工務店が工事を受注する際に、発注者との間で取り交わす工事請負契約に必要な「工事請負契約書」。
工事請負契約書に記載しなければならない項目から、添付する書類、契約書を書くときの注意点などについて解説します。
工事請負契約書の書き方がわからない方、初めて作成する方などはぜひ参考にしてください。
目次
工事請負契約書の書き方
工事請負契約書には記載必須の項目があるほか、工事によって記入内容が異なる項目、さらには添付書類があります。ここでは、工事請負契約書の具体的な書き方として、以下の点について解説します。
記載が義務付けられている16項目
工事請負契約書を書く場合、以下の14項目は建設業法(旧法)で記載必須とされていましたが、2020年10月の建設業法の改正により「工期を施工しない日・時間帯」と「その他国土交通省令で定める事項」の記載も必須となりました。
これらの項目は、発注者と受注者の間で認識の違いをなくし、後々のトラブルを回避するためにも欠かせないものです。
具体的な工事内容から、各種代金の支払期日や支払方法、工期の変更に関するルール、賠償金の負担に関する取り決めなど、細かい部分まで決めていきます。
項目の抜け漏れは、トラブルにつながる恐れもあるため、工事請負契約書作成時は上記項目が記載されているか必ず確認してください。
工事によって内容が異なる8項目
工事請負契約書に記載する項目のうち以下の8項目に関しては、工事によって記載内容が異なるため注意が必要です。
工事名はその工事につけられている名前を、工事場所は工事現場の住所を記載します。
工期に関しては、必要に応じて引き渡し時期を明記してください。
また、2020年10月以降の契約に関しては、工事を施工しない日/工事を施工しない時間帯の記載も欠かせません。
支払方法は、建設業の場合複数回に分けて支払われるのが一般的です。
そのため、各タイミングで代金の何割を支払うのか記載してください。
調停人を設定しない場合は項目自体を削除します。
その他は、契約書の作成枚数と発注者・受注者の署名・押印などを記載してください。
工事請負契約書を書く場合、前回使用したものを踏襲して作成する場合も多いでしょう。上記の項目がコピペになっていないか確認が必要です。
工事請負契約書に添付する書類
工事請負契約を結ぶ際には、工事請負契約書以外の書類も提出しなければなりません。
工事の種類によって必要となる添付書類が異なるため注意してください。
標準請負契約約款
標準請負契約約款は、中央建設業審議会(中建審)が作成した下記4種類の約款です。
公共工事標準請負契約約款 | PDF 形式 | Word形式 |
民間建設工事標準請負契約約款(甲) | PDF形式 | Word形式 |
民間建設工事標準請負契約約款(乙) | PDF形式 | Word形式 |
建設工事標準下請契約約款 | PDF形式 | Word形式 |
①公共工事標準請負契約約款
国や地方公共団体など公的か機関が発注者となる工事を受注する際に使用する書類です。
なお公共工事標準請負契約約款は、公共工事以外にも電力やガス、鉄道などの民間企業が発注する工事に対しても使用できます。
②民間建設工事標準請負契約約款(甲)及び(乙)
民間企業が発注する工事を受注する際に使用する書類です。民間工事の場合は、先ほどの「公共工事標準請負契約約款」も利用できるため、どちらを使用しても構いません。
③建設工事標準下請契約約款
下請け工事を受注する際に使用する書類です。
その他の工事請負契約約款
工事請負契約約款には、標準請負契約約款の他に下記3つの種類があります。
工事に適した種類を選びましょう。
工事請負契約書を書くときの注意点
工事請負契約書を書く際には、後々のトラブルを避けるために下記の4点に注意しなければなりません。
違約金
悪天候の影響などにより工期が延期となる場合もあるため、延期に伴う違約金を設定しておきましょう。
違約金に関しては、標準約款では年14.6%で請求できるとされています。しかし、法律上では年5~6%で計算するとされており、差が生じています。
標準約款の内容に従って違約金を設定すると、工期の延期に伴い大赤字となる可能性があるでしょう。そのため、違約金の金額は発注者としっかり相談したうえで決めなければなりません。
工期の延長
工期の延長が認められる場合の具体的な規定を明確に決めておく必要があります。受注者と発注者の間で工期の延長に関する認識の違いを起こさないためです。
例えば雨により工事ができない場合、工務店側は「工期の延長ができる」と思っていても発注者は「工期の延長の理由としては認められない」となる可能性があります。
工期の延長に関しては、標準約款では「不可抗力によるとき又は正当な理由があるとき」とされています。
しかし、これだけでは天候不順や発注者の仕様決定の遅れによる延期が認められるのか不明です。
工事請負契約書を作成する際は、工期の延長が認められる具体的な理由を発注者と協議して決めましょう。
追加工事代金・支払義務
発注者からの要望による工事途中での仕様変更、工事後の工事など追加工事が発生するケースもあるため、追加工事代金の支払いに関する取り決めも行う必要があります。
発注者と受注者の間に追加工事に関する認識の違いがあり、追加工事代金の調整に難航するケースは少なくありません。
調整がうまくいかないと、工務店の利益だけでなく工期へのしわ寄せや工事の品質などにも影響する恐れがあります。
このような自体を避けるためにも、工事請負契約書を作成する際は、追加工事代金の支払い義務について決めておき、追加工事が発生した際は代金を請求できるようにしておきましょう。
近隣住民からのクレーム対応
工事の騒音や工事車両の乗り入れなどが原因で、近隣住民からクレームがある場合があります。クレーム対応に関する取り決めも工事請負契約書に記載しましょう。
例えば、クレーム対応に伴う工事の中断や工期の延期を認めてもらえるようにしておけば、クレームに対して丁寧に対応できるでしょう。
具体的な取り決めを行わないまま契約を結ぶと最悪の場合、クレーム対応による工期延長が認められず工期にしわ寄せが出てくるほか、工期に間に合わず違約金が発生する恐れもあります。
このようなトラブルを起こさないためにも、必ずクレーム対応に関するルールを決めましょう。
まとめ
今回は、工事請負契約書の記載必須項目、添付資料、さらには書くときの注意点について解説しました。
工事請負契約書には工務店が工事を受注する際に必要となる書類です。
発注者とのトラブルを避けるためにも、必須項目の抜け漏れがないように毎回チェックし、違約金や工期の延長などに関する取り決めも行いましょう。
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