長引くコロナ禍の影響で打撃を受けた企業への補助金「事業再構築補助金」は、建築業界でも申請が可能です。
一定の条件を満たす場合は、事業の立て直しに補助金を活用できます。
しかし、事業再構築補助金は要件や手続きが煩雑で、自社がどの補助金枠に当てはまるかわからない方も多いでしょう。
この記事では建築業界の採択事例や、補助金枠の説明、申請方法を解説します。
目次
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスの影響が長期化したことにより、需要や売上回復が期待できない企業への支援金です。
申請枠によって要件は異なりますが、共通して以下の条件を満たさなければなりません。
- 売上が減っている
- 新分野展開・業界転換・事業・業種転換・事業再編に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
コロナ禍で建築業界も多大なダメージを受けている企業が多く、建築業界でも活用されている補助金です。中小事業者から中堅企業まで、従業員数によって受けられる補助金の金額や補助率が異なります。
従来は「売上減少高の割合が10%」と定められ、要件に当てはまらない企業は申請ができませんでした。しかし、令和3年11月26日の補正予算案で幅広い企業が申請できるような仕組みに変更されています。
自社の売上が落ちてしまい、回復が見込めないような状況の企業に手を差し伸べる制度です。
事業再構築補助金枠と利用事例
建築業界における事業再構築補助金は、具体的にどのように利用すれば良いのか、その事例を解説します。
過去には、以下のような事例が採択されました。
- 建築ノウハウを活かした内装工事業への事業転換
- 不動産オーナー向けの収益物件の新築工事
- 事業再構築のための新式三次元レーザースキャナー等の機器導入
例えば建築工事を専門にしていた会社が、ノウハウを活かして内装工事を始める際の事業展開の費用として補助金を活用しました。その他、収益物件の新築工事、デジタル機器の設備費用等を認められた例もあります。
つまり、「事業を再構築するために必要」と認められれば、建築業とは別分野の展開も可能なのが特徴です。
NG項目として、既存の事業の経費としては利用できないため注意しましょう。
事業再構築補助金枠は以下に分かれます。
- 通常枠
- 大規模賃金引上枠
- 卒業枠
- グローバルV字回復枠
- 緊急事態宣言特別枠
- 最低賃金枠
それぞれの事業再構築補助金枠の概要を解説します。
通常枠
通常枠とは、事業再構築のための設備導入等をおこなう場合の補助金枠です。
以下の条件を満たした企業に対し、従業員数に応じて補助金が支給されます。
対象従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
20名以下 | 100〜4,000万円 | 中小事業者:2/3 中堅企業(300〜2,000名):1/2 |
21〜50名 | 100〜6,000万円 | 中小事業者:2/3 中堅企業(300〜2,000名):1/2 |
51名以上 | 100〜8,000万円 | 中小事業者:2/3(6,000万円以上の部分は1/2) 中堅企業(300〜2,000名):1/2 |
大規模賃金引上枠
大規模賃金引上枠とは、一定の賃金を引き上げた従業員数101名以上の企業を対象とした補助金です。
申請要件には、コロナ以前の売上から5%以上売上高が減少していること、また継続的に今後も賃金を引き上げる等の条件があります。
自社の資金がある程度潤沢にないと、要件を満たせない可能性があるため、しっかり申請前に要項を確認してから申請しましょう。
対象従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
101名以上 | 8,000万円〜1億円 | 中小事業者:2/3(6,000万円以上の部分は1/2) 中堅企業(300〜2,000名):1/2(4,000万円を超える部分は1/3) |
卒業枠
卒業枠とは、事業計画の期間内に以下の条件を満たし企業に認められる補助金です。
- 組織再編
- 新規設備投資
- グローバル展開
この3つのいずれかによって、資本金や従業員を増やして、中堅企業や大企業へステップアップする企業へ支給されます。
対象 | 補助金額 | 補助率 |
中小企業者 | 6,000万円〜1億円 | 2/3 |
グローバルV字回復枠
グローバルV字回復枠とは、グローバル展開を果たす事業に認められる補助金です。
2020年10月以降の半年間で、3ヶ月合計売上が前年度と比較して15%以上減少した中堅企業が対象となります。
対象従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
中堅企業(300名〜2,000名) | 8,000万円〜1億円 | 1/2 |
緊急事態宣言特別枠
緊急事態宣言特別枠とは、緊急事態宣言の発令で深刻な影響を受けてしまった中小企業・中堅企業向けの補助金です。
