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【2022年最新版】建設業が活用したい人材確保等支援助成金をわかりやすく解説

国土交通省の資料建設産業の現状と課題によると、建設業就業者数は平成9年をピークに20年で約27%(185万人)減少しています。

他産業にくらべ従業員の高齢者比率が高く、今後も大量離職が続くことから、若年者の雇用と技術の継承が喫緊の課題です。

このままでは人手不足からやむをえず事業縮小、あるいは廃業する事業者も出てくるでしょう。

なんとかしなければ、と危機感を持たれている事業主が多いことも想像に難くありません。

このままでは人手不足からやむをえず事業縮小、あるいは廃業する事業者も出てくるでしょう。

なんとかしなければ、と危機感を持たれている事業主が多いことも想像に難くありません。

本稿では、建設業者が「離職率の低下」や「若年者や女性の入職率向上」に取り組んだときに活用できる助成金について紹介します。

雇用と従業員の定着に取り組む予定の建設事業主様は、ぜひ活用して有効な施策を打ってください。

本記事は2022年4月18日時点での情報です。

雇用管理制度助成コースは、令和4年4月1日より整備計画の新規受付を一時休止しています。

人材確保等支援助成金とは

人材確保等支援助成金とは

雇用や労働環境の改善、人材育成を行う事業を支援するため、厚生労働省が年間を通していろいろな助成金制度を設けています。

助成金は、所定の活動に費やした費用の一部が、原則的に後払いで支給されます。補助金より給付のハードルが低く、条件を満たしていれば受給できるのも特徴といえます。

本稿で紹介する「人材確保等支援助成金」は、入職率や離職率の改善を支援するための助成金です。多くのコースに分かれていてやや複雑なため、要点をまとめた本稿を最後まで確認してから申請することをおすすめします。

人材確保等支援助成金とは
  • 人材確保等支援助成金の目的
  • 建設事業の3コース

人材確保等支援助成金の目的

人材不足は新規雇用を増やすだけでは改善できません。退職者が多いままでは、穴の空いたバケツに水を入れるようなもの。まずは現在就業している従業員の職場定着を高める必要があります。

人材確保等支援助成金、雇用増加と離職率低減の促進を支援することを目的としています。

建設事業の3コース

人材確保等支援助成金には、建設業向けに3つのコースが設けられています。

以前は「建設労働者確保育成助成金」という名前の助成金がありました。現在版の建設業の「人材確保等支援助成金制度」はこれをリニューアル(平成30年4月)したものです。

雇用管理制度助成コースは、令和4年4月1日より整備計画の新規受付を一時休止しています。3月31日までに整備計画を提出した場合は、受付可能。
なお、再開は現在未定です。
助成コース概要詳細説明
雇用管理制度助成コース(建設分野)
※現在は受付休止
目標達成助成若年者や助成の雇用目標達成に対する助成
雇用管理制度助成コース(建設分野)
※現在は受付休止
登録基幹技能者等の処遇向上支援助成賃金テーブルまたは資格手当の増額に対する助成
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース事業主経費助成若年者および女性の雇用や定着を図るための事業をおこなった建設事業主に対する助成
作業員宿舎等設置助成コース作業員宿舎等設置助成被災三県に所在する作業員宿舎・作業員施設・賃貸住宅の賃借に対する助成
作業員宿舎等設置助成コース女性専用作業員施設設置経費助成工事現場の女性専用作業員施設の賃借に対する助成
【参考】建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)

どの助成コースにするか迷う場合は「雇用管理制度助成コース(建設分野)目標達成助成」がおすすめです。

「雇用管理制度助成コース(建設分野)」は、人材確保等支援助成金の「雇用管理制度助成コース」と併用が可能です。「雇用管理制度助成コース(建設分野)」による雇用増加と「雇用管理制度助成コース」による離職率低減、それぞれの目標達成に対して助成金が受給できます。

なお両コースを見分けやすくするために、ここからは便宜的に「雇用管理制度助成コース(建設分野)目標達成助成」を「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」と、「雇用管理制度助成コース」を「雇用管理制度助成コース離職率達成助成」と表記します。

建設分野の雇用管理制度助成コース(目標達成助成)

建設分野の雇用管理制度助成コース(目標達成助成)

ここからは「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」について詳しく解説していきます。

建設分野の雇用管理制度助成コース(目標達成助成)
  • 雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成の目的
  • 助成額
  • 対象の雇用管理制度
  • 助成対象
  • 助成金支給までのフロー

雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成の目的

冒頭で述べたとおり、建設業界では労働者の高齢化と人員不足が深刻化しています。若年者の雇用と技術の継承は喫緊の課題です。

「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」の目的は、この状況を改善すべく「若年者や女性の雇用」および「雇用の安定」を支援することです。新たに雇用管理制度を導入・実施して、入職率が改善した場合に助成金が支給されます。

助成額

詳しくは後述しますが「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」は「雇用管理制度助成コース離職率目標達成助成」の支給決定が受給の要件になっています。よって、両方の助成額を紹介します。

助成額

離職率低下目標達成助成 ⇒ 57万円

生産性要件を満たした場合 ⇒ 72万円

一方、「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」は、助成を受けるチャンスが2回あります。1回目は当初1年間の達成に対して給付され、2回目は2~3年目の達成に対して給付されます。

  • 第1回:入職率目標達成助成 ⇒ 57万円
  • 第1回:生産性要件を満たした場合 ⇒ 72万円
  • 第2回:入職率目標達成助成 ⇒ 5万円
  • 第2回:生産性要件を満たした場合 ⇒ 108万円

