建物を作るには、土台となる基礎工事が非常に重要となります。
しかし、基礎工事には多くの作業があるため「どのような工程があるのかわからない」という悩みもあるでしょう。
基礎工事は建設のはじめに作業する部分なので、工程をしっかり理解しておくことが大切です。
当記事では、基礎工事の概要や工事の種類、工程、注意点、チェックすべきポイントまで詳しく解説します。
基礎工事の工程について理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
基礎工事とは
![基礎工事とは](https://kenchikugenba-knowledge.com/wp-content/uploads/2024/04/shutterstock_2252789145.jpg)
基礎工事とは、建物の土台を作る工事で、地盤と建物をつなぐ工事となっているため、安全性を左右する重要なパイプ役です。
建物の重さによる縦向きの力と地震や津波による横向きの力を建物から地盤に伝えることで、不同沈下(建物の一部分が沈むこと)を防げます。
現在では長期優良建築物が多く、認定されるためには耐久性が必須条件となっています。
建築において基礎工事の仕上がりは、作業員の腕を試される重要な要素です。
建物の耐久性を維持するためには、基礎の強度を上げる必要があります。
地震や津波、土砂崩れなどの災害が多い日本では、建物を支える基礎工事が必要といえるでしょう。
基礎工事の種類
基礎工事には、以下のような種類があります。
杭基礎
杭基礎は、杭を直接地面に差し込み基盤を作る工事方法で、規模の大きな現場で用いられます。
地盤が柔らかく強度が弱い場合におこなわれる工事で、硬い地盤まで杭を打ち込み強度を上げる効果があります。
地盤の弱い層が厚いほど長い杭が必要になるため、費用が高くなってしまう点はデメリットです。
しかし、建物の安定化や液状化を防止できる点は、杭基礎のメリットとなります。
地震などの揺れを抑える役割もあるので、杭基礎を採用する現場も多いです。
杭基礎には「支持杭」と「摩擦杭」の2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
- 支持杭:地盤が柔らかく弱い時に利用。柱状改良・鋼管杭と呼ばれる杭を使う。
- 摩擦杭:地盤が弱いが厚さがある場合に利用。杭を凹凸状に打つことで摩擦の力によって基礎を支える
布基礎
布基礎は、地盤に基礎を直接設置する方法です。
直接基礎工法のひとつとなっており、建物の負荷が大きい柱や壁の下にコンクリートを設置します。
負荷が大きい部分のみにコンクリートを流すため、使用量を少なく済ませられます。
また、基礎が軽く負荷がかからない点もメリットとなります。
しかし、床下の土がむき出しになる性質上、湿気によってシロアリが発生するリスクが高いです。
防湿対策やシロアリ点検を定期的におこなうことで、リスクを防止できるでしょう。
ベタ基礎
ベタ基礎は、建物の床下全体をコンクリートで覆う方法で、近年の木造住宅建築などで一番用いられている工法です。
建物の重さを基礎全体で地盤に分散でき、地震にも強い点が特徴となっています。
防湿シートをコンクリートと一緒に使うことで、地面の湿気を通さずシロアリの発生を防げます。
コンクリートの使用量が多くなるため、布基礎に比べてコストが高くなる点はデメリットです。
土を掘る作業や杭を打つ作業は最小限で済むため、施工がしやすい工法となっています。
新築住宅の場合はコンクリートから水分が排出され、強度が下がるリスクがあるため十分に対策しましょう。
独立基礎
独立基礎は、基礎を地盤に直接設置する方法です。
設置面積が小さいため、強度が高い地盤がある場所に向いています。
独立基礎には「フーチング」というコンクリート素材を使い、部分的な柱に利用されることが多いようです。
現在では使われることが少ない工法となっていますが、住宅以外の建物では使われています。
SRC基礎
SRC基礎は、別名「蓄熱床工法」と呼ばれ、耐震性の高い基礎工事といわれています。
床下を砂利で満たしてからコンクリートで蓋をするため、密封性が高い基礎工事です。
床下空間がないため、湿気によるシロアリの発生リスクを防げます。
また、コンクリートにはH型鋼材を組み込んでおり、強度が高い点もメリットです。
しかし、ほかの工法に比べて工程が多く、建築コストが高くなってしまう点はデメリットです。
給排水の配管も基礎コンクリートで埋めるため、リフォームに制限がある点も注意しなければなりません。
基礎工事の工程
![基礎工事の工程](https://kenchikugenba-knowledge.com/wp-content/uploads/2024/04/shutterstock_2063346893.jpg)
基礎工事は、以下のような工程となっています。
地盤調査
はじめに、基礎工事を行うために地盤調査をおこないます。
地盤は場所によって強度が異なるため、安全性をチェックするためにも重要な工程です。
地盤の強度を調査し、周囲の住宅などを配慮した基礎工事を決定します。
調査から基礎工事の実施が困難であると判断した場合、事前に地盤改良工事が必要です。
地縄張り・遣り方工事
地縄張りとは、敷地に縄やビニール紐などを張る仮設工事です。
建物の位置や部屋の配置をチェックするためにおこなう工程となっています。
遣り方工事とは、建物の位置や高さ、水平などを写すためにつくる仮設工事です。
基礎となるコンクリートに目印(基準墨)をつけ終えたら、地縄張りと遣り方を撤去します。
建物の位置を正確に把握する作業となっているため、基礎工事には欠かせない工程となっています。
掘削工事
