EVを移動手段としてだけでなく、電源として使用するV2Hが注目を浴びています。
工務店へ相談してくる施主の中にも、V2H機器の設置について悩んでいる人が多いでしょう。
この記事では、電気自動車が電源になるV2Hの仕組みや家庭用EV充電器との違い、EV活用のメリットとデメリット、V2H機器の選び方を解説します。
目次
EV(電気自動車)が電源になるV2Hの仕組み
電気自動車を家庭用の電源にするV2Hが話題ですが、仕組みまで理解している方は少ないでしょう。
ここからは、EVが電源になるV2Hシステムの仕組みを説明します。
V2Hの充電設備で電気自動車へ充電可能
V2H充電設備を利用すれば、家で電気自動車に充電できます。
通常EVを充電するときは、近くの充電スポットを探します。
しかしV2Hを導入すれば、V2H機器の充電設備を利用して電気自動車を充電が可能です。
家に帰って寝ている間に充電が完了しているため、わざわざ充電のために移動する必要がなく、効率的に電気自動車を利用できます。
電流の変換でEVから家庭へ給電
V2HからEVへ充電できるだけでなく、電流の変換で電気自動車から家庭への給電が可能です。
通常電気自動車と家庭で使っている電力は、電流が違うため相互に行き来できません。
しかしV2Hの設置によって、電流を変換できるようになるため、電気自動車から家庭へ、家庭から電気自動車へ給電できます。
V2Hのより詳しい仕組みについては、以下の記事も参考にしてください。
V2H機器と家庭用EV充電設備の違い
V2H機器とEV用充電器の違いについて、簡単に説明します。
V2H機器は先ほど説明したとおり、電気自動車と家庭での相互の電気の行き来を可能にする機器です。
反対に家庭用EV充電器は電気自動車を充電できますが、V2Hのように家庭への給電はできません。
自宅で電気自動車を充電する目的で導入するなら家庭用EV充電設備で事足ります。
ただし将来的に使用電力量を削減したい、電力をさらに無駄なく使いたいと考えている方はV2H機器を導入すると良いでしょう。
EV(電気自動車)を活用したV2Hのメリット
EV・V2H双方を活用した際のメリットを5つ紹介します。
施主がV2Hを設置しようか迷っているときに、メリットを提示できればスムーズに施主が決断できる可能性が上がります。
工務店の担当側も、V2Hを導入したら施主が得られるメリットを理解しておきましょう。
電力の有効活用を実現
電気自動車だけを所有して得られるメリットは、エコカー減税や燃料代の節約などです。
さらにV2Hを導入すれば、家庭で充電できるようになり、また電気自動車に貯めておいた電力を家庭でも使えます。
例えば電気自動車を外部の給電スポットで充電して帰宅し、夜間はEVバッテリーの電力を使えば、電力会社からエネルギーを購入する必要がありません。
余った電力をフル活用できる点が、V2Hのメリットです。
非常時の電力確保
天災による停電時も、電気自動車とV2Hがあれば電力を確保できます。
電気自動車のバッテリー容量は20〜60kWhと大容量で、一般家庭での1日あたりの電力使用量を12kWhとすると約1.6日〜5日は電気をまかなえる計算です。
【参考】日産リーフ サービスサイト
万が一停電が長期化しても、電気自動車で充電スポットへ移動して電力を運べる点も、EVの強みでしょう。
V2Hでの停電対策については、下記の記事で紹介しています。
蓄電池としての代用
太陽光発電を導入している場合は、蓄電池に余った電力を貯めておきたいと考える施主も多いです。
しかし、蓄電池の導入費用は100万円以上と高額です。
最近は蓄電池ではなく電気自動車を蓄電池代わりにする施主も増えています。
一般的な家庭用蓄電池の容量は10kWhですが、電気自動車のバッテリー平均は20〜60kWhと2倍以上です。
さらに電気自動車は移動用にも使えるため、蓄電池代わりにも移動手段にもなります。
最近の家庭では蓄電池ではなく、V2Hを代用品として利用するケースも多いです。
EVを蓄電池代わりに使用する方法については、以下の記事をご覧ください。
電気自動車の急速充電
V2H機器を導入すれば、電気自動車の急速充電が可能となります。
補足:急速充電器を購入すれば急速充電は可能です。
一般的なEV充電器の出力は3kWhですが、急速充電では2倍の6kWhで充電します。
例えば日産「サクラ」のバッテリー容量は24kWhであるため、急速充電なら4時間でフル充電可能です。
電気自動車の充電時間を短縮でき、いざ使おうと思ったときに十分に充電できていないトラブルを防げます。
ガソリン代よりも家計負担が軽減
EVは一般的なガソリン車よりも、家計負担が低い点もメリットです。
2023年11月6日時点のガソリン料金は173.4円/ℓです。
