働き方改革の推進、コロナ禍の非対面契約の一般化により、建設業界にも電子化の流れが強まっています。また関連法の施行・改正も後押ししています。
紙ベースでの契約や申請が多い建設業界。
しかし、電子化・デジタル化は、自社の生産性向上など多くの利益をもたらします。
この記事では、建設業の電子化の事例や法整備などの背景、デジタル化によるメリットについて解説します。
目次
建設業が電子化へ動いた背景
建設業界に電子化の動きが強まったのは、以下のように法整備が進んでいるためです。
- グレーゾーン解消制度による請負申請の電子化の許可
- 行政による建設業許可・経営事項審査申請の電子化の整備
なぜ今建設業界にデジタル化が必要なのか、法的な面からも考察します。
グレーゾーン解消制度による請負申請の電子化の許可
建設業界の電子化を加速させた経緯として、2018年の「グレーゾーン解消制度」があります。
グレーゾーン解消制度とは、法整備にてあいまいな部分を解消するために設けられました。各省庁に「法解釈は合っているか?」と問い合わせし、認識のすり合わせができる制度です。
建設業界では、2001年に「建設業法」で電子書面の契約が認められましたが、それには以下の条件がありました。
- 政令で定めるところによる、契約の相手の承諾を得ること
- 国土交通省令で定める措置に準ずること
(建設業法第19条3項による)
しかし政令で定めるところ、国道交通省令で定める措置など、あいまいな表現が多いため原則は紙面を用いて請負契約をおこなう建設業者が増えていました。
2018年に建設工事請負契約のサービスが開発され、開発企業がグレーゾーン解消制度に基づき、経済産業省と国土交通省へ照会したところ、「建設工事の請負契約は電子化して良い」と回答がありました。
合法という回答があったことで、建設業界の電子化が一気に進みます。
行政による建設業許可・経営事項審査申請の電子化の整備
建設業界が電子化へ動いた背景には、行政による以下2つの申請が電子化できる動きが影響しています。
- 建設業許可
- 経営事項審査
建設業法の改正で請負契約の電子化は認められたものの、建設業許可や経営事項審査の申請は紙でおこなわれていました。しかし、時代の流れや請負契約という限定的な分野のみ電子化された現状には齟齬があったのです。
そこで2020年に建設業許可・経営事項審査等の申請手続の電子化に向けた実務者会議が開催されました。
建設業の働き方改革の一環として、事務負担を軽減して生産性を向上させるための会議です。2021年3月の第2回会議の議事録を参照します。
- 電子申請システムは令和5年1月に全許可行政庁一斉開始で運用予定である
- 紙と電子申請は併用していく方向性である
今後のスケジュールなどは未定ではありますが、コロナ禍による非対面契約の動きも踏まえて、法整備が進んでいる状態となっています。
行政をともなって、建設業界全体がデジタル化に向けて動いています。
建設業のデジタル化を導入するメリット
建設業界でデジタル化を進めるメリットは3つあります。
- 業務遂行・管理効率を改善できる
- コストカットができる
- 取引の適正化につながる
従来、建設業界の風土として紙の管理や契約が一般的でした。しかし、管理や作成の手間、人的ミスが起こりやすいのが難点だったといえます。
デジタル化の導入で、これらのデメリット解消を期待できます。
業務遂行・管理効率を改善できる
建設業界でデジタルを取り入れると、業務遂行や管理効率の改善が見込めます。
紙の管理では、書面の作成や管理の手間が発生していました。
例えば契約書の作成を紙面ですると、契約書の作成・押印、印刷、さらには相手方から返却された書面の確認・締結・ファイルへの収納などが必要です。
しかし、電子契約の導入によって、手作業でおこなう部分が大幅に効率化できます。
契約締結を紙面でおこなうと、先方から返却があったかなどを、随時目視で確認する必要がありました。しかし、デジタル化によって、契約書面の進捗管理なども見える化できます。
コストカットができる
建設業のデジタル化の導入で、各種コストが削減できます。紙での管理には、人手が必要です。
