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施工管理の若手不足を解消するには?原因と企業が取り組む改善策

施工管理の若手不足を解消するには?原因と企業が取り組む改善策

建設業界では、若手施工管理技士の不足が深刻な問題となっています。

この問題は、業界全体の高齢化や長時間労働など、さまざまな要因が絡み合って発生しています。

若手技術者の確保と育成は、建設業界の未来を支えるために欠かせない課題です。

そこで本記事では、施工管理の若手不足の現状と原因を解説し、国や企業が取り組んでいる具体的な改善策について紹介します。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 施工管理技士が働きやすい職場を作りたい
  • 施工管理のブラックイメージを払拭したい
  • 建設業界におけるデジタル化を促進したい

施工管理の若手不足の現状

施工管理の若手不足の現状について理解し、業界全体が抱える課題の深刻さを確認していきます。

施工管理の若手不足の現状
  • 建設業界全体の就業者数の減少
  • 若手施工管理技士の減少

建設業界全体の就業者数の減少

国土交通省のデータ「建設業を巡る現状と課題」によると、建設業に従事する就業者数は、1997年には685万人いましたが、2022年には479万人まで減少しました。

これは他の産業と比べても顕著であり、建設業界全体にとって深刻な問題となっています。

建設業の就業者数減少の背景には、バブル経済崩壊後の経済状況の悪化や、リーマンショックによる景気低迷が影響しています。

その結果、多くの技術者が建設業界を離れ、他の産業へと転職しました。

また、国土交通省のデータ「建設業を巡る現状と課題」によれば、55歳以上の技術者が全体の35.9%を占めているのに対し、29歳以下の若手技術者は全体の11.7%に過ぎません。

このように、建設業界における高齢化が進行し、多くのベテラン技術者が引退を迎えています。

若手施工管理技士の減少

建設業界全体の人手不足に加え、若手技術者の減少で、現場での監理技術者や主任技術者の配置が難しくなっている状況も深刻な問題です。

若手施工管理技士の不足は、建設工事の進行に支障をきたすだけでなく、業界全体の将来性にも大きな影響を及ぼします。

厚生労働省のデータ「新規高卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によれば、高卒入社3年以内の建設業の離職率が約42%と高い水準にあるのが実態です。

若手技術者の確保が困難な状況によって、施工管理技士の後継者が不足しています。

施工管理の若手不足の主な原因

施工管理の若手不足の背景には、いくつかの深刻な要因があります。ここでは、施工管理技士が不足している主な原因を取り上げます。

施工管理の若手不足の主な原因
  • ブラックなイメージ
  • 長時間労働
  • 休日が取りにくい
  • 給与の低さ
  • 転勤や単身赴任の多さ

ブラックなイメージ

建設業界には「きつい、汚い、危険」という3Kのイメージが長い間根付いているため「ブラック」のイメージが強く残っています。

特に現代の若者は、仕事におけるワークライフバランスを重視する傾向が強く、建設業界の労働環境に対してネガティブな印象を抱きやすいです。

例えば、現場作業では常に体力を使う重労働が求められ、肉体的な負担が大きいです。

また、作業現場が汚れやすく、安全対策が不十分な場合も多くあります。

これらの要素が組み合わさり、建設業界は「ブラックな職場」として認識されやすくなっています。

長時間労働

建設現場での施工管理技士の仕事は非常に多岐にわたり、監督業務や資材の発注、書類作成など、日々の業務が山積みです。

昼間の現場作業に加え、夜間にデスクワークを行うケースが多く、結果として長時間労働が発生しやすくなっています。

さらに、多くの現場では、工期の遅れや天候不良などの理由で、計画通りに作業が進まない場合もあります。

こうした環境では、若手が労働時間の長さに耐えられず、離職してしまうケースが少なくありません。

休日が取りにくい

建設現場では、工事の進行状況によって、休日にも現場に出なければならない場合が多く、有給休暇の計画的な取得が難しいです。

工期を厳守するために、スケジュールがタイトになりがちなためです。

例えば、天候不良や資材の納期遅れなど予測不能な要因が重なり、休日出勤が必要になる場合があります。

さらに、人手不足が重なり、代わりのスタッフが確保できない場合、自分自身で現場をカバーしなければならない状況が生まれます。

給与の低さ

厚生労働省のデータ「建設業の賃上げ、働き方改革に向けた政府の取組」によると、2022年の建設業の平均年収は417万円です。

全産業の平均年収が494万円であるのに比べて、77万円の差がある結果となりました。

また、建設業の賃金のピークは45〜49歳となっており、他産業と比較するとピークが早いです。

これが、長期的なキャリア形成を望む労働者にとって、建設業を敬遠する理由となっています。

転勤や単身赴任の多さ

施工管理技士は国内外の建設工事に関わるため、転勤や単身赴任が頻繁に発生します。

2021年に日本建設協会が行った「2021 時短アンケートの概要」によると、建設業全体の約30%が単身赴任を経験しており、施工管理に該当する外勤の場合だと40%を超えます。

特に家族を持つ人々にとって、頻繁な転勤や単身赴任は大きな負担であり、家族との時間が取れず、ストレスが溜まるでしょう。

また、引っ越しの手間や新しい環境への適応が必要となり、生活が安定しにくいです。

施工管理の若手不足への国の対策

施工管理の若手不足を解消するために、国は以下のようなさまざまな対策を講じています。

施工管理の若手不足への国の対策
  • 建設業働き方改革加速化プログラム
  • 時間外労働の上限規制
  • 建設キャリアアップシステム
  • i-Construction

