赤字経営となっている工務店経営者は、日々黒字にするための方法を模索しているでしょう。しかし具体的な改善方法が見出せず、売上ばかりを意識している方も多いのではないでしょうか。
売上高が上がれば黒字経営への近道となりますが、粗利益額が低ければ赤字経営のままとなってしまいます。工務店経営者は、粗利を意識したビジネスモデルを構築すべきでしょう。
本記事では粗利の計算方法と改善方法、黒字経営を実現するまでの手順を解説します。工務店経営者はぜひ参考にして下さい。
目次
粗利の計算方法とは
まずは、粗利の計算方法について解説します。自社の利益率が他社と比較してどれほどなのか検証しましょう。
粗利益と粗利率の計算方法
工務店における粗利益は売上から原価を差し引いた金額を指し、下記の計算方法で算出できます。
一方、粗利率は売上全体の中で粗利益が占める割合を指し、下記の計算方法で算出可能です。
粗利率=粗利益÷売上×100
「粗利益」と「粗利率」は売上と原価が分かれば計算できます。では、具体例を挙げて計算してみましょう。
3,000万円の戸建て住宅の原価が2,400万円の場合
- 粗利益=3,000万円-2,400=600万円
- 粗利率=600万円÷3,000万円=20%
粗利率の低さは、売上に対する粗利益が少ないことを意味します。安易な値下げなどはおこなわず、高い粗利率を維持できるかがポイントです。
営業利益との違い
営業利益は粗利益から販売管理費を差し引いた金額を指し、下記の計算方法で算出可能です。
営業利益=粗利益-販売管理費
販売管理費は主に以下の費用が該当します。
- 給与手当
- 福利厚生費
- 広告宣伝費
- 接待交際費
- 通信費
- 消耗品費用など
工務店における粗利益は、売上から住宅の建設に関する原価を差し引いた金額ですが、営業利益は粗利益から会社の運営にかかわる費用を差し引いた値となります。
営業利益が多いほど会社の利益が大きいことを指すだけでなく、1円でもあれば黒字経営できたと判断できるでしょう。
工務店の平均粗利率は
工務店の平均粗利率は20%前後といわれていますが、実際はどれくらいなのでしょうか?
平成28年度の「住宅市場整備推進等事業工務店実態調査アンケート報告書」では、各工務店の粗利率は以下の通りとなりました。
最も多い粗利率は「5%~10%台」であり、実際は20%に程遠いことがわかります。しかし、20%以上の粗利率を確保できている工務店も実在します。高粗利率を確保できれば赤字経営からの脱却にもつながるでしょう。
粗利率 | 工務店の割合 |
20%以上 | 11% |
15%~20% | 23.8% |
10%~15% | 24.9% |
5%~10% | 25.6% |
5%未満 | 14.8% |
黒字経営するための粗利改善方法とは
工務店が赤字経営から脱却し、黒字に転換するための粗利改善にはどのような方法があるのでしょうか。ここでは3つの方法を紹介します。
工事原価の見直し
粗利改善するうえで最も重要なことは、工事原価の見直しです。住宅の建設に係わる原価を圧縮することで、粗利の改善ができ黒字経営につながります。
ここでの原価は「仕入原価」と「製造原価」が挙げられます。
建材や設備器具などの仕入れ価格を見直し、職人や外注などの住宅建設に直接かかわる費用などを圧縮することで原価を下げることにつながるでしょう。
ただし、原価を圧縮させることを意識するあまりに、品質の低下に気がつかないこともあるため、十分注意しなければなりません。
施主は、価格が安くても一定基準以上のクオリティを求めるため、品質維持を意識した原価に見直しましょう。
販売管理費の削減
販売管理費も黒字経営するために見直す項目の一つです。会社を運営するうえでの人件費や通信費、消耗品の費用を抑えることで粗利益に直結します。
具体的に見直す項目は、以下の通りとなります。
- 生産力のない社員はいないか
- ペーパーレス化できる書類はないか
- 光熱費の節約はできないか
上記の他にも消耗品の削減や接待回数を少なくすることで、販売管理費の削減につながります。
クラウドシステムによる効率化
クラウドシステムは見積もり管理・工程管理・施工管理を全て網羅したデータ管理システムです。
エクセルでの原価表や見積書の作成は作業効率も悪く時間がかかる作業です。しかし、クラウドシステムであれば項目を入力するとすべて連動して作成してくれるため、作業効率の向上につながり、人件費の削減も可能となります。
またデータ共有もできるため、お客様や上司などへ提出する見積書の印刷や会議資料の印刷などが不要で、ペーパーレス化にもつながるでしょう。
販売管理費を抑える方法として、クラウドシステムは効果的といえます。
クラウドシステムについてより詳しく知りたい方は、下記記事をご確認ください。
工務店が黒字経営するまでの手順
ここでは工務店黒字経営するまでの具体的な手順を紹介します。
黒字経営するためには現状の利益や原価の確認をおこない、粗利改善の事前シミュレーションをしたうえで、黒字の基準となる損益分岐点を見極めなければなりません。
損益分岐点が分かれば、あとは計画通りに進めるだけでしょう。
1.現場把握
工務店経営者の方は「自社の利益率」「売上原価」「販売管理費」がいくらなのか現状を把握しましょう。
赤字になる要因を見定め、どの項目を改善すれば黒字経営できるかを見極めます。
2.販売管理費シミュレーション
クラウドシステムの導入により、販売管理費がいくら圧縮できるかシミュレーションしましょう。
たとえば、人件費にフォーカスを充ててシミュレーションする場合、一人当たりの給与手当は粗利益に対してどれくらいの金額になるかを計算します。
2017年に国土交通省が公表した「建設業における賃金等の状況について」を確認すると、建設業男性全労働者の年間賃金総支給額は約550万円でした。
2020年のフラット35融資利用者の注文住宅建設費が3,532.5万円であり、工務店の平均粗利率5%~10%であるため、粗利益額は「176.6万円〜353.3万円」と算出できます。
上記の粗利益額と年間総支給額を比較してわかる通り、一人あたりの給与手当は2棟もしくは3棟分の住宅の粗利益となります。
一方クラウドシステムの導入費用は、提供する企業によって異なるものの、数万円から数十万円程度です。人件費と比べて大きく販売管理費を圧縮できるでしょう。
3.粗利シミュレーション
上記の2つを踏まえて、粗利益をシミュレーションします。
圧縮可能な原価をベースに、現状の平均売上高から粗利率が算出でき、年間粗利益を求めることができます。ただし、あくまでシミュレーションであるため、計画性に不備がないか確認しましょう。
4.シミュレーションの実践
シミュレーションした計画をもとに、建材屋や設備会社などの業者と原価圧縮の交渉をおこないます。また、販売管理費を圧縮するための節約業務やクラウドシステムの導入を実践しましょう。
実践後には、シミュレーション通りになったか調査しましょう。万が一、計画通りにいかない場合は、再度シミュレーションの見直しをおこないます。
具体的なシミュレーション方法について知りたい方は「原価管理におけるPDCAとは」をご覧ください。
まとめ
今回、工務店が赤字脱却するための粗利改善方法を紹介してきました。黒字経営するためには原価と販売管理費を見直し、粗利率の向上を目指さなければなりません。
工務店の平均粗利率は「5%~10%」ですが、20%以上は確保したいと思う工務店経営者も多いでしょう。
より多くの粗利率を確保するためには現状を把握し、シミュレーションを重ねて粗利改善方法を実践していきましょう。
また、今回紹介したクラウドシステムは、「業務効率化システム」とも呼ばれます。
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粗利益=売上-売上原価