建設現場で働いていて「出面(でめん・でづら)」「出面表」という言葉を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。出面表は従業員の出退勤や賃金管理の際に活用されるものです。
この記事では、出面表の概要から利用目的、具体的な管理方法などについて解説します。
出面表とは
出面表の「出面」とは、現場作業員の作業日数を指します。
現在ではあまり多くありませんが、かつては建設業において、元請けとなる企業が自社もしくは自社以外の作業員を直接集めたうえで工事を行うケースがよくありました。
この時、給料に関しては「作業日数×労務単価」という計算によって、作業員ひとりひとりに支払われます。この作業日数のことを出面と呼んでいます。
そして出面表は、この出面を管理するために用いられる表のことです。具体的には、「いつ、誰が、どの現場で、どのくらいの時間作業したのか」といった情報を書面で管理します。
一般的な企業でいう出勤簿や報告書としての役割を担っているものが出面表だと考えるとわかりやすいでしょう。
出面表の目的
出面表を利用する背景にはいくつかの目的があります。ここでは、出面表を利用する主な目的として、以下の3点について解説します。
それぞれ、出面表がどのように活用されているのかを確認していきましょう。
賃金管理
出面表の本来の目的は、作業員の賃金管理を行うことにあります。
先ほども説明しているように、出面表は作業員の出勤簿としての役割を担っており、「いつ、誰が、どの現場で、どのくらいの時間作業したのか」といった情報がまとめられています。
そして、その情報をもとに賃金の計算が行われます。出面管理を適切に行うことによって、作業員に適切な賃金を支払うことができます。
安全管理
出面表を賃金管理のために使用することは、現在では一般的ではなくなりました。
現在ではむしろ、安全管理を目的として出面表を使用するケースが多くなっています。もちろん、出面表に記録を残すことが、直接的に労災の発生を防ぐわけではありません。
出面表の情報は、安全管理を行う際の指標として活用されるケースが多くなっています。代表的な例として挙げられるものが、現場作業員であれば見かけたことがあるであろう「無災害労働日数」です。
無災害労働日数とは、業務災害が発生した次の日から次の業務災害が発生した日の前の日までの日数のことを指します。つまり、業務災害が発生していない期間のことです。
この無災害労働日数は、工程の日数に作業員の数をかけて求められるものであり、この時出面表が活用されています。
また出面表で、作業員の労働時間を可視化することで、ボトルネックを明らかにし、業務の改善や効率化を図ることも可能です。
いずれにしても、出面表の情報を元に、現場の各種安全管理に取り組むことができます。
労務管理
出面表は労務管理にも活用可能です。労務管理を行う場合、企業は労働者名簿・賃金台帳・出勤簿をつけることが労働基準法(第107条、第108条、第109条)で規定されています。
建設業の場合、下請負業者(協力会社)と契約を結ぶ場合、「請負契約」と「常傭(じょうよう)契約」の2種類があります。
常傭契約を結ぶ場合、どの現場で働いているかに関係なく、発注は日数単位で行われます。
そして、常傭契約だと日当計算によって給料を支払わなければなりません。
この日当計算の際に出面表を活用することとなります。
つまり、出面表があれば、出勤状況や労働者の名前、給料の支払い状況がわかるため、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿をつける際に活用することができます。
出面表の管理方法
ここでは、出面表の具体的な管理方法として、紙を利用する場合と、ソフトを利用する場合について解説します。
それぞれの管理方法がどのようなものなのか、確認していきましょう。
紙を利用する
出面の管理は、もともとは紙を用いて行われていました。1枚1枚に出勤状況や作業時間、作業場所などを書き込み、ファイリングして管理することが一般的でした。
しかし、毎回紙に情報を入力しファイリングするだけでも、時間と手間がかかります。
また、人の手作業による作成となるため、記入間違いが発生する可能性はゼロではありません。
そういった意味で正確性にも問題があるといえます。間違いが発生した時の修正にも時間がかかるでしょう。
さらに紙の保存場所を確保する必要があるほか、他の帳簿などに出面表の情報を利用する際にも手作業で記入しなければなりません。
いずれにしても、紙による出面管理は手間も時間がかかり、それに伴いコストも発生します。
そのため、決して理想的な管理方法だとはいえないでしょう。
そこで利用をおすすめしたいのが管理ソフトを利用する方法です。
ソフトを利用する
紙による出面管理の代わりに、現在主流となっている方法は、管理ソフトを活用した出面管理です。
管理ソフトを利用すれば、データの入力は手書きではなくなり、パソコンやスマートフォンから簡単に入力・管理することができます。
また、万が一入力間違いがあったとしても、修正をすぐに行うことが可能です。
現場からでも管理ができるため、現場で作業している担当者が、わざわざ会社に戻って出面表の作成を行う必要もありません。それに伴い現場担当者の負担も軽減されるでしょう。
さらに、管理ソフトの種類によっては、データを自動的に処理し、労務計算を行ってくれるものもあります。出面表を紙で管理する場合、労務計算は労務管理業務の担当者が手作業で行う作業です。その業務を自動化できれば、労務管理業務の担当者は労務計算に割いていた時間を別の業務に充てることも可能でしょう。
そのほかにも、ソフトによっては情報の検索・整理を簡単に行えるものもあります。
例えば、社員別の情報をチェックしたり、現場別の情報をチェックすることもできます。
それに伴い、社員単位、現場単位での労務管理も容易になり、作業時間が長いなどの課題も見つかりやすくなるでしょう。
このように管理ソフトを活用すれば、出面管理が簡単になります。いつでも、どこからでも必要な情報にアクセスでき、業務効率もアップするはずです。
まとめ
今回は、出面の概要から出面表を利用する目的、具体的な管理方法などについて解説しました。
出面表は建設現場において、作業員の賃金管理、安全管理、労務管理を行う際に欠かせないものです。
管理方法には、紙で管理する方法と、管理システムで管理する方法があります。
現在主流となっている管理システムを活用した管理方法であれば、業務の作業効率がアップすることでしょう。ぜひ利用を検討してみてください。