電気自動車は蓄電池として代用できます。
V2H機器を導入すると、給電スポットで充電した電力を家庭用に使用可能です。
近年、太陽光発電設備の認知拡大に伴い、V2Hや電気自動車に興味をもつ施主も増えてきました。
工務店でも電気自動車を蓄電池として使用するメリットや、太陽光発電との併用がおすすめなことを把握し、解説できるようにしておきましょう。
本記事では電気自動車を蓄電池として利用するメリット、太陽光発電と併用することがおすすめな理由、デメリットを解説しています。
また、費用負担を抑える補助金情報や施主が得られる経済的利益も掲載しています。
目次
電気自動車は蓄電池として利用可能
電気自動車は蓄電池として利用できます。
家庭用蓄電池は高額であるため、太陽光発電と蓄電池を購入すると考えると費用がかかります。
元々V2H対応の電気自動車を持っている方、車の購入を検討している施主にとっては、まずは太陽光発電と蓄電池代わりの電気自動車を利用した方が、導入ハードルが低いかもしれません。
工務店の担当者の方もメリットの解説のひとつとして、電気自動車を蓄電池として代用する方法について解説できるようにしておきましょう。
V2Hの概要や電気自動車・太陽光発電を併用すべき理由は以下で解説しています。
家庭用蓄電池よりも大容量
電気自動車に搭載されているバッテリーは、家庭用蓄電池よりも容量が大きいです。
そのため貯めておける電気の量が多く、万が一の事態があっても長く・必要な家電を動かせます。
一般的に家庭用蓄電池の容量は、5kWh〜7kWh、大型の蓄電池で10kWhです。
一方で電気自動車の蓄電池容量は10〜40kWhと大容量。
V2H対応の日産「リーフ」は、40kWhと60kWhのバッテリーが用意されており、オプションで蓄電池の容量の大きさを選べます。
【参考】リーフ [ LEAF ] – 航続距離・バッテリー-日産自動車株式会社
太陽光発電との併用による節電効果
電気自動車を蓄電池として使用すると、太陽光発電の節電効果をより高められます。
電気自動車を所持しており、V2H機器を導入すれば停電対策は可能です。
給電スポットで充電し、V2H機器で電流を変換すれば自宅で電力を使用できます。
しかし、太陽光発電を併用すれば自家発電した電力を容量の高い電気自動車のバッテリーに蓄電可能です。
給電スポットへ行かなくても充電が可能となり、また太陽光発電で発電した電力で自宅の電力を賄えます。
結果的に、電力会社から購入する電力量が減るため、電気料金も抑えられるでしょう。
停電・災害時の非常用電源
電気自動車を蓄電池代わりにすれば、停電・災害時に非常用電源として役立ちます。
給電スポットで充電しておけば、万が一の停電や災害発生時に家電を動かせるでしょう。
地震大国である日本では、いつ大地震が起きるか予測できません。
また、近年は電力逼迫も懸念されているため、大規模停電が起きる可能性もあります。
電気が使えないと生活に大きな支障が出るため、災害や停電対策として電気自動車を蓄電池代わりに使用する方法は、大変おすすめです。
脱炭素社会への貢献
電気自動車を蓄電池として併用すれば、近年世界中が推進している脱炭素社会への貢献にも繋がります。
脱炭素とは、二酸化炭素の排出量を0にする取り組みです。
政府は脱炭素社会を目指し、再生可能エネルギー(太陽光発電)や電気自動車の推奨など、さまざまな取り組みを発表しています。
従来のガソリン車は、ガソリンを燃焼させて動いており、大量の二酸化炭素を排出していました。
しかし、電気自動車は電気を動力源としているため、二酸化炭素を発生させません。
また、電気自動車への蓄電でエネルギーを無駄にせず活用でき、発電の際に発生する二酸化炭素量も削減可能です。
電気自動車を蓄電池として利用することで、二酸化炭素量を減らして、地球の環境を守れます。
補助金の利用
電気自動車は高額ですが、補助金を利用して負担を減らせる点もメリットです。
電気自動車購入についての補助金は、2023年現在以下の2つです。
補助金 | 特徴 |
---|---|
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金 | 電気自動車、プラグインハイブリッド車の購入費の一部を補助電気自動車:上限65〜85万円 |
クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金 | V2H充放電設備の購入費および工事費の一部を補助V2H充放電設備:上限75万円(補助率1/2) 工事費(個人):40万円(補助率1/1) |
