建設業の会計基準とは一般会計と違うため、利益額の計算が難しいといわれています。
しかし建設業は請負金額が多く、また使用する資材や人材も多く、利益額と利益率の計算は特に重要です。
この記事では建設業の利益率の概要や計算式、建設業の利益計算が難しい理由と解決策を紹介します。
目次
建設業の利益率は約18〜25%
建設業における売上総利益率(粗利率)は約18〜25%が適正といわれています。
一般財団法人建設業情報管理センターによる「建設業の経営分析(令和元年度)概要版」を参照すると、平成30年の利益率が24.96%、令和元年は25.50%です。
利益率が低下している原因はウッドショックの影響や原材料の値上がりによって、原価自体が高騰していることが考えられます。
原価高騰に負けず利益率を保つにはどうしたらいいでしょうか。まずは建設業における利益について、詳細を知っておきましょう。
建設業の利益の種類と計算方法
建設業の利益の種類は主に5つあります。
- 粗利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前利益
- 当期純利益
単純に利益率といっても、参考にしたい指標に応じて利益を計算し、利益率を把握する必要があります。それぞれの計算方法も紹介するので、建設業の利益計算を徹底したい方は改めて読んでみましょう。
粗利益
粗利益とは売上総利益のことで、売上高から原価を単純に引いた差額を差します。
粗利益=総売上額-工事原価
会社における利益は、売上総額から利益を引いた粗利益、さらにそこから諸経費をどんどん差し引いて、最終的な決算における“当期純利益”を算出する仕組みです。
つまり粗利益が少ないほど最終的に残る純利益が減り、会社としての資金力や利益が下がっていきます。
建設業において粗利益を重視すべきといわれる理由は、会社のキャッシュフローにおいて利益のもとになる利益であるためです。
営業利益
営業利益とは、売上総利益から工事原価と販売費・一般管理費を差し引いた金額です。
工事原価以外のすべてを差し引いて計算します。
営業利益=粗利益(売上総利益)ー販売費・一般管理費
例えば、営業利益を計算するために差し引く経費は以下のようなものです。
- 人件費
- オフィス・店舗の賃貸料
- 水道光熱費
- 通信費
- 接待交通費
- 保険料
- 交通費
- 消耗品
工事原価だけでなく、次は自社で使用しているバックオフィスの経費をすべて差し引いたものが営業利益となります。
経常利益
経常利益とは企業がおこなっている業務で得た利益すべてを意味します。
売上総利益額とは工事で得た利益すべてを意味しますが、経常利益には建設業以外の投資や家賃収入などの利益・支出をすべて加えて計算したものが経常利益です。
経常利益=営業利益+営業外利益ー営業外費用
仮に営業利益が多くても、本業以外での支出(借入など)が多かった場合は、経常利益は下がります。
建設業の経常利益の概要や詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
税引前利益
税引前利益とは、経常利益からさらに特別損失・特別利益を差し引いて計算します。
税引前利益=経常利益+特別利益ー特別損益
特別損失・特別利益とは、企業の本業とは関係のない特殊要因によって発生した利益を意味します。
予定外に発生した利益・損失を経常利益に加算したり、差し引いて計算したのが税引前利益です。
決算時の純利益算出のために重要な指標となるため、正確に計算する必要があります。
当期純利益
当期純利益とは、建設業において1年間で生み出した総利益の中から、すべての経費などを差し引いて計算した利益です。
当期純利益=税引前純利益ー税金
税引前純利益から、法人税・住民税、事業税などの税金をすべて引いて計算します。
会社の収益性を示す指標となるため、企業の経営方針の決定指標となるだけでなく、投資家が投資対象を精査する際にも使われます。
建設業における利益率で、最も重視されるのが粗利益と営業利益です。
粗利益はすべての利益の基本となる数字であり、営業利益は建設業において得た利益の総額を把握できます。
建設業の利益率について詳しく知りたい方は、利益率や利益率の上げ方について解説した記事を参考にしてください。
建設業の利益計算が難しい原因は会計の特殊さ
建設業の利益計算が難しい原因は、会計自体が特殊であるためです。
