2018年に経済産業省がDXの必要性を警鐘してから早3年が経ちました。しかしながら、国内企業の9割が「DX未着手」「DX途上」に留まっている実情があります。
喫緊の課題として挙げられる「2025年の崖」を考えると、危機感が足りないと言わざるを得ないかもしれません。しかし裏を返せば、業界にさきだってDX化に取り組むことでチャンスをつかむことも可能です。
今回は建設業界、特に工務店におけるDXについて課題や注意点、おすすめツールを紹介します。
目次
DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITの力を使ってビジネス革新を行い、人々の生活をあらゆる面でよりものへと変化させることです。
例えば、Amazonは人々の購買行動を「お店で買う」から「オンラインショップで買う」へと変化させ、巨大な市場を勝ち取りました。
農業・建設用機械を製造するクボタは、3Dモデル・ARを用いた「故障診断アプリ」を開発。故障で機械が使えない時間(=ダウンタイム)の短縮や、カスタマーサポートの業務効率化に成功しました。
このようにITの力を借りて目指すべきビジネス革新を、DXと呼びます。つまり「IT化」はあくまで手段であり、その目的として「DX」があるという位置付けとなります。
工務店に必要な理由
工務店に限らず、DX推進は全産業で求められています。
その背景には、DX推進を放置することで年間約12兆円の損失がもたらされるという「2025年の崖」が存在するためです。
加えて建設業界では、「人手不足」や「ノウハウ継承」という課題もあります。
高齢人材の割合が増えている一方で、若年人材の就職率・定着率が低く、現場は慢性的な人手不足に悩まされています。
ノウハウ継承(=人材育成)に割く企業の体力も限られており、ただでさえ少ない若手人材が成長のチャンスを逃すといった悪循環にも陥っているのです。
これらの課題を解決する、抜本的な手段としてDX推進が注目を集めています。
「2025年の崖」とは?
経済産業省がDXレポート内で提唱した言葉。厳しい市場環境で生き残るためには、DX推進が必須条件となりますが、DXを放置すると競争力の低下を招きかねません。
競争力が低下すれば、2025年から年間で約12兆円(これまでの3倍)に上る経済損失をもたらすと危惧されていることを「2025年の崖」と呼びます。
DXで工務店が目指すべきこと

以下3つに対して、DXは貢献できるでしょう。
- 業務効率化
- ノウハウの継承
- 労働環境の整備
業務効率化
従来の工務店では、紙・エクセルで顧客管理や営業管理、売上管理などを行うことが一般的でした。しかしこれらの管理は最新のデータを社内で共有するには、物理的なハードルも高く、非効率を招いていました。
ここにITツールを導入することで、業務効率化を一挙に進めることが可能となるでしょう。
ノウハウの継承
前述の通り、工務店にわざわざ社内研修を開催して、コツコツと人材育成をする余裕は無いでしょう。現場業務の中でノウハウを伝えていく必要があります。
ベテラン層が行った業務をITツール上で記録・蓄積することで、直接教わらなくともノウハウを学ぶことが可能です。
労働環境の整備
若年層の就職・定着を妨げる要素の一つとして、建設業界の「3Kイメージ」があります。
厚生労働省が2019年に「働き方改革」を発表してから、中小企業・大企業問わず経営課題として取り組まれるようになりました。
ITツールによる業務効率化を図ることで、長時間労働の解消、有給休暇の取得率アップなどにつなげて3Kイメージ払拭を目指すことができます。
DX推進の課題・注意点

