ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、社員一人ひとりが培ってきた「経験則」「カン」「ノウハウ」など文章化や言語化できていない知識を共有する経営手法です。
ナレッジマネジメントを活かすことで、人材育成や脱属人化などを促進できます。
本記事では、ナレッジマネジメントの概要から導入事例などを解説します。
目次
ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、社員一人ひとりが培ってきた「経験則」「カン」「ノウハウ」など文章化や言語化できていない知識を共有する経営手法です。
特に、ベテラン社員の「カン」や職人さんの「技術」を言語化し全社で共有できれば、ノウハウやスキルの継承がスムーズにおこなえます。
加えて、長い時間をかけないと得られなかった経験やノウハウの言語化ができれば、社員教育の手間と費用が削減可能で、組織の活性化にもつながるでしょう。
ここでは、ナレッジマネジメントを理解するための下記3つの要素を解説します。
暗黙知
暗黙知とは、文書や図などで表現できない知識のことです。
例えば、ベテラン社員の「カン」や職人さんの「技術」が暗黙知に当たります。
長年かけて培ってきた「カン」「技術」「ノウハウ」などは、同じ経験を積むことでしか獲得できないとされてきました。
経験することでしか身に付けられないとされてきた暗黙知は、第三者に教えることが難しく「知識」「スキル」を伝承するうえでの障害となっています。
形式知
形式知とは、文章や図などで表現できる知識です。
例えば、新入社員に渡すマニュアルが形式知に当たります。
形式知は文章化や言語化できているため、第三者に伝えることが容易で形式知となった「カン」「技術」「ノウハウ」などの伝承は難しくありません。
ナレッジマネジメントの肝は「暗黙知」を「形式知」に変換し、社員の抱えている「カン」「ノウハウ」を会社の財産とすることです。
社員の「カン」「ノウハウ」をもれなく共有できれば、共有した知識をもとに別の知識が生まれ、会社組織の活性化を期待できます。
SECIモデル
SECI(セキ)モデルとは、個人が持つノウハウなど暗黙知を形式知に変換し、得た知識でさらに新しい知識を生み出すフレームワークです。
SECIモデルは下記4つのプロセスで成り立ちます。
SECIモデルで初めにおこなうことは、日報や報告書などを用いた暗黙知の「共同化」です。
つぎに、暗黙知を図表や文章化し形式知へ変換し「表出化」をおこないます。
「連結化」は形式知を共有し、さらに新しい知識を生み出す過程です。
「内面化」は生み出された新しい知識を社員一人ひとりが体得する段階といえます。
形式知を体得する過程で新しい暗黙知が生まれ、組織の活性化につながるでしょう。
SECIモデルは上記のプロセスを何度も経ることで「知識の伝承」「知識の創造」をおこないます。
建設業にナレッジマネジメントが必要な理由
建設業にナレッジマネジメントが必要な理由はあるのでしょうか。
必要な理由を下記3つ解説します。
効率的な人材育成
ナレッジマネジメントが適切におこなわれている組織は、効率的な人材育成が可能です。
ナレッジマネジメントは「カン」「ノウハウ」の言語化により、常にマニュアルなどをブラッシュアップします。
マニュアルを日々更新し、実践や現場で使える生きた知識が共有できれば、新入社員でもすぐに戦力として活躍できるでしょう。
また、経験が浅いと同じようなポイントでつまずきます。
つまずきやすいポイントをマニュアル化すれば、指導者が回答する手間も減らせるため効率的な人材育成が可能です。
属人化の防止
ナレッジマネジメントの導入で、知識や業務の属人化の防止にもつながります。
ノウハウやスキルが伝わらない職場では、特定の社員しかおこなえない業務が生まれやすいです。
業務の属人化には、下記3つのリスクがあります。
- チェック機能が働かず、不正が生まれやすい
- トラブル発生時に、迅速に対応しづらい
- 特定の業務をおこなっていた社員が退職すると、業務が回らなくなる
上記のような業務が属人化するリスクを回避するためには、常にナレッジマネジメントをおこない個々人が抱えているノウハウやスキルを共有することが大切です。
属人化について原因などを詳しく知りたい方は、下記の記事をご確認ください。
事業の継続
ノウハウや知識の伝承がおこなわれている会社は、事業の継続が容易になるでしょう。
建設業は「社員の高齢化」「若手社員の高い離職率」2つの問題を抱えています。
ベテラン社員のノウハウを受け継ぐ人材がいないため会社に知識が残らないだけでなく、知識が継承されていないため新入社員の教育も非効率となるでしょう。
上記の問題を防ぐ方法は、社員のノウハウやスキルを文章や図表に残す文化を根付かせることです。
ノウハウやスキルが会社の財産となっていれば、退職者が出てもすぐに企業価値が下がることはありません。
事業を継続させるためにも、ナレッジマネジメントの導入は必須です。
建設業のナレッジマネジメント活用事例
建設業でナレッジマネジメントを導入している会社はあるのでしょか。
ここでは、ナレッジマネジメントを導入している建設会社を下記2社紹介します。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社では、土木部門でナレッジマネジメント導入の成果を挙げています。
