経営力向上計画とは、一定の条件を満たした企業や団体が自社・自団体の経営力を向上させるために取り組むことを記載した事業計画です。
この記事では、経営力向上計画の概要について解説します。
対象となる企業・団体、計画が認定されることで得られるメリット、申請する際のポイントなども取り上げているため、参考にしてください。
目次
経営力向上計画とは
経営力向上計画とは、いわゆる中小企業などが、自社の経営力を向上させるために取り組むことを記載した事業計画です。
計画では、人材育成やコスト管理、設備投資など、経営に関連する各項目に関する取り組みが記載されます。
経営力向上計画を策定し、事業所を所管する大臣に申請したうえで計画が認定されると、税金や金融支援などでさまざまな優遇措置を受けられます。
経営力向上計画の認定状況
中小企業庁によると、令和3年9月30日現在で、経営力向上計画の認定を受けた企業は、128,901件(建設業は33,187件)にのぼります。
認定を受けた企業の業種は、製造業、卸・小売業、建設業、サービス業、医療・福祉業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、不動産業などさまざまです。
【参考】経営力向上計画の認定について【中小企業等経営強化法】-中小企業庁
経営力向上計画の対象
経営力向上計画は、「特定事業者等」と呼ばれる企業・団体のみが申請できます。
特定事業者等の概要は以下の通りです。
- 会社
- 個人事業主
- 医療法人など
- 社会福祉法人
- 特定非営利活動法人
また、従業員数は2,000人以下でなければなりません。
経営力向上計画で認定を受けるまでの流れ
経営力向上計画は、計画を策定して自社の業種に応じて自社を所管する大臣へ申請し、申請が通ると認定となります。
自社がどの事業分野に属するかによって申請先が異なるため注意が必要です。例えば、建設業であれば国土交通大臣に申請することとなります。
申請にあたって必要となる書類は以下の通りです。
- 申請書(原本)
- 申請書(写し)
- チェックシート
- 返信用封筒
返信用封筒は、書類を折らずに返送できるようにA4よりも大きいサイズを用意しましょう。切手の貼付も忘れないでください。
なお、一部の申請に関しては電子申請に対応しており、その場合はチェックシートと返信用封筒は不要です。
経営力向上計画のメリット
経営力向上計画が認定されることで企業が得られるメリットはさまざまです。
具体的なメリットとして以下の点について解説します。
- 税制の優遇措置が適用される
- 金融支援が受けられる
- 法的支援が受けられる
- 補助金の申請が有利になる
税制の優遇措置が適用される
経営力向上計画が認定されると、「設備取得にかかる税制措置」と「事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例」が適用されます。
それぞれの概要は以下の通りです。
設備取得にかかる税制措置 | ・青色申告書を提出する中小企業者などが指定期間内に一定の設備を新規取得した場合に適用される ・法人税を即時償却もしくは取得価額の10%の税額控除から選べる |
事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例 | ・他者から事業承継するために、土地や建物を取得する際に適用される ・登録免許税・不動産取得税が軽減される |
金融支援が受けられる
経営力向上計画が認定されると、各種金融支援も受けられます。
具体的な支援は以下の通りです。
日本政策金融公庫による融資 | 設備投資に必要な資金の融資を受けられる |
中小企業信用保険法の特例 | 経営力向上計画を実行する際に、民間金融機関から融資を受ける場合、信用保証協会による信用保証の中でも普通保険等とは別枠で追加保証や保証枠の拡大が受けられる |
中小企業投資育成株式会社法の特例 | 通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)だけでなく、資本金額が3億円を超える株式会社も中小企業投資育成株式会社からの投資を受けられる |
日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット | 国内に親会社を持つ特定事業者の海外支店もしくは海外子会社が、日本政策金融公庫が提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける際に、日本政策金融公庫が信用状を発行する |
日本政策金融公庫によるクロスボーダーローン | 国内に親会社を持つ特定事業者の海外子会社が、経営力 向上計画を実施するにあたって必要となる設備資金や運転資金の直接融資を受けられる |
中小企業基盤整備機構による債務保証 | 従業員数2千人以下の特定事業者等が、計画を実行するために必要となる資金について、債務の保証を受けられる(保証額最大25億円) |
食品等流通合理化促進機構による債務保証 | 食品製造業者等が計画を実行するにあたって民間の金融機関から融資を受ける場合で、信用保証を使えない時や高額な資金調達が必要となる時などに、食品等流通合理化促進機構による債務の保証を受けられる |
法的支援が受けられる
経営力向上計画が認定されると、各種法的支援が受けられます。
具体的な支援内容は以下の通りです。
許認可承継の特例 | 経営力向上計画に事業承継等をすることが記載されている場合、承継される側の事業者から、当該許認可に関する地位をそのまま引き継げる |
組合発起人数の特例 | 経営力向上計画に組合の組成をすることが記載されており、事業協同組合や企業組合もしくは協業組合を設立する場合、必要となる発起人の数が従来の4人から3人でも可能となる |
事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例 | 企業が債権者に対して通知してから、1ヵ月以内に返信が無ければ債権者の同意があったものとみなされ、簡単な手続きで債務の移転が可能となる |
補助金の申請が有利になる
経営力向上計画は各種補助金の申請時にも有利に働きます。
一般的に、補助金を申請するにあたっては審査があり、一定の条件を満たしていなければ補助金を受給できません。
一方で、経営力向上計画が認定されている場合、補助金申請の際に加点がされるため、通常よりも審査が有利になるとされています。
経営力向上計画を申請する際の注意点
経営力向上計画を申請する際には、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
具体的なポイントとして以下の3点を解説します。
- 事前準備は入念におこなう
- 計画実施をした場合の効果を記載する
- 専門家のサポートを受ける
- 認定の取り消しに注意する
事前準備は入念におこなう
経営力向上計画は、すべての企業が申請できるわけではないため、条件の確認などを含め、事前準備は入念にすることが大切です。
例えば、税金の優遇措置を受けるにしても、金額についての要件や取得する設備が新規に購入したものでなければならないといった条件があります。
もし条件を見落として申請すると、認定されない可能性があるほか、認定されても十分なメリットを享受できません。
条件の確認や内容の抜け漏れなどが無いように、準備は時間をかけて取り組む必要があります。
計画実施をした場合の効果を記載する
経営力向上計画の中には、計画に沿って取り組むことでどのような変化が生じるか記載する項目があるため、取り組みの内容だけでなく効果についても検討しておかなければなりません。
効果を記載する項目は、事業分野によって異なるため、注意してください。
専門家のサポートを受ける
経営力向上計画の策定が困難、ミスが不安といった場合は、認定経営革新等支援機関によるサポートを受けることができます。
認定経営革新等支援機関には、公認会計士や税理士などが所属しており、計画の策定や認定取得後の計画実施までトータルでサポートしてもらえます。
認定の取り消しに注意する
経営力向上計画に記載した目標が達成できなかったとしても、認定が取り消されることはありません。
ただし、計画に記載している事業がおこなわれていない場合には、認定が取り消される可能性もあるため、本当に実施可能な計画か確認することが大切です。
まとめ
今回は、経営力向上計画について、概要や認定までの流れ、計画の認定によってメリット、ポイントなどについて解説しました。
経営力向上計画は、自社の経営力を向上させるために取り組むことを記載した事業計画です。
個人や一定規模以下の会社など特定事業者等と呼ばれる企業・団体が利用できます。
計画が認定されると、税制措置や金融支援、法的支援などさまざまなメリットが得られるため、申請を検討してみてください。