電気自動車の種類によって補助額は変動しますが、最高で85万円の補助を受けられます。
メーカーによりますが、電気自動車の購入費用は190〜270万円程度が相場です。
太陽光発電と併用する際は、さらに太陽光発電導入の補助金も受けられるため、施主の負担は軽減できます。
電気自動車を蓄電池に利用する際の懸念点はコスト
電気自動車を蓄電池として利用する際に、最もネックとなる点はコストです。
またコスト以外にも、充電サイクルが増えることで電気自動車のバッテリー劣化が早くなるリスクもあります。
メリットだけでなく、工務店側も施主に対して電気自動車を蓄電池代わりに使うデメリットを解説できるように、理解を深めておきましょう。
初期費用が高額
電気自動車の購入費用自体がかなり高額で、施主に負担をかける可能性があります。
メーカーやグレードによりますが、相場は190〜270万円と高額です。
補助金を上限いっぱい利用したとしても、95〜185万円程度の出費があります。
また、電気自動車を蓄電池として利用するためにはV2H機器も設置も必要です。V2H機器を設置する費用は80〜100万円程度となります。
太陽光発電設備もあわせて導入する場合は、約85〜143万円の初期費用が必要になるため、合計で300〜400万円程度の費用を用意しなければなりません。
充電スポットの不足
太陽光発電の併用なしで電気自動車を利用する場合、電気自動車への給電は充電スポットでおこないます。
充電スポットは、ショッピングモールやガソリンスタンド、駐車場などに設置されていますが、まだ十分な数があるとはいえません。
経済産業省が発表した資料によると、2022年3月時点で日本における充電スタンド設置数は、29,463基です。
電気自動車の累計販売台数が同程度のオランダと比べると、充電スポットが少ないことがわかります。
電気自動車のフル充電には、6〜12時間程度必要です。
急速充電スポットを利用すれば時間は短縮できますが、一般的に見かけるスポットはほとんどが3kWhの普通充電であり、急速充電スポットはまだ多数設置されていません。
車種 | 車種 |
---|---|
日産「サクラ」20kWh | 普通充電(3kWh)で6時間程度 |
日産「リーフ」40kWh | 普通充電で12時間程度 |
日産「アリア」66kWh | 普通充電で20時間程度 |
表のように、電気自動車をフル充電しようとすれば一定時間数スポットを占領することとなります。
多くの人が電気自動車を蓄電池代わりに利用すればするほど、充電スポットが今以上に不足する可能性があるでしょう。
政府は充電スポットの拡充に取り組んでいますが、整備の進捗次第ではいざ充電したい時にスポットが空いていない、見つからない可能性があります。
バッテリー劣化
電気自動車を蓄電池として利用すると、電気自動車に搭載されているバッテリーの劣化速度が早まります。
蓄電池は充電サイクルが多いほど劣化するためです。
蓄電池代わりに電気自動車を利用した場合、普通に自動車を使う時よりも充電回数が増えます。
電気自動車のバッテリーが早く劣化してしまい、故障・メンテナンスが必要になるリスクがある点は説明しておきましょう。
V2H対応車種の購入が必須
電気自動車を蓄電池代わりに利用するためには、V2Hに対応した車種を購入しなければなりません。
電気自動車のすべてが蓄電池として利用できるわけではないためです。
V2Hとは、Vehicle to Homeの略称。電気自動車に蓄電した電力を家庭用に使用する新たな電源確保方法です。
電気自動車に蓄電した電力を自宅で使うには、電流を変換する機器が必要になります。この変換機器をV2H機器と呼びます。
電気自動車を蓄電池代わりに使いたい場合は、V2Hに対応した車種を選ばなければなりません。
V2Hに対応した車種一覧は、こちらの記事で紹介しています。
電気自動車を蓄電池として使うなら太陽光発電との併用がおすすめ
電気自動車を蓄電池として利用する場合は、太陽光発電との併用がおすすめです。
施主の費用負担が高くなる点は問題ですが、節電効果や売電収益などのメリットもあります。
また、施主の負担を軽減する補助金情報もまとめました。
工務店で太陽光発電やV2Hの導入に取り組んでいる方は参考にしてください。
節電効果の高さ
電気自動車を太陽光発電と併用すれば、高い節電効果が得られます。
太陽光発電で発電した電力を自動車に充電し、また自宅用に回せるためです。
電力会社から購入する電力量が減り、自宅の電力をある程度太陽光発電で賄えます。