その中でも特に以下の3分類の収支が会計を複雑にしています。
工期が長いことから、請負工事に必要な外注費用、またクライアントから工事完了前に代金の一部を受け取るなど、特殊な入出金のあることが原因です。
未成工事支出金
未成工事支出金とは、まだクライアントから工事代金を受け取っていない工事に対して自社で負担しておく支出です。
工事完了後に代金を支払ってもらって精算しますが、工期が長いと代金を受け取るまでは自社キャッシュの中から代金を支払わなければなりません。
工事完成前に売上として計上できないため、工期完成までは“未成工事支出金”として計上します。
工事未払金
工事未払金とは、工事完成前に自社で発注した資材や人件費の未払分です。一般的な企業において“買掛金”に該当します。
リース・契約期間によっては、先に自社で資材費や人件費を先に支払うこととなり、その時点で未成工事支出金として勘定項目を振り替えなければなりません。
同じ取引先への支払いでも、自社で支払ったか支払っていないかによって項目振り分けが必要になるため、建設業の会計をさらに複雑にしています。
未成工事受入金
未成工事受入金とは、工期完成前に一部クライアントから受け取った工事代金です。
工期が長く工事金額が大きい場合は、一部の工事代金を事前に入れてもらう契約をおこなう場合があります。
一般的には“前受金”として分類されますが、建設会計においては未成工事受入金として計上し、完成後に完成工事高に振り分けが必要です。
建設業は会計方法が特殊かつ、流動的な勘定項目が多いため会計作業が複雑で、利益の計算が難しくなります。
建設業の利益計算を楽にする方法
建設業の会計方法は特殊であり、利益を正しく把握するのが困難です。
しかし、建設業において特に重視すべき指標である粗利益や営業利益の計算を誤ると、正しい経営判断ができず、また自社の最終的な純利益が下がってしまいます。
利益を正しく計算するためには、積算の段階から正しい見積りを出し、なおかつ入出金を適切に管理できる仕組みが必要です。
利益計算がうまくいかない、効率が悪いと悩んでいる企業担当の方は参考にしてください。
日次で粗利を把握
建設業の利益を正しく計算するために、日次の利益管理をおこないましょう。
現場監督者は毎日原価管理をおこなっています。
原価だけでなく、日次で変動する工事原価と予算を照らし合わせ、最終利益の予測を毎日計上して財務や経営陣に共有してください。
現場監督と財務の連携体制を作るようにし、日々の利益額を計算するようにしましょう。
入金状況・支出状況データの統合
建設業における未成工事支出金や工事未払金、未成工事受入金の把握をスムーズにするため、入出金データをスムーズに反映できる仕組みを利用しましょう。
金融機関のデータを日次で反映し、ワンタッチで勘定項目を選べるようなシステムを利用すると作業が効率化します。
見積りと完了時の差異の分析
契約前に作成する見積り精度が低いと、完了後の完成工事高との差異が生まれます。
思ったより原価が低ければ粗利率が高くなりますが、原価が想定よりも高くなれば粗利益が減ってしまい、自社の最終的な当期純利益に影響するでしょう。
そのためには見積りソフトを導入し、過去のデータ参照や原価変動の即時反映ができる体制を作る必要があります。
複雑な会計基準をもつ建設業の利益計算を効率化するためには、この3つの仕組みを併せ持ったマルチな建設業向けの基幹システム導入をしましょう。
各部署に別のシステムを導入する方法もありますが、結局連携がうまくいかず、かえって非効率な作業となります。
建設業・工務店向けの基幹システムは以下の記事でまとめています。システム選びの参考にしてください。
まとめ
建設業の荒利益率は平均して約18〜25%であり、粗利額が低くなるほど当期純利益が目減ります。
利益率を高く保ち、自社経営状況を改善するためには、まずは利益率を正しく把握することが必須です。
建設業は特殊な会計基準を持ち、工期の長さや工事原価計算が複雑で、利益計算が難しく時間もかかりがち。
建設業の利益率を正しく計算するためには、工務店向けに作られた基幹システムを導入しましょう。
しかし、どのようなシステムを導入すればよいか迷う方もいるはずです。
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