工事写真台帳とは施工開始時から完了まで、工程を写真記録に残して台帳としてまとめたものです。
施主へ適切な施工をした旨の証明、また点検時に使用します。
工事における写真枚数が多く、工事写真台帳作成に時間がかかってしまう方もいるでしょう。
この記事では工事写真台帳の概要や写真撮影・編集のコツ、効率的に工事写真台帳を作る方法を紹介します。
目次
工事写真台帳とは
工事写真台帳とは、施工開始から工事完了までの様子を撮影した写真をまとめた台帳です。
施主に対して施工の過程や目に見えない部分を確認してもらうために作成します。
工事写真台帳の役割
工事写真台帳は何のために作られるのか、その役割を解説します。
工事写真台帳を作成するにあたり、その役割を理解しておくことは重要です。
ここからは工事写真台帳の役割を説明するため、その目的を把握しておきましょう。
使用材料の確認
工事写真台帳を作成すれば、工事に使用した材料・資材の確認できます。
どの材料をその個所に使用したか、その証拠となるでしょう。
検査の際に目視できない箇所の確認
工事写真台帳を作っておけば、検索の際に目視で確認できない隠れた箇所がどのように施工されているかチェックできます。
例えば床下や土台などは、施主の目視点検ができません。
しかし写真に撮影しておけば、どのように施工されたかを確認できます。
施主が安心して引き渡しに臨むためにも工事写真台帳は欠かせません。
適正な施工の証拠
工事写真台帳はトラブル防止の役割も果たします。
適正な施工をした写真を証拠として保全し、万が一、引き渡し後に施主からクレームが入った際の防衛材料となるでしょう。
工事写真台帳は施主のためだけでなく、トラブル防止として自社が適切な施工をしたことの証拠となります。
品質・出来高確認
品質・出来高確認の際にも工事写真台帳が必要です。
工事品質検査の際に、工事写真台帳を用いて品質検査がおこなわれます。
長期間にわたる工事の場合は、出来形を金額に換算した出来高を用いた「出来高払い」を採用することもありますが、職人の感覚だけで金額を決めるわけにはいきません。
その際におこなわれるのが出来高検査です。
出来高検査を実施する際には工事写真台帳を根拠として請求がおこなわれます。
工事写真台帳の作り方
工事写真台帳の作り方を解説します。
簡単にいえば写真を撮影してまとめ、アルバム形式で編集する作業です。
国土交通省が定める基準などを把握して適切に作成しましょう。
写真撮影
施工開始した時点から、使用する資材や施工箇所の写真を撮影しましょう。
全工程を撮影して工事写真台帳を作りあげるイメージです。
写真撮影のポイントをまとめておきます。
国土交通省の写真管理基準(案)によると、上記の写真が必須となっています。
5W1Hがわかるように時系列を意識し、必要な写真を網羅的に撮影するようにしましょう。
また同基準において撮影頻度・撮影箇所一覧表が定められているため、漏れのないように工程・現場写真を確実に撮影してください。
写真編集
工程ごとに撮影した写真を集め、最後にまとめて工事写真台帳を作成します。
施主に提示するもののため、時系列順に工事写真を並べて、余白には説明文を記述したり、付箋を付けてわかりやすく解説するようにしましょう。
適切な工事写真台帳作成するための写真撮影のコツ
工事写真台帳のための写真撮影は、新人が担当することが多いです。
しかし、入社したばかりで写真の撮影方法がわからなければ適切な現場写真が撮影できません。
以上のコツを意識して、工事写真台帳を作るための適切な写真を撮影しましょう。
撮影対象の鮮明さ
工事写真台帳の写真は鮮明でなければ意味がありません。
ぼやけていたり、不要なものが写り込んでいないか確認しましょう。
工事作業自体は日中作業が多いため、光の入り方なども意識して鮮明な写真を意識してください。
特に床下など目視できない箇所の写真は撮り直しが効かないため、何枚か写真撮影しておくといいでしょう。
撮影位置の明記
写真撮影には、以下の情報を記載した黒板と被写体を一緒に写してください。
- 工事名
- 工種等
- 測点(位置)
- 設計寸法
- 実測寸法
- 略図
被写体の大きさで黒板の文字判読ができない場合は、国土交通省のデジタル写真管理情報基準に規定する必要事項を記入して整理してください。
測定尺
被写体と測定尺を一緒に写すと、実寸がわかりやすくなります。
黒板に寸法を記載してはいますが、写真だけでは実際の寸法がわかりづらいです。
そのため施主の理解を促すためにも、測定尺で実寸を計測しながら写真撮影をおこなうといいでしょう。
全体写真と拡大写真の利用
施工箇所の一部分を撮影したい場合は、拡大した部位の写真と引きで撮影した全体写真を合わせて撮影しておきましょう。
拡大写真のみでは全容が把握できず、施主がどの部分の写真か判別できません。
施工後目視できない箇所は段階ごとに撮影
施工完了後に目視確認できない箇所は、段階ごとに撮影してください。
