新型コロナウイルス感染拡大により、先行きが不安な工務店も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、このような状況下を生き抜くために欠かせない経営戦略について、その必要性から、どのような経営戦略を立てれば良いのかといった点について解説しています。
経営戦略について知りたい方や経営戦略の立案に悩む方はぜひ参考にしてください。
目次
経営戦略とは
経営戦略とは、その名の通り、企業の経営に関する戦略のことです。中長期的に企業が売り上げを確保し競合他社との競争のなかで生き残っていくための方針や計画だと考えて下さい。
経営戦略の立案にあたっては、自社を取り巻く内部・外部環境を整理し、フレームワークを活用した自社の優位性や差別化ポイントを把握することが重要です。同じ工務店でも会社を取り巻く環境はさまざまであるため、経営戦略は全く異なります。
工務店における経営戦略の必要性
ここでは、なぜ工務店で経営戦略を立案することが必要なのか、その理由について解説します。
新型コロナウイルス感染拡大の影響
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、建設業界においては資材の納期遅延や人材不足などが起こり工期の延期が発生しています。また、工事ができたとしても、人が密集する状態を避けなければならないため、作業の進捗が従来よりも遅くなってしまっているケースもあります。
このように、さまざまな事情から、自社の経営が脅かされる可能性は常にあるといえます。そのため、企業は変化する社会環境に応じて、現状の理解と将来の予測を経営戦略という形で行わなければなりません。現状を把握せず、さらに将来の予測を立てないまま、行き当たりばったりの経営を続けていては、1年後、5年後、10年後に会社が残っているかどうかはわかりません。
新設住宅着工件数の減少
近年、新設住宅の着工件数が減少しています。株式会社野村総合研究所によると、新設住宅の着工戸数は2017年度が95万戸でしたが2020年度は77万戸、2025年度は69万戸、そして2030年度には60万戸と年を追うごとに減少していくと予測しています。
件数の減少すると、より少ない顧客を奪い合うことになるため、工務店にとっては今後厳しい状況が訪れると予想されます。このような事態に備えるためにも、将来についての経営戦略を立てておく必要があるといえるでしょう。
横ばいなリフォーム市場規模
同じく株式会社野村総合研究所によると、リフォームの市場規模は2030年まで横ばいで推移すると予測されています。
新設住宅の着工件数減少により今後リフォームに力を入れてくる工務店が出てくるかもしれません。そうなると、いくら横ばいとはいっても安心できる状況ではなくなるでしょう。
そのため、自社や競合他社の動向を整理し、今後の戦略をしっかりと考える必要があるといえます。
後継者問題
工務店を始めとした建設業界においては、後継者不足の問題が顕在化してきています。帝国データバンクによると、建設業における社長の平均年齢は59歳で、高齢化が進行しています。また以下の表のように、社長の年代構成比も40代以上が多く若い世代に少ないのが現状です。
社⻑の年代構成⽐
平均年齢 | 59.0歳 |
30歳未満 | 0.1% |
30代 | 3.4% |
40代 | 20.8 % |
50代 | 26.1 % |
60代 | 29.6 % |
70代 | 17.3% |
80歳以上 | 2.8% |
以下の表は後継者不在の割合を示しています。近年では後継者不在率こそ減ってきていますが、いまだその数値は高いといえます。
2017年 | 2018年 | 2019年 | |
建設(大分類) | 71.2 % | 71.4% | 70.6% |
職別工事(中分類) | – | 74.7% | 73.7% |
総合工事(中分類) | – | 67.9% | 67.1% |
設備工事(中分類) | – | 72.6% | 71.7% |
企業によっては、社長が取引先とのやり取りやお金の管理などを全て担っている場合もあるでしょう。そのような企業においては、後継者を育てなければ社長が退任した後に一気に経営難に襲われる可能性があります。
人手不足
人手不足は工務店にとっては大きな問題です。人手不足の背景には、現場で働く人の労働条件の悪さや業界の習慣などがあると考えられます。
例えば、住宅建設などに取り組む大工の平均年収は400万円程度とされており、40代で年収は頭打ちになります。また、大工の給与形態は、日給で計算されているケースが少なくないため、雨で作業ができない日が出てくると、その日は無給になってしまいます。
このような給与面での条件の悪さは、人手不足である理由の1つといえます。
また、労働環境に関しても、大工の労働時間は比較的長めだとされています。一般企業に勤める人が8時間労働をおこなうのに対して、大工はそれ以上働くことも少なくありません。このような労働環境も大きな問題だといえるでしょう。
工務店が行うべき経営戦略
ここでは、工務店が行うべき具体的な経営戦略について解説します。
若手の採用と人材教育
先述の通り、建設業においては、若手人材の不足が大きな問題となっています。そのため、経営戦略では、若手の採用についても考えておく必要があるでしょう。また、ただ採用すればいいというわけではなく、若手社員がすぐに離職することなく定着できるように教育制度などについても考えておくのもポイントです。
フレームワークで自社を分析
経営戦略を立案する際は、フレームワークを活用することで自社を取り巻く環境について理解することができます。
例えば、SWOT分析では、ビジネスを構成する要素を「強み」「弱み」「機会」「脅威」という4つに分け、それぞれの情報を整理することで、自社にとっての優位性やリスクなどが把握できます。それにより他社との差別化を図ることもできるでしょう。
また、3C分析の利用もおすすめです。こちらは、自社を取り巻く環境を「自社」「競合」「顧客」という3つに分け、それぞれの視点から戦略を考えるというフレームワークです。分析を行うことで、自社がターゲットとすべき顧客があきらかになります。
ブランディング
フレームワークでの分析を踏まえて、自社のブランディングに取り組むことも重要です。例えば、他社との差別化を図るポイントが「デザイン性のある家を作れること」であれば、設計力やデザイン性をアピールするような情報発信を行いましょう。自社の立ち位置が明確になることで、新規顧客に対して「あの工務店はかっこいいデザインの家を建ててくれる」といったイメージを持ってもらうことができ、受注にも繋がりやすくなるでしょう。
集客
工務店の中には、新居の建設を検討している人からの問い合わせを待つだけの企業も少なくありません。しかし、先述の通り、新設住宅の着工件数は減少していくと予想されているため、自分たちから積極的に集客に取り組む必要があります。
特に中小工務店の場合、従来のように展示場への出展や広告の活用だけでは、コストや人員に見合った集客を行うことは難しいと考えられます。そのため、これまでの集客チャネル以外の方法を活用することも大切です。例えば、SNS使った情報発信も集客につなげることができるでしょう。
まとめ
今回は、経営戦略の必要性から具体的な戦略の内容などについて解説しました。
現在、工務店を取り巻く状況は決して簡単なものではありません。先行きが見えない中で、企業が生き残っていくためには、中長期的な経営戦略が欠かせません。
工務店の担当者は、ぜひ今回の内容を参考に戦略立案に取り組んでみてください。