住宅メンテナンスはアフターメンテナンスと呼ばれ、住宅の引き渡し後の定期点検、保証内容範囲での修繕を意味します。
充実したメンテナンスは、工務店の魅力のひとつです。
本記事では住宅メンテナンスの概要とメンテナンス内容、充実したメンテナンスが工務店にもたらすメリットを解説します。
そのうえで、メンテナンス管理業務を効率化する方法もまとめました。
住宅メンテナンスとは
住宅メンテナンスはアフターメンテナンスとも呼ばれ、住宅引き渡し後の点検作業・修繕作業のことです。
住宅の点検・維持・管理・修理
住宅メンテナンスとは、以下の4つの作業を意味します。
- 点検
- 維持
- 管理
- 修理
住宅を引き渡して工務店の仕事は終わりではありません。点検作業や維持、管理、修理作業も担当します。
詳細は次の項目で解説しますが、5〜10年周期で住宅を点検し、維持のための修理・交換作業も工務店が担当します。
住民が安全に住み続けられるかどうかをチェックする作業の総称が”住宅メンテナンス”です。
住宅品質確保促進法に基づくメンテナンス
住宅メンテナンスは、住宅品質確保促進法に基づいて実施されます。
住宅品質確保促進法第8条には、以下の条文があり、物件所有者または管理者に対して、メンテナンス義務があると規定しています。
第8条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
【引用】住宅品質確保促進法
メンテナンスは住宅所有者の義務で、必ず実施されなければなりません。
10年周期で実施
住宅メンテナンスは、所有者の義務と法律的に定められています。しかし、工務店側に何の責任もないわけではありません。
民法には「瑕疵担保責任(特定住宅瑕疵担保責任履行法)」という規定があり、施工者は施工住宅について、10年間は骨組み・外壁・屋根・窓の傷・不備について責任を負います。
10年間は施工者に上記責任が発生するため、定期的メンテナンスは実質的に必須です。
もちろん概要の部分以外について、施工者に責任を負う義務はありません。
しかし、住宅メーカー・工務店の競争に勝つためには、他社より優れたアフターケアが必要です。
法律の規定だけでなく、顧客獲得のためにも、工務店側は住宅メンテナンスを提供し、安全に住み続けられる住宅を提供する必要があります。
工務店が行うべき具体的な住宅メンテナンス
工務店が実施すべき具体的な住宅メンテナンスについて解説します。
瑕疵担保責任の範囲外でも、充実した住宅メンテナンスを提供すれば、顧客から信頼され受注しやすくなるでしょう。
どのようなメンテナンスがおこなわれているか解説します。
屋根・外壁
屋根や外壁は、施工者の瑕疵担保責任の範囲です。
施工から10年間は、屋根や外壁に瑕疵があった場合は、その責任は施工者が取ります。
メンテナンスの内容は、屋根や外壁の5〜10年周期の点検です。
屋根に損傷があると、雨漏りなどの原因となり、衛生的な住宅を保てません。
点検をして問題があれば、屋根の葺き替えなどを行い、安全に住めるようにメンテナンスします。
内装
工務店が提供しているアフターサービスの内容によっては、内装の点検と修繕を行うケースもあります。
特に壁紙などは生活環境のため汚れやすく、また湿気などによって剥がれる場合もあるでしょう。
点検結果に応じて、壁紙の取り寄せや張替えなども担当します。
給水管・下水管
給水管・下水管を定期的に点検し、必要であれば高圧洗浄機を使用して清掃を行います。
また、配管自体に破裂などが生じている場合は、配管工事が必要となります。
工務店が直接おこなうケースは少なく、配管業者に外注することが多いです。
水回り
引き渡しから10年間トイレや風呂周りの保証をつけている工務店も多いでしょう。
期間内は定期点検、機器の修理・交換に対応します。
アフターサービスの期間内であれば、水回りの修理も工務店が担当するケースが多いです。
その他保証期間の不備
工務店が提供しているアフターサービスの範囲内で、何らかの不備が起きた際は、工務店側が修理・交換を担当します。
点検とは別に、施主から直接連絡が来て、対応する場合もあるでしょう。
例えばインターホンや食器洗浄機など、施工時に工務店で設置した設備の交換が該当します。
住宅メンテナンスの質で受注量が向上
住宅メンテナンスは、瑕疵担保責任における義務だけでなく、受注量の向上のためにも必要です。
メンテナンスの内容を充実させることで、どのようなメリットがあるかを把握しておきましょう。
施主の比較対象のひとつ
住宅メンテナンスの充実度は、施主の比較対象のひとつです。
施主は複数の工務店を比較し、住宅建築を任せる業者を選定します。
価格や住宅自体の質はもちろんですが、アフターメンテナンスの充実度も比較対象です。
そのため、充実したメンテナンス内容を提供している工務店は、施主から選ばれやすくなります。
顧客の安心感
住宅メンテナンスの充実は、顧客の安心感に繋がります。
高額の買い物に迷いを感じている施主の背中を押す効果もあるでしょう。
施主が住宅を建てる目的のほとんどは、今後数十年にわたる住居の確保です。
長く安心して住むために、メンテナンスは欠かせません。
