建設業の見積り作成にはさまざまな課題があります。
作成に時間がかかり、なおかつ下請けなどにも見積り依頼を出す必要があるなど、各方面との連携が必要です。
この記事では、見積り書の必須項目と、見積り作成に関する課題と解決策を紹介します。
目次
【建設業】見積り書の必須項目
建設業の見積り書の構成と必須項目について解説します。
見積り書はこの3つの書類で構成され、それぞれに必須の記載項目があります。
まずは見積り書の概要をおさらいしておきましょう。
表紙
建設業の見積り書表紙には、以下の項目を記載します。
- 見積り金額合計
- 工事名称
- 工事場所
- 見積り発行年月日
- 見積り書の有効期限
- 受け渡しの方法
- 支払い条件
- 工事業者情報
見積り金額の合計はもちろんのこと、工事の概要と見積り有効期限などを明示する必要があります。
また、依頼者が問い合わせできるよう見積り発行者情報も記載しましょう。
内訳書
見積り内訳書とは、見積り対象の品目や工事の仕様、摘要などを細かく記載する書面です。
複数の階層に分けて構成され、どの作業にどれだけの費用がかかるかなどを細かく書かなければなりません。
また、作業人員の法定福利費も忘れないように書き込みましょう。
詳細に書き込むほど工事の価格について依頼主との合意形成をとりやすく、不安のない契約締結ができます。
条件書
見積り条件書とは、工事見積りに関しての諸条件を明示するための書類です。
- 工事範囲に含める/含めない事項
- 施工条件
- 支払い条件
- 違約金についての取り決め
条件書は契約前の合意形成に役立つ書類のため、必要な事項を漏れなく記載する必要があります。
さらに詳しい建設業の見積り書記載事項については、以下の記事にて解説しています。
建設業の見積り作成の流れ
建設業の見積り作成は以下の流れでおこないます。
見積り作成工程は細かなデータ確認が多く、期限内に完成させるためには効率化が必須です。
あらかじめ見積り作成フローを洗い出し、無駄な工程や効率化させるヒントにしてください。
工事概要の決定
依頼主とのヒアリングや現地調査をもとに、工事概要を決定します。
工事の内容や依頼主の希望納期も聞き出した上で、工事の概要を大まかに決めましょう。
必要資材・人材の洗い出し
工事の概要をもとにして、必要資材や人材の洗い出しをおこないます。
この時点では金額を考えず、工事に必要な資材・人材を書き出すことに専念しましょう。
この時点で価格を検討してしまうと、金額を気にしながらの見積りとなり、契約のために安く見積りを出してしまうことが起こり得るからです。
過去データ参照
必要な資材や人材の洗い出しが終わったら、過去データを参照して概算を作ります。
原価が変動している可能性があるため、データの精度も確認が必要です。
下請けへの見積り依頼
自社で使用する資材・人員を発注する下請けへ見積り依頼を出します。
請負金額に応じて見積り期間が設けられているため、下請けに法律で定められている以上の期日で提出するように元請が急かすことはできません。
そのため依頼主への提出が遅くなるケースもあることに注意しましょう。
見積りのまとめ
下請けからの見積り書が出そろったら、改めて見積り書をまとめます。
過去のデータから原価が変わっている場合は修正し、最新の情報で精度の高い見積り書を作りましょう。
その後、表紙に合計金額などをまとめ、最終チェックをおこないます。
顧客への提出
最終チェックが終わり完成した見積り書を依頼主へ提出しましょう。
顧客が見積りを確認し、内容に合意すれば正式な請負契約へ進めます。
【建設業】見積り業務の課題
建設業の見積り業務には複数の課題があり、業務効率を妨げたり、スムーズな合意形成を邪魔しているケースがあります。
建設業が抱えている見積り業務の課題とは以下のようなものです。
見積り作成に時間がかかり、提出期限ギリギリになってしまったり、施工完了後に料金トラブルが起きる原因となります。
事前に見積り作成で起きやすい課題を把握した上で、適切な対策を講じましょう。
見積り期間
建設業の見積り提出から契約締結までは、以下の期日を設ける必要があります。
第六条 法第二十条第四項に規定する見積期間は、次に掲げるとおりとする。ただし、やむを得ない事情があるときは、第二号及び第三号の期間は、五日以内に限り短縮することができる。
一 工事一件の予定価格が五百万円に満たない工事については、一日以上
二 工事一件の予定価格が五百万円以上五千万円に満たない工事については、十日以上
三 工事一件の予定価格が五千万円以上の工事については、十五日以上
2 国が入札の方法により競争に付する場合においては、予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)第七十四条の規定による期間を前項の見積期間とみなす。
【引用】G-GOV法令検索
工事は請負金額が大きいため、双方に不利な契約とならないように猶予を持って見積りを作成・契約できるように定められています。
例えば元請が依頼主と勝手に見積り提出期限を決め、下請けに対して建設業法上での期日をより早めて見積りを提出するよう求めることはできません。
依頼主の希望見積り提出日を優先してしまい、建設業法規定を破ることがないよう注意しましょう。
参照するデータの多さ
見積り作成には多数のデータを参照する必要があります。
