住宅の工事費用の中には、「請負金額」「諸経費」「諸費用」があります。
その中の諸経費は「現場管理費」と「一般管理費」にわかれますが、更に細分化すると、どのような項目の費用が入っているかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回、現場管理費に含まれる項目と、一般管理費との違いについて紹介します。最後には現場管理費を含めた経費相場と、諸費用との違いは何かについても解説します。
目次
現場管理費とは
現場管理費とは、工事を管理していくための費用を指します。
工務店は住宅を建築するうえで、行政への各種申請費用や図面作成の外注費用などが発生します。また、現場従業員への給与手当や福利厚生費なども必要です。
それらの費用はすべて現場管理費に含まれています。
現場管理費は、工事に直接かかわらない費用が該当しますが、あらかじめ予算を決めて原価に計上しておくことが重要です。
後で「予算が足りなかった」「赤字になった」ということにならないためにも、現場管理費の金額を一定額に設定している工務店も多いです。
また、諸経費には現場管理費だけでなく、一般管理費も必要となるため、2つの費用を十分理解しておかなければいけません。
現場管理費と一般管理費の違いとは
一般管理費は会社を運営していくための費用です。
会社を維持していくための光熱費や通信費、接待交際費や家賃など、さまざまなコストが一般管理費には計上されています。
また、複数店舗の支店を構えている工務店は、各支店に在籍している社員の給与だけでなく、本社の社員給与なども含まれます。
現場管理費との違いは、一般管理費は工事現場で発生する費用ではないという点です。
一般管理費には以下の14項目が含まれています。
- 社員への給与
- ボーナス
- 法定福利費
- 福利厚生費
- 広告宣伝費
- 接待交際費
- 旅費交通費
- 支払手数料
- 賃借料
- 通信費
- 水道光熱費
- 保険料
- 減価償却費
- 租税公課
- 消耗品費
現場管理費に含まれる17項目
現場管理費には17項目の費用が該当します。
- 労務管理費
- 租税公課
- 保険料
- 給与手当
- 施工図外注費用
- 退職金
- 法定福利費
- 福利厚生費
- 事務用品費
- 通信交通費
- 光熱費
- 交際費
- 補償費
- 工事登録費
- 公共事業労務費調査の費用
- 外注経費
- 雑費
一般管理費と似たような項目もありますが、現場管理費は現場施工にかかわる費用が該当します。
項目については会社の経営者だけでなく、現場監督は必ず覚えておいた方が良いでしょう。また、営業マンもお客様から現場管理費について尋ねられた時に応えられるよう、内容を理解してくことが大切です。
現場管理費の相場とは
住宅の見積金額をお客様に提案する際に、毎回現場管理費を計算しているのは非常に時間がかかり、非効率です。そのため請負代金に対して諸経費を一定割合へと設定している工務店も多いです。
また諸経費と諸費用は似たような言葉ですが、内容は大きく異なりますので注意してください。
現場管理費を含めた諸経費の相場
現場管理費と一般管理費を含めた諸経費は、請負代金の5%~10%に設定している工務店が多いです。
例えば、3,000万円の戸建てを建築する場合、諸経費を5%と設定した際は150万円、10%と設定した際は300万円です。
現場管理費の費用は各社異なるため、どれくらい必要であるかをあらかじめ計算しており、その金額に合わせた割合に設定しています。
諸費用との違い
冒頭にもお話した通り、住宅の工事費用の中には、諸費用が含まれます。
諸費用とは、住宅を建築するために必要な費用ですが、支払先は工務店ではない企業や機関です。
例えば、金融機関から住宅ローンを借りて建築する場合、ローンに関わる手数料などは金融機関へ支払います。また、水道加入金などは水道局、登記関連などの税金は国税へ収めます。
つまり現場管理費や一般管理費などの諸経費は、工務店に関する費用ですが、諸経費は住宅を建築するうえで、第三者へ支払う費用ということです。
諸費用にはさまざまな費用があり、建築する住宅の価格や土地代金、借入金額などによって異なるため、諸経費のように何%という相場はありません。
諸経費と諸費用の内容が異なるだけでなく、費用にも大きな差があるため、お客様に違いを聞かれた時に、十分理解してもらうように内容を把握しておきましょう。
また、住宅建築時の諸費用は主に以下の項目が該当するので参考にしてください。
