企業の利益を確保するため、また現場のリスクを抑えるために、現場管理において工事原価管理を正しく行うことは重要です。
現場に出向く時間が多いと忙しくて管理を行うことが大変かもしれませんが、管理を怠るとトラブルが起こりやすくなり、事業の衰退にもつながります。
今回、解説する「原価管理を正しく行うための手順」と「ポイント」を押さえて、しっかりと原価管理を行いましょう。
目次
工事における原価管理とは
原価管理とは、商品やサービスを提供するために設定した原価を基準として、価格を設定したりコスト改善を行うことです。
原価管理は、企業の財務面において、「無駄なコスト削減と利益の確保」と「損益分岐点の把握」という2つの大きな価値を生み出します。
無駄なコスト削減と利益の確保
原価管理を行うと、原価の構成内容を把握できるため、無駄なコストを抑制し、利益を確保できます。
構成を確認する中で無駄なコストを省いたり、削減するための施策を考えることができるでしょう。
売上額を上げる意識も重要ですが、無駄なコストを減らして原価を押さえることで利益を増加させることも重要です。
損益分岐点の把握
損益分岐点をあらかじめ把握することで、原価に応じた利益額の見込みも立てやすく、経営判断もスムーズになります。
また、クライアントとのお打ち合わせで、見積りの減額の要望など金額調整の話が出たときに、調整できる範囲がわかるためすぐに金額のすり合わせができます。
工事原価管理の方法
工事原価管理を行うためには、原価の詳細を正確に把握することが重要です。
まずは、原価を細かく振り分けて整理したうえでコスト改善などに役立てましょう。
工事台帳を作成
工事原価を正確に把握するためにまず必須となるものが「工事台帳」です。
該当工事で使用した費用を工事台帳に記載することで「どのような費用がどれだけ発生しているのか?」「工事原価の累計額はどれくらいか?」をすぐに把握できます。
また、費用を工事台帳に振り分ける際に、工事原価を以下の4つの要素に振り分けておくとさらに管理しやすくなります。施工内容・施工費についての分析や完成時の利益予想にも役立ちます。
項目 | 詳細 |
---|---|
材料費 | 製造に要する原材料、製品、半製品など |
労務費 | 製造に要する原材料、製品、半製品など |
外注費 | 外部企業に製造を委託した際の費用 |
経費 | 上記以外で製造に要した費用 (減価償却費、水道光熱費、消耗品費など) |
各工事の原価を集計する台帳です。該当工事で使用した費用を記載します
経費・人件費の振り分け
工事原価を効率的に集計するためには、経費を現場別に分解しやすいよう仕分けておくことが重要です。
経費を仕分ける手順は以下の通りです。
- 請求書を必要経費と経費外で分別
- 請求書の内容を工事現場ごとに分解する
- 人件費の配賦計算を行う
請求書を必要経費と経費外で分別
工事部門で直接使用した経費だけを工事原価とし、管理部門で使用した経費は販管費として工事原価から除外します。
材料費や協力業者の施工費はもちろん、水道光熱費や通信費、事務用品など可能な限り振り分けていれば管理の精度を高めるでしょう。
請求書の内容を工事現場ごとに分解する
請求書によっては複数の工事が混在しているものがありますが、そのままでは工事台帳に転記する際手間がかかるため、納品書や請求書の項目を確認し工事現場別に分解していきます。
仕入業者に現場別の請求書を発行してもらうと分解しやすいですが、共通の経費が発生したり、人工が現場別にかかると、費用がかさむ場合があるためなかなか難しいです。
共通の経費を仕分けるためには、現場数に応じた均等な配分や工事規模に応じた按分を行い、できる限り現場ごとに分ましょう。
人件費の配賦計算を行う
人件費(労務費)や法定福利費などの経費については、作業日報や現場日報をもとに振り分けます。
日報から各工事に関わった作業員の作業時間をカウントし、現場の人件費を計算しましょう。
時給や日給から計算すると確実な人件費を出せますが、作業員1人あたりの標準単価を決めておくと計算しやすくなります。
「共通経費」の配賦計算
共通経費とは、倉庫整理にあたった人件費や自社所有重機の減価償却費、工具の修理代などの現場を特定できない経費です。
