山積み工程表は工期中に必要な人員・資材を”負荷”という単位で表し、施工完了までに必要なリソースを把握する役割をもちます。
負荷を平準化することで、事前に発注量を把握でき、またスムーズに施工できるでしょう。
この記事では山積み工程表の概要や作成するメリット、作成の方法を解説します。
目次
山積み工程表とは
山積み工程表とは名前の通り工程表のひとつですが、一体どのような管理に特化しているのでしょうか。
まずは山積み工程表の概要や得意とする分野を解説します。
時間の経過と人員・資材を管理できる表
山積み工程表とは、時間の経過を横軸に置き、人員や資材を管理できる表です。
以上のような図となっており、人員が不足している部分と超過している部分がわかります。
上図を例とすると、点線で示した部分がリソースが余っている時期、赤い部分が負荷がかかっていることがわかるようになるでしょう。
この表を作る工程が”山積み”です。
- 工期計画の概要を決める
- 横軸に期間を入力する
- 縦軸に工程別の負荷を記入する
- 能力線を引く
工事現場では多数の人員や資材を用いて工事を進めていきます。
外注分野も多いため、作業ごとにどのくらいの人員が必要かつ資材を発注すべきか目安を決めておかなければなりません。
工程における人員・資材量を負荷と考え、日毎に積みあげるように書いていくことで、山積み工程表が完成します。
最終的な能力線を引くことで、負荷がかかりすぎている工程を把握でき、負荷配分して作業負荷を平準化する前作業です。
そしてこの作業をおこなった表を山積み工程表と呼びます。
山崩しとの違い
山崩しとは山積み工程表を持って積み上げた負荷を平準化する方法です。
生産能力に対して負荷が高すぎれば、労働環境の悪化だけでなく納期遅れにもつながってしまいます。
山積み工程表を見て生産力が余っているところから、不足している機関へ負荷を分散することで負荷を偏らせないように工夫しましょう。
もし山崩しできる部分がないなら、そもそものキャパシティと工事現場の規模が合っていないことを示します。
その場合は人員や資材の手配をおこない、労働力・資材を増やさなければなりません。
山崩しは以下のような手順でおこないます。
- 山積み表を参照し、ピークを前倒しにして負担を配分する
- 負荷が生産力を超えている場合は、工程自体を見直す
- 見直した工程で山積み工程表を改めて作る
山積み工程表を基本として、負荷が少ない部分から負荷が多い場所へリソースを移行させるところから始まります。
そのうえで負荷が生産能力を上回る場合は、工程自体を見直す必要があるでしょう。
無理な工期計画はミスを引き起こし、また労働環境の悪化につながります。
最終的に上記山崩しの過程を反映させた山積み工程表を作成し、リソースの平準化が成功しているか見直しましょう。
山積み工程表で人材管理が効率化
山積み工程表を作成すると、人材管理が効率化します。
工程表の特性や利用するメリットを把握すれば、より工程表を活用できます。
作業の偏り防止
山積み工程表を作成すれば、負荷がかかっている期間が可視化できます。
施工期間は長期にわたるうえに人員や資材の量が非常に多いため、表を作って管理しなければ思わぬ業務の偏りがあるケースがあるでしょう。
人員の負荷配分ができていない場合は、特定の期間人員が余っているが、別の時期は忙しくて時間外残業が増えてしまうという問題が起こり得ます。
作業の偏りを平準化し、平均的に人員や資材を配分するためにも、山積み工程表は必要です。
進捗の可視化
山積み工程表は横軸に期間を書き込み、負荷を積み上げていって作る工程表です。
山積工程表をグラフで表すことで、工程計画の全体図を把握できます。
横軸の月次(または日次)で全体の工期を把握し、今どの段階か把握可能です。
もちろん細かな工程表は山積み工程表では把握しきれませんが、リソースの関係と進捗状況を把握できることは利点でしょう。
作業の進捗状況に特化した工程表を使いたい方は、ガントチャート工程表やバーチャート工程表が作成しやすく、また情報共有も容易です。
工程表の詳細は以下の記事で紹介しています。
負荷配分が容易
山積み工程表は別名リソースヒストグラムと呼ばれており、スケジュールに基づいて人材計画を立てるための表です。
計画を立てたあとに見直してみると、時期によって一定の期間にのみ作業・人員が集中していることがあります。
施工中に気づいて修正するとなると、外注した人員のキャンセルなども生じてしまうため、修正は容易ではありません。
しかし山積み工程表を事前に作ることで、負荷配分を見直して適切に振り分けられます。
山積み工程表を使った工程管理の手法
山積み工程表を使った管理手法について解説します。
山積み工程表を扱うにあたり、この2つの方式を利用することで負荷を平準化できます。
