工事台帳とは、工事現場ごとの原価・取引記録をまとめた帳簿です。
建設業者の健全経営および公共事業の請負に必要な台帳ですが、作成に時間がかかり悩んでいる事業者の方もいるでしょう。
この記事では工事台帳の概要と作成の目的、工事台帳を作る3つの方法のメリットとデメリット、エクセルで工事台帳を作る方法を紹介しています。
目次
工事台帳とは
工事台帳とは、各工事現場の原価や取引履歴を詳細に記録したものです。
工事の進捗や収支管理のために必須の台帳であり、健全な事業経営に欠かせません。
工事台帳には、工事にかかった下記の費用を記載します。
- 材料費
- 労務費
- 外注費
- 経費
また工事台帳の作成は、建設業法上で経営事項審査のために必要な書類に定められています。
公共工事を受注したい場合は、入札に参加するために必須の台帳です。
工事台帳と建設業法の関連性については以下の記事で詳しくまとめています。
工事台帳の記載項目
工事台帳には以下4つの工事原価を記載します。
- 材料費
- 労務費
- 外注費
- 経費
材料費
工事台帳に記載する材料費とは、仕入れ材料・資材にかかった費用です。
工事原価の把握に必須の項目であり、必ず記載しなければなりません。
材料費は時期によって変動することもあり、リアルタイムで正確な情報の入力が必要です。
労務費
労務費とは直接工事にかかわっている人材の人件費・賞与・法定福利費です。
工事原価および労災保険の金額の計算にも使用します。
労務費の詳細については以下の記事で解説しています。
外注費
外注費とは、下請け業者に対して支払う費用です。
図面作成の外注や職人の発注などをおこなった場合は、すべて外注費として計上します。
特に元請事業者は多数の下請け業者を利用するため、外注費の割合が多くなるでしょう。
経費
経費とは、先述した「材料費・労務費・外注費」に当たらない費用全般を意味します。
工事現場で使用する駐車場代・事務用品の費用、仮設電気・水道などの光熱費のことです。
工事を遂行するにあたって必要になる人件費・・外注費・材料費に当たらないすべての費用が経費となります。
工事台帳は健全な企業経営のために必須
工事台帳の作成は健全な事業運営のために欠かせません。
しかし「工事台帳がなぜ健全な事業運営に欠かせないかわからない」と疑問を持つ方もいるでしょう。
工事台帳を作成する目的を以下3つ解説します。
各工事の利益率の把握
工事台帳の作成で、各工事の利益率を把握可能です。
工事現場ごと原価を割り出せるため、適切な工事がおこなわれているか把握でき、利益の目測がつけやすくなります。
利益を正確に計算できれば、自社経営の方針や当期目標達成状況も把握可能です。
仮に利益率が予算よりも低い場合は、速やかな対処や修正ができます。
進捗状況の把握
工事台帳を作ることで、各工事の進捗状況を把握できます。
工事現場ごとに工程表などで進捗管理をしていても、自社で請け負っている工事現場すべての進捗を一度に確認することは難しいです。
しかし工事台帳を作成していると、請け負っている工事の進捗管理をまとめておこなえます。
経営事項審査
経営事項審査とは、公共事業の工事を直接請け負う業者が必ず受けなければならない審査です。
審査では経営状況・経営規模・技術力・社会性などその他の項目が審査されます。
健全な経営がおこなわれており、公共事業を請け負うにたる企業かどうかを示すために工事台帳は欠かせません。
工事台帳を作成する3種類の方法
工事台帳の作成方法は3種類で、作成方法ごとにメリットとデメリットがあります。
作成方法ごとの特徴を把握して、業務の流れに合う工事台帳の作成方法を探す参考としてください。
システム
工事台帳は台帳作成システムで作成するのがもっとも効率的です。
メリットとデメリットを比較してみましょう。
工事台帳作成システムの中でもクラウド型のシステムがおすすめです。
インターネット上のクラウドという空間にデータを一元管理でき、いつでも情報を閲覧できます。
また過去データの参照が容易であり、過去台帳の参照も簡単です。
システム内にマスターデータを登録でき、工事台帳作成が効率化します。
工事台帳をシステムに集約して閲覧できるため、経営陣が台帳を参照し利益率の把握も容易です。
アプリ版が提供されている工事台帳作成システムを使用すれば、オンライン共有ができるため外部で閲覧できます。
ただし、システム導入には導入初期費用がかかり、コスト面で問題を感じている企業の方もいるでしょう。
その場合は「IT導入補助金」を利用することで、自社負担を減らすことができます。
「IT導入補助金」の詳細や申請方法をまとめた記事を参考にしてください。
エクセル
工事台帳はエクセルで作成できます。
エクセルでの工事台帳作成のメリットとデメリットを比較します。
