日本の大部分を占める中小企業には、家族経営が多くみられます。
家族経営は、経営判断がはやいなどの強みがありますが、独善的な経営に陥るなど特有の問題もあります。
これらの問題は、ガバナンスの強化など経営陣の取り組みがあれば解決できます。
今回は、家族経営がうまくいくためには何をするべきか、経営のポイントを紹介します。
目次
家族経営とは?
家族経営(同族経営、ファミリー経営、オーナー企業ともいう)とは、特定の一族が経営を行う企業のことです。
法人税法では、家族経営の企業を「同族会社」と呼びます。
株式の保有率や議決権などを基準として「同族会社」と判断されます。
家族経営では、主な株主=経営者になることが多いため、税金逃れが起こらないように規制をかけられることがあります。
帝国データバンクの調査によると、代表者と筆頭株主が一致する家族経営の比率は、全国で77.3%です。
帝国データバンクは、家族経営の業種を長野県にて調査しており、建設業が最も比率が高く、年商規模が小さいほど、家族経営が増える傾向にあることがわかっています。
日本の企業は、実に90%以上が中小企業ですが、ほとんどが家族経営といわれています。
家族経営の企業は、決して珍しくはないということです。
家族経営の強み
中小企業の家族経営には、さまざまな強みがあります。
下記項目に注目して、家族経営の強みをご紹介します。
経営判断が早い
経営の方向転換をしたいときに、早く決断できることは、中小企業に多い家族経営ならではの強みといえるでしょう。
家族経営の場合、新規事業立ち上げやトップの交代など、経営の改革が必要なときに株主の顔色をうかがう必要はありません。
なぜなら、株主と経営陣が同じだからです。
大手企業になると、株主と経営陣は別です。
そのため、経営陣は大きな改革をしたいときは、出資者である株主の理解を求める必要があります。
事業が安定していれば、株主としては配当が安定するので、改革の必要はないと考えます。
このため、経営陣は株主の理解を得られにくく、新たな事業立ち上げやトップ交代が困難になる傾向があります。
長期的な経営戦略
経営陣が新規事業を立ち上げた場合、結果がすぐにでるとは限りません。
家族経営なら、自分達で新規事業の期間を設定できる強みがあります。
株主と経営陣が一緒ならば、投資する時期や撤退するタイミングを長期的にみて自分達で決められます。
大手企業は、出資者である株主への責任があるため、長期的に経営を行えないことがあります。
新規事業が起動に乗らないうちに、打ち切ることになるケースもあるでしょう。
社員の責任感が強い
家族経営では、経営陣の責任感が強い傾向にあります。
経営陣が頑張る姿は、社員たちの責任感の上昇にもつながります。
会社は苦境に立たされる瞬間がありますが、先代から引き継いだ会社だから潰せないと奮起する経営陣が多いでしょう。
株主と経営陣が異なる大手企業は、経営陣が株主の意向に沿わないと交代を余儀なくされます。
一方で、家族経営の場合はこの縛りがなく、経営陣が現場に居続けることができるため、苦境でも会社を立て直そうとする強い責任感が生まれます。
経営理念の浸透が早い
会社を経営するにあたって不可欠な経営理念は、家族経営であると浸透しやすいです。
他人よりも家族の方が、普段から一緒にいるので考え方を理解しやすいためです。
経営陣が理念を理解し、同じ方向に向かって仕事をすることは、従業員にも大きな影響を与えます。
この強みが、一貫性のある会社を構築するでしょう。
家族経営がうまくいく方法
家族経営には、強みがある反面、注意しなければならないことがあります。
家族経営ならではのリスクを強みに変えることが、会社の利益へと繋がります。
それでは、家族経営が上手くいく方法を、4つのポイントに着目して説明します。
独善的な経営をしない
家族経営の企業は、経営の決定が独善的になりやすく、最悪の場合、会社が倒産します。
社長の誤りを正せる人間がいない、会社のルールや法律を守らないとあっては、従業員の不信感が増すばかりです。
独善的な経営を防ぐには、ガバナンスを機能させることが重要です。
ガバナンスとは、簡単に言うと、経営がうまくいくようにするための管理体制のことです。
ガバナンスの構築と強化は、独善的な経営や法律違反などのリスクを回避できます。
加えて、時には経営にたずさわる家族同士の話し合いも大切です。
家族経営は、普段の生活からの延長になるため、身内の対立を避けたいと思うかもしれませんが、時には議論も必要です。
経営陣のひとりひとりが、真剣に物事に向き合わねばなりません。
身内をひいきしない
家族経営の中で、「身内のひいき」は、最も陥りやすい現象のひとつと言えるでしょう。
特に社内に家族以外の従業員がいるときは、この問題に気をつけなければなりません。
従業員たちの仕事への熱意を下げる原因になります。
たとえば、問題を起こした身内の処分が軽い、本人の望む役職につけるといったことです。
身内であっても採用するときや、ポジションを考えるときは、明確な決まりを作りましょう。
大して業務経験がないのに、社長の身内というだけで、いきなり役職につけるのは、一般の従業員からすれば納得のいかない話です。
きちんとした社内ルールにのっとり、役職を与えたなら従業員は納得するでしょう。
公私混同しない
家族経営にありがちな問題が、公私混同です。
よくある公私混同は、会社の経費をプライベートなことに使ってしまうことです。
決定権のある経営者が、「会社のお金」「家のお金」の判断すらできないのは、従業員の信頼喪失につながります。
「独善的な経営をしない」という項目でも触れましたが、公私混同を防ぐにはガバナンスを効かせることをおすすめします。
社内でルールを決めて、内部監査・外部監査などの体制を作り強化しましょう。
また、社内で親子喧嘩や夫婦喧嘩をするといった、身内の争いも控えたほうがよいでしょう。
当人たちは気にならないかもしれませんが、他の従業員は気をつかいます。
「公の場」「家庭内」の区別はつけるべきです。
分業・業務効率化する
社内で業務を分担することや、システムを導入することで業務の効率化をはかりましょう。
たとえば、家族経営が多い工務店によくみられるのは、1人がさまざまな業務をこなしていることです。
業務を一通り知っていることは重要ですが、全てを自分だけでやる必要はありません。
業務を分担するために、家族以外の従業員を雇うことも視野に入れましょう。
特に近年は、工務店の人手不足や後継者不足が深刻化しています。
この問題は、システムの導入やアプリなどを活用して解決することをおすすめします。
初期費用はかかりますが、いくつもの業務を行っていた負担はなくなるため、コア業務に集中できます。
特に事務作業の簡略化には、システムの導入が作業効率化に繋がるため、一度検討してみることをおすすめすます。
まとめ
家族経営は、特定の一族が会社を経営することで、日本企業の多くは家族経営で成り立っています。
家族経営は、経営判断を迅速に行えることや、長期的な経営戦略を立てらえるなど強みがある一方、独善的な経営や会社を私物化するなど、公私混同に陥りやすいリスクもあります。
しかし、ガバナンスを構築・強化するなどの対策を講じれば、家族経営ならではの利点を大いに活かすことができます。
中小企業では、1人が何役もこなさず、事務作業にはシステムを導入するなどの対策も、作業効率をあげる方法です。
家族経営が上手くいけば、人数がいない中小企業でも十分に利益を出すことはできるため、一度自分の会社を客観的にみることをおすすめします。