繁忙期には事務員の残業時間が発生したり、現場監督者の日報作成なども、会社に戻って書面作成をして提出するなど、時間コストが発生していました。
しかし、電子化の導入により、作業時間が軽減するため、人件費も削減できます。
また、電子契約や施工管理アプリを使えば、図面や契約書の印刷コストや郵送費用などもかかりません。
もちろんシステム導入には費用がかかりますが、長い目で見れば、コストの削減につながります。
取引の適正化につながる
建設業界の電子化が、取引の適正化にもつながります。
電子書類は、アクセスログが取得できるため、内部で不正なアクセス・改ざんの防止が可能です。
万が一書類の改ざんなどがあった場合も、ログから不正をおこなったものを特定・修正ができるでしょう。
受注・発注者双方にとって、契約の公平性が保たれることは、欠かせない要素です。
国土交通省のホームページでも、電子化により内部統制の観点から、取引の適正化に効果的であると記載されています。
紙面書類では管理しきれない、内部統制がおこなえるのも電子化のメリットです。
建設業の電子化の事例とは
建設業の電子化とは、主に契約・申請などを紙ではなく、デジタルでおこなうことです。
具体的にどのような事例があるのか、3つの例を用いて解説します。
- 受発注システムで契約を電子化
- 図面などの工事書類をクラウド管理し、ペーパーレス化
- 施工管理・コミュニケーションをアプリで実行
今後自社でもデジタル化を取り入れる方は、業務のどの部分を電子化できるのか参考にしてください。
受発注システムで契約を電子化
建設業界でも受発注システムを導入し、電子契約をおこなう企業が増えています。
2001年に建設業法が改正され、建設業界でも電子契約書の使用が認められました。
大手の建設業者はすでに電子化を進めており、取引先とのやり取りを全てオンラインでおこなっています。
具体的には、以下のような業務が電子化で対応可能です。
- 受発注書類の送受信
- 見積もりの送信
- 契約書類の締結
従来、建設業界では以上の書類を紙ベースでやり取りする風土があります。
そのため、書類の作成・押印、封入・郵送など、人的コストで事務作業が増える結果になっていました。
受発注を電子化することで、業務効率化や紛失リスクにも備えられるでしょう。
図面などの工事書類クラウド管理しペーパーレス化
図面などの工事書類の管理・共有を電子化し、ペーパーレス化を推進できます。
従来では、図面などは紙で出力していたため、印刷の手間・コストがかかっていました。現場に図面を持ち込まねばならず、面倒さを感じていた監督者も多いはずです。
しかし、図面をタブレットなどで作成して、完成した図面をクラウドで管理すれば、現場担当者がいつでもオンラインで確認できます。
タブレットは比較的操作も簡単であり、現場に操作を教えれば比較的容易に実施可能です。図面管理や共有の手間をデジタル化し、管理と共有を簡易化できます。
施工管理・コミュニケーションをアプリで実行
建設現場においての施工管理やコミュニケーションも、施工管理アプリで電子化できます。
今までは現場監督が、口頭や社用の携帯電話のチャットツールを用いて、自身で現場の写真を撮影して共有していたケースが多いです。
しかし、施工管理アプリを導入すれば、アプリ上に情報をアップするだけで報告・進捗確認ができます。
今までは現場監督が把握し、口頭で共有していた進捗管理を可視化し、現場全体で工事の進み具合が把握できるでしょう。
施工管理アプリにはチャット機能が付いているものが多く、コミュニケーションも簡単に取れます。
まとめ
この記事では建設業界の電子化の具体例や導入の背景、さらにデジタル化のメリットを解説しました。
働き方改革の一環として、行政が推進している動きです。
デジタル化の推進によって、業務効率が上がり、コストの削減が期待できます。今後、建設業界のデジタル化の動きはさらに強くなるでしょう。
本記事の内容を踏まえ、自社の契約や業務管理にシステムやアプリを取り入れてみてください。
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