施工管理とは、工事現場における安全や品質管理、工程管理を統括する仕事です。
工事の遂行に欠かせない役目ですが、近年施工管理職の減少が問題となっています。
本記事では、施工管理の概要や1日の仕事の流れ、年収、仕事内容ややりがいについて解説。
さらに、施工管理が「きつい」「やめとけ」と言われる理由も紹介しています。
目次
施工管理とは?
施工管理とは、工事現場の施工や予算管理、現場の安全管理をおこないます。
よく現場監督と混同されますが、実は仕事内容が違います。
簡単にいえば、施工管理は工事に関するすべてを管理する役職で、現場監督の担当範囲は工事現場に限られます。
会社によっては、施工管理が現場管理も担当するケースもありますが、一般的には違う仕事です。
施工管理の一日の流れ
施工管理を目指す方のために、1日の仕事の流れについて解説します。
仕事開始から終業まで、施工管理が担当する業務を見てみましょう。
午前
施工管理は出社後、朝礼に参加します。
朝礼で現場作業員に指示を出したり、前日までに生じたトラブル・共有事項も伝達。
その後、工事が開始したあとは、協力会社や職人へ指示を出し、作業が円滑に進むように調整します。
そのほか安全管理のために、ヘルメットや安全帯のチェックも施工管理職の仕事です。
工事中は巡回を行う、または現場監督からの報告をもとに進捗を確認し、遅れがないか確認したり、指示をします。
午後
午前中の進捗をもとに、昼礼をおこないます。
現場監督と施工管理が分離している場合は、施工管理の指示をもとに、現場監督が共有する流れです。
工事進捗や午前中の安全管理における注意点を共有し、午後のスケジュールを共有します。
夕方
夕方には工事が終了しますが、施工管理の仕事はまだ終わりません。
事務所に戻り、日報の作成や各種証明書を作ります。
具体的には以下のような、書類作成などのデスクワークが施工管理の仕事です。
- 施工計画書の作成
- 工程表の修正
- 施工図の作成
- 現場写真の整理
- 役所へ提出する書類の作成
- 原価計算
- 発注書の作成
- 請求書の準備
- 日報などの帳票作成
日によりますが、施工管理は事務仕事が非常に多く、担当する業務の幅が広いです。
特に現場監督と施工管理が同一の工務店などでは、夕方からの書類作成で時間を取られ、残業になるケースもあります。
施工管理の仕事内容
施工管理の具体的な仕事内容は以下の通りです。
将来施工管理を目指している方は、具体的な仕事内容について把握しておきましょう。
工程管理
施工管理は、工事に関するすべてを統括します。
そのため、工事の工程管理も施工管理の仕事のひとつです。
工事が円滑に納期までに終わるよう、工程表を作成し、人員の割り振りを実施します。
工程表を作成して工程を共有し、万が一遅れがあった場合の修正まで、施工管理の担当です。
安全管理
施工管理は、現場の安全管理も担当します。
「安全衛生管理計画」を作成したうえで、作業手順書の作成をおこない、工法の安全性がフロー通りに行われているかチェックします。
工事現場は高所での作業、重機の使用など危険作業が多いため、安全管理は欠かせません。
朝礼でのヘルメットのチェックや安全帯の確認以外にも、危険な足場がないか、落下防止ネットの設置も施工管理の指示でおこないます。
雨の日には足場が滑りやすくなるため注意喚起したり、夏は水分補給を促すなど、作業員の健康面にも配慮が必要です。
原価管理
施工管理は、工事終了後に原価の集計もおこないます。
原価管理とは、工事現場で必要となった原価を計算し予算通りに計画が進んでいるか確認することです。
原価管理を怠ると、最終的な売上高が予想より低く、利益が少なくなってしまいます。
経営上でもコスト管理は重要であり、施工管理の日々の原価管理は非常に重要な仕事です。
品質管理
施工管理は、成果物の品質についても責任を負います。
竣工した建物の質が悪ければ、施主の信頼を失ううえに、自社の売上や評価も下がります。
建造物の品質は当然保障されるべきです。
品質管理とは、具体的には以下のような業務を意味します。
- 搬入資材の品質チェック
- 試験記録
- 工事写真の撮影・整理
使用する資材についても施工管理者が確認し、品質に問題がないか、図面と異なる資材が運ばれていないか確認します。
万が一間違えた資材を使用しては、品質に問題が出るためです。
また、資材強度の試験を行った際は、記録を残します。
建造物が基準値を満たすかどうかの確認のために、試験の記録を残して自社建造物の品質を証明するためです。
また、工事写真を撮影するよう指示を出し、整理します。
施主に対して工事写真台帳を提示する際に、わかりやすく経緯のわかる写真が必要です。
建造物は一度作ったら戻せず、特に基礎工事部分は後から確認できません。
適切な写真撮影の指示を出し、施主に対して写真という証拠を持って、適切な工事が行われたことを証明する必要があります。
施工管理の年収
求人ボックス給料ナビのデータによると、施工管理の平均年収は462万円でした。