すでに自社でオフィスソフトを使用している場合は、コストなく工事台帳作成ができます。
使い慣れたソフトであるため、操作性も良く混乱が生じづらいでしょう。
また無料テンプレートのような雛形を使用すれば、整った体裁の工事台帳が作れます。
メリットはあるものの、エクセルはオンライン共有に向いておらずアプリ版の使い勝手も悪いです。
またエクセルに数式やマクロを用いて台帳計算などを効率化できます。
しかし、特に中小企業では数式やマクロを利用できる人員が限られるため、台帳作成業務が属人化しやすい点には注意しましょう。
エクセルは手作業の領域が多いため、入力ミスやファイルの削除リスクが起こりやすいことも懸念点です。
またエクセルは、システムと違って全ての操作履歴が確認できるわけではありません。
そのため、作成した工事台帳の改ざんも容易にできてしまうことがリスクとなります。
手書き
工事台帳は手書きで作成可能です。
手書きで工事台帳を作成する方法のメリットとデメリットを解説します。
手書きでの工事台帳作成はPCの知識が不要で、誰でも簡単にできることが最大のメリットです。
また、テンプレートを用意すればコストもかかりません。
デメリットとしては台帳の記載項目はかなり多いため手書きする時間がかかり、リソースが必要です。
また紙媒体のため紛失リスクがあり、水をこぼすなどすると文字を判読できなくなる可能性があります。
台帳には保管義務があるため、保管中に用紙が劣化して読めなくなるリスクもあるでしょう。
また、台帳には企業機密情報が記載されているため、鍵付きキャビネットでの厳重な保管が必要です。
キャビネットの購入費用、管理人員の割り当ても必要となります。
過去の台帳を参照する際に検索が、おこないづらいこともデメリットです。
エクセルによる工事台帳の作り方
工事台帳作成システムの導入は費用面的に難しいという方は、まずはエクセルでの管理を始めましょう。
エクセルによる工事台帳の作り方を説明します。
自作するのが難しい場合はテンプレートの利用をおすすめします。
自作してみたい方、自由なカスタマイズをしたい方は参考にしてください。
必要事項の項目作成
まずエクセル上で新規シートを作成し必要事項項目を作成しましょう。
- 日付
- 工事情報
- 仕入れ先
- 工事請負契約金額
- 必要項目
エクセルは自由に表を作れるソフトであるため、必要な行数を挿入してください。
日付
まずはエクセルに日付の項目を作成します。
台帳は日々入力するため、日付を入力する欄が必要であるためです。
工事情報
次に工事現場の情報を記載しましょう。
工事台帳は工事現場ごとに作成する必要があるため、どの工事現場なのかわかるようにしておかなければなりません。
仕入れ先
次に資材の仕入れ先を記入します。
資材の仕入れ先の記入がなければ、原価・単価が把握できず確認の手間がかかるためです。
工事請負契約金額
工事請負契約金額も必ず記載します。
減価率や粗利益率は請負契約金額においての利益額の割合を計算するために必要です。
利益計算の目安となる金額であるため、必ず記載しましょう。
必要項目
次に必要項目を設定します。
工事台帳に記載すべきは以下4つの金額についてです。
- 材料費
- 労務費
- 外注費
- 経費
以上についての項目を表で設定したら、次に進みましょう。
関数・マクロの設定
工事台帳の外枠ができたら、必要なセルに数式やマクロを設定します。
エクセルで工事台帳作成をおこなうにあたり、よく使う数式は以下の通りです。
SUM関数:=SUM(”指定セル”:”指定セル”)
掛け算:=(”指定セル”*”指定セル”)
ほかにも利用できる数式は多数ありますが、基本的に上記2つの関数で自動計算させられます。
情報・金額入力
項目の設定と数式設定が完了したら、必要情報を入力します。
手作業で工事台帳の雛形を作ることが難しい場合は、テンプレートを利用しましょう。
「AnyONE」が提供している無料エクセルテンプレートをおすすめします。
エクセルで工事台帳を作成してみて、機能面で不足や効率の悪さを感じた場合はシステム導入も検討してください。
エクセルでの工事台帳作成についてより詳細に解説した記事も参照しましょう。
まとめ
工事台帳は自社利益の把握、進捗確認、そして経営事項審査に必要です。
建設業者にとって重要な書類であり、正確なデータを登録しなければなりません。
しかし、工事台帳は記載項目が多いためミスが起こりやすく、エクセルや手書きでは正確性が担保できない場合があります。
ミスを減らし正しい工事台帳を作成したい場合は、工事台帳作成システムを活用しましょう。
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導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。