【出典】石油製品価格調査(経済産業省 資源エネルギー庁)
レギュラーガソリンを月に4回満タン(乗用車の平均である50ℓと仮定)入れた場合は、月間34.680円必要となります。
一方で公共の充電スポット(e-Mobility Powerを利用した場合)を利用した場合は、普通充電で1分3.85円、急速充電で1分27.5円。
40kWhのEVを充電する場合は、普通充電で3,003円、急速充電の場合は約5,940円です。
ガソリンと同じように月に4回フル充電すると考えると、普通充電で12,012円、急速充電なら23,760円とガソリン車よりも燃料費(電気代)は抑えられます。
各メーカーの電気自動車の燃費効率等により差が生じます。
EVをV2Hで活用するデメリット
EVをV2Hで活用す3つのデメリットを紹介します。
施主にメリットだけを紹介し、デメリットを伝えないと後々思わぬトラブルになるケースも。
事前にデメリットも伝えたうえで、メリットと比較検討してもらいましょう。
選べるEVは限定的
V2Hを導入する際に電気自動車の購入が必要ですが、車種はまだ限定されます。
現存するすべての電気自動車が、V2Hに対応しているわけではないためです。
V2Hに対応している電気自動車については、以下の記事で解説しています。
V2H設置費用が高額
燃料代などはガソリン車よりもEVの方が安くなりますが、そもそものV2H設置費用が高額です。
V2H機器本体の購入に100〜200万円程度、設置費用は数十万円かかかります。
また電気自動車も合わせて購入する際は、車種によりますが200万円以上予算を考えておかなければなりません。
V2Hの設置費用については、以下の記事をご覧ください。
EVバッテリーの劣化速度
V2Hは電力の有効活用に有効な方法ですが、EVバッテリーの劣化を早めるリスクがあります。
バッテリーが劣化する原因は、充放電サイクルが大きくなること。
V2Hで家庭へ給電すると、一般的なEVの使用よりも充放電サイクルが増えるため、劣化が早まる可能性があります。
高額なEV・V2H機器を選ぶポイント
デメリットで紹介したように、EVやV2Hは高額です。
なるべく施主の負担を減らすよう、機器選びについてアドバイスできるようにしておきましょう。
利用できる補助金額
EVやV2Hの購入には、補助金が利用できます。
電気自動車の購入補助金は毎年上限額が異なりますが、2023年のEV補助金額の上限は85万円です。
【参考】銘柄ごとの補助金交付額
またV2H機器についても、115万円まで補助金利用が可能です。
V2H導入の補助金については、以下の記事で詳しく解説しています。
V2H機器のサイズ
V2H機器を選ぶ際は、サイズを重視しましょう。
例えばニチコンの「EVパワー・ステーション」の大きさは、幅80.9cm×高さ85.5cm×奥行33.7cmです。
サイズが大きすぎると駐車場に設置できない、車が停められる場所が狭くなる可能性があります。
まず施主の駐車場などに十分なスペースが用意されているか確認し、適切なサイズのV2H機器を選びましょう。
V2H機器の連係方式
V2H機器には2つの連係方式があります。
- 非系統連系…電気の給電方法は1種類のみ。電気自動車からの給電中に電力会社からの給電は不可
- 系統連系…給電方法を複数利用できる。電気自動車からの給電中に電力会社からの給電できる
系統連系のV2H機器なら、電力会社からの電気を使いながら電気自動車からの給電が可能ですが、非系統連系の場合は複数の併用ができません。
電力会社からの電力と電気自動車の電力を併用したいなら、系統連系方式を選びましょう。
太陽光発電との互換性
必須ではないものの、太陽光発電を併用したいと考えている施主もいるでしょう。
将来的に太陽光発電も設置し、さらに電力を有効活用するビジョンがある施主には、太陽光発電設備との互換性がある機器を購入するようアドバイスしてください。
太陽光発電設備とV2H機器が連携できないと、太陽光パネルで発電したエネルギーを有効活用できません。
太陽光発電設備とV2H機器の併用については、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
電気自動車(EV)とV2Hの併用で、電力の有効活用が可能となります。
燃料や電力料金の高騰による家計負担を減らし、長い目で見れば経済的な方法として注目している施主も多いはずです。
施主がEVとV2Hの併用について悩んでいたら、メリットとデメリットを比較検討して、適切な運用方法をアドバイスしてあげてください。
特にネックとなりやすい費用面においては、補助金や太陽光リースの活用をおすすめします。
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