なお、生産性は以下の式で求められます。

生産性 = 付加価値 ÷ 雇用保険被保険者数

上述の式に登場する「付加価値」とは「営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課」に該当するものの合計です。被保険者数は「日雇労働被保険者」や「短期雇用特例被保険者」を除きます。

生産性要件は、助成金の支給申請をおこなう直近会計年度の生産性が、3年度前と比べてどの程度向上したかで評価されます。割増を受けるのに必要な結果は、以下のとおりです。

評価基準
  1. 3年度前に比べて6%以上伸びていること
  2. または、3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること

2の場合は、労働局から事業所が融資を受けている金融機関に簡単な照会が行われます。その結果「今後生産性が伸びる」と判断されると割増がおこなわれます。

なお生産性要件は、算定の対象期間中に事業主都合による離職者を発生させないことが必要です。

【参考】建設産業の現状と課題労働関係助成金における生産性の判定について

対象の雇用管理制度

この助成は、以下の雇用管理制度の導入を通じて、従業員の離職率低減や若年および女性労働者の入職促進に取り組む中小建設事業主に対して助成金が給付されます。

助成対象となる雇用管理制度
【出典】建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)8ページ

上述の助成対象となる雇用管理制度は、新しく導入するものに限られます。「雇用管理制度助成コース離職率目標達成助成」の達成が要件であることから、まず離職率を低下(あるいは0%を維持)させないと利用できないことに注意が必要です。

その他の細かい注意事項は、以下の資料の8ページをご確認いただくか、最寄りの都道府県労働局にお尋ねください。

【参考】魅力ある職場づくりに取り組む事業主の皆さまへ人材確保等支援助成金のご案内

助成対象

つづいて「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」の助成対象(助成要件)について説明します。

度々述べていますが、この助成は「雇用管理制度助成コース離職率目標達成助成」の達成が要件となっています。とくに数値目標は必達のため、厚生労働省「雇用管理制度助成コースの詳細」よく確認してください。

「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」は基準を満たす中小建設事業主に助成されます。主な受給資格は以下のとおりです。

受給資格
  • 建設労働者を雇用して建設事業を行う者
  • 雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主
  • 「建設の事業」としての雇用保険料率の適用がされている建設事業主

厚生労働省の助成は、社会保険やハローワークと関連させたものがほとんどです。

本助成においては、建設の事業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業)として、雇用保険料率12/1000(令和2年度)の適用を受けている建設事業主が対象です。

本助成の対象となる「中小建設事業主」に該当する事業規模は、以下のとおりです。

「中小建設事業主」に該当する事業規模
  • 資本金または出資の総額が3億円以下
  • 常時雇用する労働者の数が300人以下

なお、いわゆる「一人親方」や同居の親族のみを使用して建設事業をおこなっている者は「建設労働者の雇用の改善等に関する法律第2条第5項」の事業主に該当しないので、支給対象となりません。

さらに、同法第5条第1項に定める雇用管理責任者を選任していることも求められます。

「雇用管理責任者」とは、労働者の採用や勤怠管理、技能の向上、福利厚生などを一貫して行う者のことです。厚生労働省が「雇用管理研修」を無料で実施しているため、選任の際に受講してもらうとよいでしょう。

先述のとおり、「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」は給付を2回受けるチャンスがあります。

まず、第1回の評価算定期間は以下のとおりです。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)における雇用管理制度整備計画期間の末日の翌日から12か月を経過するまでの期間

建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)8ページ

第1回目は、上述の期間の若年者(入職時の年齢が35歳未満)や女性入職被保険者の新規および正規雇用の入職率が「5.5%以上」になる必要があります。

なお、入職率は以下の式で求めます。

入職率(%)= 各期間に雇い入れた若年者及び女性入職被保険者の人数 ÷ 各期間の初日における雇用保険一般被保険者数 × 100

【参考】建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)(PDF)

次に、第2回の評価算定期間は以下のとおりです。

評価時入職率等算定期間(第1回)の翌日から24か月を経過するまでの期間

建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)9ページ

第2回目は、1回目の給付決定を受けていること、上述の期間の若年者や女性入職被保険者の新規および正規雇用の入職率が「平均5.5%以上」を達成していることが要件です。

あわせて、第2回の評価時入職率等算定期間における若年者および女性入職被保険者の人数が、計画時算定期間の人数を超えていることも求められます。

前提条件となる「雇用管理制度助成コース離職率目標達成助成」に定められた離職率を上回ってしまうと、第2回の受給対象にならないため注意が必要です。

助成金支給までのフロー

最後に「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」が支給されるまでの流れを紹介します。この助成制度を利用する場合は、以下の手順で進めてください。

助成制度活用の流れ
【参考】建設事業主等に対する助成金のご案内(建設事業主向け)7ページ

④⑤⑥の申請は、算定期間終了後2ヶ月以内に行わなければなりません。

なお、⑤の申請については、④の目標達成助成の支給決定を待つことなく期限内に都道府県労働局へ提出する必要があります。

まとめ

「雇用管理制度助成コース(建設分野)入職率目標達成助成」は、労働者の高齢化と人員不足が深刻化している建設業において、この状況を改善すべく若年者や女性の雇用および雇用の安定を支援するための助成制度です。

これから新規雇用や離職率の低減に取り組む予定の建設事業主様は、本助成を活用してみてはいかがでしょうか。

あわせて生産性の向上目標を達成すると、助成金の割増が受けられます。生産性向上は、技能労働者数の減少が予想される中で改善必須の課題です。入職率や離職率改善と一緒に取り組まれることをおすすめします。