建設業界では業務を効率化するために、DXへの取り組みが求められています。
今回は建設現場におけるDXの概要や必要性、建設DXに取り組むことで期待できる効果などを解説します。
建設DXの事例や、取り組む際のポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
建設現場におけるDXとは
DXとは「デジタルトランスフォーション(Digital Transformation)」の略で、IT技術やシステムを活用することにより、業務の効率や人々の豊かな生活を実現するという概念です。
代表的なものには5G、クラウド、AIなどがありさまざまな現場や社会の中で利用されています。
建設現場におけるDXの取り組みや、進捗状況についてみていきましょう。
国土交通省が推進する建設DX
国土交通省は現在、建設DXとして建設現場にAIを搭載したロボットの導入や、AIが人に代わって点検を行うなどの取り組みを行っています。
またクラウドを利用した会計システムや、情報通信サービスの導入も進んでいる状況です。
研究開発では、よりAIを建設現場に活かせるよう、技術者の経験や知識をデータに移行する作業も行われています。
建設DXの推進状況
現在、建設現場のDXに活用されている技術はICTです。
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、IT技術によるコミュニケーション・情報伝達などを意味します。
建設現場で導入されている主な例は、スマホやタブレットを活用した図面・資料の管理、現場以外の場所からの指示出し、ドローン撮影での点検などです。
このような建設現場でのICT化は、情報の共有や資料管理の効率化や、現場の人数削減にも繋がります。
建築DXの必要性
DXが推進されるようになった理由として、コロナ不況があります。
Withコロナといわれるこの時代では、オンライン会議やオンライン面接など「オンライン化」が急激に浸透しました。
そのため、オンライン化ができない場合は経営が厳しい状況に追いやられる可能性があります。
加えてDX化が進まないと、2025年~2030年の間に最大12兆円の経済損失が発生する可能性があることも問題のひとつです。
このような現状を打破するためにも、DX化は重要になっています。
また、人材不足も建設業界での課題でしょう。
近年は少子高齢化の影響により、若手の数が減ってきています。
さらに建設業における就業者数も年々減少傾向にあるため、人が少なくても運営していけるシステムが必要です。
建設DXに取り組むことで期待できる効果
建設DXに取り組むことで、建設プロセスの改善や業務の効率化、省人化による安全性の確保ができます。
建築プロセスの改善や業務の効率化
DXに取り組むことで、建設プロセスの改善や業務の効率化などが期待できます。
業務の効率化に繋がる技術として導入されつつあるのが、BIM/CIMです。
BIM/CIMは、計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図ることを目的としています。
【引用】BIM/CIMポータルサイト【試行版】 | 国土交通省
簡単に要約すると、平面で行っていた図面や設計を3D化できる技術を使うことで、視覚的にとらえやすくするということです。
平面に起こした図面だと、円形か長方形なのかは文字や投影図でしか判断できませんが、立体で可視的に部品や建物の構造がわかれば、ミスも少なくイメージが掴みやすくなります。
また、2次元の図面では紙が主に使われていましたが、3Dの場合ではパソコン上で図面を作成するためデータの移行などもしやすくなります。
従ってBIM/CIM技術を導入することで、作業工程の単純化および簡略化、ミスや手戻りの軽減などが見込めます。
省人化による安全性の確保
建設DXを導入することで省人化が実現できます。
省人化とは、技術や設備を整えることで作業に必要な人数を減らし、さらに会社の利益に繋がることを指します。
省人化が加速すれば、残業時間の削減や三密の回避にも役立ちます。
また上記の例以外にもロボットによる省人化を実現できれば、高所での確認作業や危険な場所の点検などを回避できるため安全性確保に寄与できるでしょう。
建設DXの事例3つ
ここでは3つの事例をもとに、建設業におけるDX化とはどういうのもなのか解説します。
株式会社あいホーム
株式会社あいホームは、宮城県で注文住宅を販売している工務店であり、地域密着型でその土地に適した住宅を建て続けています。
