太陽光発電システムにおいて主に電気変換の役割を持つパワーコンディショナーですが、太陽光発電の機能を左右するほど重要な役割を持った機器です。
本記事ではパワーコンディショナーについて、役割や仕組みをはじめ、種類や選ぶポイントまで解説します。
目次
パワーコンディショナーとは
パワーコンディショナーとは、太陽光発電などによって創った電気を家庭での利用や充電、売電などに利用できるように変換する機械です。
パワコンやPCS、PVインバーターとも呼ばれるパワーコンディショナーは、電気の変換以外にも創電や売電に役立つさまざま役割を担っています。
ここではまずパワーコンディショナーについて理解するために、以下に2つを解説します。
パワーコンディショナーの役割と仕組み
パワーコンディショナーは電気の変換をはじめとして、以下のような役割を担っています。
家庭利用のための電流変換【交流電流への変換】
パワーコンディショナーの最も基本的な役割は、太陽パネルで発電した電気を「直流電流」から「交流電流」へ変換して家庭で利用できるようにすることです。
家庭で使用される電気製品は電力会社から送られてくる「交流電流」を使って動いていますが、太陽光パネルで発電される電気は「直流電流」のためそのままでは電気製品には使用できません。
このため太陽光発電を家庭内で利用する際には一旦「直流電流」から「交流電流」へと変換する作業が必要となりますが、この役割を担っているのがパワーコンディショナーです。
売電のための電圧変換【逆潮流制御機能】
太陽光発電によって創った電力は電力会社へ売却することができますが、この売電の際に必要な電圧の調整もパワーコンディショナーの役割の1つです。
余った電力を売却できることは太陽光発電を導入する魅力の1つですが、実は電力を電力会社へ送るには発電した電力の電圧を電線内のものよりも高くする必要があります。
日本の場合電線内の電圧は95V~107Vの間で流れているため、それよりも高い電圧に調整しなければなりません。
これは「電圧の高いところから低いところから流れる」という電気の特性によるものであり、家庭から電線へと通常とは逆の流れで電気を送ることから「逆潮流」とも呼ばれます。
パワーコンディショナーはこの逆潮流に必要な電圧制御を行っており、これを逆潮流制御機能といいます。
トラブルの抑制【系統連系保護機能】
家庭と電線や電柱を接続・連携するとそれぞれトラブルが起きた際に影響を及ぼしてしまう可能性もありますが、そういった太陽光発電と電線や電柱間で起こりうるトラブルの抑制もパワーコンディショナーが担う役割です。
電線や電柱など電力会社の設備のことを「系統」と呼びますが、太陽光発電と系統を連携すると太陽光発電で起きたトラブルが系統を通じて地域一帯に影響を及ぼす可能性があります。
こういったトラブルを避けるために、パワーコンディショナーには周波数や電圧の異常を検知したり太陽光発電と系統を切り離したりする「系統連系保護機能」が搭載されています。
太陽光発電の最大化【MPPT:最大電力追従制御】
太陽光発電は太陽光を利用しているという性質上天候や時期、日照量によって発電量が異なりますが、パワーコンディショナーはこういった異なる状況下においても発電効率を最大化させる役割を担っています。
これはMPPT(最大電力追従制御)と呼ばれる機能によるもので、どのような環境下においても最大発電量を割り出し発電効率の最大化を実現します。
太陽光発電は発電量が環境に左右されることがデメリットの1つとしてあげられますが、パワーコンディショナーのMPPTを活用することで安定的な発電が可能です。
停電時の電気利用【自立運転機能】
自家発電を行うメリットの1つに停電時の電力供給があげられますが、パワーコンディショナーはそのような停電時の電気利用も役割として担っています。
停電時にはパワーコンディショナーを「自立運転モード」に変更して「自立運転用コンセント」を家電などの使用したい機器に接続することで、太陽光の電力を家庭内で使用することが可能です。
これはパワーコンディショナーに備わる機能の1つで、自立運転機能と呼ばれる機能です。
パワーコンディショナーの種類
太陽光発電システムに欠かせないパワーコンディショナーですが、いくつかの種類が存在します。
ここでは以下2つの観点からパワーコンディショナーを分類し解説します。
屋内型と屋外型
パワーコンディショナーは、屋内と屋外に設置する2種類に分けられます。
