建設業界のみならず作業日報は大きな意味を持ちます。その日の作業を正確に記録し、反省点をまとめて記録する。それが翌日以降の作業効率性の向上と安全性を高めることになるからです。
ところが、作業日報を軽視するどころか、義務にもかかわらず、日によってつけたりつけなかったりする建設会社も稀にあります。
「面倒くさい」「書くだけ時間の無駄」「現場社員が真剣に取り組まない」という現場の声がありますが、これは経営者や管理職に責任も大いにあるというべきでしょう。
今回は、作業日報の目的や効用、作業日報の書き方のテクニックをわかりやすく解説します。記事を最後まで確認して、会社の利益アップを目指しましょう。
目次
作業日報の目的
手間をかけて書く作業日報には、相応の対価があります。働く社員の健康を守り前向きに働いてもらうことに貢献し、工事の生産性を高めて結果的には会社の利益にも繋がります。
適正な労働環境づくり
建設業界において適正な労働環境を整備することは、経営者にとって必要最低限の仕事とだといえます。これをおろそかにしては経営が成り立ちません。そこで役立つのが作業日報です。
例えば、次のような内容が作業日報に書かれていたとしましょう。
「工具を下に落下させてしまった」
「予定通りの工期で終わりそうにない」
「一人あたりに作業量が最近増えて気がする」
この内容から、「作業者が疲れているのではないか?」「そもそもの工期に無理があるのではないか?」ということが読み取れます。つまり、適正な労働環境が整備されていない可能性があります。
このような状況を是正する絶好の機会になるのが、作業日報の記入です。
生産性を高める
工事作業日報は生産性も高めます。
例えば住宅建設においてユニットバスを据え付ける工程がありますが、作業日報を見ると平均して3時間かかっていると仮定しましょう。しかし、社長の経験ではこの作業は2時間で済むと感じていたとしましょう。
作業時間は話を分かりやすくするための仮定ですが、この場合その生産性に1.5倍の差が発生しています。
このように、作業員が作業日報をしっかりと記入すれば、現場の生産性を上げるためのヒントがたくさん転がっています。
作業日報で管理できること
作業日報で具体的に管理できることを見てきましょう。まず、会社の宝である人材の労務管理が挙げられます。
そして、その延長線上にあるのが会社の収益です。労務管理の適正化が収益管理に繋がり、会社の利益が向上するでしょう。
労務管理
労務管理は建設業経営の基本です。現場で仕事をする現場監督、職人、さらには営業マンも含めた労務管理こそが収益を上げます。
労務管理とは、次の3つの管理を指します。
例えば、現場の作業者が「ときどき危険を感じる」と作業日報に記載したとしましょう。この場合、工事を急がせるあまりに現場監督が無理な工程を組んでいる可能性などが読み取れます。
安全第一は日本の工事現場において最も重要だと言っても過言ではありません。労働災害を起こせば工事はストップしかねません。また、公的な機関からの受注であれば指名停止にも繋がりかねません。
指名停止になれば会社への損害は甚大なものとなるでしょう。このようなことにならないためにも、作業日報をしっかりと記入させてそこから発せられる危険信号を読み取るようにしましょう。
工事進捗・収益管理
建設業は工程管理が命といっても良いでしょう。工事の進捗を毎日把握することが、適正な利益を生む源となります。
元請け業者は見積りを積算するときに、各建築工程において予定を立てます。しかし、実際の現場ではこの予定が崩れることがあります。若干の遅れは想定の範囲ですが、頻繁に遅れが発生すれば収益に大きな影響をもたらします。
予定が崩れる理由は、「資材搬入の遅れが多発する」「天候不順による工事の遅延」「オーバーワークになっている」などさまざまです。
肝心なことは作業日報を記入することで、これらの原因が見える化されることです。作業日報がなければ工事の遅れやトラブル原因がいつまで経ってもわからず、社長を含めた管理部門の社員は頭をひねって右往左往することになるでしょう。
作業日報の書き方
作業日報には、次の5つの項目を必ず記載するようにしましょう。
それぞれの項目の記載ポイントについて説明します。
今日の目標
一つの建築物を作るには長い日数がかかります。予定通りに仕上げるためにも、日々の進捗管理は重要。毎日のゴールを決めて仕事を進めるのは大変重要なことですが、予定を狂わせないためには1日を3~4節に区切って都度の達成度合いをチェックするようにしましょう。
例えば、戸建て住宅において丸1日でキッチンを設置するとしましょう。途中の達成目標がなければ「設置できた」「設置できなかった」の二通りの報告内容しかありません。
設置できれば問題はありませんが、達成できなかった場合に未達成理由が見えてきません。
これを3~4のチェックポイントに分ければ「午前までは予定通りだったのに午後に作業がストップしている」と管理者は作業遅延の原因を突き止めやすくなります。
また、現場の作業者も1日を区切って目標を立てると、途中で遅れが発生したタイミングで対策を立てることができます。
今日の業務内容および成果
管理者にとってもっとも気にかかるポイントが、1日の業務内容および成果でしょう。よく見かける「予定通りできました」と一文あるだけの日報では、「予定通り」ということはわかるものの、その過程が全く分かりません。
業務を複数の項目に分類して、それぞれに対してのコメントを書くことが理想です。
そして大事なのは成果。1日ごとの成果を記載するのは重要です。成果を記載する際は、次の2つを意識しましょう。
- 前日に立案した目標を達成したかどうか
- 達成率も書く
特に達成率について、「未達成」だと進捗率が10%の未達成もあれば90%の未達成もあります。必ず進捗率を書かせる癖をつけましょう。
問題点
問題点がない現場などありません。小さな問題点ならば無数にあるはずです。実際にこんな問題点を指摘した日報がありました。
「雨が降ると道路から玄関に向かう通路が歩きにくくなる。さらに泥が裾には跳ねて室内に汚れを持ち込んでしまう。」
これを読んだ部長は現場の職人に確認し、すぐに鉄板を追加で設置しました。作業員の安全を保つと同時に、室内に泥を持ち込む確率を減らしたのです。
このように、小さな問題点から現場の環境を改善するようにしましょう。
明日の目標
これも具体的に書くよう指導しましょう。この項目も複数に分けて目標を立てることが大事です。全体的な目標達成を立てることはもちろんですが、まずは前日の未達成項目や反省した点を踏まえた目標立案が大事です。
サッシ取り付けが未達成ならば、それを完成させることが目標になるでしょう。また、工具の紛失があったならば「紛失を防ぐために〇〇を行う」という目標を立てるべきでしょう。
上司や先輩からのフィードバック
作業日報が「書くだけ時間の無駄」といわれる理由のほとんどは、上司が確認していないことにあります。
必ず作業日報を確認して、その内容に関する講評やアドバイスをフィードバックするようにしましょう。
部下が先輩の指導内容を見て成長するのはもちろんですが、アドバイスをフィードバックする上司も能力が向上します。部下の報告に対して返事を出す作業は、しっかり頭を使って論理的に行う必要があります。この過程が上司の能力アップに繋がります。
【建設業】作業日報の書き方:まとめ
作業日報を書くことがいかに重要であるかがお分かりいただけたでしょう。形だけの日報記入をしている建設会社があれば、作業日報の内容向上を検討してください。重要なことは書き方とそのチェック方法です。
全体的な到達目標だけではなく、細かい点にも着目して記入すること、そして作業日報を上司が確認することの重要性にも触れました。 自社に最適な作業日報の様式を吟味選定して、会社がより発展するよう活動を始めましょう。