住宅の室内環境に関する認証制度である「住宅向けグリーンガード認証」。
コロナウイルスに伴うテレワークの普及などもあり近年ますます空気環境・住環境が重要になってきている中、取得することで住宅の健全性や快適性を証明できるとして注目されつつあります。
今回は住宅向けグリーンガード認証について、制度内容から必要性、日本での取得状況などをわかりやすく解説します。
目次
住宅向けグリーンガード認証とは
住宅向けグリーンガード認証とは、住宅の室内空気環境に関する認証制度です。
建材や家具などを対象として「VOC」と呼ばれる空気汚染に繋がる物質の総量に基準値を定めた「グリーンガード認証」の住宅向け認証制度として、アメリカの第三者安全科学機関「UL Inc. 」によって規定されています。
VOC、ULなど聞き馴染みのない方も多いかと思いますので、まずはグリーンガード認証について以下の3つを解説します。
- グリーンガード認証とは
- グリーンガード認証の対象物
- 住宅向けグリーンガード認証とは
グリーンガード認証とは
グリーンガード認証とは、空気汚染につながるVOC(揮発性有機化合物)の排出量基準に基づく室内空気環境の認証制度です。
室内空気環境を作る建材や家具を対象に空気汚染につながる物質を出していないかどうかを検査・計測するもので、アメリカの第三者安全科学機関であるULによって規定・認証されています。
VOC(揮発性有機化合物)の例としてはホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、エチルベンゼン、パラジクロロベンゼン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルなど健康に対する有害性を持つ物質があげられ、シックハウス症候群などの問題につながっています。
VOCの排出力規制については日本でも基準値が定められていますが、厚生労働省が13種類、国土交通省が5種類の物質に対する濃度上限設定に留まっているのが現状です。
法整備などによってこうした規制を行っているものの、代替材から排出される別の物質濃度が増加するなど根本的な解決に繋がっておらず、規制値をクリアしている建築物においてもシックハウス症候群が発生するなど問題となっています。
一方グリーンガード認証では300を超える物質に対して基準値が定められており、またVOCの総量であるTVOC量に対しても上限が設定されているため、日本で対象外となっている物質や未知のVOCにも対応が可能です。
2001年に始まったグリーンガード認証は世界で最も厳しい基準を持つ認証である一方世界的に取得への取り組みが進んでいる認証でもあり、VOCを排出しないクリーンな建材や家具の生産・使用が世界の常識となりつつあります。
シックハウス症候群とは住宅が原因でおこる体調不良のことで、その症状は目のかゆみや鼻水、のどの痛みや蕁麻疹(じんましん)など多岐にわたります。
メカニズムについてはまだ十分に解明されていませんが、VOCなどによる空気汚染やカビ・ダニなどが原因と考えられています。
グリーンガード認証の対象物
グリーンガード認証の対象物としては、以下のようなものがあげられます。
- 建材
- 家具
- 壁材
- 床材
- 断熱材
- 塗料
- 接着剤
- 照明
上記は対象物を大まかに分けた上での一例ですが、このようにいずれも建築と大きく関わるものばかりです。
グリーンガード認証では、これらから排出されるVOCに基準値・総量上限を設けることで室内空気環境の認証を行っています。
住宅向けグリーンガード認証とは
住宅向けグリーンガード認証とは、住宅の室内空気を直接測定することで認証を行う認証制度です。
住宅向けグリーンガード認証ではTVOC濃度に加えて、換気システムや温湿度環境、PM2.5やPM10などの粒子状物質濃度基準により評価が行われます。
通常のグリーンガード認証では先ほどあげたような建材や家具といった個別の製品を対象に計測・認証が行われますが、「住宅の室内空気」を対象に計測・認証が行われるのが住宅向けグリーンガード認証です。
日本ではパナソニック ホームズ株式会社が2016年に世界に先駆けて初認証を取得し、また取得以降6年連続で取得し続けています。
同社はVOCの発生源特定分析に基づき接着剤の切り替えを行うなどのVOC低減に努め、「CASART(カサート)」という住宅商品で同認証を取得しました。
また2021年には、「V’esse(ヴェッセ)」という商品でも認証を取得しています。
認証基準に関してはグリーンガード認証と同じ基準が設けられていますが、2019年以降は検証方法が厳格化されました。