これまで蓄積された知識の検索を容易にするために、工事情報や技術情報の分類体系を見直し、どこからでも簡単に分類体系に沿った検索ができるようにしました。
さらに、Q&A機能やKnow Who 機能を備えたナレッジマネジメントツールの導入で、検索では出でこない情報も疑問を投げかけることで、全国の技術者から回答を得られる仕組みづくりに成功しています。
参考:土木の言葉-鹿島建設(株)土木管理本部 土木企画部 経営基盤ITグループ次長 和田卓也
株式会社大林組
株式会社大林組は、情報を自然検索で見つけるだけでなく、利用履歴をもとに全情報を関連づけるシステムを構築しました。
ある問題を解決するために、情報Aと情報Bが使用されたという履歴を追加することで、情報Aまたは情報Bのどちらかに辿り着ければ、自然ともう一方の情報も見つけられます。
情報量が増えると、必要な情報は見つけにくくなりますが「社員の活用履歴を紐づければ有効な情報が見つけやすくなる」という事例です。
ナレッジマネジメントツール導入のポイント
効率的にナレッジマネジメントをおこなうためには、ナレッジマネジメントツールの導入がおすすめです。
しかしポイントが分からずに導入してしまうと「全然効果を実感できない」など失敗する可能性が高くなります。
自社にあったナレッジマネジメントツールを選ぶためには、下記5つのポイントを理解してください。
導入の目的を明らかにする
ナレッジマネジメントツールは下記の4種類に大別されます。
- ヘルプデスク型:業務中に発生した問題に対して、社員同士で解決方法を回答できる機能を備えたタイプ
- 検索型:すでに大量の知識が蓄積されており、検索で知りたい情報へ瞬時にアクセスできる機能を備えたタイプ
- ファイル共有型:さまざまなファイルに時間と場所を問わずアクセルできることに重きを置いたタイプ
- グループウェア型:社員同士がチャットやメッセージでコミュニケーションをおこなうことを目的としたタイプ
解決したい課題によって、最適なナレッジマネジメントツールは変わります。
ムダな手間と費用を掛けないためにも、ナレッジマネジメントツールを導入したい目的を明らかにしましょう。
グループウェアの種類や機能について詳しく知りたい方は、下記の記事をご確認ください。
利用しやすい環境を整備する
業務にナレッジマネジメントツールを定着させるためには、利用者の負担にならない環境整備が不可欠です。
環境整備は具体的に下記の2つを優先しておこないましょう。
- 誰でも同じ書式で投稿できるフォーマットの作成
- 穴埋めするだけで完成するテンプレートの作成
フォーマットやテンプレートの作成は非常に手間が掛かるため、ここの手間を利用者に押し付けてしまうと、なかなかナレッジマネジメントツールは定着しません。
本格的にナレッジマネジメントツールを使用する前に、フォーマットやテンプレートを作成し利用しやすい環境整備をおこないましょう。
使用者の声を聞く
ナレッジマネジメントツールの選定は管理者だけでおこなうのではなく、使用者の声も取り入れておこないましょう。
主に現場で働く人たちが、ツールに知識・ノウハウを投稿します。
使いづらいツールだと、初めは利用しても徐々に投稿が面倒になり「業務にツールが定着しない」ということが起こりかねません。
ナレッジマネジメントツールを業務に定着させるためには、使用者の声を聞いて誰もが使いやすいツールを選択することが重要です。
スマホ・タブレットに対応しているか確認する
スマホやタブレットからも使用できるかどうかは、業務にナレッジマネジメントツールを導入させるうえで重要です。
とくに建設業では、現場への直行直帰をしている方も多いでしょう。
直行直帰をしている中で「パソコンからしか操作できない」「事務所へ戻らないと投稿できない」というツールでは、使用者の負担になってしまいます。
スマホやタブレットからも操作できると、移動中の隙間時間などを有効利用できるため忙しい社員でも積極的に使用してくれるでしょう。
サポート体制を確認する
導入前や導入後にどのようなサポートを受けられるのか確認することは、とくに重要です。
どのようなツールでも業務に定着するまでに「何も問題が発生しない」ことはありません。
問題が発生した際に、すぐにサポートを受けられないと長期間業務に支障が出ることもあります。
サポート体制が充実していれば、問題が発生してもすぐに解決できるため後悔せずに使い続けられるでしょう。
まとめ
本記事では、ナレッジマネジメントの概要や建設業界が導入するべき理由、ツールの選定方法について解説しました。
建設業界は「社員の高齢化」「若手社員の高い離職率」などの問題を抱えており、企業が競争力を維持するためには、ノウハウや知識の継承をおこなうための仕組みづくりが重要です。
ナレッジマネジメントツールを導入すれば、簡単にノウハウや知識を継承していくための仕組みづくりをおこなえます。
ナレッジマネジメントツールの導入を検討している場合は、併せて工務店業務の効率化もおこなえる「業務効率化システム」の導入がおすすめです。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。