フォワード方式
フォワード方式とは、山積み工程表を作成する時点を基準として、作業開始を時系列順に負荷を積み上げていく方法です。
作業開始から完了まで順番に作業工程を記載していく形式となるため、最終的な納期を予想する際に使われます。
受注前の工事案件について、納期を予測したい場合に利用するといいでしょう。
またフォワード方式で負荷を把握しておくと、余裕を持って発注作業をおこなえます。
バックワード方式
バックワード方式とは、納期から逆算して負荷を配分する方式です。
すでに受注済みの案件かつ納期が決まっている場合に使用します。
無駄な在庫が発生しづらい点がメリットですが、注文変更や急な受注に対応できないことが難点です。
山積み工程表をエクセルで作成する方法
山積み工程表はエクセルで作成可能です。
エクセルで手軽に山積み工程表を作る方法を説明します。
テンプレートの使用
山積み工程表はエクセルで作成できますが、エクセル操作に慣れていない場合はテンプレートを使ったほうが早いでしょう。
山積み表のテンプレートは無料でダウンロードできるため、雛形を利用して山積み工程表を作ってみてください。
AnyONEは100種類以上の帳票・工程表のテンプレートを無料提供しています。テンプレートを探している方は、AnyONEの無料エクセルテンプレートも利用してみてください。
エクセルグラフ機能の利用
山積み工程表は自作できます。
エクセルで新規ページを開き工期と工程ごとの工数を書き込んでいきます。
作成したデータ部分を選択して、エクセルメニューの挿入からグラフを作成しましょう。
ヒストグラムというグラフ形式があるため、ヒストグラムを選んでください。
以上のようなグラフが自動作成されます。
作成された山積み表に生産能力数に当たる部分に横線を引いて、負荷配分を考えていきましょう。
エクセルでの山積み工程表作成の課題
エクセルで山積み工程表は比較的簡単に作れますが、いくつか課題があります。
山積み工程表をエクセルで作るよりは、工程表を作成できる工程管理ツールの方が効率的かつミスがありません。
エクセルで工程表を作る課題を解説します。
属人化
エクセルで山積み工程表を作る場合、どうしても作業がエクセルが得意な人員に依存します。
属人化は作業負荷を増やし、また作業効率を妨げてしまうリスクがあるでしょう。
人員が欠員した際に山積み工程表が作れなくなるなどの問題が発生する可能性があります。
入力ミス
エクセルでの山積み工程表は、入力ミスを引き起こすかもしれません。
入力は手作業となり、またエクセルは編集が容易なため作成した山積み工程表の様式を変更してしまったり、内容を変えてしまうリスクがあるでしょう。
正しい工数が把握できなくなれば、山積みをおこなう意味がなくなってしまいます。
修正・管理作業が煩雑
エクセルでの山積み工程表は、修正や管理作業が煩雑になりがちです。
山積み工程表を作ったあとは保管ルールを決め、どの現場なのかが明確になるよう名づけルールを定めてフォルダへ保管する必要があります。
また、修正の際に数値を入力し直して再度グラフに起こす必要があり、急な注文変更があった場合は山積みグラフのもとになっているデータ自体を変更しなければなりません。
修正に時間がかかり、また管理ミスが起こる可能性があるなど、エクセルでの山積み工程表の作成・管理には問題が多いです。
オンライン共有
エクセルで山積み工程表を作っても、オンライン共有ができない点も問題です。
エクセルは基本的に自社内ネットワークでの使用を想定されており、外部で閲覧できません。
アプリ版を利用する手段もありますが、小さな画面で工程表すべてを閲覧することは難しいです。
山積み工程表を営業担当が外部から確認する機会が多い場合は、オンライン共有できる工程管理ツールを使用した方がいいでしょう。
エクセルはコストなく山積み工程表を作れますが、専用の工程管理ソフトではないため使用していて不便を感じる可能性があります。
まとめ
山積み工程表はリソース配分を容易にし、負荷をなるべく平準化するために用いられます。
膨大なリソースと資材を使用する工事現場では、人員配置を誤ると納期遅れや作業環境の悪化リスクも。
山積み工程表はエクセルでも容易に作成できるため、コストをかけずに山積み表を使用したい方はエクセルでの管理から始めるといいでしょう。
より効率性を求める方は、工程管理ソフトの導入がおすすめです。
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エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
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