現在、日本の建築業界では、労働人口が減少や高齢化が懸念されており早急に対策を求められています。そこで活躍するのが人工知能「AI」です。
「AI」を導入することで業務を効率化し、労働生産性を高めることができます。
今回は、そもそも「AI」とはどのような技術のことで、建築業界にどのようなイノベーションを起こすのか解説します。
目次
AIの基礎知識
建築業界に普及し始め、活躍が期待されるAI。
まずはAIの定義と、AIが得意なこと・苦手なことを確認しましょう。
「AI」とは?
AI(Artificial Intelligence:人工知能)には明確な定義がありません。その時代や人によって解釈は異なります。
しかし、共通して「人間のように知的な情報処理ができるプログラムのこと」を指します。
2011年頃から現在までは、「第3次AIブーム」と呼ばれています。それより以前、は「第1次AIブーム」「第2次AIブーム」とありましたが、うまくいかず大きな成果を出すことができませんでした。
AIの種類
AIには、「特化型/汎用型」と「強いAI/弱いAI」に分類されます。
- 特化型のAI
画像認識や音声認識など限定された分野では優れた力を発揮する。
- 汎用型のAI
限定された分野だけでなく、人間のように様々な課題に対応することができるAIのこと。
現在、ビジネスシーンで活用されているのは、「特化型のAI」です。
また、アメリカの哲学者ジョン・サール(カリフォルニア大学)は、「強いAI/弱いAI」を以下のように説明しています。
- 強いAI
人間と同じ動作・精神・意識を持つことができるAIのこと。全認知能力が必要な作業が可能。
- 弱いAI
人間が行っている作業の一部を代替可能なAIのこと。人間のように意識を持つことはないが、人間より早く・正確に作業できる。
「AI」が得意なこと
現在主流なAIは、特化型のAIです。
画像認識・音声認識・自動翻訳など決められたルールの中では優れた力を発揮し、人間が苦手なこと(複雑な計算など)の補助や、その能力の拡張が可能です。
AIの得意な部分を生かすことで、建築業界が抱える課題である安全性の向上や作業の効率化が可能となるでしょう。
「AI」が苦手なこと
AIは、少ないデータで予測や推論するこが苦手です。
大量のデータを元に、傾向や正確な予測を行うためです。
もう一つは、可能性を検討しすぎてしまうこと(フレーム問題)です。
「この可能性から、この可能性まで検討するか」という「フレーム」を決めないと、さまざまな可能性を検討し続けるため、答えを出すことは現実的とはいえません。
建築業界の未来を担う「AI」の存在
現在、建築業界では、労働人口の減少と働き方改革による労働環境の変化が課題とされています。この課題の解決に、AIが役立ちます。
労働人口の減少
現在、建築業界では、労働人口の減少や高齢化・若手の不足などさまざまな問題を抱えています。平成30年時点で建設技能労働者数は、60歳以上の高齢者は約82.8万人と、全体の25.2%も占めています。10年後には60歳以上の高齢者が大量に引退すると予測されます。
しかし、それを補う20代の若手が不足しています。そのため、AI技術を取り入れることで業務効率を図り、最小限の人数で最大限の成果が出るようにしていかなければなりません。AIの導入で無人で施工や負担のかかる作業をAIに任せることが可能になり労働人口が減っても対応ができるようになります。
労働環境の変化
国が推進する「働き方改革」により労働環境が大きく変わりました。
短い納期などが原因となり長時間労働が常態化していましたが、「働き方改革」により納期の平準化が努力義務とされています。
短い時間で、より作業効率を上げることが必要です。
AIを導入して大量のデータを解析・分析すると、効率の良い建築計画・工程を組むことができます。
またAI搭載ロボットを導入して単純な作業(掃除や資材の搬入)を任せることで、作業員の負担を減らし長時間労働をなくせます。
AIは労働環境の変化に役立つといえるでしょう。
安全性能の向上
安全管理にAIを導入することで、安全確認不足などのミスを防げます。
例えば大成建設では、現場への入場時に必要な装備(マスクやヘルメット)に不備があると、警告ともに音声ガイダンスが入るシステムを取り入れています。
カメラによる物体認識AIが装備の不備を判断しています。
このようなシステムを導入することで、安全装備の不備を素早く認識することができ、安全性が向上します。
人件費の削減
建設業では、高い技術力が必要な場面もあれば、資材の搬入といった重筋作業もあります。
重さや数によっては、人数を増やさなければならず、人件費も増えます。
清水建設では、自律機能を搭載したAIで資材を搬入して現場の効率や人件費を抑えています。
自動搬送システム Robo-Carrierは、自分で持っている資材の大きさを把握し、周囲の物にぶつからないルートを検索して搬入することが可能です。
通常は、トラックからエレベーターへの搬送用と、エレベーターから作業場所への搬送用の2台を稼働させますが、この2台で作業員8人分の作業を行います。
AIを導入することで、重労働も最小限の人数で効率よく行い、人件費を削減できるため、生産性を上げることができます。
作業の効率化
建設現場では、必ず危険な場所での作業や技術者に大きな負担がかかる業務があります。そこにAIを導入することで、安全かつ効率的に作業を進めることができます。
例えば大成建設は、「次世代無人化施工システム」を搭載した自律制御型重機にAIを活用し、安全かつ高精度な作業ができるシステムを開発しています。
重機の事故で最も多い人との接触事故を減らせます。
また、無人作業が可能になることで、災害現場や危険な場所での作業をリスクなく行えます。
さらに、施工データを大量に学習することで最適解の施工ができ、作業の効率化にもつながります。
他にも、鹿島建設株式会社と株式会社Preferred Networksが共同開発した、ロボットが自律移動するためのシステム「iNoh」を搭載したAI清掃ロボット「raccoon」が首都圏の現場で活躍しています。
今後は清掃ロボットだけでなく、建設現場のさまざまなロボットに「iNoh」が搭載されるかもしれません。
まとめ
これから建築業界では、様々な問題に直面することになり、その対策としてデジタル環境の整備が急務になっています。すでにAIを活用して効率化に成功しているところもあり、建築業界は、デジタル環境が遅れているの現状ですが、今後は、ますますデジタル化が進むと思われます。
建築業界の方は、デジタル化や効率化といった、情報に耳を傾けなければ今後大きな差になってしまいます。建築業界に大きなイノベーションを起こしましょう。
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