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建設業の賃上げが相次ぐ!入札優遇策の概要と賃上げのメリット・賃上げする方法を解説

近年では建設業の人手不足、若手育成の対応として賃上げが提案されてきました。

そして2022年春から公共工事の入札に賃上げが加点されるため、大手建設会社を中心として賃上げを実施する企業が増加しています。

この記事では賃上げする大手建設会社が増加した背景、国が掲げる賃上げ目標や賃上げのメリット、実施する具体案を解説します。

この記事はこんな人におすすめです
  • 大手建設会社が賃上げに踏み切った背景を知りたい
  • 公共工事の賃上げ加点について知りたい
  • どのくらい賃上げすれば良いか把握しておきたい
  • 賃上げによって会社側が得られるメリットを知りたい
  • 賃上げしたいが、どこから予算を捻出すれば良いかわからない

賃上げする大手建設会社が増加

賃上げする大手建設会社が増加

日経コンストラクションの調査結果によると、大手建設業者で2022年春に大幅な賃上げをおこなう企業が増えました。

なぜ建設業界が賃上げの動きをとっているか、その理由を解説します。

賃上げする大手建設会社が増加
  • 建設業の賃上げ状況
  • 入札で優遇される条件

建設会社が賃上げに踏み切った経緯は、公共工事の入札に賃上げが加点されることが決定したためです。

大手がリードする形で、建設業界全体の賃上げが進むと予想されます。

建設業の賃上げ状況

2022年春には定期昇給に加え、ベースの給料をあげる建設会社が増えたという報告結果が「日経コンストラクションによるアンケート」でわかりました。

大成建設は1.5%のベア(ベースの引き上げ)をおこない、大林組でも1.1%のベース引き上げがおこなわれています。

また、新入社員の初任給の見直しがおこなわれ、大手建設業者を中心として初任給の引き上げも実施されました。

これらの賃上げの経緯には、国土交通省によって公共工事の入札には、賃上げを実施したことを加点ポイントに加えるという評価制度の改訂があります。

国土交通省による「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置に関するQ&A集」によると、賃上げを評価対象とする経緯がわかります。

Q:賃上げ評価を行う経緯を教えてほしい。

A:令和3年11月8日開催の「新しい資本主義実現会議」の緊急提言の中において「公的部門における分配機能の強化」の中で「賃上げのための政府調達手法の検討」として、「政府調達の対象企業の賃上げを促進するため、賃上げを行う企業から優先的に調達を行う措置など政府調達の手法の見直しを検討する。」ことが位置づけられました。

【引用】総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置に関するQ&A集

つまり政府としてはすべての企業に対して賃上げを促していますが、中々現状がついてこないことが問題となっています。

そのため、より賃上げの動きを活発にするために、賃上げを公共工事の入札時の評価対象として、賃上げを実施した企業を優遇することを決めた、という経緯です。

公共工事への入札を積極的におこなっている大手建設業企業では、上記加点ポイントのことも考慮して賃上げに踏み切りました。

入札で優遇される条件

具体的に公共工事の入札総合評価落札方式における、賃上げ評価の条件について解説します。

入札総合評価落札方式における賃上げの加点は、40点満点中3点でとなり全体の7.5%を占めることとなります。

また、賃上げの評価項目は以下のとおりです。

賃上げの評価項目

 (1)契約を行う予定の年の4月以降に開始する入札者の事業年度において、 対前年度比で「給与等受給者一人当たりの平均受給額(※)」を別紙2 に示す率以上増加させる旨を従業員に表明していること。 

(2)契約を行う予定の年以降の暦年において、対前年比で「給与等受給者 一人当たりの平均受給額(※)」を別紙2に示す率以上増加させる旨を 従業員に表明していること。

 ※中小企業等においては、「給与総額」とする。 中小企業等とは、法人税法第 66 条第2項又は第3項に該当する者のことをいう。ただし、同条第6項に該当するものは除く。

【引用】総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置

賃上げの基準は大企業が3%、中小企業は1.5%が基準です。

入札で賃上げ評価を加点対象として受けている場合、落札後に「年度単位による賃上げ表明」「年単位による賃上げ表明」の2つの書類を提出し、賃上げ実績を確認します。

万が一賃上げ基準を満たしていない場合は、すべての入札において今後加点分+1点が差し引かれるというペナルティを受けます。

国が掲げる建設業の賃上げ目標の概要

国が掲げる建設業の賃上げ目標の概要

国が掲げる建設業の賃上げ目標の概要を解説します。

国が掲げる建設業の賃上げ目標の概要
  • 中小企業で1.5%・大企業で3%の賃上げが目標
  • 2022年3月国交相・建設業団体間で技能労働者の賃金3%賃上げで合意

