建設業を営む企業にとって販売管理は事業運営に欠かせません。
しかし、建設業界では手続きや計算方法が煩雑で、ミスや課題を抱える企業も多いでしょう。
この記事では建設業における販売管理の概要や流れ、必要な帳票と起こりやすい課題を解説し、問題点を解決する方法を紹介します。
販売管理の効率化、より精度の高い販売管理を目指している方はご一読ください。
目次
建設業における販売管理とは
建設業界における販売管理とは、商品の売買に係る以下の事項を管理することです。
- 販売情報
- 仕入れ数
- 在庫数
- 顧客の情報
- 請求・回収金額
会社経営に欠かせないもので、商品の売れ行きや費用対効果を確認できます。
特に建設業は、機材をリースしたり多数の職人を雇うこともあり、販売管理を怠ると適切なコスト・収支が管理できません。
今後も事業を安定して運営するためにも、しっかりと販売管理をおこなう必要があります。
建設業で販売管理が重要な理由
建設業で販売管理が重要な理由を説明します。
なぜ建設業で販売管理が重要なのか理由を理解したうえで、自社の管理をおこないましょう。
収支管理・コスト管理
販売管理により、工事現場の収支状況やお金の流れを見える化できます。
「仕入れやリース、作業員の人件費にどの程度お金がかかり、利益が出ているか」を把握することは事業運営の基本です。
また、コストも販売管理で確認でき、経費削減の目安にもできます。
仕入れや在庫を不要に扱うとその分出費が増えますが、現場ごとの販売管理で必要な在庫数の目安がわかれば、余分な在庫を抱え、保管するコストが削減できるでしょう。
完成工事原価の算出は法律上の義務
建設業における完成工事原価の算出は、「建設業法施行規則別記様式第十五号および第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」で義務づけられています。
完成工事原価報告書をもとに、製造原価報告書を作成して完成した工事の金額のみを算出して報告しなければなりません。
- 労務費
- 材料費
- 外注費
- 経費
以上の4項目を合算して、報告します。
この報告書を提出しなければ、建設業の許可が降りなくなってしまうため建設に携わる企業にとっては非常に重要な報告書です。
事業を継続していくためにも、販売管理を日頃から正しくおこない、報告書を出せる状態にしておく必要があります。
販売管理の流れとは
建設業における販売管理はどのような流れとなるか解説します。
大体の流れを把握することで、抜けモレのない販売管理をおこなえるため、まずはステップを把握しましょう。
1.受注管理
受注管理は、主に以下の3つに分類されます。
- 見積り
- 契約
- 受注
まずは見込み顧客に営業し、工事現場単位でかかる人件費や資材費用を算出して見積書を作成します。
見積書を参考に、依頼元が発注を決めるためミスなく精度の高い書類が求められる作業です。
依頼元が契約を決めれば契約作業に入ります。
取引に必要な事項を記載した書面を作成して、受注契約を請け負うまでが契約の作業です。
契約締結後に正式な受注決定となり、受注伝票の発行や正式な工事内容について記載した書類を作ります。
2.出荷管理
受注後は出荷、つまり工事現場での作業を開始します。
クライアントと締結した契約書や受注内容に基づき、工期に間に合うように工事を進めましょう。
受注した工事現場の作業を完成させ、引き渡しをおこなうまでが出荷管理です。
3.請求管理
引き渡し後に、発注元に対して請求書の発行とそれに対しての代金の回収作業、金額に相違がないかを確認しましょう。
契約書に記載のある入金日までに入金がない場合は、督促も必要です。
4.在庫管理
建設現場の在庫管理とは、工事中および工事完了後に資材などを管理することを指します。
在庫の管理を怠っていると、現場から資材について質問があった際に適切な回答ができません。
また、顧客からの発注にスピーディに対応するためにも、常に自社の在庫の出入りを管理する必要があります。
在庫を常に管理しておくことで、自社に必要な在庫量の目安をつけられ、無駄な在庫を抱えずに済むため、コスト削減にもつながるでしょう。
5.仕入れ管理
資材の仕入れなどの管理も重要です。資材を仕入れる際の原価から、請け負った工事現場でどの程度の利益が出るかもチェックしましょう。
工事完成原価報告書においても必要な情報なため、精度高く管理できるようにしておいてください。
仕入れ管理がずさんだと、現場で勝手に資材を発注していて原価が合わないケースも起こり得ます。
仕入れのフローとともに、しっかり管理しましょう。
建設業での販売管理で用いられる帳票
建設業の販売管理で必要な帳票は主に3つあります。
販売管理で欠かせない帳票なため、自社のテンプレートが定まっていない場合、または作業効率が悪い場合は見直すべきです。
帳票をしっかり作成していなければ、企業間の取引でトラブルが起きた際に自社の正当性を証明できません。
帳票は重要なため、詳細を理解したうえで必ず作成しましょう。
見積書
見積書は、見込み客に対して契約前に工事現場でどの程度の費用がかかるか、工期はいつまでかかるかを提示するための帳票です。
- 契約金額
- 納期
- 工事の仕様
- 支払い条件
主に以上4つの事項を記載します。
見積書はクライアントが依頼を決める決め手になる書類です。
万が一、実際の請求額と相違していた場合はトラブルの元になるため、経理部門と相談してなるべく詳細に作りましょう。
また、請求時に契約前の提示事項との相違がないかの確認書類としても使用できます。