現場を特定できない「共通経費」の振り分けも原価管理に必要となります。
共通経費も適切な基準で按分する必要がありますが、工事受注高に対する割合を定めておいても良いでしょう。また、共通経費以外の経費に対する割合を定めておくこともひとつの手です。
工事原価管理システムの選び方
きちんと手順を踏み一つずつ計算する必要のある原価管理ですが、毎回工事台帳を作成したり経費の計算を細かく行うことはなかなか大変な作業です。
工事原価管理ができるシステムを利用すると効率的にかつ正確に原価管理を行うことができます。
ここで解説する工事原価管理システムの選び方を押さえて、自社に合うシステムを検討してみましょう。
導入目的に合わせる
導入する目的によって必要なシステムや機能が変わります。
導入目的が、「業務全体の効率化」「財務面の透明化」なのか、「一部の作業を自動化させたい」のかにより、必要なシステムが異なるためです。
例えば、「業務全体の効率化」が必要であれば契約から売上金回収までのデータを一元管理し、予算や進捗の管理が可能な工事管理システムを導入するべきです。
「目的を達成するために必要な機能を備えているか」、「臨機応変なカスタマイズが可能か」という観点から選定することポイント!
また、従業員のITリテラシーや予算などの状況も加味して検討する必要があります。
システムの導入経験が少なく、一つのシステムで効果を最大化したいのであれば、建設業会計に適したERPパッケージもおすすめです。
エクセルに使い慣れているのなら、エクセルデータをコピーアンドペーストで反映させられるシステムを選ぶと浸透させやすいでしょう。
一元管理機能の有無
原価管理の属人化を防ぐため、また工程が進むごとに原価データを反映させるために、原価を一元化管理できる機能が大きく役立つでしょう。
また、さまざまな媒体から集約されたデータを見ることができれば、現場や現場への移動中に必要なデータを確認できます。
さらに、各拠点のデータを統合できれば、原価の状況を把握・分析し経営改善につなげることも可能です。
クラウド型かオンプレミス型か
工事原価管理システムに使用するサーバは、「オンプレミス型」と「クラウド型」に分けられます。
オンプレミス型は社内のサーバを、クラウド型はインターネット上のサーバを、それぞれ利用します。
サーバーの種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
クラウド型サーバ | ・保守/メンテナンスが不要 ・現場からの操作が可能 ・初期費用を削減 | ・セキュリティが脆弱 ・従量課金型が多い ・規模が大きい企業や長期運用はコスト高 |
オンプレミス型サーバ | ・セキュリティが強い ・カスタマイズ性が高い ・現場の要望を反映しやすい | ・保守/メンテナンスが必要 ・莫大な初期費用が必要 |
【参考】業務支援システムの種類を解説!工務店におすすめの種類と注意点
建築現場の知恵袋では、クラウド型が断然おすすめ!プライベートクラウドを使えば、セキュリティが万全なうえ、保守・メンテナンスも不要な上、初期費用も抑えられて、必要なカスタマイズも可能です。
導入サポート体制の有無
導入した工事原価システムを社内に浸透させるためには、サポート体制が整っていることが必要です。
自社に合うシステムを選ぶことで浸透率は上がりますが、最初は操作で分からない部分も出てくるかもしれません。
すぐに対応してもらうことが難しいと、効率化のためのシステム利用のはずが逆に時間を取ってしまうこととなります。
疑問点や不明点がある際に、適切なサポートをしてくれるサービスを選びましょう。
まとめ:原価管理の方法と管理システムの選び方
今回は原価管理の手順やポイント、管理システムの選び方について解説しました。
手動で管理するとなかなか手間がかかる原価管理ですが、管理システムを活用することで作業の負担を増やさずに利益を上げることができます。無料トライアルができるシステムもあるため、一度試して検討してみることもおすすめです。
まずは、自社の原価管理の課題点を洗い出し、導入目的を明確にしてみましょう。
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