自社で賃上げを検討する際に企業規模によって目標額が変わり、基準に達していない場合は先ほど説明したように減点措置を取られるリスクがあります。

公共工事の入札加点の基準を把握しておきましょう。

中小企業で1.5%・大企業で3%の賃上げが目標

総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」では、大企業は3%、中小企業は1.5%の賃上げが目標とされています。

経済産業省は賃上げ促進のために、「賃上げ促進税制」を導入しており、企業に向けて賃上げしやすい環境作りを継続中です。

賃上げ促進税制とは
  • 【通常要件】継続雇用者給与等支給額が、全事業年度より3%以上増えていること
  • 【上乗せ要件①】継続雇用者給与等支給額が全事業年度より4%以上増えていること
  • 【上乗せ要件②】教育訓練費の額が全事業年度より20%以上増えていること

上記3つの要件を満たした場合、以下の税額控除が受けられます。

賃上げ促進税制によって受けられる控除
  • 【通常要件】控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除
  • 【上乗せ要件①】税額控除率を10%上乗せ
  • 【上乗せ要件②】税額控除率を5%上乗せ

賃上げは企業にとって負担となりますが、上記賃上げ税制を用いて税額控除を受けられる点は建設業者にとってメリットとなります。

2022年3月国交相・建設業団体間で技能労働者の賃金3%賃上げで合意

国土交通省が2022年2月28日に開催した建設業4団体との意見交換会で、清水建設・大成建設・大林組・鹿島建設の大手4社が3%の賃上げに合意しています。

建設業の若手の育成や世代交代に向けて、賃上げをして適正利益を確保することが目標です。

2022年春の調査ではまだ3%の基準には達していないものの、大手建設業社を中心に1〜2%の賃上げが実施されており、今後も建設業界の賃上げの動きは強まっていくでしょう。