屋内型は主に家庭用の太陽光発電に用いられ、屋外型と比べて価格が安価であったりサイズが小さかったりといった特徴があります。
また屋内に設置するため風雨による経年劣化の影響を受けにくいことも利点です。
これに対し屋外型は主に産業用の太陽光発電に用いられ、屋内型よりも価格も高くサイズも大きい分耐久性が高いといった特徴があります。
集中型と分散型
パワーコンディショナーの設置方法には、1台の容量が大きいパワーコンディショナーを設置する方法と容量の小さいパワーコンディショナーを複数設置する方法があります。
集中型には導入コストの削減や保守管理が容易といったメリットがありますが、一方で故障のリスクが高く、大きくなるといったデメリットがあります。
分散型では反対に故障のリスクは抑えられますが、コストや工数がかかります。
それぞれ一長一短の設置方法ですが、集中型が一般的な設置方法です。
パワーコンディショナーを選ぶ際のポイント
パワーコンディショナーを選ぶ際のポイントは以下の4つです。
最大定格出力
最大定格出力とはパワーコンディショナーが出力できる電力の最大値のことで、一般的な家庭用パワーコンディショナーの最大定格出力は3.0kW~5.5kW程度です。
ここで気を付けなければならないことは太陽光パネルの出力との関係性で、パワーコンディショナーの出力が太陽光パネルの出力を下回っているとその差分の電力ロスが発生してしまいます。
ただし発電量を安定させるためにパワーコンディショナーの出力よりも高い出力となるように太陽光パネルを設置することが一般的であり、これは「過積載」と呼ばれる方法です。
パワーコンディショナーは一般的に日照量が最大(ピーク)となる時間に合わせて出力も最大化させるため、早朝や夜などピーク以外の時間帯には発電量が落ちます。
過積載を行うことでピーク時に発生する電力はある程度カットすることとなりますが、その分ピーク以外の時間帯の発電量が底上げされ、結果全体の発電量は上がり電力供給が安定するという仕組みです。
変換効率
変換効率とは直流電力から交流電力へ電気を変換する際の効率を指し、一般的な家庭用パワーコンディショナーの変換効率は95~98%程度です。
変換効率はどれだけ電力ロスを抑えられるかというパワーコンディショナーの基本的な性能を示す指標ではありますが、先ほど述べたように基本的に95%以上の高変換効率は実現しているためあまりこだわる必要はないといえるでしょう。
ただし、公表されている値は参考値でありパワーコンディショナーと太陽効パネルの相性などによって変換効率は変動するため、その点には注意が必要です。
サイズ・運転音
先ほど「パワーコンディショナーの種類」で屋内型はサイズが小さいとお話しましたが、あくまでも屋外型と比べた場合であって一般的な屋内型パワーコンディショナーは小型エアコン程度の大きさがあります。
屋内型パワーコンディショナーはブレーカー付近に設置することが一般的なため設置場所を確保できないこともあり、その場合は屋外型の設置を検討することも選択肢の1つです。
屋内型にせよ屋外型にせよ運転音も気になる点かと思いますが、稼働時も大きな音はせず太陽光発電が行われない夜間は停止しているため気にする必要はないでしょう。
価格と保証
一般的な家庭用パワーコンディショナーの価格は15万円程度です。
最大定格出力によって異なり、4.0kW程度で15万円程度、1kW変わるごとに30,000円程度変わります。(3.0kWで12万円程度、5.5kWで20万円程度など)
価格は最大定格出力のほかに、変換効率や搭載機能によっても異なります。
同スペック帯でもメーカーによって価格が異なることもあるため、相見積りで比較検討することが重要となるでしょう。
またパワーコンディショナーのメーカー保証は10年~15年程度です。
パワーコンディショナーの寿命も10~15年程度のため同程度の保証期間があることは安心できます。しかし太陽光パネルの寿命が20年程度あることを考えると、途中で交換が必要になることを覚悟しておく必要があります。
まとめ
今回はパワーコンディショナーについて、役割や仕組み、種類や選ぶ際のポイントまで解説しました。
近年政府主導のもと省エネ化へと向かっている建築業界ですが、パワーコンディショナーについてしっかりと理解しておくことで建築時の提案の幅を広げられます。
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