冒頭で触れた通り、日本企業の9割は十分なDX推進をできていません。
その理由として2つの課題を挙げられます。
- 号令ばかりで現場が変わらない
- 顧客に新たな価値を与えるビジョンがない
号令ばかりで現場が変わらない
経営層が「DXを推進しよう」と号令をかけても、現場とのギャップが大きくなかなか進みません。
号令そのものが抽象的で何を変えればいいかわかりにくかったり、部門ごとでバラバラなITツールを使っていたりということが原因に考えられます。
号令だけでなく、社内で統一的にITツールの導入を進めていくべきでしょう。
顧客に新たな価値を与えるビジョンがない
DXは従業員だけでなく、顧客へ新しい価値を提供するためにビジョンを掲げる必要があります。Amazonの例では「オンラインで買い物ができる」、クボタの例では「故障をスピード対応してもらえる」という価値を顧客に提供していました。
顧客への価値がぼんやりとしていては、DXを進めても売上・満足につながらないことから優先度が下がっているのかもしれません。
顧客に新たな価値が提供できるITツールを選ぶといいでしょう。
【工務店向け】DXに便利なおすすめツール

後れをとる企業が多い中、業界内のさきがけとしてDX推進を進められれば、モデルケースとして認知され、求職者など対外的に向けたブランディングにもつながるでしょう。
最後に4つのおすすめITツールを紹介します。
- AnyONE
- イエコン(iecon)
- いえーるダンドリ
- アイピア
AnyONE

実績2,700社の導入実績を誇る、業界No.1の業務効率化ソフトです。工務店業務のほとんどを管理することができ、エクセルなどからの情報引き継ぎにも適しています。
機能豊富なだけでなく、提供会社によるサポート体制も充実しているため、ITに苦手意識のある従業員にも使いやすいでしょう。
工務店のあらゆる業務改善に役立つツールといえます。
- スマホ対応
- エクセルに似た操作性
- 顧客管理、営業管理、施工管理、見積管理、入出金管理、アフター管理までトータルカバー
- 日報・見積もりなど帳票のフォーマット作成・管理機能
- 導入後の社内オペレーションサポート
- 導入前の課題のヒアリング
など
イエコン(iecon)

顧客管理に特化したコミュニケーションツールです。
専用アプリを顧客にダウンロードしてもらい、メッセージや問い合わせ機能を利用してもらえます。
アフターサービスとして住宅設備が故障ときの修理依頼を24時間365日、何回でも対応可能です。設備交換で受注に結びつけるEC対応ができる点も魅力でしょう。
EC対応はコストも割高となり、導入にハードルを感じている工務店も少なくないことから、顧客管理とまとめて導入することも可能です。
顧客に充実したサポートを提供したい場合におすすめできるITツールです。
- スマホ対応
- 住宅設備の修理をいつでも対応可能
- 物流・配送を含むEC構築サービス
- 顧客専用アプリでのメッセージ・問い合わせ機能
- 顧客・見込み客へのお知らせ・アンケートを配信
- 見積書の確認、管理
- 顧客の契約書や設備・備品に関する情報を一元管理
など
いえーるダンドリ

営業管理に特化し、商談数・受注率アップを期待できるITツールです。
「住宅ローン業務」を300社以上の金融機関と提携するサービス会社が請け負うことで、そこに費やしていた時間を営業活動に割くことができます。
住宅ローン業務に大きな負担を感じている工務店に適したITツールといえます。
- スマホ対応
- スマホで顧客管理の情報共有
- メッセージ機能、予定管理機能
- 簡易ローン計算機能
- オンラインサポートでの住宅ローン業務代行
- 営業担当者向けの勉強会を実施
など
アイピア

工務店業務を幅広く管理できる業務効率化ソフトです。
業務全般で効率化を目指したい企業にはおすすめのシステムといえるでしょう。
- スマホ対応
- 顧客管理、営業管理、原価管理、入出金管理、工程管理などの機能を広くカバー
- 帳票や日報の作成機能
- エクセルに近い操作感
- ワンクリックで帳票を出力可能
- 設備機器の登録で、点検・リコール対応
など
まとめ
DX化は、国内全体でみれば一部の企業でしか進められていません。
しかし、DX推進の流れをチャンスと捉え、いち早くDX推進を行うことで競合との差別化を図れます。
ITツールの選択時には、社内の課題解決だけでなく顧客への価値提供という目的を外さずに進めてはどうでしょうか。
DX化を進めようと思っても「自社に最適なITツールを選べない」と悩む方もいるでしょう。