売上が前年度と比較して30%以上減少している企業が対象となります。
対象従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
5名以下 | 100〜500万円 | 中小事業者:3/4 中堅企業:2/3 |
6〜20名以下 | 100〜1,000万円 | 中小事業者:3/4 中堅企業:2/3 |
21名以上 | 100〜1,500万円 | 中小事業者:3/4 中堅企業:2/3 |
最低賃金枠
最低賃金枠とは、最低賃金の引き上げの影響を受け、給与の支払いが困難な中小企業向けの補助金です。
従業員へ最低賃金を支払うための補助金が支給されます。
条件は過去半年間で3ヶ月以上最低賃金+30万円で雇用している重要因数が、全体の10%以上であること。
また、2020年4月以降の売上高が、前年または前々年の同月比で30%以上減少している企業が対象です。
対象従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
5名以下 | 100〜500万円 | 中小事業者:3/4 中堅企業:2/3 |
6〜20名以下 | 100〜1,000万円 | 中小事業者:3/4 中堅企業:2/3 |
21名以上 | 100〜1,500万円 | 中小事業者:3/4 中堅企業:2/3 |
今後の補助金制度の見直し・拡充予定
事業再構築補助金制度は令和4年度以降も継続します。
申請の要件が厳しいこと等が課題になり、実際に経営が苦しいのに申請できない建築業者も多いのが課題とされていました。
このことを受け、制度を見直しして売上の減少要件を緩和させたり、運用の改善がおこなわれています。
具体的には、以下の点を見直し・拡充予定です。
- 回復・再生応援枠の新設(6回から)
- グリーン成長枠の新設(6回から)
- 通常枠の補助上限額の見直し(6回から)
- 売上高10%減少要件の緩和(5回から)
- 新事業の売上高10%要件の緩和
- その他運用改善等
減少要件の緩和により、今まで申請が難しかった中小事業者等も事業再構築補助金の申請が可能です。
建築業界でも、補助金が採択された事例はたくさんあるため、スケジュールを確認して応募してみてください。
【令和4年度】事業再構築補助金のスケジュール
令和4年度以降の事業再構築補助金のスケジュールを確認し、タイミングを逃さないように準備しましょう。
2022年1月時点でスケジュールは第5・6回しか公開されていませんが、令和4年度には3回程度の公募が予定されています。万が一、第5・6回で間に合わなかった場合は、随時ホームページをチェックしましょう。
第5回公募
令和4年1月中旬より、事業再構築補助金の第5回公募が予定されています。
具体的な日にちは決まっていませんが、必要な書類や事業計画書等を用意しましょう。
第6回公募
第6回の公募日時はまだ決まっていませんが、数ヶ月後に公募が始まると予想されます。
政府の発表では、令和4年に3回程度の公募を予定しているためです。
随時中小企業庁の事業再構築補助金のホームページが更新されるため、こまめに確認してください。
事業再構築補助金の申請方法
事業再構築補助金の申請方法を簡単に解説します。
- 公募要件を確認
- GビズIDプライムアカウントの取得
- 事業再構築補助金ホームページのフォームより電子申請
書類の準備等に時間がかかるものもあるため、公募の前から準備しておきましょう。
公募要件を確認
まずは、事業再構築補助金のホームページを訪問し、申請したい補助金の要件を確認してください。
申請の際には認定経営革新等支援機関との事業計画の策定が必要です。
事前に税理士事務所等で認定を受けている機関を探しておきましょう。手続き代行等も依頼でき、相談しておくと便利かもしれません。
GビズIDプライムアカウントの取得
事業再構築補助金は電子申請のみで、事前にGビズプライムアカウントを取得する必要があります。
アカウントの作成に印鑑証明書、申請書の作成が必要なため、事前に取得しておいてください。
審査を経て登録の流れのため、アカウント開設まで1週間程度時間がかかります。
事業再構築補助金ホームページのフォームより電子申請
公募要件を満たして必要書類を揃え、GビズIDプライムアカウントを取得したら、電子申請をおこないましょう。
事業再構築補助金のホームページより、申請が可能です。
不備があると振込までに時間がかかり、修正の確認等に時間がかかるリスクがあるため確認をしっかりおこなって申請しましょう。
まとめ
建築業界でも、多数の事業再構築補助金の申請が採択されています。
自社の売上減少を回復するために、事業の再編や新分野への展開を考えている建設業事業者の方は利用すべきでしょう。
事業再構築補助金の公募は、令和4年の1月中旬から、3回にわたって実施予定です。
建築業界でコロナ禍の影響を受けている事業者の方は、要項を確認して応募の準備をしておきましょう。