施工前、中途・完了後と時系列順に工事現場写真を撮影しておきましょう。
段階ごとの記録を残すことで、施工の状況がわかりやすくなります。
施主にわかりやすい工事写真台帳の編集方法
写真撮影後は大量のデータを工事写真台帳にまとめる必要があります。
工事写真台帳は施主への説明や品質検査、そして自社防衛の役割をもつものです。
使用する際に困らないようにわかりやすい工事写真台帳を作りましょう。
国土交通省「工事管理基準」を参照
原則公共工事でなければ、施主の求める工事写真管理基準に応じて写真を提出します。しかし、多くの施主は国土交通省の管理基準をもとにしていることが多いです。
施主から明確な基準が提示されていない場合は工事管理基準を参照、または施主に質問するといいでしょう。
基本的に工事写真台帳は以下のように編集します。
- 見開き左ページに着工前の写真を添付、右ページに完成写真を貼り付ける
- 施工状況写真を施工箇所別に並べ、時系列順に写真を並べる
- 安全管理写真を添付し、保安施設の適切さ、管理の適切さの証明をおこなう
- 使用材料品質の確認のため、材料写真を添付する
- 工事の品質管理をおこななっている様子(測定・検査中)を撮影・添付する
- 出来高管理写真を添付する
- 工事完了後に施主の要望通りに施工した旨を証明する写真を添付する
- 災害・事故が生じた場合は現場状況の撮影・記録をおこない添付する
基本的に見開きで施工前・後がわかりやすいように完成写真を貼り付けていく形式をとりましょう。
同じアングルで施工前・後を撮影して掲載すると、施工前と完了後の違いがわかりやすくなります。
また施工箇所に応じて、時系列を可視化することも大切です。
その他安全管理写真や材料の写真などを添付するなど、施主または国交相の基準に基づいて抜けのないように写真を添付します。
表紙に工事情報を明記
工事写真台帳の表紙には、以下の情報を明記しましょう。
- 工事写真台帳(名目)
- 工事名称
- 工事番号
- 工事期間
- 施工主情報
上記項目が抜けていると、どの現場の台帳か判別できないため表紙に工事情報を書くようにしてください。
アルバム形式で保管
工事写真台帳はアルバム形式で管理しましょう。
アルバム形式にしておけば、あとで見返した際に施工箇所を見つけやすくなります。
また並べ替えも容易なため、万が一ミスが見つかった際の修正も簡単です。
写真と合わせて備考を記載
写真だけを並べても、施主あるいは工期終了後に詳細が掴めません。
工事写真台帳に並べた写真の余白に説明や備考を記載する、または付箋を貼って詳細を補足しましょう。
その際に黒板に記載がある情報は必要ありません。
工事写真台帳を作る方法
工事写真台帳を作る方法は3つあります。
作成方法をそれぞれ解説するため、工事写真台帳作りに取り組む方は参考にしてください。
工事写真台帳作成ソフト・アプリの使用
最も効率的かつミスなく工事写真台帳作成ができる方法は、専用ソフトやアプリの使用です。
工事写真台帳作成ソフトやアプリを用いれば、撮影写真をクラウド上に保管して時系列順に自動並び替えもできます。
写真をアルバム形式で並べるなど編集も簡単なため、紙ベースやエクセルよりも効率的に工事写真台帳作成が可能です。
オンライン共有も可能なため、スマホで撮影した写真を台帳に使用できることもメリット。
工事写真台帳作成ソフトまたは工務店向けのソフトに付帯している写真管理機能を使用して、工事写真台帳作成ソフトを作りましょう。
エクセル
工事写真台帳はエクセルでも作れます。
エクセルで工事写真台帳のテンプレートを作成しておき、画像を挿入するだけです。
画像のサイズ変更もドラッグでできるため、比較的簡単に作成できます。
ただしエクセルは写真編集ソフトではないため、細かな編集・調整ができないのが難点です。
またエクセルで作業する際に人的ミスで写真ファイルを削除してしまうなどのミスもリスクとなります。
紙ベース
施工箇所が小規模で撮影した写真枚数が少ない場合は手作りの工事写真台帳を作れます。
事前にテンプレートを決めておき、その用紙サイズに合わせた写真をまとめていくだけです。
パソコン操作が必要ないのがメリットですが、紙ベースのため紛失・汚れてしまうリスクがあります。
また紙ベースの台帳を保管するためのキャビネットなどのコストもかかり、管理コストも多いためおすすめしません。
まとめ
工事写真台帳は、工程を写真に収めて完成後に施主に提示し、点検の際に使用します。また、施主とのトラブル発生時に自社の適切な施工を証明する役割をもつ重要な書類です。
長期工事の場合は写真の枚数が多くなり、管理・工事写真台帳作成に手間がかかります。
その際は、工事写真台帳作成ソフトやアプリを使い、効率的に台帳を作りましょう。
とはいえ、どのようなアプリ・ソフトを導入して良いかわからない方もいるはずです。
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【引用】写真管理基準(案)-国土交通省