掘削工事は、基礎を造るための土地を掘り起こす工事を意味します。
「根切り」とも呼ばれており、基礎になる地盤まで重機を使って掘り起こします。
基礎工事の工程において最も時間が必要になるため、排水工事と同時に進行されるケースが多いです。
掘削工事で配管が発見された時は、損壊しないように手堀りが必要になることもあります。
砕石敷き
砕石敷きは、基礎を配置する部分に砕石(細かな石)を敷き詰める工事です。
砕石を敷き詰めるには「ランマー」という機械を使い、地盤を固めていきます。
こちらの工程で地盤を固めておくことで、建物の地盤沈下を防止できます。
地盤を固める作業は「地業」とも呼ばれており、基礎工事において重要な工程です。
捨てコンクリートの施工工事
地盤を固め終えたら、職人の作業がスピーディに進むようコンクリートを張ります。
「捨てコンクリート」とも呼ばれており、コンクリートを探しておくことで作業効率が向上します。
建物の強度を高くする役割はありませんが、職人がスムーズに作業をこなすために必要な工程です。
配筋工事・型枠工事・コンクリート打設工事
配筋とは、専用の鉄の棒を格子状に配置する作業です。
現在の建物は鉄筋コンクリートが採用されており、コンクリートの中にある鉄の棒が配筋の組み立てに該当します。
また配筋は基礎の寿命や強度に影響する要素であるため、建築基準法のルールが定められています。
型枠を組み立て、アンカーボルトを設置するための流れです。
コンクリートを流して固めるための設置枠です。
最後に型枠の中にコンクリートを流し込んで数日ほど放置し、コンクリートが固まるまではブルーシートで覆って風雨から基礎を守ります。
一定の強度を確保するには4週間ほど乾燥期間が必要となり、こちらの期間を「養生期間」といいます。
仕上げ
養生期間を終えたら、型枠を外してコンクリートの仕上がりをチェックします。
アンカーボルトがずれていたり、コンクリートがひび割れていたりしないかチェックし、問題がなければ基礎工事の工程は完了です。
基礎工事の工程に関する注意点
![基礎工事の工程に関する注意点](https://kenchikugenba-knowledge.com/wp-content/uploads/2024/04/shutterstock_2155054713.jpg)
基礎工事の工程には、以下のような注意点があります。
コンクリートのかぶり厚さは十分か
かぶり厚さとは、配筋された鉄筋からコンクリート表面までの厚さを指します。
かぶりを厚くすることで、鉄筋が外部からの影響を受けず長持ちします。
かぶり厚さが薄いと鉄筋が外部の影響を受けやすくなり、劣化する可能性が高いです。
たとえば雨による水がコンクリートの中に侵入すると、鉄筋に錆が発生して劣化・損傷してしまいます。
鉄筋が劣化すると建物全体の強度も低くなるため、コンクリートのかぶり厚さは十分かチェックしておくようにしましょう。
基礎表面のコーティングが丁寧にされているか
基礎表面がしっかりコーティングされていれば、コンクリートの中性化を防止できます。
コーティング作業が雑になっていると、コンクリートがアルカリ性を維持できず中の鉄筋が錆びる原因となります。
基礎表面を丁寧にコーティングすることで、アルカリ性を維持して鉄筋の錆を防止可能です。
コーティングはコンクリートの強度にかかわるため、丁寧にされているかチェックしておきましょう。
鉄筋組みが正しくされているか
鉄筋組みが図面通りになっているかチェックすることも大切です。
基礎工事には配管用の穴(スリーブ)を設けており、スリーブに鉄筋が接しているとかぶり厚さが不足する原因となります。
そのためスリーブと鉄筋が接しておらず、正しくコンクリートが入っているかチェックしておきましょう。
基礎工事の工程管理で重要な2つのポイント
![基礎工事の工程管理で重要な2つのポイント](https://kenchikugenba-knowledge.com/wp-content/uploads/2024/04/shutterstock_2151591837.jpg)
基礎工事の工程管理では、以下のようなポイントが重要です。
1.基礎工事に必要な費用単価の管理
予算内に基礎工事を進めるには、費用単価を管理しておく必要があります。
基礎工事の単価は一般的に1㎡あたり約15〜20万円といわれ、全体の工事費用の約5〜10%です。
単価費用を著しく下げると品質が低下し、修正作業に時間を要し工期に間に合わない可能性があるためです。
基礎工事の費用単価は、対応するエリアや設計内容によって大きく変動します。
基礎工事の費用を下げてしまうと、建物の耐久性や耐震性に問題が発生するリスクも高いです。
建物において基礎工事は全体を支える重要な役割があるため、費用単価とのバランスを考えて最適な工程管理を進めるようにしましょう。
2.基礎工事にかかる日数管理
基礎工事には多くの工程があるため、それぞれにかかる日数を管理することが大切です。
日数管理を行うことで、クライアントや作業メンバーに具体的な説明ができるようとなります。
とくに掘削工事やコンクリート流しには長い日数がかかるため、ほかの工程との調整が必要となります。
そのため基礎工事の各工程にどれくらいの日数が必要になるのか管理しておくようにしましょう。
まとめ
今回は、基礎工事の詳細から種類、工程、注意点、チェックすべきポイントまで詳しく解説しました。
基礎工事は建物の土台となる基礎を作る工事であるため、安全性を左右する重要なパイプ役です。
地盤の強度によって基礎工事の種類は異なるため、エリアや設計内容で最適な方法を取り入れることが大切です。
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