地球温暖化対策における重要な概念である「カーボンニュートラル」。
簡単にいうと「二酸化炭素の排出量をゼロにする」といった意味合いを持つ言葉ですが、生産段階や施工段階などあらゆるフェーズにおいて環境への影響が大きい建築業界にもカーボンニュートラルに向けた対応が求められています。
そこで今回はカーボンニュートラルについて、下記3点を中心に、類似する概念や関連する概念も含めて解説します。
目次
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2)の排出を全体としてゼロにするという意味です。
「人の活動によって発生する二酸化炭素」と「森林などによって吸収される二酸化炭素」の量がプラスマイナスゼロになるような社会を目指し、地球上の炭素(カーボン)の総量をニュートラルな状態に保とう、ということです。
カーボンニュートラルは世界中で取り組まれている目標であり、2021年4月時点で125ヵ国と1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しています。
日本も2020年10月に臨時国会の場で「カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指して2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを宣言しています。
「温室効果ガス」としているように、CO2だけでなくメタンやフロンガスといった温室効果ガス全体を対象としていることが特徴です。
ここではカーボンニュートラルについての理解を深めるため、さらに以下2点についてもご紹介します。
【参考】経済産業省資源エネルギー庁 日本のエネルギー政策のトレンドがわかる!「エネルギー白書2021」、首相官邸 令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説
類似の概念
カーボンニュートラルに類似する概念としては以下の4つがあげられます。
- カーボンネットゼロ
- カーボンゼロ
- ゼロカーボン
- ゼロエミッション
これらはいずれもカーボンニュートラル同様にCO2排出量を全体としてゼロにするという意味合いですが、使用する組織や文脈によって意味が異なる場合があります。
例えば株式会社エコ・プランが環境省に行った取材では、「『ネットゼロ』は企業が目標を掲げる際や英語で表記される際に採用されることが多いという印象がある」との回答を得ています。
また先ほどご紹介したように首相官邸が宣言した「カーボンニュートラル」ではCO2を含む温室効果ガス全体の排出量ゼロを意味していたり、「ゼロエミッション」は人の活動によって発生する廃棄物全般をゼロに近付けるという意味合いで使用されたりする場合があります。
関連する概念
カーボンニュートラルに関連する概念としては以下の3つがあげられます。
- カーボンオフセット
- カーボンネガティブ、ビヨンド・ゼロ
- ネガティブエミッション
カーボンオフセットとは、どうしても排出されるCO2などの温室効果ガスについて、温室効果ガスの削減活動への投資などを通して埋め合わせをするという概念です。
カーボンネガティブとは、排出されるCO2よりも吸収するCO2の方が多い状態を指す言葉です。
カーボンネットゼロなどが意味するプラスマイナスゼロを超えた状態として、ビヨンド・ゼロとも称されます。
またネガティブエミッションは、過去に排出し大気中に残留したCO2まで回収することを意味します。
建築業界におけるカーボンニュートラルへの取り組み
建築業界は生産時から生産後まで環境に対する影響が大きいため、カーボンニュートラル実現に際してもその役割は大きいといえます。
実際に政府も住宅業界や建築業界を家庭・業務部門において鍵となる分野として位置づけており、建築業界側もカーボンニュートラル実現に向けて取り組みを始めています。
ここでは建築関連5団体が提示する、建築業界におけるカーボンニュートラルへの取り組みについてご紹介します。
【参考】一般社団法人 日本建築学会 地球温暖化対策アクションプラン2050 ー 建築関連分野のカーボン・ニュートラル化への道筋 ー
カーボンニュートラル化の目標
建築業界は目標として、建築と都市・地域のカーボンニュートラル化を掲げていますが、具体的には以下の3つに分けられます。
新築建築のカーボンニュートラル化(10~20年)
今後10年~20年を目途に目標とされているのが新築建築のカーボンニュートラル化です。
エネルギー消費が最小となるような設計や再生可能エネルギーの利活用によって、二酸化炭素を極力排出せずにカーボンニュートラル化を推進するとしています。
既存建築も含めた建築関連分野全体のカーボンニュートラル化(~2050年)
2050年までを目途に目標とされているのが、新築に限らず既存建築を含めたカーボンニュートラル化です。
省エネ対策や再生可能エネルギーの導入、耐久性の向上など、建築物に対する負荷を最小にするような改修を進めることで建築関連分野全体のカーボンニュートラル化を推進するとしています。
建築を取り巻く都市、地域や社会を含めたカーボンニュートラル化
建築は地域の重要な構成要素であるとして、建築に限らず地域や社会を含めたカーボンニュートラル化も目標とされています。
気候風土への配慮や資源の活用、コミュニティとの連携など、地域と密接なつながりを持つことでその実現にあたるとしています。
カーボンニュートラルな建築の推進
建築業界は先ほどの3つの目標を実現するため、建築に関して以下の6つの方針を掲げています。
エネルギー消費が最小となるような設計、運用
断熱などの環境性能強化や、省エネ性能の高い機器の導入など省エネルギーの設計を行うことで、建築物の快適性を保ちつつエネルギー消費量やCO2排出量を削減します。
再生可能エネルギーによって自らエネルギーを賄える設計
エネルギー消費量を削減するとともに、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーが利活用できる設計により、建築物が自らエネルギーを生産できる環境を構築します。
寿命を長期化できるような設計、運用
耐久性や耐震性といった物理的な性能向上のほか将来の改修を考慮した設計を行うことで、建築物を長寿化させて建築や廃棄の際に発生するCO2排出力を抑制します。
二酸化炭素排出の少ないエコマテリアル利用の推進
省資源化に加えて製造・輸送時にエコマテリアルを利用することでCO2排出量を削減します。
オンサイトで排出削減できない場合のオフサイトによる削減
どうしても敷地内(オンサイト)でカーボンニュートラルを実現できない場合は、外部からの再生可能エネルギー調達や建物同士での排出削減量融通など敷地外(オフサイト)を利用することで、設計の自由度を確保しながらカーボンニュートラルの実現を図ります。
ライフサイクル・マネジメントが可能なシステムの構築・活用
設計・施工・運用・改修・廃棄といった建築のライフサイクルをマネジメントできるデザインやシステムを構築・活用することでカーボンニュートラル化を推進します。
建築現場におけるCO2削減のポイント
最後に建築現場におけるCO2削減のポイントをご紹介します。
建築では以下2つの段階でのCO2削減が可能です。
施工段階のCO2削減ポイント
施工段階のCO2削減ポイントは、トラックや重機に使用される軽油の使用量を削減することです。
高燃費効率重機を採用するほか、省燃費運転を励行することで軽油の使用量を削減できます。
生産段階のCO2削減ポイント
生産段階のCO2削減ポイントは、生産の合理化です。
具体的な方法としては、現場で型枠を組み立てることによってトラック積載率を向上させつつ輸送回数を削減したり、寒中コンクリート養生方法を改善することで燃費を削減したりということがあげられます。
まとめ
今回はカーボンニュートラルについて、その言葉の意味や建築業界のカーボンニュートラル化への取り組みを解説しました。
カーボンニュートラルはあらゆる分野における課題ですが、なかでも建築業界は特に影響力が大きく、また実際の取り組みも進んでいるということが理解してもらえたかと思います。
建築においてカーボンニュートラルを推進するためには、設計・施工・運用・改修・廃棄などあらゆる段階で生産性を向上させることが必要です。
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