原価マスタを作っていたとしても、そのデータが最新かどうか確認しなければなりません。
また、過去の見積り書を参照する場合、書類管理が紙媒体でファイルに綴じられていると検索だけで時間がかかってしまいます。
記載項目の多さ
見積り書作成自体も時間がかかります。
記載項目が非常に多く、複数階層に分けた工事仕様の記載が必要など、入力項目が多いためです。
また、工事の概要への理解、自社商品や在庫への知識が求められます。
新人営業とベテラン営業で見積り作成の時間、クオリティに差が出やすいです。
担当者ごとの見積り金額の差異
建設業は見積りに参照するデータが多く、また作成自体が複雑なため、営業ごとに金額差が出やすいです。
ベテラン営業が作成した見積り書は精度が高く、クライアントからの修正依頼がないものの、新人が作成すると見積りと最終原価が異なり、トラブルになるケースがあるでしょう。
営業としての経験値や個人スキルによって、見積り作成のクオリティが左右されてしまいます。
しかし、企業として一定のクオリティで見積りを出せなければ、クライアントからの信頼を失うリスクがあるでしょう。
再提出依頼
見積り作成後にクライアントから再提出依頼を受けることも、見積り作成の課題のひとつです。
依頼主による工事内容の変更、また原価変動、価格交渉などが原因で、見積りを再提出するケースがあります。
なるべく再提出のないような見積り書を作成する必要があるでしょう。
建設業の見積り業務を効率化する方法
建設業が抱える見積り業務の課題を解決し、より効率よく質の高い見積り書を作る方法を紹介します。
以上の5つの項目を社内で改善することで、見積り作成を効率化し、担当者間での見積りの差を縮められるでしょう。
入念な打合せ
見積りを作成する前に、施工内容について打ち合わせやヒアリング、現地調査をおこないます。
その際にしっかり施工内容を聞き、相手の予算も聞いておきましょう。
施工内容に差異がなく、また予算を把握しておけば見積り作成時に工事内容の範囲と相手の希望予算を調整できます。
仮に予算を大きく超える場合は、事前に営業から連絡を入れ、「希望の工事範囲では見積りが高くなるが、予算と工事範囲どちらを優先するか」などを確認してから見積りを作れます。
後から再提出の手間を省き、契約へスムーズに進むためにも打ち合わせはしっかりするようにしましょう。
見積り精度の向上
見積り書の精度を向上させることで、営業間の価格差異を減らせます。精度の向上のためには、参照データを統一するといいでしょう。
過去データの精度自体が低いと、原価変動に気づかず古いデータで見積りを作成してしまいます。
また過去の工事見積り書をわかりやすく保管し、参照にできる体制を整えることで、見積り精度の向上につながるでしょう。
マメな原価価格の把握・管理
正しく見積り書を作るには、マメな原価価格の把握や管理が必要です。
マスタデータを作成し、原価の更新状況を常に最新のものにしておきましょう。
エクセルでマスタデータを管理する方法もありますが、手作業のためどうしてもミスが起こります。
マスタデータは更新ログが残り、また一括で現場の見積データに反映させられるようなシステム管理がおすすめです。
見積り書テンプレートの統一
見積り書は項目が多く、一から作成していると非常に手間のかかる作業です。
そのためテンプレートを事前に作成しておき、記載する項目を決めておくとミスなく必要な項目を掲載した見積りを作成できます。
現場エクセルで見積り書を作成している工務店や企業は、エクセルでテンプレートを作成し、シートに保護をかけて保管しておくと良いでしょう。
エクセルテンプレートの作り方がわからない方は、「AnyONE」の無料エクセルテンプレートを使用することをおすすめします。
ダウンロードするだけですぐに見積り作成を始められ、手軽です。
さらに効率よく見積作成をしたい方は、クラウド上でワンクリックで見積り書を作成できるシステム導入をおすすめします。
見積りフロー・使用データの統合
見積りを営業個人に任せていると、作成フローや参照データにばらつきが出てしまい、営業担当者間のクオリティ格差につながります。
ベテランはうまく見積りを作れたとしても、感覚で作成している場合は再現性が低く、新人に見積りノウハウを継承できません。
ベテランと新人で差が出ないよう、誰でも同じ規格・質で見積りを作成できる環境を整えましょう。
そのためには見積りフローを統一し、使用データの保管場所を統一する必要があります。
ここまで紹介した5つの課題解決法を実現するためには、見積りシステムの導入がおすすめです。
見積りシステムの概要や機能、おすすめシステムについては以下の記事でまとめました。参考にして、自社に合うシステムを導入しましょう。
まとめ
建設業の見積りは建設業法で各種規定されており、厳密に作る必要があります。なおかつ下請け業者への猶予、依頼主の要望に合わせる各方面への配慮も必要です。
見積り作成は作成自体が難しいですが、依頼主からの契約合意を獲得するために欠かせません。
効率的に見積りを作成するために、営業間でばらつきが出ず、また複雑な書式・参照データを統合する試みをしてみてください。
当メディアでは見積り作成システムの導入をおすすめします。
しかし、どのようなシステムが良いかわからない工務店の方もいるでしょう。
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