しかし、住宅メンテナンスは高価であり、自身で業者を探すとなると手間もかかります。
工務店が十分なメンテナンスを提供していれば、安心して住み続けられるという確証に繋がるでしょう。
口コミ
住宅メンテナンスが充実していれば、口コミが良くなり、波及的に集客力が高まります。
充実した内容のアフターメンテナンスは、工務店には負担ですが、施主からのニーズが高い領域でもあります。
施主がメンテナンス内容に満足すれば、知り合いに勧めてくれる可能性もあります。
また、最近はSNSやインターネットで情報収集する施主も多いです。
その際に、施工を担当した住宅の所有者から「あの工務店はメンテナンスがほかの工務店よりも良い」などの口コミがあれば、その評判を聞いて見積り依頼が来る可能性が高まるでしょう。
顧客に信頼される住宅メンテナンスの方法
どうすれば顧客に安心感を与える住宅メンテナンスを提供できるか解説します。
工務店の立場ではなく、施主に対して親切なメンテナンス内容が必要です。
自社のメンテナンス内容の見直しを検討している工務店の方は、内容を参考にしてください。
メンテナンスの内容・期間を明示
住宅メンテナンスの内容を明示し、期間も明確に施主に伝えましょう。
ホームページがあるなら、保証についてのコンテンツを作成して掲載してください。
メンテナンスは施主にとっては、工務店比較に使用する判断材料のひとつです。
施主が問い合わせ前にメンテナンスの内容を把握できるよう、メンテナンスについて詳しく説明する資料を作りましょう。
自社で定期点検
住宅の定期点検は外注せず、自社でおこないましょう。
専門的分野は外注するケースもありますが、基本の点検は自社で担当してください。
自社で点検を担当することで、責任を持って住宅を維持点検している安心感を与えられます。
また、過去の相談内容なども把握しているため、施主も気軽に住宅の悩みを相談しやすいです。
他社に任せた方が労力は減りますが、メンテナンスは自社でおこなった方が施主の信頼は厚くなります。
顧客への定期的な連絡
住宅を建てて点検まで何もしないのではなく、顧客へは定期的に連絡しましょう。
住宅について困ったことがないかなど、工務店側から相談を促してください。
施主は「このようなことで相談しても良いのか」「どの程度まで、メンテナンスしてくれるか」迷っており、相談できないケースがあるからです。
工務店側から「お困り事はありませんか?」と聞くだけで、施主からの印象も良くなり、頼りになる工務店になれるでしょう。
適切な住宅メンテナンスの管理方法
適切な住宅メンテナンスを実施するためには、担当した住宅の情報の管理が重要です。
行き届いたメンテナンスを提供すると、工務店側の負担は増えます。
すべて人力で管理していると、メンテナンスに手が回らないなど弊害が起きるでしょう。
特に工務店の規模が中小規模の場合は、業務効率化をしてメンテナンスに回すリソースの確保が重要です。
ここから解説する住宅メンテナンスの管理方法を実践し、施主を不安にさせないメンテナンスを提供しましょう。
アフター管理機能付きシステム
アフター管理機能付きシステムを導入し、住宅メンテナンスの管理を楽にしましょう。
担当した住宅の工事情報などを一元管理し、適切な時期のフォロー連絡・定期点検時期を管理できます。
エクセルなどで管理する方法もありますが、人力で情報入力が必要であり、効率的とはいえません。
アフター管理機能付きシステムなら、顧客からの過去の問い合わせなども管理でき、情報の漏れもなくなります。
引き渡し日に応じた適切な連絡時期アラームの設定
住宅メンテナンスの管理のために、引き渡し日に応じて、連絡時期のアラームを設定しましょう。
今メンテナンスをエクセルで管理している場合は、自社で使用しているカレンダーなどで、アラームを設定します。
1件1件設定すると手間がかかりますが、連絡が漏れては施主からの信頼が勝ち取れません。
連絡漏れがないよう、顧客の連絡先・引き渡し日から計算した連絡日を一元管理し、カレンダーなどにアラームが通知されるようにしておきましょう。
問い合わせ担当や窓口の設置
顧客からのメンテナンス依頼や問い合わせを受けるために、窓口や担当を設置しましょう。
すべて工務店の事務員が電話対応していれば、通常業務の妨げとなります。
また、営業担当に直接電話がかかってくるケースもありますが、商談中だと電話に応答できません。
折り返しを忘れてしまい、顧客の信頼を失うこともあります。
上記の事象を避けるために、住宅メンテナンスの相談担当を決めるか、窓口を設置しましょう。
いつでも顧客が安心して連絡できる連絡先を決めることで、顧客の安心感を高めます。
まとめ
住宅メンテナンスは、施主が安心して住み続けられる家作りと工務店側の集客にも役立ちます。
充実したメンテナンスを提供するためには、自社アフター管理の効率化が必須です。
しかし、現在アフター管理を台帳やエクセルでおこなっている工務店も多いでしょう。
住宅メンテナンス管理を効率化するなら、アフター管理機能付きシステムの導入をおすすめします。
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