管理ツールの一元化
DX推進の流れで、さまざまなツールが提供され、導入した工務店・建築業も多いです。
ITツールを導入した企業で問題となっていることは、管理ツールを複数導入したため、かえって業務効率が下がることです。
「顧客管理はCRM」「営業支援はSFA」「図面作成や管理は別のシステム」など、多くのツールを導入するほど現場に混乱が生じます。
1つのツールで工程管理と図面管理がおこなえ、また顧客情報の紐付けもできれば、管理ツールを統一できるでしょう。
DXを推進して、かえって効率が落ちるという事象・リスクを減らせます。
人為的ミスの削減
工程管理ツールを導入すれば、人為的ミスの削減につながります。
例えば工程管理ツールを、スプレッドシートなどで作成していたとしましょう。
スプレッドシートの共有設定を誤り、無関係の取引先に工程表を共有し、機密情報が漏洩するリスクがあります。
また、作業員がスプレッドシートの数式を誤って削除し、進捗計算が正しく行われなくなるというミスも起こり得るでしょう。
しかし、工程管理ツールは基本的に自社内での共有に限定されるため、情報漏洩のリスクはかなり低いです。
図面・書類管理を行う場合も、取引先情報と紐付けて管理できるため、誤って他社の図面を共有するリスクも下げられます。
また、工程管理ツールの作業権限は柔軟に設定できるため、スプレッドシートやエクセルのように、ミスで表が使えなくなるリスクも低いでしょう。
工程管理ツールの導入・定着時のハードル
工程管理ツールの導入・定着時のハードルは、以下の2つです。
工程管理ツールで効率化を行う前に、コストや手間がかかる部分は理解しておきましょう。
導入・運用にコストがかかる
工程管理ツールを導入する際には、ツール導入のための初期費用や月額コストがかかります。
ツールによって金額は変わりますが、オンプレミス型といってサーバーにソフトウェアを導入する場合は、サーバー増強・初期費用、設定費用などが必要です。
クラウド型のツールは、導入費用自体は安いですが、月額費用がかかる場合があります。
導入後の研修が必要
工程管理ツールを導入した後は、管理者が操作方法を覚える必要があります。
また、作業員が工程の進捗を入力する場合は、操作の研修の時間を取る必要があるでしょう。
研修の時間を作業とは別に取らなければならず、また研修用の資料やマニュアル作成の手間がかかります。
工務店で工程管理に使用できるツールとは
工務店が工程管理を行う場合に使用できるツールは以下のようなものです。
無料かつ導入コストなしで使用できるものも紹介します。
工程管理を始めたい企業担当の方は、検討してみてください。
専用の工程管理ツール
最もおすすめしたいのは、工務店向けの専用工程管理ツールです。
工務店向けに作られたツールなため、顧客管理や工事・施工管理の工程管理だけでなく、見積りや発注、入出金管理もおこなえる多機能なものがリリースされています。
チャートを手作りする手間もありませんし、操作感もエクセルに似たものがリリースされているため、研修の手間も極力減らせるでしょう。
効率的に管理を行うなら、使いやすさやセキュリティを考えても、専用の工程管理ツールの導入がおすすめです。
エクセル
Windowsのパソコンを使用している場合は、エクセルでの工程管理が最も身近でコストもかからないでしょう。
ガントチャートやバーチャートのテンプレートが入っているため、内容を書き換えるだけで、ガントチャートが作成できます。
また、エクセルと酷似したスプレッドシートなら、オンライン上で確認・共有も可能です。
数式の知識を覚えたり、エクセルの管理者が必要な面がデメリットですが、コストを一切かけずに工程管理したいなら、エクセルから始めるのも良いでしょう。
ガントチャートの作り方については、以下の記事で紹介しています。
カレンダーアプリ
Gmailを連絡用に使用している工務店の方は、カレンダーアプリで工程管理もできます。
Googleカレンダーは、短日ではなく、長期にわたる予定も作成できます。
あくまでカレンダーなため、ガントチャートのようには使えませんが、工期を可視化するだけで良いなら、カレンダーを使っても良いでしょう。