コロナ禍になってから急速にDX化が進み、株式会社あいホームも取り組みを開始しました。
例えば、ZoomやLINEワークなどを導入する際に、ツールごとにチームを発足しZoomやLINEワークの導入を会社全員で行うプロジェクトとしました。
また、ツールの普及達成率に応じた賞金を設け、達成率が50%になれば10万円の賞金を山分けするなどの工夫をしたようです。
その結果、1か月で社員全員がZoomを使えるようになり、オンラインでの会議や話し合いの頻度が増えたといいます。
ほかにもバーチャル展示場をモデルルームに適応し、いつでもモデルルームの内見ができるようにしました。
リアルでの訪問数は1か月あたり100件程だったのものが、バーチャルにしたことで、1日に100件の内見数を獲得しています。
株式会社大林組
株式会社大林組は、再生可能エネルギーの利用やSDGsの取り組みを積極的に行い、建設業の枠に収まらない環境に配慮したまちづくりに取り組んでいます。
株式会社大林組がDX化により解決しようとした課題は、従業員の熱中症対策です。
もともと現場では、自己申告で休憩をとったり水分補給をするよう指導はしていたものの、暑い中での作業が強いられる建設業では熱中症が多く発生していました。
それを改善しようと最初に取り組んだものが、センサを搭載したTシャツによる体調管理システムの導入です。
導入により熱中症の患者数は一時期0になったものの、スマホのアプリで情報を管理するため使い勝手が悪いことや、服のサイズを一人ひとり採寸する手間がかかることなどが原因で長くは続きませんでした。
そこで次に使用したのが、リストバンド型のWBGT(熱中症を予防するための暑さ指数)測定器です。
スマホの複雑な操作が不要であり、耐水性・耐久性に富んだリストバンドを社員の意見をもとに開発しました。
また、どこにいてもWBGTの値が正確に測れるよう、各階層にビーコンとゲートウェイを設置。
以下の図がイメージです。
このリストバンドのデータはクラウドを経由して管理できるため、危険な状態である場合は休むよう指示を出すことも可能です。
加えてリストバンドにはアラーム機能を搭載し、従業員の体調に対する意識も変わったといいます。
矢作建設工業株式会社
企業理念に「誠実・進取・創造」を掲げ活動している、矢作建設工業株式会社。
環境に柔軟に対応できるような経営方針であり、建設DXにもいち早く着手しました。
抱えていた問題は、原価管理システムが古くデータの収集や対応が遅れてしまうこと。
矢作建設は現場の報告も予算の資料もすべて紙ベースで行っていたため、現場からの情報の伝達にタイムラグが生じ、さらに紙の資料をデータに起こすという作業を行っていました。
そこで矢作建設はこれを解決するため「建設クラウド」の導入を行いました。
建設クラウドとは建設業で使われる会計システムであり、運用サービスを支えるアプリケーションのことです。
原価計算や注文管理、予算や収支などすべてをシステムで連携することで、会計の処理時間を大幅にカットすることに成功しました。
以下の図がイメージとなります。
建築DXに取り組む際のポイント
建設DXに取り組むポイントは、下記3点です。
抱えている課題の明確化
建設DXと一言でいうこと簡単ですが、具体的なものが見えてこない限り対策は立てられません。
まずは「DX化」という言葉の使用を控え、業務を洗い出して課題を具体化することから始めるべきでしょう。
建設現場スタッフとのすり合わせ
現場と経営のイメージの差を埋めておくことも、建設DXを進めるうえで重要だといえます。
経営面でコストや機能が良いと思っていても、現場で実際に使ってみたら使用感や耐久性に難がある場合あるためです。
ひとつの部署で進めるのではなく、会社全体でDXを推進していく必要があります。
導入するシステムの機能や使いやすさ
高価な建設DXを導入しても、使い方が難しければ元も子もありません。
システムの操作性、操作画面の見やすさなどを考慮し使い続けられるシステムである必要があるでしょう。
まとめ
今回は建設DXの概要や効果、取り組む際のポイントなどについて解説しました。
建設DXに取り組むことで、業務の効率化や建設現場における安全性確保などの効果が期待できます。
しかし導入するシステムの操作性が悪かったり、必要な機能が備わっていなかったりすると、かえって業務効率が低下する可能性があります。
そのためDXに取り組む際には、抱えている課題を明確化したうえで、自社に合ったシステムを導入しなければなりません。
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