建設業界では、現場で勤務することが多く、勤怠状況を逐一使用者が確認することができません。
そのため適切な勤怠管理を行うことが、使用者・従業員共に働きやすい環境を作ることに不可欠となっています。
本記事では、勤怠管理の目的、どの管理方法が貴社に適しているのかをメリットデメリットを踏まえて紹介します。
目次
勤怠管理とは
勤怠管理とは、使用者が従業員の勤務時間、休憩時間、欠勤などを把握し、適正に管理することです。
賃金計算を労使ともに明瞭にすることや、従業員の働きやすい環境を作ることにも役立ちます。
また勤怠管理は、労働基準法第108条において「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」と義務付けられています。
例え従業員が1人で、労使ともに雑な勤怠管理で了承していても、使用者側には義務があるため適正な勤怠管理は必ず行わなくてはいけません。
勤怠管理の目的
勤怠管理の主な目的は、勤務状況に基づく賃金計算などの法令遵守、従業員の健康を守ることです。
賃金計算 | 労働日数・労働時間の把握により、労使ともに明確にしておく必要があります。 |
過重労働の早期防止 | 時間外労働時間数の記録により、社員の健康維持を図れます。 |
社員の正当な人事評価 | 早退・遅刻の日数(理由)、欠勤日数(理由)を把握し、労使間で評価を明瞭にできます。 |
勤怠管理を適正に行なっていないと労働基準法違反となり、罰則があるだけでなく、従業員との信頼関係が崩れることになります。
適正な勤怠管理を行うことは健全な会社運営に必要なことといえます。
勤怠管理の課題
建設業界では現場仕事が多いため、従来の日報やタイムカードによる勤怠管理にはいくつかの課題があります。
日報
従業員が勤務時間等を自ら申告作成するものです。
従業員のミスや虚偽の申告の可能性もあり、勤怠管理としては正確性に欠けています。
タイムカード
出退勤の時間を従業員が事務所で記録します。
現場で直行直帰をする日もある建設業界では、事務所出社の日はタイムカード、直行直帰の日は日報で報告することもあります。
このように手書きの日報とタイムカードを併用し、従業員の作業工数が増えるだけでタイムカードを有効活用できていない場合も多いです。
これらの従来の勤怠管理では、記録の回収、集計、管理といった手間がかかるという課題が残っています。
また、建設業界では慢性的な人手不足もあり、適正な勤怠管理を行うことが負担となってしまっています。
建設業界において徹底した勤怠管理が求められる理由
勤怠管理にはミスや虚偽の申告などが起こり得ます。
これにより賃金の不正受給や法令違反などの問題が生じる可能性があるため、徹底した勤怠管理が求められています。
不正や法令違反を防ぐ
従業員による賃金の不正受給については、現場に直行直帰の働き方をしている企業に多く生じます。現場で監視している者がいないため、出退勤時間をごまかしたり、休憩時間を報告よりも多くとっているなどがあります。
これらについて虚偽の報告をすることにより、本来7時間しか働いていないのに、10時間分の残業手当も含めた給与を従業員は不正受給することになります。
また、2019年4月に行われた労働安全衛生法改正により建設業界にも2024年から(新)36協定が適応されます。これにより時間外労働の上限は“原則月45時間・年360時間と定められ、違反した場合には罰則が科されます。
客観的なデータとして記録することで、勤怠管理を徹底して行い、不正打刻や法令違反を防くことが求められています。
従業員の安全配慮
過重労働により従業員のメンタルヘルスや過労死を招いてしまうこともあります。
不適切な勤怠管理ではこのような事態を未然に防ぐことはできません。
勤怠管理を徹底して行うことで、従業員の心身ともに健康を維持・管理することが必要です。
勤怠管理の方法と特徴
具体的な勤怠管理の方法と、それらのメリットデメリットを紹介します。
徹底した勤怠管理を行うために、各方法をよく知った上で、どの管理方法を導入するのか検討してください。
- タイムカード
- 日報
- 勤怠管理システム
タイムカード
出退勤を正確に従業員が記録することができます。
使用者側にとっても、従業員の労働時間を客観的に表すデータになります。
出退勤の記録は従業員が自分のタイムカードで打刻するだけでなため、年配の方などスマートフォンの扱いに慣れていない方でも簡単に扱うことができます。
ただし、打刻忘れや不正打刻の監視には注意しなければなりません。また、タイムカード自体の保守管理の担当者が必要になります。
日報
従業員が手軽に申告でき、休憩時間なども細かく記録できます。
毎日上司が確認することで、1日の振り返りを行うことができます。
外回り営業などでは、効率的に営業先を回ることができたか、1件にどのくらいの時間をかけているかなどの細かい確認を行うことができます。
しかし、従業員の申告ミス、虚偽の申告の発見が難しくなります。
それに伴い、過重労働の発見の遅れや、賃金の不正受給を招く恐れがあります。
ただし、エクセルによる勤怠管理は労働基準法違反になる可能性があります。
エクセルで出退勤時間等を管理する方法は、データが一覧表示されることで管理上賃金計算などが簡便になるメリットがあります。
しかし、エクセルは従業員の手入力とみなされ、客観的な勤怠管理データとしては扱われない可能性があるため注意が必要です。
勤怠管理システム
クラウドシステムであれば、どこでも出退勤の申告と承認が可能です。
また、データの集計も詳細に解析することができるため、人件費の削減にもなります。
勤怠管理アプリなども開発されているため、スマートフォンでどこからでも出退勤の打刻が可能になります。
GPS機能が付いているものもあり、出退勤の時刻だけでなく、位置情報も同時に打刻できます。
これにより直行直帰で現場からの打刻でも、不正打刻を防ぐことがでるでしょう。
過重労働を防ぐために、残業時間が一定数を超えたときにアラートで知らせてくれたり、全社員の残業時間をデータ解析できるシステムもあります。
一方デメリットとしては、導入時にシステムの使用方法を従業員に説明する必要があり、研修が必要になります。
また、導入にコストがかかるため、費用対効果を検討する必要があります。
しかし、勤怠管理システムは他の管理方法よりも導入が簡易で、従業員の負担減にもなります。
詳しく知りたい方は、おすすめの勤怠管理システムや選び方を紹介している記事をご参考ください。
まとめ
勤怠管理は法令で義務付けられているだけではなく、適切な賃金計算、従業員の健康管理にも欠かせないものになります。
建設業界では現場仕事が多いため、従来の勤怠管理方法では正確な記録ができない現状があります。
そのため直行直帰でも正確な記録を行うことのできる勤怠管理システムを導入することが望ましいです。