建設業働き方改革加速化プログラム

国土交通省は、働き方改革をさらに加速させるため「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。

主な内容は以下の通りです。

(1)長時間労働の是正に関する取組

  • 週休2日制の導入を後押しする
  • 各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進する

(2)給与・社会保険に関する取組

  • 技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する
  • 社会保険への加入を建設業を営む上でのミニマム・スタンダードにする

(3)生産性向上に関する取組

  • 生産性の向上に取り組む建設企業を後押しする
  • 仕事を効率化する
  • 限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する

これらの取り組みにより、建設業界全体の働きやすさが向上し、若手技術者の確保が期待されています。

時間外労働の上限規制

建設業界の働き方改革の一環として、2024年4月から適用された「時間外労働の上限規制」は、労働時間管理の厳格化を目的としています。

月45時間、年360時間までの残業を原則とし、特別な事情でも年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満とする制限が設けられています。

労働者の健康を守り、働きやすい環境を提供して、若手の離職率を減少させ、業界全体の魅力の向上が期待されるでしょう。

建設キャリアアップシステム

建設キャリアアップシステム」は、建設業界における労働者のキャリアとスキルを正確に評価するための仕組みです。

2019年4月から本格的に運用が開始され、経験や知識、実務能力を明確に評価し、適正な賃金の支給を目的としています。

建設キャリアアップシステムを活用して、若手技術者が目標を持って働ける環境が整えば、離職率の低下にもつながります。

i-Construction

i-Construction」は、ICT(情報通信技術)を活用して建設現場の生産性を向上させる取り組みです。

i-Constructionは国土交通省が推進しており、調査・測量・設計、施工管理、監督検査、維持管理など、建設業務全般にわたるデジタル化を目指しています。

i-Constructionの導入によってデジタル化が進み、建設業界の3K(きつい、きたない、危険)イメージが改善され、若手が働きやすい職場となるでしょう。

企業が取り組む改善策

若手施工管理技士の不足を解消するために、企業自身も積極的に改善策を講じています。

ここでは、企業が取り組む改善策について具体例を紹介します。

企業が取り組む改善策
  • 労働時間の短縮
  • ダイバーシティの推進
  • 教育制度の充実
  • ブラックイメージの払拭
  • デジタル化の促進

労働時間の短縮

建設業界では、長時間労働の常態化が若手不足の大きな原因となっており、多くの企業が労働時間の短縮に取り組んでいます。

従業員が十分な休息を取れるようになれば、労働者の健康維持とモチベーション向上に繋がり、若手技術者の離職率も低下します。

労働時間短縮のための取り組み例
  • 従業員の勤務状況をリアルタイムで把握するシステムの導入
  • 残業時間が一定の基準を超える前に警告が出して、適切な労働時間管理を実現
  • 週休2日制の導入

ダイバーシティの推進

建設業界においては、これまで男性中心の職場環境が主流でしたが、多様な人材を受け入れて、職場の活性化と創造性の向上が期待されています。

特に、女性や外国人労働者の参入を促進する取り組みが進められています。

女性が働きやすい環境への取り組み例
  • 女性専用のトイレや更衣室を整備
  • 育児休暇や短時間勤務制度の導入
外国人労働者が働きやすい環境への取り組み例
  • 言語サポートセンターの設置
  • 日本語教師を配置

教育制度の充実

建設業界では、若手技術者の育成が重要な課題となっており、社内での教育制度を充実させる取り組みを進めています。

従業員のスキルや経験を正当に評価し、適切な昇進や給与アップを実現できれば、若手のモチベーションの向上につながります。

教育制度充実のための取り組み例
  • 新入社員向けの育成プログラムを強化し、現場での実践的なスキルの習得
  • 定期的な専門的セミナーを開催

ブラックイメージの払拭

若手が建設業界を敬遠する原因の一つであるブラックイメージについて、多くの企業が払拭に取り組んでいます。

労働環境の改善状況を社内外に積極的に発信して、企業のイメージアップを図っています。

ブラックイメージ払拭の取り組み例
  • ホームページやSNSを活用し、働きやすい職場環境をアピール
  • 定期的なアンケートを実施し、意見を反映できる環境を実現
建設業界がブラックと言われる理由は?対策から見極め方まで

デジタル化の促進

建設業界では、デジタル化の遅れが指摘されていますが、最近では多くの企業がデジタル化を進め、業務効率の向上を図っています。

最新の技術を駆使した建設現場のデジタル化は、若手技術者にとっても魅力的な環境を提供します。

デジタル化促進の取り組み例
  • 現場の情報がリアルタイムで共有され、意思決定スピードの向上
  • ドローンや3Dレーザースキャナーの活用で、精密かつ迅速な測量や監視が可能
建設業のデジタル化とは?概要から具体例まで解説

まとめ

施工管理の若手不足は、国や企業が取り組むさまざまな改善策により、少しずつ状況は改善されています。

労働時間の短縮やデジタル化の促進など、具体的な施策が効果を発揮しています。

これらの取り組みを継続し、さらに発展させれば、若手技術者が働きやすい環境が整い、業界全体の活性化が期待されるでしょう。

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この記事の監修者

せいた

保有資格:建設業経理士1級、国際会計修士(専門職)、日商簿記2級、宅地建物取引士

大学卒業後、スーパーゼネコンに13年間勤務。
経理や財務に8年間、民間建築工事の現場管理に5年間携わる。施工実績は20件に及ぶ。