「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」によると、建設業の全年齢での年収平均値が333万2,000円であるため、一般的な建設業で得られる年収より高い金額です。
前述したように、施工管理の仕事は多岐に渡り、企業規模によっては現場監督業務も兼任します。
そのため、業務時間も長く、負荷も高いため給料は高くなる傾向にあるでしょう。
施工管理の魅力
施工管理という仕事に就くメリットは3つあります。
施工管理職は、現場管理の要であり重要なポジションです。
仕事へのモチベーションを保つためにも、施工管理職の魅力を理解しておきましょう。
なくならない仕事
工事現場の作業は、近年DX化の影響もあり、省人化が進んでいます。
機械やAIが代行できる仕事である職人などは、今後仕事量が減る可能性もあるでしょう。
しかし、施工管理は現場管理にかかわるすべてを統括する役割で、DX化が進んだとしてもなくなりづらい職種です。
どうしても人の目で管理、指示を出さなければならない部分が、工事現場にはあります。
施工管理の仕事は、需要が高いうえに今後長く続けていける仕事です。
形に残る仕事
施工管理の一番のやりがいは、担当した工事が完成した時でしょう。
でき上がった建物を見るたびに、「自分がかかわった工事だ」と嬉しくなります。
自分の頑張りが形に残るため、モチベーションも保ちやすいです。
施主様から直接感謝をされる仕事
工事完成後は、施主から直接お礼の言葉をもらえることもあります。
人からの感謝の言葉は素直に嬉しく、モチベーションも高まるでしょう。
施工管理職は工事現場のリーダー的役割のため、皆を代表して感謝を受けることが多いです。
やりがいを感じやすく、仮に激務でも報われたと思えるでしょう。
施工管理が「きつい」「やめとけ」と言われる理由
施工管理は「きつい」「やめとけ」と言われがちな仕事でもあります。
どうしてきつい仕事なのか、その理由を解説します。
単純にいえば施工管理の仕事量や精神的な疲労が、給料に見合っていないことが原因となっています。
施工管理を目指す方、雇用する工務店側も現状を把握して対策する必要があるでしょう。
長時間労働・時間外労働が多い
施工管理職の労働時間は非常に長く、残業が多いです。
国土交通省土地・建設産業局が発表した「建設業界の現状とこれまでの取組」のデータを参照すると、建設業は全体の産業と比較して、年間300時間以上長時間労働しています。
施工管理職は、工事終了後の事務仕事を担当しているため、所定の就業時間を超えて残業しているケースも多いです。
そのため、ライフワークバランスが崩れやすく、疲労が蓄積するなど心身に影響を及ぼす可能性が高いでしょう。
残業時間に悩んでいる工務店は、IT導入補助金を利用してシステム導入も検討してみてください。
休日が少ない
国土交通省土地・建設産業局が発表した「建設業界の現状とこれまでの取組」によると、建設業はほかの産業に比べて週休2日が確保されていません。
休日が週に1日の企業もあり、疲れを取るための休息時間が少ない点は問題となっています。
長時間労働が多いうえに、休日の日数も少ないため、労働環境は良いとはいえない状況です。
人間関係に気を遣う
施工管理は、現場の安全管理をおこないます。
安全管理の範囲は、資材や機器のみならず、職人同士の仲裁も含まれます。
協力業者に依頼した職人同士での揉め事、近隣住民からのクレーム対応も、施工管理の仕事です。
そのため、精神的に気を使う場面が多く、負担が多いことも施工管理の業務が”きつい”と言われる要因でしょう。
業務内容に給料が見合っていない
施工管理は業務範囲が広く、業務量が非常に多いです。平均年収は436万円ですが、国税庁発表の「平均給与」データを参照すると、日本の平均年収は461万円。
つまり、施工管理職の給料は、平均年収を下回っています。
企業の規模や技能・経験によって上下しますが、業務の量が多く条件は平均並みまたは下回っている可能性があります。
業務量に応じて、適切な給料を受け取れるようにしなければ、今後施工管理職を志す人は減少するでしょう。
事実、施工管理職は人手不足となっており、建設業でも問題視されています。
施工管理の減少への対策として有効な方法は、建設DXの導入による業務負荷の改善です。
建設業向けのシステムを導入し、書類作成を自動化したり、管理を一元化することで業務負担を減らせるでしょう。
施工管理職の人手不足と対策は、以下の記事でまとめています。
まとめ
施工管理はやりがいのある仕事ですが、業務量や範囲は広く、大変な仕事でもあります。
重要な役割を担っている施工管理が、適切な環境・待遇を受けられるよう、工務店でも早急に環境改善が必要です。
しかし、具体的に何をしたら良いかわからない方もいるでしょう。
当メディアでは、工務店向けの施工管理システムの導入をおすすめします。
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