「高温の場合より放散量が多くなる」というVOCの特性に基づき、2019年以降はVOCの濃度測定実施時期が「通年」から「4月~12月」に変更されています。
住宅向けグリーンガード認証の必要性
厳格な基準をクリアする努力を重ねてまで認証を取得する必要性を感じられない方もいるかもしれませんが、住宅向けグリーンガード認証の取得は室内空気環境の清浄を保つためにも、環境にやさしい建物を設計するためにも必要です。
とくにコロナウイルスの影響により、消費者をはじめ社会の空気環境・住環境に対する関心は非常に高まっています。
ここでは住宅向けグリーンガード認証の必要性について、以下の2つを解説します。
- 室内空気質の維持
- グリーン・ビルディングへの取り組み
室内空気質の維持
室内空気質とは住宅やオフィス、学校など普段過ごすことのある室内空気環境の質のことで、グリーンガード認証では英語で「Indoor Air Quality」と呼ばれています。
人は一日のうち90%を室内で過ごすといわれており、また人体への汚染経路の70%は呼吸といわれているため室内空気質は食べ物や水と同様に健康において重要です。
以前は社会も室内空気質について関心が高いとはいえない状態でしたが、コロナ以降はその重要性も広く重く認知されていることでしょう。
またコロナ以前もシックハウス症候群など室内空気質に関する問題は発生しており、高断熱や高気密化が進む一方で住宅における室内空気汚染は進んでいるのが現状です。
実際に住宅におけるVOCなどの有害物質濃度は屋外の2~10倍といわれており、また喘息(ぜんそく)にかかる子供の割合は過去20年で1.6倍に増加(2016年時点)しているといわれています。
このように室内空気質を清浄に保つことは、建築にとって重要でありニーズでもあります。
【参考】株式会社 UL 島津ラボラトリー GREENGUARD認証(グリーンガード)サービス
アイティメディア株式会社 VOC300種類の放出量を抑え、シックハウス症候群を根本的に解決するパナホームの家
グリーン・ビルディングへの取り組み
グリーン・ビルディングとは「環境にやさしい建物」を意味する言葉で、その推進は世界中で行われています。
またグリーン・ビルディングに関連する認証制度も世界各国で普及しており、特に「LEED」や「WELL」などは代表的な認証制度として有名です。
グリーン・ビルディングは環境や健康に悪影響を及ぼさないだけでなく不動産としての市場価値も上昇させるものとして注目されており、2017年には日本コカ・コーラ株式会社が本社ビルで「LEEDプラチナ認証」を取得するなど近年日本国内でも申請や取得件数が急増している状況です。
またグリーンガード認証を取得した製品はLEED認証をはじめとした350以上の環境認証やプログラムで認められるため、グリーンガードへの取り組みは同時にグリーン・ビルディングへの取り組みにもつながります。
このようにグリーンビルディングへの取り組みは世界の常識となりつつあり、またグリーンガード認証との関連性も強いため、住宅向けグリーンガード認証も今後ニューノーマルとして認識されると考えられます。
LEEDとは「Leadership in Energy & Environmental Design」の略で、環境や健康などに配慮した建築物を対象とした認証制度です。
またWELL(International WELL Building Institute)とは、人々の健康に焦点を当てた建築環境に関する認証制度です。
これらの認証を取得することで環境や健康への配慮を証明でき、米国の例では税制や都市計画における優遇措置などの恩恵もあります。
まとめ
今回は住宅向けグリーンガード認証について、制度内容から必要性、日本での取得状況まで解説しました。
コロナ以降空気環境や住環境に対する社会の関心は非常に高まっており、シックハウス症候群など住宅が抱える既存の問題もあるため室内空気質に対する配慮の必要性は今後も増していくと考えられます。
またグリーン・ビルディングに見られるような建築面からの環境保全の取り組みも世界的な動きとして見られるため、環境的・健康的にクリーンな住宅は今後の常識となっていくことでしょう。
直接的な補助制度などはまだ展開されていないためすぐに対応する必要性・メリットは大きいとは言い難いかもしれませんが、新常識に遅れず対応するためには今から今回の内容などをしっかりと把握しておくことが重要です。
また新たなことに取り組む際には、まず既存の業務についてしっかりと整理し土台を固めておくことをおすすめします。
既存業務の管理や効率化については、工務店向けの業務管理ソフトウェアを導入すると良いでしょう。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。