近年政府によって家庭への普及が推進されている『HEMS』は、各電気設備のエネルギー消費量可視化と一元管理・制御によって省エネを実現するシステムです。
本記事ではHEMSの機能や仕組みをはじめ、利用条件や導入時の課題まで解説します。
目次
HEMSとは
HEMSとは、家庭内における各電気設備のエネルギー消費量可視化と一元管理・制御によって省エネ効果をもたらすシステムのことです。
HEMSは住宅の省エネ化に寄与するシステムであるため、省エネ性能に優れた住宅であるZEHと同様に政府によって2030年までの全住宅への導入が目標とされています。
HEMSについて理解するため、まずはHEMSの機能や普及推進の背景、関連用語について見ていきましょう。
エネルギー消費量の可視化
HEMSの最も基本的な機能は、家庭内で使用される電気設備のエネルギー(電気)消費量を計測し可視化することです。
電気設備はネットワークを通じてHEMSと接続されます。電気設備の例としては照明やエアコン、床暖房など多岐にわたります。
HEMSによって計測されたエネルギー消費量は、HEMSコントローラーのほか、パソコンやスマートフォン、タブレットでも把握できます。
電気設備の一元管理・制御
エネルギー消費量の可視化と並ぶHEMSの機能としては、電気設備の一元管理・制御があげられます。
HEMSを導入するとパソコンやスマートフォン、タブレットでエネルギー消費量を確認できるだけでなく、それらを使って逆に電気設備を遠隔から操作することも可能です。
例えば、急いで出かけた後に出先から照明を落としたり、帰宅する前にエアコンや床暖房をつけて部屋を快適な状態にしておいたりといったことができます。
さらに、消費電力量が目標値を超えると照明やエアコン、床暖房などを自動で制御するといった設定を行うことも可能です。
また、災害発生時に太陽光発電や蓄電池から必要な電力を供給することもHEMSの管理・制御機能の1つといえます。
HEMS普及推進の背景
「エネルギー消費量の可視化」と「電気設備の一元管理・制御」という2つの機能により省エネを実現するHEMSですが、政府により普及を推進される背景には以下の3点があります。
- 温室効果ガスの削減
- 電力消費量の増加と電気料金の上昇
- エネルギー自給率の向上
世界各国と同じく日本政府も温室効果ガスの削減に取り組んでおり、「2030年度までの温室効果ガス46%削減(2013年度比)」や「2050年までのカーボンニュートラル実現」といった目標を掲げています。
しかしその反面、高度情報化社会の進展などにより社会における電気の役割は大きくなる一方であり、また電気料金も上昇傾向にあります。
なお2014年以降に料金が下降した理由としては、アメリカのシェール革命により原油価格が引き下がったためです。
さらに日本のエネルギー自給率は主要諸国と比べても低く、11.8%に留まっていることが実情です。
このように日本は、エネルギー自給率が低いにもかかわらず電力消費量が増え、電気料金も上昇している中で温室効果ガス削減を実現する必要があります。
日本では近年こうした背景・課題を解決するために省エネやエネルギーの効率的な運用を目標としたさまざまな取り組みが行われており、その中の1つが家庭における省エネシステムであるHEMSの普及といえます。
HEMSの関連用語
HEMSの関連用語としては以下のようなものがあります。
- CEMS
「Community Energy Management System」の略で、地域におけるエネルギー管理システムを指します。 - BEMS
「Building Energy Management System」の略で、ビルにおけるエネルギー管理システムを指します。 - FEMS
「Factory Energy Management System」の略で、工場におけるエネルギー管理システムを指します。
このように、家庭内のみならずさまざまな領域でエネルギー管理システムの導入が図られています。
HEMSの仕組みと利用条件
HEMSは、電力測定ユニットとネットワークの利用によって電気設備のエネルギー消費量可視化や一元管理・制御を行います。
HEMSについて理解を深めるため、HEMSの仕組みと利用条件について詳しく見ていきましょう。
HEMSの仕組み
HEMSは以下のような仕組み・プロセスによって電気設備のエネルギー消費量可視化や一元管理・制御を行います。
- 電力測定ユニットの設置
HEMSによるエネルギー消費量確認のためには、HEMS対応の電力測定ユニットを分電盤(ブレーカー)に設置する必要があります。 - ネットワークによる各電気設備の接続
照明やエアコンなど電気設備のエネルギー消費量確認、管理・制御のためにはそれらの電気設備をネットワークで接続する必要があります。 - 情報端末によるエネルギー使用状況の確認
電力測定ユニット設置とネットワークによる電気設備接続を経て、HEMSコントローラーやパソコン、スマートフォンやタブレットといった情報端末でエネルギー使用状況が確認できます。 - エネルギー使用の管理・制御
可視化されたエネルギー消費量に基づき、消費者が自らエネルギーや電気設備の管理・制御を行います。
HEMSの利用条件
HEMSの利用には以下の2点が必要です。
スマートメーター
スマートメーターとは、通信機能を備えた電力量計のことです。
HEMSでは各電気設備と接続されたHEMS機器と電力量計との間で通信が必要となるため、スマートメーターを設置する必要があります。
なおスマートメーターはHEMS機器との通信を行うほか、電力会社とも通信することが可能です。
エコーネットライト(ECHONET Lite)
エコーネットライトとは、HEMSにおいてHEMS機器と各電気設備を接続する際に利用される共通の通信規格(通信プロトコル)のことです。
HEMSでは異なるメーカー機器間での通信が必要となりますが、日本において家電製品や住設機器に利用されている通信規格がエコーネットライトとなります。
なおエコーネットライトは日本初の国際規格であり、家電メーカーや通信事業者による「エコーネットコンソーシアム」にて制定されたものです。
HEMS導入の課題
HEMSは今後の社会に必要な優れたシステムであり普及も推進されていますが、導入に際してはいくつかの課題が存在します。
最後にHEMS導入の課題について解説します。
導入コストの高さ
HEMSの導入には5万円~20万円程のコストがかかるといわれています。
先ほどお話したようにHEMS導入には必要となるものが多く、分電盤への電力測定ユニット設置やネットワーク接続のためのルーター設置などが必要です。
近年では1万円台で導入できるようなHEMS機器も登場していますが、節電・節約効果を期待してHEMSを導入する場合は数万円~数十万円のコストに見合う効果があるかどうか慎重に考える必要があります。
対応機器の少なさ
HEMSは近年普及が始まったシステムのため、対応機器が少ないというのが実情です。
対応機器でなくともエネルギー消費量を可視化することはできますが自動制御などはできず、HEMSの機能を十分に発揮することは難しいでしょう。
また認知度も低く消費者発信の情報も少ないため、その点がさらに導入や普及の妨げになっているともいえます。
まとめ
今回はHEMSについて、その機能や仕組み、利用条件や導入の課題などを解説しました。
まだまだ認知度があるものではないHEMSですが、政府によって普及が推進されていることは事実であり、今後の住宅の在り方を把握しておくためにもHEMSを理解しておくといいでしょう。
HEMSによるエネルギー消費量の可視化や電気設備の管理・制御は住宅において重要ですが、建築業自体においても業務の可視化や施工管理は重要です。
特にHEMSのような先進的な住宅の建築に取り組む際は、今一度社内の業務内容について把握し、効率的に業務を行っていくことが必要でしょう。
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