入札に参加しない中小企業も賃上げは要検討

入札に参加しない中小企業も賃上げは要検討

公共事業の入札に参加しない中小企業は、賃上げしなくて良いというわけではありません。

入札に参加しない中小企業にもほかの建設業者の賃上げは関係してきます。

入札に参加しない中小企業も賃上げは要検討
  • ほかの企業の賃上げの影響で人材流出
  • 新規雇用確保の難易度上昇

すべての企業にとって賃上げは人件費の増大であり、数%とはいえ莫大な額を人件費につぎ込まなければなりません。

建設業界で賃上げがスタンダードになれば自社は無関係というスタンスは取れなくなってくるでしょう。

ほかの企業の賃上げの影響で人材流出

建設業界全体で賃上げが実施されれば、従業員がほかの企業へ転職する可能性が高まります。

雇われている従業員も業界動向は把握しており、仕事内容が同じで給料が良い会社があれば、今いる企業よりも給料が良い会社で働きたいのは当然です。

そのため自社の賃上げを検討しなければ人材が流出し、そもそも企業としての運営が成り立たなくなる可能性があるでしょう。

新規雇用確保の難易度上昇

建設業界全体の給与ベースが引き上げになれば、新入社員の雇用事態が難しくなります。給料のベースが低い時点で就職希望者が集まらないためです。

大手建設業社を中心として、既存雇用契約社のみならず初任給の引き上げも検討されています。

自社の給与体系を見直さない限りは業界に置いていかれてしまい、次世代の担い手を確保できなくなるでしょう。

建設業が賃上げすれば人材確保が可能

建設業が賃上げすれば人材確保が可能

建設業社が値上げすれば人材確保競争に勝てる可能性が高まります。

そもそも建設業界は人手不足が大きな問題となっており、政府としても人材確保のための政策をおこなっている状態です。

建設業が賃上げすれば人材確保が可能
  • 優秀な人材の雇用
  • 若手の教育制度の充実
  • 入札の優遇

入札しない場合でも、中小企業は賃上げを検討して人材確保をおこない、利益の確保を目指すべきでしょう。

優秀な人材の雇用

建設業の賃上げにより優秀な人材を雇用できる可能性が高まります。

技術が高いベテランは現時点の年収よりも給料が上がる企業を選ぶため、転職先としての魅力を高めるためにも賃上げは重要です。

技能を持つ優秀な中途職員の採用のためにも、賃上げを検討すべきでしょう。

若手の教育制度の充実

建設業界は後継者が不足しており、高齢化が問題となっています。

若手の教育制度に力を入れなければ、ベテラン技術承継ができず後継者を育てられません。

そのため若手の教育制度の充実にも費用をかけるべきです。

先ほど紹介した「賃上げ税制」の上乗せ要件にも、新人研修費を全事業年より20%増加させている企業は、上乗せで税控除を受けられると定められています。

建設業の技術承継のために研修の機会を設けたり、ウェアラブルカメラなどを導入してベテラン視点での作業を見せたりするなど、研修制度の充実を検討しましょう。

建設業界で問題となっている若手不足の現状と解決策については以下の記事も参考にしてください。

入札の優遇

建設業界で賃上げを実施すれば、公共事業の入札時に加点評価の対象となります。

40点中3点を占めるため、かなりの加点が見込めるでしょう。

公共事業は規模が大きく自社の実績としての評価にもなるため、落札のための条件を整えておくことは重要です。

建設業社が賃上げをおこなえば、公共事業にかかわれる可能性が高まり最終的に自社実績・利益的にもプラスとなります。

建設業が賃上げするためにすべき5つのこと

建設業が賃上げするためにすべき5つのこと

建設業界で賃上げを実施するためには具体的に何をすべきでしょうか。

建設業が賃上げするためにすべき5つのこと
  • 税制優遇措置の利用
  • 単価見直し
  • 業務コストカット
  • 建設DXの導入
  • 高齢者の雇用

賃上げと簡単に言っても、それに付随する利益の向上が見込めなければ賃上げは不可能です。

建設業界で利益を増やし、利益を社員に還元する形での賃上げを実施する具体策を解説します。

税制優遇措置の利用

賃上げをおこなう際は税制優遇措置を利用し、控除を受けて節税できます。

人件費をすべて補填できるわけではありませんが、税金対策として必ず利用しましょう。

政府としても企業に対して賃上げをおこなう対価として法人税控除制度を導入しているため、措置を利用して節税しつつ人件費をあげるよう試算してみてください。

単価見直し

ただ賃上げをしても、利益が増えていなければ会社が赤字となってしまいます。

利益を確保するために、自社が提供している工事単価を見直し適正な利益を得られるよう調整しましょう。

ほかの企業も賃上げをおこなうにあたり、単価の見直しを随時おこなっています。単価の見直しをし、利益が増えれば賃上げによる人件費負担も軽くなるでしょう。

建設業における利益率の確保方法については以下の記事で詳しく解説しています。

業務コストカット

日々の業務で発生しているコストの削減も重要です。

例えば長時間労働による残業代コスト、また工程管理の甘さによる余分な資材・人員の発注などを見直し、無駄を省きましょう。

長時間労働が是正されれば残業代が抑制でき、その分のコストを給与ベースに充当できます。

また工程管理や原価管理方法を見直して制度を高め、原価を下げて利益率をあげる試みをすれば、人件費負担が減るはずです。

建設DXの導入

業務効率を上げて残業代コストを削減するために、建設DXの導入も有効です。

建設DXとは建設業の事務作業や現場作業にIT機器を導入し、作業効率をあげる施策のこと。

作業効率の向上で労働時間を改善し、労働環境の整備につながります。

建設DXのための機器導入には費用がかかりますが、IT導入補助金を利用して初期コストを抑制可能です。

IT導入補助金についての詳細は以下の記事でまとめています。

高齢者の雇用

定年を迎えた高齢者の技能者はスキルが高く経験を積んでいて優秀な働き手といえます。

体力の面から現場の作業は難しいかもしれませんが、若手の指導などに取り組んでもらうことは新人研修の面で見ても有効でしょう。

高齢者の再雇用は一般的な給与よりもコストは低く、優秀な人材を雇用できます。

定年を迎えた業界経験者を自社に招き、限定的な業務を依頼することで人件費を抑えられるでしょう。

まとめ

建設業界の賃上げの流れは2022年春から大手を中心として強まっており、中小企業も準じていくことが予想されます。

賃上げによって公共事業の入札加点を受けられるだけでなく、人材の雇用面や担い手の育成など企業にとっても恩恵を受けられるでしょう。

しかし、賃上げは企業にとって負担となり、利益を確保することも同時に検討しなければなりません。

そのためには、自社のコストを徹底的に見直して業務改善をおこなう必要があります。

建設DXのひとつとして建設業向けシステムを導入し、自社業務を一元管理して効率化しましょう。

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