注文書
工事の発注時に作成するのが、注文書です。
本契約の際に作成する書類のため、見積書よりも詳しい内容の記載をおこないます。
見積書と契約書と同じ内容になっているかをよく確認し、作成しましょう。
納品書
工事が完了して、クライアントに引き渡しをおこなう際に納品書を作成します。
納品書は発行義務はありませんが、互いに引き渡しが終わった・終わっていないなどのトラブルを避けるために、作成することをおすすめします。
納品書のフォーマットに指定はないため、クライアントと相談して見やすい帳票を使うといいでしょう。
建設業界で起こりやすい販売管理の問題点
販売管理の重要性や必要書類を理解したところで、販売管理の問題点を解説します。
建設業に携わる企業、工務店ではすでに販売管理自体はおこなっているでしょう。
しかし、建設業界の販売管理は煩雑になりがちでさまざまな課題があります。
正しい販売管理ができなければ、健全な事業運営につながりません。
まずは、どのような問題点や課題が起きやすいのかを把握して、解決策を考えるべきでしょう。
計算ミス
販売原価の計算は複雑であり、計算ミスが起こりやすくなります。
特に報告義務が定められている完成工事原価のミスが頻発、または報告漏れが発生すると、コンプライアンス面で問題です。
見積りと実際の請求に差額が発生してトラブルになるなど、クライアントとの信用問題も考えられます。
建設業界の販売管理では、計算が複雑であるが故にミスをどのように防ぐかが重要です。
承認フローの遅れ
建設業界では、さまざまな帳票を作成して取引先との契約をおこないます。
重要な帳票を作成後は上長によるチェック・承認作業が入りますが、この承認作業が遅滞しがちなことも問題です。
承認作業が遅れると、クライアントに対しての見積りの提示が遅れて契約機会を損失するリスクもあります。
また、見積り作成段階から別の工事で資材を使用しており、在庫の数が不足するリスクも考えられるでしょう。
上長が帳票をチェックする負荷、作成した帳票がどこにあるかわからないなど、運用上の問題もあります。
管理コスト
販売管理を紙面で行っている工務店も多いでしょう。
しかし、紙での管理は余計なコストがかかります。
- 帳票を保管する鍵付きキャビネット
- 用紙をコピーする費用
- 紛失・破損による再発行
- 管理者の設定
このように、紙での帳票管理には限界があるだけでなく、管理にリスクも付きまといます。
建設業界は紙ベースの風土が強い業界ですが、管理コストやリスクの面でも運用方法を見直すべきです。
建設業における販売管理の方法
建設業界における販売管理の方法は主に3つあります。
それぞれの管理方法のメリットとデメリットを紹介します。
自社運用を見直す参考にしてください。
既存帳票で紙面で提出
建設業界で一般的な管理方法は、既存の帳票を使用するものです。
すでに作られたテンプレートへ契約内容などを打ち込み、印刷して上長に確認し、取引先へFAXを送ります。
紙での帳票管理のメリットとデメリットは以下の通りです。
紙ベースの運用は、高いITリテラシーを求められない点がメリットですが、帳票の管理コストや紛失リスクを考えると、おすすめできません。
また、容易に改ざんできる可能性もあり、コンプライアンス面でもリスクが高いでしょう。
エクセルなどで管理
オフィスソフトを利用している場合は、エクセルで販売管理する工務店も多いでしょう。
エクセルに必要項目を入力して、帳票のテンプレートを決めておけば誰でも簡単に帳票作成と集計などをできます。
エクセルで販売管理するメリットとデメリットは以下の通りです。
エクセルは、手軽にオリジナルの帳票作成ができるうえに、集計にも優れています。
しかし、帳票を手作りする必要があり、計算式を管理できるエクセルが得意な人材に管理を任せる必要があり、属人化しがちです。
オンライン共有やクラウド作業などがしにくいかもしれません。
また、ファイルを誤って削除する可能性があり、運用フローの厳格な規定が求められます。
販売管理システム
工務店で最も効率的かつセキュリティ面でも安心して販売管理できる方法は、販売管理システムの利用です。
帳票をシステム上で管理できるうえに、顧客情報もまとめて管理ができるため、ひも付けも簡単にできます。
販売管理システムのメリットとデメリットは、以下の通りです。
販売管理システムは、販売管理や生産管理などを一括しておこなえます。
データはクラウドや専用のサーバーに保管できるためセキュリティ面でも安心です。
また、改ざんリスクも低く、「万が一データが変更された場合はすべてログが残る」などセキュリティ対策もなされています。
顧客情報を含む機密情報を守り、なおかつ一元管理で効率化できるツールです。
反面、導入コストがかかる点や操作に慣れるまでに研修の時間や手間がかかることはデメリットといえます。
しかし、建設DXが推進されている現在の業界の流れを見ると、数年先には基幹システムを変える必要があることは明らかです。
体制が変わってから急にシステムを導入するよりは、先に販売管理システムを導入して運用を整えておく方が業務や現場の混乱も少ないでしょう。
まとめ
建設業における販売管理は、建設業許可を得るためにも事業の安定した経営のためにも欠かせません。
管理方法はさまざまありますが、紙ベースやエクセルを使用した方法よりも、セキュリティ面や管理コストの削減、効率化ができる販売管理システムの導入がおすすめです。
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