充電スポットの不足にも対応可能
太陽光パネルを設置しておけば、充電スポットが不足している場合でも、電気自動車に充電できます。
電気自動車を通勤など日常的に利用する場合、スポットの不足は致命的です。
しかし、自宅に太陽光発電設備があれば、自宅で発電した電力で自動車に給電できます。
電気料金の高騰への対応
電気自動車と太陽光発電の併用で、電気料金の高騰にも対応できます。
東京電力によると、電力平均モデルは2021年年末より上昇し続けています。
2023年6月にも電気料金の値上げが発表され、家計への影響が懸念されている状態です。
太陽光発電を導入すれば、電力会社から購入する電力量が減るため、電気料金の高騰対策になります。
電気自動車へ蓄電すれば、余剰電力を家庭用に使用できるため、さらに購入する電力量を減らし、電力料金を抑えられるでしょう。
売電収入
太陽光発電によって発電したエネルギーは、「FIT制度」により電力会社に買い取ってもらえます。
FIT制度とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度です。
再生可能エネルギーから作られた電力に限り、電力会社が一定の価格で一定期間買取します。電力の料金は、毎年の入札に応じて変動します。
太陽光発電と電気自動車を組み合わせれば、効率的に発電した電力を貯蓄でき、必要な分だけ自宅で利用が可能です。
余剰分は買取に回せるため、売電収益を得られる仕組みです。
2023年度の売電価格は、10kW未満は16円(1kWhあたり)、10〜50kW未満の場合は10円(1kWhあたり)で買い取ってもらえます。
経済産業省によると、発電電力のうち平均69.4%が売電に、自家利用が30.6%だと発表されています。
【参考】太陽光発電について-経済産業省
環境省によると、日本の太陽光発電による平均発電量は約1,215kWhです。
【参考】3.3 公共系等太陽光発電の導入ポテンシャルの再推計 ※直流想定で推計している。-環境省
家庭用の一般的な太陽光パネルの発電量は5kWh程度のため、年間で6,075kWh自宅で発電できます。そのうち69.4%を売電に回すと想定し、売電収入をシミュレーションしてみましょう。
つまり年間で7万円弱の収入を得られます。
太陽光発電での売電収入については、以下の記事で解説しています。
電気自動車・太陽光発電設備ともに補助金利用が可能
電気自動車・太陽光発電設備の導入には、300〜400万円程度の初期費用が必要です。
施主にとって大きな負担となりますが、補助金利用で負担を軽減できます。
電気自動車、V2H機器の補助金と太陽光発電設備導入補助金も案内することで、施主が感じているコスト面での不安を払拭できるでしょう。
また、太陽光発電の導入費用で悩んでいる施主には、太陽光リースというサービスもおすすめです。
初期費用無料で始められ、月々のリース料を支払うため経済的負担はかなり下がります。
太陽光発電導入の補助金については、以下の記事で紹介しています。
また、太陽光リースの概要や料金、仕組みについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
まとめ
電気自動車を蓄電池代わりに利用することで、節電や停電対策、環境への貢献が可能です。
太陽光発電との併用で、さらに節電効果が期待できる点も、工務店としてはアピールしておきましょう。
ただし、電気自動車やV2H機器の導入、太陽光発電設備は高額です。
費用面がネックになる施主が多いため、補助金やリースがある旨を案内し、できるだけ負担なく太陽光発電・電気自動車を利用したV2Hの導入を目指しましょう。
太陽光リースを勧めたいが、サービスの概要や業者選びに困っている工務店担当の方もいるはずです。
建築現場博士がおすすめする太陽光発電システムは『ダブルZERO』です。
太陽光発電システムの設置と災害対策を初期費用0円でおこなえます。
ダブルZEROを提供しているSolaCoe株式会社は、新築住宅向けに4,000件の太陽光発電システムを設置した実績とノウハウを持っています。
太陽光発電システムの申請代行もおこなっており、太陽光発電システムの経験がない工務店様でも心配はありません。
またオンライン・オフライン形式での勉強会開催や提案ツールの提供をおこなっており、太陽光発電が未経験であっても安心して施主様に提案が可能です。
6,075kWh×0.694=4,216kWh
16円(2023年の売電価格)×4,216kWh=67,456円