ただし、管理を誰が行うか、権限の付与やセキュリティ面において、機密情報を入力することはコンプライアンス上おすすめできません。
あくまでもざっと予定を確認する、という目的であればカレンダーでも管理ができます。
自社に合う工程管理ツールの選び方
工程管理ツールを導入する場合の選び方のポイントを解説します。
工務店での工程管理を想定すると、最低でも以上の5つの点を比較して選ぶべきです。
管理できる情報の範囲
工程管理ツールを選ぶ際は、該当のツールでどの程度の情報管理ができるかを確認しましょう。
例えば、工務店向けの工程管理ツールAnyONEの場合は、以下のような機能がついています。
工程管理はもちろん、顧客管理や入出金管理、アフター管理まで可能です。
つまり、CRM(顧客管理ツール)やSFA(営業支援ツール)の役割も兼ねています。
自社の管理ツールが氾濫して、作業がかえって煩雑になっている場合は、このように多機能な工程管理ツールがおすすめです。
また、DX推進の過程で、顧客管理や経理部、営業部もシステム化していきたい場合は、オールインワンのツールを導入した方が、後々連携作業に手間をかける必要がありません。
自社で必要な機能を洗い出した上で、できるだけ網羅的にカバーしている工程管理ツールを選びましょう。
導入後のサポート
工程管理ツールの導入後しばらくは、操作方法が分からなくなることもあります。
その際に、サポート体制が整っているかを確認しましょう。
例えば、メールやチャットでの問い合わせはもちろん、必要であれば会社に訪問してもらって目の前で研修をしてもらえる体制がある方が安心です。
安いツールは、導入費用こそ安価であるものの、サポートが充実していないことがあります。
導入後にトラブルが発生したときに、提供元がサポートしてくれるかどうかも重要なポイントです。
導入・運用にかかるコスト
工程管理ツールの導入に、どの程度のコストがかかるかしっかりを取って比較しましょう。
初期費用と月額費用の他に、システムのバージョンアップをしたい場合に追加費用が発生するのかどうかも大切です。
クラウド型のシステムは、提供元でバージョンアップをして、バグ・機能の改善を行います。
しかし、その度に費用を取られると、月額コストにバージョンアップコストが加算されてしまうでしょう。
初期費用と月額費用だけでなく、今後利用するにあたって、必要になる金額も計算しておいてください。
対応端末
工程管理表の共有をインターネットで行う場合は、対応端末も確認してください。
PCブラウザのみの対応の場合は、屋外での作業中に進捗確認ができません。
スマートフォンやタブレットに対応していれば、作業員がどこにいても進捗確認をおこなえます。
また、営業職が外回り中に問い合わせを受け、進捗を取引先に報告するなどの場合にも役立つでしょう。
セキュリティ
工程管理表には、取引先の情報や作業員の個人情報が含まれます。
万が一漏洩した場合は、コンプライアンス上大変な問題になるため、セキュリティ面をしっかりチェックすべきです。
情報セキュリティが堅固であること、かつ、脆弱性が見つかった場合の対応なども確認しておきましょう。
営業担当に問い合わせをした際に、セキュリティ面についても確認をおこなうようにしてください。
まとめ
工程管理ツールの導入で、作業効率が上がるだけでなく、品質の維持や顧客サービスの向上、コスト管理にも役立ちます。
納期の遅れに素早く対応できたり、無駄な工程を見直せるため、自社の作業クオリティも上がるでしょう。
工程管理ができるツールはエクセルやGoogleカレンダーなど、無償のツールもあります。
しかし、本格的にDXを推進し、セキュリティ面も考えるなら、専用の工程管理ツールが圧倒的におすすめです。
記事内で紹介した工程管理ツールを選ぶ際のポイントを意識し、自社のニーズに合う工程管理ツールを見つけましょう。
万が一工程管理ツール選びに迷ってしまった場合のため、最後におすすめのツールを紹介しておきます。
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