さらに諸経費について詳しく知りたい方は工事見積書の諸経費とは?をご覧ください。
現場管理費率の計算方法
現場管理費率の計算方法は2つあります。
- 必要費用の積算から算出する方法
- 過去実績から共通比率を割り出して算出する方法
共通基準による各共通日のパーセンテージ算出比率は、平均5〜10%といわれていますが、工事の種類や事業者によっては10%以上になることもあります。
現場管理費率が上限を超えないようにすることで、工事原価を押さえて利益率を上げることが可能です。
現場管理費を徹底的に管理すべき理由
現場管理費はすべて経費であり、ずさんに管理していると高次元化に影響が出てきてしまいます。
工事原価が見積もりと相違すると利益率が下がってしまい、また企業経営に多大な影響を及ぼしかねません。
現場管理費には17項目があり、管理は大変かもしれませんが効率的に管理して、ミスのないように徹底管理が必要です。
また、建設業界では値引き交渉が頻繁に実施されますが、その際に現場管理費が対象になることも多いです。
現場管理費を把握せずに相手の値引き提案を受け入れると、結果的に自社の環境整備ができなくなり、労働環境の悪化を招きます。
そればかりか、現場管理費を削減したために工事品質が下がりかねません。
現場管理費で抑えておくポイント
現場管理費の相場は5%~10%とお伝えしましたが、その割合へ設定する前に、2つのポイントを押さえておきましょう。
工事原価にも影響が出る
現場管理費と一般管理費の諸経費は、工事原価に含まれます。諸経費が大きくなれば、原価も上がるため、見積金額が高額となるでしょう。
そのため、諸経費は極力抑えることが大切です。
原価を下げることで、お客様の建築代金にも反映され、競合他社より安く提示できるため、成約率にもつながります。
しかし、諸経費を抑えることは安易ではありません。社員の給与やボーナスを下げるわけにはいかないうえ、現場で必要な費用を圧縮できる可能性は低いです。
その際は、月々のランニングコストを見直ししましょう。
例えば、ペーパーレスが主流となりつつある現代に合わせて、コピーをする書類を減らすなどです。
近年では、提示書類やデータ管理などはクラウドシステムを利用している企業が増加しています。
クラウドシステムを利用することで、いつどこでもデータを確認できるだけでなく、スマホやパソコンがあれば社内共有も可能となり、会議時でも印刷する必要が少なくなります。
またクラウドシステムを使用することで、現場管理費や一般管理費などの諸経費の計算も安易に行うことが可能なメリットがあります。
費用を大きくしない
現場管理費を含めた諸経費の割合には相場がありますが、規定は存在しません。そのため、諸経費の金額は工務店が自由に設定できます。
会社によっては、諸経費の金額を相場からかけ離れた「15%や20%」と設定している企業も存在します。
諸経費を高く設定してしまうと、住宅の相見積もりをしているお客様から不審がられることもあるでしょう。
例えば「A社の諸経費は請負代金の5%であるのに、御社はなぜ15%ですか」と聞かれた際です。内容と根拠を十分説明でき、お客様が納得できる場合は問題ありません。
しかし根拠もなく高い設定にしておくことで、契約まで遠ざかる要因にもなる可能性はあるでしょう。
そのため諸経費の割合は、会社の維持費や現場の経費を計算したうえで、高すぎる設定は控えるようにしましょう。
現場管理費を徹底的に管理したいならクラウドシステムがおすすめ
現場管理費を計算するのが大変だと思う方はクラウドシステムの採用を検討して見ましょう。クラウドは連動性も高いため、作業効率の向上だけでなく、時間短縮にもつながります。
クラウドと聞くと、使い方が難しいと感じている方も多いですが、エクセルのようにコピー&ペーストもでき、誰でも使用可能な特徴があります。
しかし、クラウドシステムを利用する際は料金が発生します。料金が気になるという方は、【AnyONE(エニワン)編】料金や口コミは?をご覧ください。
まとめ
これまで現場管理費の内容と、一般管理費や諸費用との違いについて解説してきました。
現場管理費は現場を管理・運営していくために必要不可欠です。
しかし、あらかじめ現場管理費の予算を決めておかないと、後で追加費用が発生した際、予算オーバーや赤字事業にもなりかねません。
相場としては請負代金の5%から10%前後ですが、会社によって異なるため、自身の会社の経費を確認して設定しましょう。